川路聖謨の一代記を読み終えました。幕末は幕府が家柄などに構わず有能な人材を登用して異国来襲に対応していきました。川路聖謨もまさにその一人で、田舎の代官所小吏の家柄出身でありながら最終的には勘定奉行の筆頭という現代なら財務事務次官という官僚トップにまで上り詰めました。逆に言えば幕閣はそこまで人材に対して柔軟だったわけです。日露和親条約、日米通商条約などに関わり、ディアナ号遭難事件にも出くわしながら、難局を乗り越えました。徳川慶喜が江戸城を出て上野の山に蟄居したのをみて、(中風で半身不随となった身でありながら)切腹と銃による自殺を遂げました。いわば日本史を動かしたというよりも日本史が動くのを陰で支えたという人物でした。幕末をこの観点で読むというのも面白かったです。久しぶりの吉村昭の歴史小説でした。
「新装版 落日の宴 勘定奉行川路聖謨 下巻」吉村昭 講談社文庫電子版