活字日記

毎日読んだ活字系(雑誌、本、新聞、冊子)を可能な限りレポートします。

【7月31日】

2006-07-31 | 単行本
 著者の石川英輔氏は江戸ものの本を何冊も書かれいます。エネルギー事情とか食べ物事情とか教科書のような歴史書には書かれていない、ある意味時代考証的な本が多く、時代劇などを見る時に参考になります。この本もその延長にあるのですが、江戸時代と現代を比較して我々の生活がいかに無駄なエネルギー生産の上に成り立っているかと論旨を展開します。現代日本人の一日あたりの使用エネルギー(個人だけでなく生産とか社会基盤維持とかすべてのエネルギー)が10万キロカロリー。江戸時代のそれは0キロカロリー。エネルギーの消費が幸せな生活に結びついているのかという疑問がこの本の主題でもあります。明るい夜、豊富な物資、涼しい部屋暖かい部屋などが文明国家の尺度のように思っているところがあります。蛍光灯とロウソクを読んだ時も明るすぎる現代への疑問が提示されていましたがそのあたり、現代文明を見直すことが必要かもしれません。
 では江戸時代の人たちがエネルギー消費のほとんど無いことで不自由で不幸せだったかというとそうではけっしてなく、彼らは人生を十分に楽しんでいたと言えるのだと思います。ただ、一時日本を支配した左翼的歴史観では江戸時代は貧しく遅れた国だったという見方があって、歴史の授業でもそうだったような記憶があります。
 かといって、今の生活水準を江戸時代にあわせろなどというのは暴論で、また終戦直後の日本が1万キロカロリーだそうでそのレベルでも相当きつい。実は昭和45年頃が5万キロカロリーだったそうです。パソコンとケータイと大画面テレビが無いくらいで、普通の生活は今と変わらなかった記憶があります。まだ、野にも山にも自然が残り海岸には砂があった時代です。それでいて半分もエネルギー消費が少なかった。1970年に戻ればいいんですな。今の若者も1ヶ月もすれば慣れるでしょう。ケータイなんて無くたって全然困らないんですから。

「江戸と現代0と10万キロカロリーの世界」石川英輔 講談社
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【7月30日】 | トップ | 【8月1日】 »

コメントを投稿

単行本」カテゴリの最新記事