ダウンワード・パラダイス

「ニッポンって何?」を隠しテーマに、純文学やら物語やら、色んな本をせっせと読む。

『女帝 エンペラー』 ラストで小剣(小刀)を投げた犯人は誰か?

2020-09-26 | 映画・マンガ・アニメ・ドラマ・音楽
 いまブログの整理をやっておりまして、これも以前に別のブログに掲載したものですが、よかったらお暇つぶしにどうぞ。映画の話です。この頃はまだ中国って国もそこまで危険じゃなかったですね……。

☆☆☆☆☆☆☆





  女帝 エンペラー。正しくは「エンプレス」ですが、これはあえてそんな邦題にしたそうです。
 2006年公開。中国と香港との合作映画。主演チャン・ツィイー。
 シェイクスピアの代表作『ハムレット』を、10世紀の「五代十国時代」を舞台に置き換えて翻案したアクション悲劇。
 いやアクション悲劇なんて言い回しは変だけど、ふつうの劇ならば役者の芝居で表現される内面のドラマや葛藤が、ド派手なアクションとしてビジュアル化されてるもんで、そう呼んでみたくなる。
 「あれではシェイクスピアが台無し」なんて評もあったようですが、「わずかでも隙を見せたら命がない。」という宮廷闘争の凄みが伝わってきて、ぼくは面白かったですね。いま思うとほとんどもうバトルファンタジー系アニメのようでもあった。
 チャン・ツィイーが主演だから、原作とは異なり、ハムレットではなく王妃ガートルードが話の中心となります。
 さてこの作品、ラストでそのチャン・ツィイー演じる婉(ワン)皇后の胸を、背後から飛来した小剣(小刀)が貫くというショッキングな結末を迎えるんだけど、はたしてその犯人は誰か、というのが公開当時に話題となった。
 ぼくも映画をみたあとアタマをひねり、ネットでも調べたんだけど、「女帝 エンペラー 映画 ラスト 犯人」で検索をかけても、なかなか上位に有意な記事がヒットしなくて、ちょっとイライラ。
 最近になって、ふと、そのことを思い出したんで、また紛れてしまわぬように、ここに書き留めておきます。
 皇后の側近のリン。どうやらこれが真相らしい。
 そもそもリンは新帝のスパイであった。
 つぶさに見返せば、劇中にヒントが散りばめられているそうな。
 なぜ新帝がワンの化粧の落としかたや、沐浴の順番を知っていたか。これはリンから聞いたわけですね。また、リンがワンに敵意をもっている表情を示すカットも、たびたび挿入されているとのこと。
 動機ですが、ワン皇后を殺めてもリンが権力の座につけるわけではないので、権勢欲とは無関係。
 愛憎がらみ。これが正解。リンはじつは新帝が好きだった。毒杯と知りつつ盃を仰いだ新帝の姿をみて、皇后に嫉妬を抱いたという次第。
 凄絶な権力闘争のお話が、最後には色恋沙汰で終わる、というところに皮肉がきいてるわけでしょう。