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ダウンワード・パラダイス

「ニッポンって何?」を隠しテーマに、純文学やら物語やら、色んな本をせっせと読む。

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

2019-08-15 | 政治/社会



 

  名作アニメ『この世界の片隅に』が8月3日にNHKで放映されたせいもあってか、当ブログ内記事「なぜ日本はアメリカと戦争をしたか。」へのアクセスが多い。あの映画を見れば、そりゃ誰しもがこの疑問を抱くであろう。そこでたとえば、「日本 アメリカ 戦争 なぜ」でgoogle検索すると、当該記事がいちおうトップページに出てくるわけである(いちばん下ですが)。


 ぼくも例年、この時期は『きけ わだつみのこえ』(岩波文庫)をひもといて先の大戦を偲ぶんだけど、前々から、ぜひ一冊の本を紹介したいと思っていた。加藤陽子さんの『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』。初版は2009年に朝日出版社から出ており、こちらも在庫ありなのだが、2016年に新潮文庫にも入った。文庫だから、よりお求めやすい価格になっている。


 東大で日本の近現代史を教える加藤さんが20名ほどの中高生および教諭を相手に日清戦争から太平洋戦争の敗北までをレクチャーしたもので、講義録に手を入れた稿でありながら、第9回、2010年の小林秀雄賞を受賞している。それほどの名著だ。ぼくのあの記事は太平洋戦争(ぼく個人は「日米戦争」と言いたくて仕方ないんだけど)開戦前夜だけしか扱ってないが、こちらの本は、上に述べたとおり日清戦争から説き起こしている。日本の軍隊(関東軍)が大陸に陣取ってたことが最大の要因なんだから、とうぜん、ここから説き起こすのが本筋に決まってるのだ。


 前に別の記事でも引用したが、あの立花隆でさえ、
「日本人はいまこそ近現代史を学び直すべきときなのである。日本の教育制度の驚くべき欠陥のために、現代日本人の大半が、近現代史を知らないままに育ってきてしまっている。
 私にしても、いちおう人よりは歴史に通じているつもりだったが、これ(『天皇と東大』の元になった連載のこと)を書きながら、どれほど自分が近現代史を知らなかったかを思い知らされた。そして、近現代史を知らずに現代を語ることの危うさを思い知らされた。」
 と述べている。すでに鬱然たる大家と見なされるようになった後の言である。立花さんでもそんななんだから、ぼくらレベルは推して知るべしだ。

 「日本の教育制度の驚くべき欠陥」はまったくそうで、たんに近現代史をまともにやらないってだけじゃなく、そもそも「軍事」にまつわる事柄の一切を黙殺してるんだからどうしようもない。すずさんのダンナが軍法会議の書記官で、義父が海軍航空廠の技師だったことからもわかるように、当時のニッポンは、経済活動から庶民の生活すべてが「軍事」と不可分一体だったのである。だから軍事のことを知らないと、近代史がまるで見えてこないし、ひいては、いまの日本もわからないって話になる。


 昭和が終わって平成も終わって令和になってなお一向に文科省はそんな歪んだ教育システムを是正する様子もないし、ここはやはり、自分で勉強するしかない。テキストとして「この一冊」というなら、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』。たしかに粒ぞろいの優れた学生さんたちだけど、中高生がこの講義を理解できたんだから、私たちが尻込みしてたら情けないですよ。






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