活字日記

毎日読んだ活字系(雑誌、本、新聞、冊子)を可能な限りレポートします。

堤清二語る

2005-05-31 | 雑誌
 コクド・西武鉄道のモンダイはここのところちょっとマスコミ紙面から薄くなっていますがどうなっているんでしょうね。清二氏は文学者として生き、経営にタッチする存念は無いと言い切っています。セゾングループ総帥だった清二氏は異母弟義明氏との確執が昔から伝えてられていましたが、この時期雑誌インタビューを通じて現在の心境を語っています。
 今の西武鉄道は銀行がどうやって自分に都合の良いように食いちぎろうとしているかという所を、堤兄弟達が株主名義の問題からその方法に異議を申し立てているところですが、清二氏としては父康次郎の後を次いでからの義明氏が殿様として君臨してきた経歴を振り返って、この逆風を乗り切っていけるのか心配しています(セゾン時代に銀行から裏切られた体験が下地になっている)。
 江戸時代、老中に昇進していく譜代大名はその過程で奏者番を経験させられ、徹底的に(将軍の前で粗相をしないように)自らのお殿様気分を改めさせられたそうです。義明氏が取り巻きの中でのみ経営者として生きてきたことを清二氏は心配しています。どうなるのでしょうか。

「西武と日本を憂う」堤清二 日経ビジネス5/30
 
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草軽電鉄

2005-05-30 | その他
 その昔、今のJR軽井沢駅前から浅間山を横目に見ながらとことこと北軽井沢の高原を抜け、嬬恋を経由して草津温泉まで通じる電車(!)が走っていたというを知っている人は「鉄ちゃん」か旅行好きの人(それももう還暦間近以降の方々)でしょうね。
 鉄道と言ってもナローゲージという小振りな軽便鉄道だったのですが、L型のデザインの電気機関車が貨車、客車を2両位引っ張っていたんですが、トンネルを避けて等高線沿いに線路をひいたので景色はとても良かったとか。時速も30キロ位だったようです。
 何回か映画の舞台にもなったり小説にも登場しています。国鉄が渋川から長野原まで伸びてきてからは乗客が取られて廃線(昭和37年)の憂き目にあったのですが、会社は今でも草軽交通として軽井沢・草津間の路線バスを持っています。北軽井沢駅舎は現存していて長野原町が保存活用し残そうとしてるらしいです。
 現代だからこそ、この草軽電鉄に乗って4時間近くかけて雄大な北浅間を眺めながら旅ができたらと思います(でも冬に乗ろうと思う人はいないでしょうねぇ)。

「草軽のどかな日々」RM LIBLARY 53 ネコ・パブリッシング
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日本文学史

2005-05-27 | 新書
 なんか高校時代の現代国語をやっているみたいな内容だけれど、ふだんは純文学なんてほとんど読まないものだから(芥川賞よりも直木賞の方が好き)でも一応日本の文学の流れぐらいは知っておいて損はないなと思って読んだ本。近代以降の文学史なんで江戸末期頃がスタート。新書くらいにまとまっていると流れがちょうどよく現代にたどり着けるのがいいです。ただ70年代で終わっているから最近の吉本ばななとか村上龍、村上春樹などにはふれられていませんが。中に触れられている作家は一部を除いて活字から消えている人も多くて(あるのかもしれないけれど)一時代は築いたもののもう歴史の中に埋もれようとしていますね。

「日本文学史」奥野健男 中公新書
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向精神薬依存

2005-05-24 | 雑誌
 うつ病が当たり前の病名となって(気分障害とか感情障害という言い方もする)、またアメリカでハッピードラッグという抗うつ剤SSRIが普通の飲まれるようになって、日本でも近種の薬が用いられるようになり、向精神薬に対するアレルギーが減って来ました。昔は精神科の門をくぐるというのはかなりのハードルがあったのですが、うつ病を心の風邪という言い方をするようになって気軽に行くべきだという環境にもなってきました。最近は抗うつ薬治験広告が新聞の全面広告となるようになりました。
 かつて精神科の薬は依存症になるから危ないという情報が多く、また医者も少なめな投与をしがちでそのために苦しむ患者も多いことが事実。辛いときには積極的な投薬が望ましいというのが現代の主流だそうですが、かといって一部の精神科医とかカウンセラーは最近良く聞くPTSDとかトラウマとかいう言葉を無造作に患者にレッテル張りして、投薬を行い依存症を作り出しかえって苦しませることあるらしいのです。
 正しい投薬を受ければ治るものも、その辺りの判断は難しいところのようです。ようはいかに依存症にならないさじ加減で苦痛を取るかということなのですが、能力のある精神科医と巡り会うということが答えになってしまうのでしょうか。

「精神医療は向精神薬依存を作っているか」矢幡洋 草思6月号
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徳川将軍のカルテ

2005-05-23 | 新書
 徳川歴代の将軍は小説では色々と書かれていますが、小説は大なり小なり作者の思い入れがあるので脚色がかっているのは当然で、では実際の将軍はどうだったのかというのを体調面から追ったのがこの本。特に意外だったのが歴代将軍の体格です。徳川歴代将軍の墓は実は学術的に発掘されて体格などが調べられているのだそうで、また三河の菩提寺には実際の身長大に作られた位牌が安置されており、この二つのデータは概ね差が無いことがわかっているそうです。ということで歴代将軍は150センチ台の身長だったとか。奥さんは140センチ大でいずれも江戸時代の男女平均身長位ということらしいです。八代吉宗が大きい人だったと(津本陽の小説などで)いわれていますが、実は平均身長くらい。ただ一人五代綱吉が128センチしかなく、小人症だったらしいのです。強烈なマザコンとこの貧弱な体格が後半生の性格を歪めて生類哀れみの令とか浅野内匠頭の刃傷での判断の過ちへとつながったらしく、大石内蔵助も仇討ち先をどうやら間違ったらしいのです。
 将軍達の死に様はインフルエンザとはしか、そして脚気に苦しんだようです。特に脚気は食生活だけで改善される病気なので十四代家定などの若すぎる死は可哀想という感じです。

「徳川将軍家十五代のカルテ」篠田達明 新潮新書
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植草甚一の散歩誌

2005-05-20 | 単行本
 最近植草甚一スクラップブックが復刊され書店に出回るようになりました。この本はそれとは別系統の単行本ですが、懐かしくて手に取りました。JJじいさんとも呼ばれ、ある世代から上の人は懐かしく思うでしょうねぇ。70年代を象徴する文化人というか教祖的エッセイストでした。宝島の前身を創った人です。とにかく散歩が好きで必ず本屋により新刊だろうが古本だろうが本を買わずにはいられない。それも一冊二冊ではないのです。ニューヨークに長期滞在をして古本を漁りまくります。毎日20冊30冊を買いまくるのです。そしてニューヨークを歩き尽くし映画を観て蚤の市を漁ります。その精力には頭が下がります。もうその時は60歳を過ぎていたのだから。そんなに買った本をいつ読んだのでしょう。
 この本の最後のエッセイは亡くなる直前の入院時のもの。肺活量が落ちてタバコも満足に吸えなくなり、火をつけたタバコの煙が髭の廻りをふわふわ漂っているなんて哀しい状態になっても、その文面からは可笑しさがにじみ出ます。散歩が好きということで自分の体力には自信があったのかも知れませんが71歳の死はちょっと早かったかなと思われました。

「植草甚一の散歩誌」植草甚一 晶文社
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堪忍箱

2005-05-19 | 文庫
 大好きな宮部みゆきの江戸もの。ミステリタッチの人情話短編集である。どれも面白かったけれど、「お墓の下まで」「砂田新田」が印象深かった。それにしても(宮部に限らず)作家とはどうしてこうストーリーが思いつくのか(但し売れるレベルのもの)と思う。自分が作家になってというのは本好きなら一度は思うものだと思うけれど、仮にストーリーができてもそれを文章にするというのが第二関門。だからマンガのように考える人と作業する人に別れるというのもありなんだと思う。それを独りでこなすのが普通の作家だから七転八倒して作品を創るというのもわかるなぁ。モーツアルトは後から後から泉のごとくメロディーが浮かんできたのであんなに膨大な作品を短時間に創れたのだけれど、多作の作家も後から後からストーリーが浮かんでくるのだろうかしら。

「堪忍箱」宮部みゆき、新潮文庫
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鉄理論

2005-05-18 | 新書
 恐ろしく硬い題名です。鉄が我々人類に、いや地球上の生物に、いかに有用でかつ利益をもたらしてきたかを鉄の様々な特徴をベースに解説しています。万物は元素でできているわけですが、鉄はもっとも安定元素であって、水素を元に活動を始めた太陽をはじめとする星々も鉄を作って生涯を終えるわけです。その鉄には他の金属元素にはない特徴があって、その特徴が故に生命が育まれたというのです。さらに地球がまさに鉄惑星だということも生物にとってこれしかないという偶然なのだそうです。先日読んだ「広い宇宙に地球人しかみあたらない50の理由」のなかで実に数々の幸運が地球に(知的)生命を育んだ検証をしていますが、鉄の存在や化学的特徴までは触れていませんでした。鉄が豊富にあると言う事実もこの本に付け加えた方がいいかもしれません。
 そして、鉄は地球温暖化防止の切り札になるというのです。酸化鉄の状態で粉末を南極海に撒くと、植物プランクトンがそれを元に大量発生し(これがそもそも生物発生の起源と同じ理屈に依っている)、炭素を同定し沈降するというのです。そして数百年は海洋中に蓄えられるということです。実験が進んでいて効果は認められていといいいますが、あんまりニュースでは聞きませんよね。
 世の中はリサイクルブームですが、鉄はリサイクルしやすい物質ですけどリサイクルを続けると取りきれない銅が溜まってきて良い鉄ができなくなるのだそうです。その時のそういう鉄を撒くと言う考え方があるそうです(銅も生物必須元素)。
 鉄の持っている歴史と可能性について勉強させて頂きました。へぇが多かった本です。

「鉄理論=地球と生命の奇跡」矢田浩 講談社現代新書
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研ぎ師太吉

2005-05-16 | 雑誌
 出版社のPR雑誌っていうのはもちろんそこで発売している新刊についてのPRがその雑誌の存在理由であるわけですけど、読者を楽しませる為にけっこうな連載がされています。山本一力の研ぎ師太吉という小説も今月が4回目。これがまだ序盤なのに面白いのです。次月が楽しみであります。これ以外に楽しみにしている連載もあって年間千円の購読料を払っても(1冊百円しない)元が取れる雑誌であります(そう作ってあるのかとも思われる)。

「研ぎ師太吉」山本一力 波6月号 新潮社
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エナメルキッド

2005-05-13 | 雑誌
 クラシックミステリ短編特集ということでミステリマガジンを買ってみました。こういう雑誌を買うといろんな形式の小説を読めて気分転換にはいいもんです。裕福な夫を持った二人の婦人が暇に任せて仮面舞踏会に出かけて散々な目に遭う話や、めちゃくちゃ悪徳警官の顛末の話などミステリというよりもハードボイルド的でしたが、ESガードナーのエナメルキッドの話は一番面白かったですね。ガードナーはペリー・メイスンシリーズで超有名で(自分は読んだことがないのですが)、この話はちょっと肩の力を抜いた面白話というところでしょうか。バットマンのような設定で、普段は裕福な男が実は裏の世界で正義の味方をやっているわけです。その時にエナメルの仮面と靴などを身につけているのでエナメルキッドというのですが、このマンガチックな設定がアメリカ的ですよね。
 ミステリマガジンの兄弟誌にSFマガジンがあって中学生のとき購読していたことがありました。本屋にはこのSFマガジンのそばにSMマガジンも置いてあって、知らないで手に取るとはっきり言ってHな雑誌ですから本屋で堂々とするのははばかられるわけです。知らない大人はSFとSMの区別がなくて(SFの地位が相当低かった)、SFマガジンは不良の読む雑誌だと思っていた人もいたようです。SFマガジンも苦労したのではないでしょうか。

「ミステリマガジン 6月号」早川書房
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