雑誌「正論」を買うと最初に読むのが「折節の記」である。
5ページにわたり歴史や諸外国の事情など私の知らないことがぎっしりと詰まっている。
ずっと無記名のコラムだったのが、今回この記事を書くので4月号を読み直そうとして
「高山正之」との筆者名があることに気付いた。
前回購入した2月号までは無記名なのを確認した。
さて4月号の「折節の記」でドイツのポーランド支配の過酷さを知った。
その部分を転載する。
ーーーここからーーー
ドイツ人は先の戦争で我々は優秀なゲルマン民族だと言った。言うのは勝手だ。支那人だって偉大な漢民族だと言っているくらいだ。
ただそれをよその民族に強制するのはもはや犯罪だ。ポーランドに侵攻すると「劣等なお前達に学問は要らない」と決めた。数は500まで数えられればいい。文字も自分の名を書ければいい。だから小学校4年で終わりにさせた。
ポーランドは19世紀、ロシアが支配し、高等学問を禁じたが、それでもキュリー夫人は高校まで行けた。ロシアより傲慢だった。
その傲慢さで「劣ったユダヤ人は死んだ方がいい」とあのホロコーストをやった。
ーーーここまでーーー
私がポーランドを意識するようになったのは、
ロシア革命後の混乱の中、シベリアの地で苦境に陥っていたポーランド人の孤児たち765人を、
大正9年(1920)と、大正11年(1922)の2回にわたって日本が救出したエピソードを知ってからだ。
詳細は
こちらを是非読んで欲しい。
ただ、ポーランドを支配したのは主に帝政ロシアとソ連で
ナチスドイツに関してはユダヤ人迫害くらいしか知らずにいた。
折節の記を読んですぐにネットで調べ、驚いた。
300万人の非ユダヤ系ポーランド人が、第二次世界大戦の渦中で命を落としたというのだ。
ポーランド人に対するナチスの犯罪から転載する。
1939年にポーランドに侵攻したドイツ軍は
「ドイツ人に対する抵抗の気勢を示したりあるいは抵抗すると疑われた民間人をその社会的地位によって逮捕殺害した。何万人もの裕福な地主、聖職者、(公務員、教師、医師、歯科医師、ジャーナリストなどの)知識層はポーランド人であるかユダヤ人であるかに関わらず大量虐殺行為によって殺害されたか、刑務所や強制収容所に送られた。」
「ポーランドは終戦までに、医師の45%、裁判官・弁護士の57%、教師の15%、大学教授の40%、高級技師の50%、初級・中級技師の30%、聖職者の18%を失ったとされている。」
「ポーランド文化を破壊するため、ドイツ人はポーランドの大学、学校、博物館、図書館、科学研究所を閉鎖した。ポーランドの国家的英雄の像が何百体も破壊された。教育を受けたポーランド人が今後現れて来ないようにするために、ドイツ当局はポーランド人の学校教育を児童教育の数年間だけに制限した。「この学校教育の目的は単に、500以下の数字を使った簡単な算術と、自分の名前を書くことと、ドイツ人に従うことは神から命令されたことなのだという教理を教えることだけであった。」と、ハインリヒ・ヒムラーは1940年の備忘録に記している。この備忘録の中でヒムラーは、全てのポーランド人を東方へ追放するのだと誓っている。」
「1939年から1945年までの期間に少なくとも150万人のポーランド人市民がドイツ第三帝国に連れて行かれ、殆どの場合本人の意思に関わらず労働を強制された。多くは十代の少年少女であった。」
ーーーここまで引用ーーー
ナチスドイツの人種差別対象はユダヤ人だけではなかったのだ。
知識階級を皆殺しにし教育の機会を奪い、文化を破壊する。
列強の植民地支配のやり口と全く同じだ。
白人が有色人種を差別し蔑視するように
同じヨーロッパの中でも他民族を見下し差別し絶滅まで目論む。
一般のドイツ人の多くが意識のベースでそれをよしとしていなかったら
いくらヒトラーのナチスに扇動されたってここまでにはならない。
ドイツ人はそのような自分達の価値観・精神性を自覚しているのだろうか?
内心は反省の必要もない当然のことだと思っているのだろうか?
いまさら言うまでもないことだが
日本は台湾や朝鮮半島の統治で、学校を作り教育を普及させて人材育成を図った。
いわゆる植民地支配とはこの時点で決定的に異なっている。
国や民族による価値観・精神性の違いはとんでもなく大きい(嘆息)。