とりあえず一所懸命

鉄道の旅や季節の花、古い街並みなどを紹介するブログに変更しました。今までの映画や障害児教育にも触れられたらと思います。

一日幼稚園教諭体験②

2007-06-07 23:40:42 | コーでないと
 設定保育の時間になりました。今回ははさみと糊を使った造形のようです。「線の外を切ってください」という指示を出し、画用紙に描いたキャンディーの壺の絵を切り抜いて、色画用紙に貼る課題について口頭で説明がありました。糊とはさみと作業用の新聞を用意させました。ここで面白い現象を発見しました。子どもたちの何人かは新聞の広げ方がなかなか理解できていないようでした。Rくんは「これどうやってやるん?」と紙の大きさにこだわっていた。どうでもいいことだけど、みんなと同じでないと始められない子どもたちの特徴がよく出ていたと思います。

 指導者が「色画用紙の色はこれだけあります」と画用紙の色の説明をしてから、「どの色がいいですか?」と子どもたちに尋ねます。何人かの子は、自分の色を選んでいましたが、何度も手をあげている子どももいて、この発達段階の子には「○○がいい人?」の質問は難しいことがわかりました。

 「ここに置きます。並んで好きな色を取ってください。」と紙をまとめて机の上に置きました。一度に集中した子どもたちに「並んで!やり直し!」と一度抵抗を入れました。子どもたちはさっと並び替えました。色画用紙を前にして何枚かめくって好きな色を選んだ子もいましたが、上から順番に取っていく子も多く、置き方にもよるんだということがわかりました。

 Mちゃんは「ピンクがいい!」と強く主張していたのに、最後尾についていたためにピンクの紙はなくなっていました。Mちゃんは少し不満そうな顔をしていました。それを見ていた指導者が「同じピンクじゃないけどピンクを用意してあげるね」ともう1枚台紙を用意しました。どういう意図でこの子の要求にだけ応えたのか、少し疑問が残りましたが、Mちゃんは安心したような顔になったのでMちゃんにとってはいいことだったのだと思いました。

 課題は、それぞれ一所懸命やっていてなかなか面白いものがありました。長方形の中に描かれている壺をどうやって切ったらいいのか、最初のはさみはどこから入れるのか悩んでいる子どもが数名いました。はさみを使うのをじっと見ていたら、淵は切れているのに途中からスパッと壺の首のところにはさみを入れる子が目につきました。Yちゃんです。注意して見てほしいと言われていた3名のうちの一人です。それまでは、ほとんど目につかなくて、どの子かわからないくらいの存在でしたが、課題になってから、目につくことが多く見られました。

 課題が終わって、給食まで外遊びになりました。Sちゃんはずっと友だちと手をつないで過ごしています。非常に自然な状態に見えました。Yちゃんが皿を4枚並べて遊んでいたので側に寄って見ていると「あっち見て!」「友だち見て!」と違う方を指さします。「Mちゃん見たらダメなの?」と聞くと「うん!」と言って一人遊びを続けます。

 年長のHくんにも注意してほしいと連絡を受けました。Hくんは落ちている枝を7,8本持って、うろうろしていました。木ぎれにはこだわりがあるようでどんな時もしっかり握っていました。何をしているのかと聞くと、木ぎれを植木の穴にさしこんで「調べている」と言っていました。何を調べているかは答えてくれませんでした。4,5名のグループで行動していました。一人の子どもが「Hはたたかいをする人なんだから」と他の子に状況を説明していました。Hくんと直接他の子どもが関わるより、この子がHくんとの間に入って関係を作っているような気がしました。他の子がいろんな遊びをしている時に、枝をずっと離さず、一つの遊びにこだわることができるのは、少し注意が必要かもしれません。

 昼前に、他の作業のため集まっているお母さんと一緒に、トマトの支柱を立てることになりました。朝からとても人なつっこかったTくんが母親を見て態度が変わりました。作業を終えてから母親に対して、帰らずに別の教室に行くように指示をしています。他の母親は帰り始めたのに、どうしても帰らそうとせずに、階段の所に座って動こうとはしません。他の子どもたちはお弁当給食を楽しみにすでに教室で座っています。指導者が母親には帰るように言われて、さっとTくんを抱っこして連れて行こうとしました。Tくんは大泣きです。場面転換は必ず必要だけどこの後どう展開するのか、とても興味がありました。

 教室に連れて入っても泣きやみません。他の子どもたちは見慣れた光景のように耳をふさいで笑っています。

 Tくんはみんなが食べ始めるのになかなか切り換えることができません。「Tくん食べなくていいから用意だけして!」と指導者の声がします。Tくんはたじろぎながら、給食の用意をして席に着きます。「ぼやぼやしないで席に着いて!」と言ったらもっとこじれていたと思います。「無理に食べなくてもいいよ」と一旦は共感しながら、乗り越えられるハードルを次々に用意していくこの指導はすぐれた指導だと思いました。

 そのうち、他の友だちが弁当に入っていた高野豆腐の絵の話を始めました。「私はアンパンマン」「僕は食パンマン」「「Tくんのお弁当は何かな?食べないでもいいから開けて見てみよう」だんだんみんなの輪の中に入ってきます。時間はかかったけど、自分の力で立ち直って食べ始めました。発達的抵抗を乗り越えるいい場面を見せてもらった気がしました。
コメント
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