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ダウンワード・パラダイス

「ニッポンって何?」を隠しテーマに、純文学やら物語やら、色んな本をせっせと読む。

ノーベル文学賞2024(24.10.20追記)

2024-10-11 | ハン・ガンさん関連
The Nobel Prize in Literature 2024


Han Kang
韓江
ハン・ガン

“for her intense poetic prose that confronts historical traumas and exposes the fragility of human life”

 「歴史のもたらす心の傷に立ち向かい、ひとの生命/生活の壊れやすさを剥き出しにするその強烈な詩的散文に対して」(私訳)

☆☆☆☆

 毎年この季節になると、ノーベル文学賞がらみで村上春樹さんの名が取り沙汰され、「候補者の中で何番めに有力」といって盛り上がるのが恒例行事になっている。今年は「3番め」とのことだった。
 しかし、ノーベル文学賞は本邦の芥川賞などと違って「候補者」を一切公表しておらず、こういった下馬評はすべて外野の憶測にすぎない。しかも日本のマスコミは自分の裁量で判断を下しているわけではなく、軒並み、イギリスの「ラドブロークス」というブックメーカーに依拠している。
 ラドブロークスさんのところが「3番め」だといっているから、みんなで口をそろえて「3番め」「3番め」といっているわけだ。
 ぼくはこの「ブックメーカー」をてっきり「出版社」と思っていたが、改めてこのたび調べて「公認の賭け屋」だと知り、「え?」と思った。
 つまり、「3番めに有力」とは、「3番めにオッズが高い」という意味なのだ。そのオッズがどうやって決められているかは、わからない。ひょっとしたら、何かしらとても深遠な文学的考察に基づいている……のかもしれない。とはいえ、ぼく個人の印象としては、けっこう野次馬的な興味で事が運ばれている気がする。そんなだから漏洩事件なんかが起こるんじゃないのか……。
 それにしても、「公認の賭け屋」なるビジネスが成立しているのがすごい。イギリス人の賭博好きはよく聞くけれど、スポーツならまだしも、ノーベル賞まで対象にするとは。高尚なんだか低俗なんだか。
 ラドブロークス社が過去にどんな予想を出して、それがどれくらい的を射ていたのか、そこまでは調べる時間がなかったが、あんまりそういうものに振り回されるのもどうだろうか、とは思う。
 その2024年のリスト(オッズ表)はネットで見られる。春樹さんのほか、日本の多和田葉子さん、中国の残雪(Can Xue)さんら、「アジア人女性作家」の名前もみえる。
 ただ、韓江(Han Kang)さんの名前はない。去年までのことは知らないが、今年にかんしては大外れである。
 じつはぼくは残雪さんかなと思っていた。「アジア人女性作家」という点だけは当たった。
 そうはいっても、ぼくは残雪さんをきちんと読んだことはなく、「名前を知っている」くらいだ。この方は1953(昭和28)年生まれで、90年代半ばにはもう活躍されていた。
 いっぽう、韓江(Han Kang)さんの名は今回の受賞で初めて知った。近年のノーベル文学賞に関しては、ボブ・ディランとカズオ・イシグロを除いて「ふーん。ああそうですか」という感じだったが、このニュースからは、新鮮な驚きを受けた。
 1970(昭和45)生まれだという。若い。「アジア人女性初」のみならず、「最年少記録ではないのか?」とも思ったが、wikiで歴代のリストを見たところ、アルベール・カミュが40代の前半で取っている。ほかにも、50代での受賞者は多くはないが、皆無ではない。
 ぼくはこのたび初めて名前を知ったのだから、とうぜん、ハン・ガンさん(ふつう日本ではこう表記するようだ)の作品を読んだことはない。でもネットを見ると、もう10年以上前から優れた日本語訳が出ており、少数ながら(だと思うのだが)熱烈なファンが国内にもいらっしゃるようだ。
 とりあえず、ざっと見たかぎりでは、こちらの書評がいちばん面白かった。




Ika.異化
独特な韓国人作家による一冊。『菜食主義者』📚by ハン・ガン
https://www.ika-ostranenie.com/post/%E7%8B%AC%E7%89%B9%E3%81%AA%E9%9F%93%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E4%BD%9C%E5%AE%B6%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E4%B8%80%E5%86%8A%E3%80%82%E3%80%8E%E8%8F%9C%E9%A3%9F%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E8%80%85%E3%80%8F-by-%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AC%E3%83%B3


荒野に向かって、吼えない…
『回復する人間』佐藤太郎(仮)



 このほか、「読書メーター」でも、ファンの方々による、おざなりでない熱いレビューがたくさん見られる。




 まだ作品を読んでいないので何とも言えないが、これらのレビューを拝読するかぎり、とても現代的で、生々しく、切実な文学らしい。国境を越えて共感を集めているようだ。ぼくも「ぜひ読んでみたい」と思った。ここ20年ほどの受賞作家のなかで初めてかもしれない。 
 大きな書店ではさっそくフェアをしているようだが、もともとが少部数の発行だろうから、都心でもなければ、なかなか入手しづらいだろう。ネット書店でも品切れだ。早晩重版がかかるはずだから、しばらく待ってみましょう。









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