金田一耕助、七つの仮面(他6編)を読了。樋口一葉と比べてスカスカ読めますね。昭和35年頃の作品が主ですが、半裸の女性死体とかけっこうエロティックな殺人があるのは時代性でしょうか。金田一耕助の鮮やかな推理というよりも、何となく事件が解決してしまったという作品が多かった気がします。その中では薔薇の別荘が耕助らしい推理ものだったと思います。
「七つの仮面」横溝正史 角川e文庫
Amazonからメールがあって、KindleUnlimitedの案内で、去年金田一耕助の無料バージョンを全部読んだのですが、Unlimitedになったもの3冊を紹介していました。ので、これを読むリストに入れて早速読んでいます。事件ファイル14の7つの仮面という文庫。頃は昭和35年頃で、発表した媒体がそうだったからだと思いますが、女性死体が半裸だったり、割り方エロな描写が多いですね。
樋口一葉は家長として樋口家を支えるために、困窮の中から文學で食べようと志しました。そういう理由で始めた文學ですから、当初はいいものが無かったのですが、多くの人と交わるうちに文學の才能を開花させます。大つごもりで大きく認められて、明治28年を中心とする1年は奇跡の1年と言われ、たけくらべ・にごりえなどの代表作を怒涛のように生み出し、そして逝きました。25歳です。露伴や西鶴に影響を受けて、擬古文という文体で書かれているので、なかなかとっつきにくいのですが、まあ慣れるとそれなりに一葉の世界に入れます。全部で8編収納されていますが、どれもそれなりにおもしろく、十三夜、たけくらべが特に印象深い作品でした。
「にごりえ・たけくらべ」樋口一葉 新潮文庫
ちょっと医者に行った待ち時間潰しに、おとといの山行に持って行った小松左京短編集を読んで、読みかけだった長めの短編「神への長い道」を読みました。21世紀人が冷凍保存術で56世紀に目覚めます。35世紀(3500年)眠っていたわです。科学も当然進歩していて、恒星間飛行も実現していますが、物理法則はそれなりに守られていて、100光年先の惑星系に冷凍されて行って帰ってくると、地球は200年経っているわけで、浦島効果みたいなことが起きると言うのはSFとしてよくできていると思います。3500年経つと人類も進化していて、会話も通じません。21世紀語は古代語になっています。今のAIが3500年後に地球を、人類をどう変えているのか、この小説を読んで興味が絶えませんでした。
山行にいってきました。大月駅のすぐ近くにある岩殿山という低山をさらっと登ってきました。低山ですが礫岩でできた岩山で、中央高速道からもその岩壁が見えます。稚児落としというほうに縦走すると、ここから見る一枚岩はなかなか見もので低山とは思えません。手がかりがないのでフリークライミングも難しそう。大月まで片道3時間。今日は小松左京の短編集を持っていきました。今回の短編集は東浩紀編のものです。Kindleで読んでいるのでたいした大きさではありませんが、紙版はかなりの厚みで山行に持っていこうとは思いません。
今日の樋口一葉は十三夜とたけくらべです。十三夜とは陰暦13日のことで、嫁いだ先の嫁いびりに耐えかねて実家に戻った阿関(おせき)が訥々とその実情を訴えるものの、実父に今は帰ったほうがいいと諭されて人力車に乗って帰ろうとしますが、その車夫がかつての恋人。二人が別れた後の車夫の生き様を聞いて改めて胸に感情を持って別れる話です。たけくらべはまさに代表作ですね。幸田露伴、森鴎外の激賞を受けた作品です。吉原で育つ思春期の子供達の話です。このたけくらべでは最後に主人公の美登利がおきゃんな女の子から急に暗くなってしまいますが、(一葉は別にどうだと書いていないので)その理由をめぐって文学界を二分する話になっているそうです。かたや初潮があったから、かたや男と最初のことがあったからということで、まあどっちでもいいのですけどね。
久しぶりに昔の日本文学を読みたくなって、樋口一葉のにごりえを読んでみました。、だけで文をつないでいく昔の文体なので読みにくいところもあるのですが、これも味です。飲み屋の女給と貧困の夫婦の話です。女給「力」は通行人に寄ってけと客引きしますが、なんかこんな生活ってと絶望しています。貧困夫婦は2畳ちょっとの長屋住まい。夫源七が力の店に飲みに行くのですが、とにかく金がなく、酒もほどほどにしてほしいと女房に言われ、やがて離婚へとなります。源七は力に言い寄って断られ、力を殺し自分は切腹します。という話で、明治初期の底辺レベルの生活者の話となっています。
政治の最重要課題として少子高齢化対策がありますが、異次元の対策という首相の掛け声は全く上手くいきそうにありません。人口から読む日本歴史は日本の人口の21世紀を章立てしています。原本は1983年に、文庫版は2000年に出されましたが、そこに書かれていることは、人口停滞は文明システムの成熟化によるものだということです。しょうがないんですねこれは。そして性・年齢・障害・民族・国籍の差別をなくして(バリアフリー)寛容な社会を作ることだと提言しています。21世紀前半は新しい時代に適合的なシステムを模索する時期だといい、失敗を乗り越えて進む必要があるといいます。小手先の補助金政策で人口が増えるというものではないのです。選挙政策としては有効なのかもしれませんが。
「人口から読む日本歴史」鬼頭宏 講談社学術文庫
日本の人口は今1億人を切る方向に雪崩をうっていますが、1億人を超えたのはつい最近の昭和でした。では縄文時代はいかほどだったのか。縄文時代で最も温暖だった縄文中期は野山の木の実も豊富でお陰で人口も増え、20万人を超える位だったとか。特に東日本に人口が寄っていました。その後寒冷化して一気に人口は減ります。縄文晩期には10万人を切ってしまいます。弥生期に入って稲作の定着が始まると人口は持ち直し、60万人位になったそうです。
昨日は鎌倉の歴史を読みました。多く語られていませんが、治承・寿永内乱(源平合戦を歴史学的にはこういうのだそうです)では未曾有の飢饉が起きていました。多くの死者が京に溢れましたが、武士も兵糧集めに苦労して、源平共に戦いが1年ほど中断したんですね。かように日本史は気候に大きく左右されてきました。日本史は人口から読むと通史と違った面がわかります。本棚の奥にあった人口から読む日本史に取り掛かっています。