道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

プーシキン美術館展(横浜美術館)

2013年08月19日 | 美術道楽
ライプツィヒやベルリンの話もおいおい書くとして,東京での生活の話に戻します。

横浜美術館で開催中のプーシキン美術館展に行きました。
10時開場のところ,9時55分ころに到着したところ,延々と行列しています。
チケットを買っていても,買わなくても並びます。もっとも多くの人は事前に入場券を購入していなかったようなので,建物に入るとそのままスムーズに入れました(帰るときには割り込んで入場する不心得な中国人もいました。)。

この展覧会は本来2011年春に開催を予定していた展覧会でした。横浜美術館は豪華な500円割引券まで配ってものすごく宣伝にお金を使っていました。
ところが,大震災がおき,大きな被害が全世界に伝わると,地震と放射能汚染による被害を懸念して,このプーシキン美術館展は中止になってしまいました。チェルノブイリ原発の事故を経験しているロシア(当時はウクライナを含めてソビエト連邦でしたが)が,福島第一原発の放射能に重大な懸念を持ったのは当然のことだったと思います。

そして,今年になってようやくプーシキン美術館展が開催されました。
今回の展覧会はフランス絵画特集でした。
HPからの引用です。
(引用初め)知る人ぞ知る、フランス絵画の宝庫ロシア。17世紀古典主義の巨匠プッサンにはじまり、18世紀ロココの代表ブーシェ、19世紀のアングル、ドラクロワ、ミレー、印象派やポスト印象派のモネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、そして20世紀のピカソやマティスまで――。プーシキン美術館のコレクションの中核をなすフランス絵画の質の高さは、フランス本国もうらやむほどのものです。
本展では、選りすぐりの66点で、フランス絵画300年の栄光の歴史をたどります。なかでも、ルノワールの印象派時代最高の肖像画と評される≪ジャンヌ・サマリーの肖像≫は、最大の見どころです。
「ロシアが憧れたフランス」の粋を、どうぞお楽しみください。(引用終わり)

ニコラ・プッサン,ブーシェ,ドラクロワ,モネ,ルノワール,セザンヌ,マチス,シャガール,レジェなど,ロココ時代から現代までフランス絵画満載の絵画展です。
ダヴィッドの「ヘクトルの死を嘆くアンドロマケ」,ドラクロワの「難破して」(ジェリコーの「メデュース号の筏」のようなテーマの作品です。),アングルの「聖杯の前の聖母」などが気に入りました。それと,名前を聞きかじった程度の画家ですが,ジェロームの「ガンダウレス王」が印象的でした。ガンダウレスは自分の妃が美しいのを自慢するために,部下にのぞき見させ,それを後で知って怒り狂った妃と部下によって追放されてしまう,性的に倒錯した,でも,情けない王でして,この王の話はオペラにもなっていて,サロメのように脱衣の場面で有名のようです。

閑話休題
さて,どれもいい絵だったのですが,何か模範的な絵ばかり見たような気がして,いい展覧会でしたが,正直なところ心に残る絵というのはあまりなく,美術館を出ると,すべて忘れてしまいそうになります。絵よりもテーマということで,「ガンダウレス王」の絵は印象に残りました。
また,やはり現代の絵の方がいいのか,最後のレジェの「建設労働者たち」も気に入って見ていましたが,混雑した美術館の中で,企画展を出た品の悪いオバハンたちが大声で,レジェの絵について,こんな絵どこがいいのか,誰でも描けるなどを話していたのは興ざめでした(夏休みで子供が多かった展覧会でしたが,子供はおとなしく見ていたのに,大人の方がマナーが悪いようです。)。

そうそう最後になりましたが・・・というような水谷豊の音声ガイドも面白かったです。本当に最後まで聞かないと分からないのですが。テレビドラマで演じている役にしたがった音声ガイドの締めでした。

それこそ最後ですが,企画展の後,常設展も見られます。そこでは,マックス・エルンストやジョージ・グロス,さらにはアンディ・ウォーホルの絵も見られます。正直なところ,私はこちらの絵の方が好きで,こちらの方が感激してしまいます。

向かいにいつの間にかできていた新しい建物