活字日記

毎日読んだ活字系(雑誌、本、新聞、冊子)を可能な限りレポートします。

侍はこわい

2005-01-30 | 文庫
 相変わらずの司馬遼太郎人気です。書店の店頭ではいつまでも司馬遼太郎のものが並んでいます。この方の長い作家人生の中で後半は街道を行くのような司馬史観を語るというべきエッセイ風の書き物が多くなり、半ばは竜馬が行くというような歴史小説が多く、初期はいわゆる時代小説が多かったと思います。この文庫は初期に発表されたけれど本になっていない作品を集めたオリジナルです。司馬遼太郎は時代小説よりも歴史小説の人気が高いと思われますけど、直木賞をとったのも時代小説だし、やはり捨てがたいものです。
 賤ヶ岳の七本槍という秀吉の親衛隊の話は聞きますけど、福島正則、加藤清正などの名前は残っているものの、平野権平という名を知っている人がいれば余程の歴史ファンでしょう。しかし、福島や加藤は一時は大大名になったもののその後は没落してしまったのに、平野権平は徳川の世になってもたった5千石という旗本として召し抱えられたことで幕末まで生き延びるのです。目立たないことが良かったのですが、子孫はうだつの上がらなかった平野家の始祖を尊敬するのです。そういう歴史の片隅に埋もれている人を引きずり出すのが司馬遼太郎の得意とするところ。
 人生の機微を教えてくれます。

「侍はこわい」司馬遼太郎 光文社文庫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハリセンボンの逆襲

2005-01-26 | 文庫
 週刊文春に連載されている赤マントシリーズ,単行本化のさらに文庫本化。10余年に渡っての連載エッセイだけれどシーナファンにはいつまでも続いて欲しいエッセイ。何っていうところもないのだけれど,日本や世界をまたに旅芸人作家であるシーナ,ファンが一番面白さを理解しているでしょう。最近は浮き球ボール野球の普及で有名ですな。
 しかし,還暦を過ぎてよく風邪をひいて寝込むようになって心配です。岳物語の息子もアメリカの大学を無事卒業,娘もアメリカ暮らし,奥さんはチベットの専門家。自分のペースで人生を送っているその姿が一般小市民のボクなんかはうらやましくて...。
 つい先日シーナ出演の南米を舞台にしたテレビが放映されていましたが(うちの奥さんがシーナを見て歳を取ったね,と),あとがきにその辺りがちょっと触れられています。

「ハリセンボンの逆襲」椎名誠 文春文庫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジェフ・ベック

2005-01-24 | 雑誌
 最近の音楽シーンはとんとご無沙汰なのだけれど,クラプトン,ペイジと並ぶベックの話となるとぐっと身がのり出てますな。いい中年となったクラプトンに比べてベックはいまだにTシャツにジーンズだそうで,この40年間衣装が変わらないということです(還暦すぎてるのに)。
 ジェフ・ベックのベスト盤はなにかといわれると,全部持っていないから大きいことは言えないけれど,通称オレンジアルバムというのとブロウ・バイ・ブロウ,この2枚でしょう。両方ともキーボードにマックス・ミドルトンが入っているのがミソですな。ジャージーで転がるようなフェンダー・ローズの音が今でも新鮮。ブロウ・バイブ・ロウはプロデューサー,ジョージ・マーチンのセンスにも脱帽でした。彼とは当時ビートルズがなくなってから久し振りにゴタイメーンという感じでした。この2枚については雑誌とも意見が一致しております。ヨシヨシ。

「ジェフ・ベック」レコードコレクターズ2月号
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

蒼天の拳

2005-01-23 | その他
 北斗の拳を遡る1930年代の上海におけるケンシロウの祖父(だったかな)のお話し。コミックバンチに連載されているけれどバンチは読まないで単行本になってから読んでます。
 圧倒的な北斗神拳が負けるはずはないと思いつつも、北斗神拳の傍流との戦いは北斗の拳と似たような筋書きながら読みいってしまいます。勧善懲悪に近いストーリーもいいのでしょうか。真の愛と正義というようちょっと古いような筋がかえっていいのですなぁ。

「蒼天の拳」原哲夫 バンチコミックス
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

反音楽史

2005-01-21 | 単行本
 クラシック音楽ファンの方なら目からウロコのような本です。一部の熱狂的なファンは別として,クラシック音楽は衰退していると言われています。何故か!それは多分ドイツがいけないのです。ベルリンフィルとかウィーンフィルとか確かに世界をリードしているのはドイツ音楽界ですし,作曲家もバッハ,モーツアルト,ハイドン,ベートーベン,ブラームス,ワグナーなど音楽の授業で習った作曲家は殆どドイツ人。しかし,そういう事実がクラシック音楽をダメにしているというのです。ベートーベンが出るまでは音楽にジャンル意識はなく,作曲家よりも演奏者に比重がありました。ところがベートーベンが俺は芸術家だと大上段に立って譜面通りに演奏し譜面こそが全てだ,と言い始めた頃から音楽後進国ドイツがその劣等感から脱却しようともがき始める過程が現在にいたり,ドイツ人以外の音楽家は星の数を減らされて音楽史には添え物のような扱いをされるようになってしまったのです。
 また,譜面至上主義が無調の音楽や12音とかいうわけの分からない「つまらない」音楽を生み出すようになったというのです。いや確かに現代音楽を楽しめる人は一握りだと思う。音楽って聴いてなんぼものも。作曲家よりも演奏者,聴き手が主体のものだということです。
 音楽ってもっと楽しいもののはずだし,多くの人たちに支持される音楽が音楽の主流なのだと言っています。ベートーベンが悪いとは言いませんし「第九」などに感動もしますけど,ビートルズの「ヘイジュード」美空ひばりの「愛燦燦」なども同じくらい感動します。どちらが上等の音楽かなどは比較できないものだと思います。

「反音楽史」石井宏 新潮社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

悪徳代官はいたか

2005-01-13 | 選書
 「越後屋、お前も悪よのう、ヌハハハハ」「お代官様、手前共はそんな悪ではございませぬ、ドハハハハ」という会話で最近は笑われるお代官様ですけど、どうも実像ってよくわかりません。どれくらい偉いのか、どれくらい権力があるのか、どれくらい悪さが出来るのかなどなど。実際は徳川幕府官僚機構の末端であって、何をするにも自分では決められず江戸の勘定方にお伺いを立てなくてはならなかったそうです。現代で言うノンキャリア末端官僚ですから幕臣とはいえお目見え(将軍に目通り出来る)以下の御家人クラスです。大したことないんですな。布衣(ほい)を許される(いわゆる宮廷装束のようなアレ)と官職名(なんとかの守)がつくことも可能になり江戸城でも様々な行事に参加できるようになるので、みな必死にそれを目指し、運が良ければ旗本となることができ、そのあたりが代官の上がりということのようです。代官とは幕領の徴税官に過ぎず、転勤をしながら、よい部下を持つことと彼らを管理することが仕事の第一であり、バカな部下を持つと全部自分に跳ね返ってきて後始末に苦労します。現代もそうですけど。

「代官の日常生活」西沢敦男、講談社メチエ選書
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

生命保険

2005-01-09 | 雑誌
 スマトラ沖地震の津波では未曾有の被害が出ていて最終的にどれくらいの犠牲者の総数になるのかはわからない状態。亡くなった方々の冥福をお祈りします。
 亡くなられた方には申し訳ないけれど,人が死ぬと生命保険が支払われる。今回は海外旅行中ということで多くの方が保険の対象になると思われるけれど,問題は受取人というのが今週の週刊新潮の話題。夫が死ねば法定相続人は妻,妻が死ねば夫が相続人。または子ども。両方が死ぬとその親兄弟などが相続人に名乗り上がるけれど,一緒に行動していれば「同時死亡」と認定されるけれど,別行動をしていたらその時どちらが先に死んだかによって相続人が変わるのだそうである。もし数秒でも早く夫が死ねば夫側の親類縁者に,逆なら妻側にということでこの辺りの確定が大変だそう。額によっては骨肉の争いも起きうるわけだ。一緒に波にのまれてどちらが数秒先に死んだかを誰が判定するのだろうか。

週刊新潮 1月13日号
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京少年

2005-01-07 | 雑誌
 出版社のPR誌は毎月発行されている書籍の案内が大部分だけれど,連載ものもあったりして安価な割りに(年間900円位)読ませてくれる。買う前に内容をざっと把握できて参考になる部分も多いものだ。この新潮社の「波」には小林信彦の「東京少年」という自伝的連載小説があって,今月は第20回,雪深い新潟は高田(現上越市)での話。戦争直後で列車の運行もままならない時期,闇商人達で超満員の列車で通学する著者(中学生)は,客車に乗りきれず蒸気機関車そのもののそでにしがみついたり先頭部にかじりついたりする。蒸気機関車って火釜のかたまりだから運転室以外熱くて触れないのかと思っていたけれど,けっこう乗れるんだと思った。そういえば途上国でのそういう写真を見たような記憶もある。
 他には山本博文のお殿様の出世という連載も面白い。

「東京少年」小林信彦 新潮社・波
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

災害とアウトドア

2005-01-05 | 雑誌
 去年は夏の水害,中越地震と国内での災害が相次いだだけでなく,止めにスマトラ沖地震と来て「災害は忘れた頃にやってくる」どころか「続けてやって来る」という状態です。自分が当事者にならないとなかなかこの災害に対する事前の対処というのは,ついしないままになってしまいます。しかし,この災害にあったときはまさに究極のアウトドアを強いられるわけで,その時にキャンプなどの経験をしてきているかというのはかなり違うと聞きます。勿論,ふつうのアウトドアなんて長くても3泊4日のテント生活みたいなものですから,1ヶ月も2ヶ月もというのでは違うかもしれませんが,でも運良くテントとか寝袋,マット,ストーブ,ランプなどを持ち出せたとしたら,狭い車で脚を曲げて寝るという苦痛からは解放されます。燃費は悪くなることは承知で(環境問題を考えればこれはこれで考え物ですが)キャンプ道具を一式車に積んでおくというのも,一つの手だと思われます。ビーパルでもこのあたりの特集をしています。
 今年もどこかで地震災害の一つや二つはあるでしょう。日本に住んでいる宿命です。キャンプブームも一段落したようですが,アウトドアの経験はしておくに越したことはないのではと思っています。

「ビーパル 1月号」小学館
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする