道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

「アジアとヨーロッパの肖像」(神奈川県立近代美術館・葉山・神奈川県三浦郡葉山町)

2009年04月02日 | 美術道楽
神奈川海港・開国150周年メモリアルイベントとして,「アジアとヨーロッパの肖像」展が3月29日まで神奈川県立近代美術館(葉山)と神奈川県立歴史博物館(馬車道)の2つの美術館・博物館で同時開催されていました。

最初に葉山の近代美術館の方を紹介します。

第1章 それぞれの肖像,第2章 接触以前-想像された他者,第3章 接触以降-自己の手法で描く,第4章 近代の眼-他者の手法を取り入れる,第5章 現代における自己と他者という章立てて区分されています。構成は,明日紹介予定の神奈川県立歴史博物館とほぼ同様ですが,さすがに県立近代美術館は新しい建物だけあって,展示スペースも多く,沢山の展示がありました。

歴史博物館についても感じたことですが,面白い分類の試みだとは思うのですが,それぞれの章で取り上げている絵画があまりにも様々なので,例えば第1章で取り上げたタイプの絵画がその後,どのように変容していったのかという変化を追っていくところまでは至らず,結局,個々の章の絵画を鑑賞するということに留まっており,美術展としての企画が成功しているかどうか明らかではありません。

第1章では,ジェームズ2世像,首のない騎馬像(首は支配者の変化に応じて書き換える。)等が面白かったですが,第2章,第3章は今ひとつ印象に残らず,印象に残ったのは第4章以下です。
第4章には,高橋由一の「花魁」,黒田清輝の「婦人像」,岸田劉生の「近藤医学博士之像」,松本竣介の「立てる像」があったほか,ミュッシャの絵の模倣のようなポスターも展示されていました。
第5章では,アンディ・ウォーホールの「マリリン」,ジュリアン・オピーの「ファイルを持つヒロフミ」,シュテファン・バルケンホールの「赤いシャツとグレーのズボンの男」,森村泰昌の「肖像(ファン・ゴッホ)」,トーマス・ルフの「ポートレートK.クネフェル」等が印象に強く残りました。コスロウ・ハサンザデの「テロリスト・コスロウ」は,西洋世界から勝手に「テロリスト」という烙印をおされてしまうアラブ世界の人々とその家族の肖像を愛情を込めて描いた作品で,興味深かったです。

やはりお気に入りは第5章にあった現代絵画ですが,その多くは大阪の国立国際美術館にあるようです。

県立近代美術館(葉山館)の建物


県立近代美術館からの海の眺望(県立近代美術館は葉山ご用邸の近くだったはずです。)