パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

絶体絶命

2011-01-27 17:35:00 | Weblog
  財布を落としてしまった。

 と気がついたのは西川口の部屋に戻り、一夜明けた朝だった。

 正直言って、現金は大して入っていなかったのだが、「身につけている金」は、それっきりだったので、たちまち「文無し」になってしまった。

 絶体絶命の大ピンチ。

 というのは、間の悪いことに、今月中に引き払う予定の上池袋のアパートにキャッシュカード等を置いてきてしまったので、そこにたどり着いて、そこから銀行に行くしかないのだ。

 ということは、西川口から上池袋まで歩いて行くしかない。

 西川口から新宿まで自転車で走ったことがあるが、1時間30分くらいかかった。

 「歩き」だと、上池袋なら新宿よりだいぶ近いが、まず、4時間はかかるだろう。

 少し前にテレビで見た元歌奴(現円歌かな?)の落語、「品川心中」を思い出した。

 下町住まいの本屋が品川の女郎に入れあげる話だが、「下町」というのは、だいたい台東区、墨田区あたりだ。

 つまり、台東区、墨田区界隈から品川までテクテク歩いて行ったわけだ。

 西川口と上池袋は、台東区、墨田区界隈と品川ほどは離れていない。

 西川口から川口までは歩いて20分くらい。(これは実際に歩いたことがある。)

 川口から赤羽までは荒川を隔てているだけだし、駅も一区間だけだ。

 赤羽から王子まで行けば、王子は明治通りのどん詰まりで、そこから上池袋は指呼の距離だが、赤羽から王子までがけっこうあるんだよなー、自転車で走った記憶では。

 それでも、「東区、墨田区界隈から品川まで」に比べれば、と我が身を奮い立たせて歩き始めたが、念のためと、昨夜、最後に立ち寄ったスーパーで聞いてみた。

 「財布の落としもの、届いていないでしょうか。昨日の夜8時半くらいです。」

 というと、「お名前は?」と言われ、「ウシオダです」と答えると、「ありますよ」と言う。

 監視カメラに、レジでポケットからぽろりと落ちている様子が映っていて、同じ服装なので同じ方だとわかりますということで、あっさり、戻ってきた。

 バンジャーイ。

 いや本当に助かった。

 あのまま、上池袋までの徒歩を強行していたら、なにしろ「文無し」だから途中で飯も食えず、行き倒れになっていたかもしれない。

 しかし、なんで「落とした」ことに気づかなかったかというと、ウォークマンでエルビス・コステロを大音量で聞いていたからだ。

 少なくとも財布の出し入れをするレジ等ではイヤホンを外すなりしないと「ヤバい」。

 いや、何によらず、歩行中、大音量でウォークマン(あるいはケータイ)を聞くことはあぶないですよ、皆さん。

 と言いつつ、今日もアート・ブレイキーなんてうるさいジャズを聞きながら歩いてしまうのだが。