いよいよ大晦日です。なんだかんだと忙しく活字に触れる時間はありませんでした。家族は紅白を見ていますが、こちらは早めに年越しそばを食べて就寝です。明日は初日の出ランであります。
今日から休んで10連休という人もいて、通勤電車もいつもより空いていましたし、成田などは出国ラッシュでしたが、多くの会社は今日が仕事納めですね。
疫病と世界史を読み終えました。歴史の中心は人ですが、人のみによって歴史が動くのではなく、気候と疫病が人を動かしていて、その結果歴史が作られているといえます。今学校で学んでいる歴史は、トータルの時間が少ないと言う面もありますが、気候と疫病の観点はほとんど触れられていませんね。事実としてそういうことがあった(ペスト禍や小氷期など)ということが出て来るだけで、歴史の背景を作っていることは教えてくれません。疫病と世界史はこういう観点から歴史を見た本で、なかなか有益でした。
「疫病と世界史 文庫版下巻」ウィリアム・H・マクニール 中公文庫
中世のヨーロッパを襲ったペスト禍は当時の人口の3分の1を失わせたことで有名ですが、ペストはヨーロッパの専売特許かというとそうではなく、そもそもペストは中国の奥地雲南省あたりが原生地だったらしいです。地下に巣穴を掘るネズミ族を宿主とするバクテリアですが、漢民族が北方から南下してきてこれをもらい(原住民はそれなりにペストと付き合ってきたのですが、それを無視した漢民族によって)、モンゴル族が一気にアジア大陸を運んで草原地帯をペストの住み家としたのだそうです。ヨーロッパへはトルコの方から船でイタリアに渡って広まったのですが、いっぽう中国でもペスト禍によって当時1億人いた人口が5千万人ほどになったそうです。そのおかげで元の支配が衰えて明に取って代わられたと著者は読んでいます。病原体はどちらかと言えば風土病的に世界に分散していたのですが、人の行き来が多くなり、都市化が進むことで伝搬が進んだということなのですね。モンゴル族は陸路でペストを世界中に広めましたが、スペインは船で天然痘とはしかを新大陸に運びました。これによって中南米のインディオは人口が10分の1になってしまいました。コルテスもピサロも極悪人扱いされることが多いですが、なんにもなければ彼らは勝つわけはなかったわけで、病魔が彼らの援軍だったわけです。何しろ神(アステカ神)と神(キリスト)の戦いではアステカを信奉するほうは死んでしまうのですから、キリストこそが神であるという論理がまかり通ってしまうわけですね。中南米がカソリック国家が多いのは天然痘とはしかのおかげです。疫病と世界史を引き続き読んでいます。
100円で買った報道写真家を読み終えましたが、100円でとっても知的好奇心が満足できました。著者はフリーランスの写真家として一貫してきました。水俣病、光州事件の頃の韓国、ベトナム戦争をこの本で取り上げていますが、水俣病は自らを報道写真家として位置づけるための最初の取材でした。後に有名な写真家ユージン・スミスも水俣を取材し同じ頃同じ被写体を撮っていますが、著者はまだ力量がなかった時代で、ライバルとして見るよりも、先輩として身の引き締まる思いで接したようです。報道写真家といえば戦場を駈けるイメージが合って、沢田教一、一ノ瀬泰造とも現場で仕事をしましたが、二人とも戦場で命を落としました。著者は自ら臆病だから、弾丸が飛び交うところではなく、銃後の写真を撮ってきたと言っています。しかし、それもまた我々が見たい世界です。23年前の本ですがこういう本は残って欲しいですね。
そして予定通り疫病と世界史下巻に突入です。
「報道写真家」桑原史成 岩波新書
疫病と世界史(文庫版)上巻を読み終えました。230Pほどの本ですが、改行も少なく図説もないのでびっしりと読みましたという感じです。普通学んできた世界史(歴史)は著名なリーダーが国盗り合戦をした結果というものでしたが、例えばローマ帝国が衰亡していく流れは、蛮族の進入とキリスト教の広まりなどが理由としてあがり、ローマ人の物語などもそういう筋で語られていますが、この本では帝国周辺で天然痘やはしか、腺ペストが流行って農業生産人口が減った結果、軍隊に給料を払えなくなったからという流れを示しています。帝国創世時はまだ天然痘はインド方面にあったのですが、帝国の広まりと人口の増大によって天然痘が広まる契機が作られたということだそうです。メソポタミアでは文明が大きく進歩しましたが、同じ緯度にあって大河のほとりのガンジス文明は、多湿な熱帯気候が様々な病気をはらんでいたので、人口が増えなかったことで大きな進歩を遂げられなかったという見方も示しています。それは東南アジアや中国南部も同じですね。もちろんアフリカも。なるほど、疾病は実は世界史の主役であったということです。
昼間時間をつぶす必要があって、JAZZを聴きながら読み切ったので、近くの古本屋で100円で買った新書、報道写真家というのに手をつけてしまいました。明日は新幹線に乗らなくてはならないので、これを読んでから下巻を読もうかと計画しております。
「疫病と世界史」ウィリアム・H・マクニール 中公文庫
ビックコミックではかつての名作Master Kyeton(マスターキートン)のリバイバルを隔月くらいで掲載しています。これは名作で、最初は89年の連載でした。当時のものを立派な装丁で再発売していますが、全20巻を買うと2万円もしてしまうので、当時の版をまとめて(大人)買いしました。こちらは4千円くらいですみました。ストーリーはおもしろいし、考古学と格闘術、戦闘術が同時に出て来るのでいけてます。(最近のものと違って)マンガにしては台詞が多いので本を読むようです。今日は2冊ほど読みました。