道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

新宿歴史博物館名宝展(新宿歴史博物館・新宿区三栄町)

2009年04月04日 | 美術道楽
新宿歴史博物館で新宿歴史博物館名宝展を開催しています。

防衛省が旧尾張藩上屋敷だったこともあり,新宿歴史博物館には大名家の所有していた焼き物が保管されており,これらが展示されています。このほか,四谷の菓子商人兼日本画家が収集した江戸狩野派の名画のコレクションもあれば,高田馬場流鏑馬絵巻,聖徳太子像などさまざまなものがありました。かわったものでは,人魚のミイラ(実際はねずみと魚の合成ミイラのようです。)もありました。

特に印象に残ったのは,河合玉堂が,二男の母校である津久戸小学校に寄贈した「富岳」です。大きな富士山の絵ですが,細やかな筆遣いでもあり,このように貴重な作品を小学校に寄贈したというのには驚きました。

ほかには,藤田嗣治の版画もありました。別の機会に言及したいと思いますが,それにしても戦後のフジタは不運だったと思います。もっとはるかにひどい戦争協力者の画家(例えば戦費調達のためだけの絵画を描いた画家)もいたのに,この画家はそのまま画壇に君臨する一方で,フジタ一人が戦争協力者の汚名を着せられました。

閑話休題。さらに平塚運一の版画もありました。平塚運一は島根県出身で,アメリカに渡り,日本では忘れ去られた後,最晩年に帰国して新宿区でその生涯を閉じた版画家です(松江城やニコライ堂の作品を別の展覧会で見て,印象に残っていました。)。

名宝展というだけあって,テーマの関連性はなく,何でも展示されていますが,それでも一見の価値はあります。