活字日記

毎日読んだ活字系(雑誌、本、新聞、冊子)を可能な限りレポートします。

蒲生邸事件 その1

2004-06-30 | 文庫
 久し振りに宮部みゆきです。熱心なファンと言うわけではありませんが、読んだ本はどれも面白かったです。宮部ワールドという言い方がよくされますが、その表現はあたりです。
 この作品は日本SF大賞を受賞したもの。ミステリー作家というイメージの著者がこのような賞を受賞したというのも意外です。SFでは王道の時間旅行者ものです。時間旅行ものはいわゆるタイムパラドックスが絡んできてここが頭がこんがらがるところで好きです。この作品でも著者のパラドックスへの考え方、それは歴史への考え方が述べられています。SFではパラレルワールドという言い方をしますが、パラレルワールドって実は量子力学的にも十分に考えられている思考世界です。
 舞台は二・二六事件の起きた昭和11年です。18歳の大学浪人生の主人公はひょんなことで謎の時間旅行者と共にこの時代に飛ぶ羽目になります。

「蒲生邸事件」宮部みゆき 文春文庫
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むはの断面図

2004-06-28 | 文庫
 椎名誠は私の大好きな作家の一人です。もっとも読んでいるその作品はほとんどエッセイです。作家には失礼ですけど、シーナはエッセイが(私には)一番読んでいて楽しい。デビュー当初はスーパーエッセイなんてキャッチがついていました。代表作はわしらは怪しい探検隊ですが、おりからのアウトドアブームもあってこのアウトドアの達人のやる旅ものは日常のストレスを解消してくれました。
 大量の連載を抱えて、かつ大量の本を読み、かついつもどこかに旅行しているこの作家はいつものを書いているのかと不思議になります。想像する作家の姿はとにかく書斎(めいた)部屋に閉じこもって脳内のエネルギーを極限まで高めてそこから発散するオーラを文章にするみたいなものですが、この作家にはそういう想像が通用しない。不思議です。私は音楽が大好きですが、この作家は音楽が大嫌いで聞くのは浪曲と落語というのも面白いです。
 この本は文庫になったのは新しめですが、内容はかなり古い時代のものです。冬のシベリアをTBSのテレビ取材で横断したのはあちこちにエッセイをかいているので知られた話ですが、その頃の話が多いのでちょっと古めです。でもそれを乗り越える面白さです。
 この作家もいつの間にか古希を越えられてしまってますよね。いつまで旅作家でいられるのでしょう。

「むはの断面図」椎名誠 角川文庫
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地球は3000万年でつくられた

2004-06-27 | 雑誌
 太陽系はどの様な過程で形成されたかというのは、最近では微惑星の衝突によってというのが殆ど定説になったようです。できたての太陽の周囲をガスとちりが回転しながら収縮していくことで出来上がったのですが、高温だったガス円盤が冷えてちりが集まり始めると1000年ほどで直径10~100mの微惑星が誕生し、衝突合体を繰り返していくと、3千万年で現在の惑星のコアが完成したというのです。
 地球46億年の歴史の中では実に短時間で出来上がったものだなぁと思います。やがて火星クラスの原始惑星が衝突(ジャイアントインパクト)して月が飛び出したというのですが、これも衝突後1年くらいで月が完成したというのです。
 星の一生というのはとてつもなく長い時間が流れるのですが、なにかことが起きるときは意外と短時間でおきてしまうのというのが面白いですね。もっともビッグバンなんて時間を感じる以前の超短時間にことはおきたわけですが。
 この記事は雑誌ニュートンの記事ですが、ニュートンの古物がブックオフで105円で並んでいたので思わずゲットしてしまったものです。

ニュートン 2002/12
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ローマ人の物語5

2004-06-25 | 文庫
 ハンニバル戦記もこの巻で終わりです。ハンニバルは長靴の甲のあたりに勢力を持ち、踵のあたりの軍港を巡ってローマ軍と戦いを続けますが両者とも決め手となる勝利は得られません。
 均衡を打開するためスキピオがスペインに渡り、スペインを占有しているカルタゴ軍を撃破します。またハンニバルの弟が兄と同じくアルプス越えを行い兄の援軍向かいますが、こちらの方はローマ軍に完敗します。スキピオは勢いに乗りカルタゴにほど近い北アフリカに上陸し、カルタゴもいよいよハンニバルを呼び寄せる形となります。そしてそしてザマの会戦の結果スキピオが勝利しここにローマは西地中海の覇権を完全に握ることとなります。
 スキピオは穏やかな帝国主義を取りますが、スキピオを追いやるカトーが権力を握る頃からローマは強い帝国主義をとるようになります。マケドニア、シリアなどを完全に配下におき地中海をほぼ掌中に納めることになります。
 ここまで一気呵成に読ませてくれます。高校時代に読んだ世界史の教科書ではギリシャ・ローマ史など2、3ページしかなかったかと思いますが、これを物語にして読むとこんなにこの時代は面白かったのかと思います。中国では秦の始皇帝の時代です。
 ローマ人の物語はまだまだ続きます。

「ローマ人の物語5」塩野七生 新潮文庫
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ローマ人の物語4

2004-06-24 | 文庫
 いよいよ稀代の名将ハンニバルの登場です。有名な象を率いてのアルプス越えを行って北イタリアから長靴半島を縦断します。向かうところ敵無しという強さでローマ軍を圧倒します。そしてついにカンネの会戦で圧勝します。このカンネの会戦は欧米では戦術教育では必ず使われる素材だそうです。日本では関ヶ原の合戦がそういう素材としては有名ですよね。
 ハンニバルは直接ローマを叩くことはせず、ローマ連合の解体を目指し、また事実そのようにことは進み始めました。兵士の補給にも難をきたしてきたローマはまさに崖っぷちにたたされます。しかし、そこからがローマの強さでした。会戦では勝てないとふみ、持久戦に持ち込みます。でもそれでは負けなくても勝てません。
 そしていよいよローマにも英雄が現れます。カンネの会戦で父親を亡くした若き名将スキピオの登場です。
 まったくこのあたりの史実の流れを追っていくと、小説を越える面白さです。息をつかせません。いわゆる歴史小説と違って会話とか脚色はありませんが、書き手(塩野七生)の筆のうまさがひきたちます。

「ローマ人の物語4」塩野七生 新潮文庫
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ローマ人の物語3

2004-06-22 | 文庫
 ローマはいよいよ長靴半島を領土化し、シチリア島を巡ってカルタゴとの戦いが始まります。第一次ポエニ戦役ではまだ古代の名将ハンニバルは出てきません。その父親が登場します。カルタゴは象の軍団を操りローマを苦しめます。当時の象は今で言う戦車そのものでした。敵兵はばきばきと踏みつぶされたそうです。
 湾岸戦争当時日本は(相当な金額の)資金だけを拠出して人(軍隊)を投入しなかったため、欧米からはその貢献度を著しく低い評価でしかもらえませんでした。その轍を踏まずということか今回のイラク戦争では自衛隊派遣につながった訳ですが、この欧米人の価値判断の基準がこのギリシャ・ローマ時代にルーツがあるというのです。
 ローマはその領土拡大に伴う同盟国政策をとりましたが、それはかなりの開放政策でした。多くの主権は同盟国に残しましたが、兵の提供を必ず求めたのです。この伝統、考え方は2200年後にも欧米人には深く刻まれていると思われます。
 日本人と欧米人の感覚の差の原点を教えてくれます。

「ローマ人の物語3 ハンニバル戦記(上)」塩野七生 新潮文庫
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2004-06-21 | 文庫
 嫌われ者の昆虫というと、ゴキブリ、ハエ、蚊がビッグ3ですよね。ゴキブリもハエも食べ物に影響を与えてくれますが、蚊はもっと深刻なことに熱病を媒介してくれます。日本で代表的な蚊が媒介する病気は日本脳炎があって、小さいとき受けたこの予防注射は痛いものだった想い出が残っています。その日本脳炎も日本ではあまり聞かなくなりました。しかし、蚊が媒介する病気で世界的なものは熱帯マラリアです。日本でも戦前は存在していてマラリア原虫という寄生虫がこの病気の主です。この病気かつてはキニーネという特効薬があったり、DDTという殺虫剤(日本でも大掃除の時に畳の下に撒いたりしました)があって一時下火になりかけましたが、耐性がついた蚊や原虫によってその駆除は出来ていないのが現状です。現在、3億人から5億人の患者が出て150万人から200万人が死んでいるそうです。
 この本は「蚊」と熱帯病との関係をわかりやすく説明してくれています。アメリカでは今夏も西ナイル熱というやはり蚊が媒介する熱病が出現しています。東南アジア、アフリカ、南米を旅行する日本人は本人のための危機管理ということでこういう情報に触れていることは必要だろうなぁと思いました。

「蚊 ウィルスの運び屋」ヴィレッジブックス
マラリア情報
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ののちゃん

2004-06-19 | その他
 活字と言っていいのかわからないけれど、マンガも文化という観点からすると台詞部分を活字としてこの日記の題材にします。
 いしいひさいちって天才ですよね。がんばれタブチ君で一世を風靡したときはそんなでもなかったのですが、タブチ君で使ったキャラをそのままに自分の世界を作り上げていると思います。マンガ論に走るとよく説明は出来ないのですが、とにかく朝日新聞をとっている理由の一つにこの「ののちゃん」がありますね。故園山俊二の連載を次ぎましたが、マニア受けしそうなキャラがうまく行くのかと思っていましたが、すっかり社会面の顔になってます。最初は「となりの山田君」でスタートしましたけれど(ジブリでアニメ化されたけど不発でしたね)、設定を変えずに途中からリニューアルして「ののちゃん」になっています。藤原先生とかキクチ食堂の面々とか登場人物もゆたかで、また経済原論とかで鋭い社会風刺をやってきている作者の一面が時々出てきてナンセンスな笑いに朝から(子供達も一緒になって)ホッとしてます。

「ののちゃん」朝日新聞 朝刊
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ローマは一日して成らず2

2004-06-17 | 文庫
 ローマ人の物語文庫版の2冊目です。ローマは紀元前8世紀半ばに建国されたといいます。その後地中海の覇権をとるまでに800年かかったわけです。まさに一日にして成らずとはこのことです。前4世紀半ばに北方から移動してきたケルト人にローマは占領されます。このことを非常に屈辱としてローマ人は感じたそうです。これ以降ローマは西ローマ帝国として倒れるまで他民族による占領は許しませんでした。
 また名誉を第一に重んずるローマ人は農耕民族だったといいます。ヨーロッパ民族は遊牧民族だとばかり思っていましたが意外です。そして帝政をしいてからはキリスト教を国教としましたが、それまでは多神教で日本と同じような八百万の神に近い世界だったようです。そして異教徒にも比較的寛大でした。そう聞くと親近感がわきます。

「ローマ人の物語 ローマは一日して成らず 下」塩野七生 新潮文庫
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ローマは一日にしてならず

2004-06-16 | 文庫
 前から気になっていた「ローマ人の物語」、ハードカバーから文庫本化されたものについに手をつけました。ハードカバー1冊がおおむね文庫本上下になっています。12巻あるうち最初の3巻7冊が文庫本化されいて、今年またそれくらいが文庫本化されるのでしょう。
 ローマは紀元頃から300年余に渡って地中海の覇者であり、パックスロマーナといわれる世界史の一時代を築きました。面積的にはそれ以前のアレクサンダー大王のマケドニア、その後のモンゴル帝国が匹敵、それ以上の地域を支配しましたが、これほどの長期間を安定的に支配したということではありませんでした。どうしてそれがなしえたのか、その秘密に迫るのがこの物語です。学者が書いた歴史書ではなく、しかし文学者が書いたから歴史小説というのでもなく、「物語」であるというのがとてもいいです。著者自らシロウトが書いているからということで時には学者では書けないようなことも書いてしまうのが面白さのひとつでしょう。

「ローマ人の物語1ローマは一日にしてならず(上)」塩野七生 新潮文庫
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