パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

平成の開国

2011-01-25 17:05:50 | Weblog
 日本の文化の「畸形性」が、日本人のマゾヒズムに由来するという直感を、本棚から見つけた本の次の一節を読んで、得た。

 「マゾヒズムは…満足体験の障害の結果起こるもので、この障害を克服するために行う永遠に不可能な試行である。それは、神経症の結果であり、原因ではない。マゾヒズムは、放出され得ない性的緊張の表現である。その直接の原因は、快不安、つまりオルガスム放出に対する恐れである。マゾヒズムは、もっとも深く恐れているものそのものを引き出そうとする試みである。それは、緊張からの快感的安堵であり、その安堵は破裂の過程として経験され、かつ恐れられる。」(W・ライヒ『オルガスムの機能』

 もっともこのようなマゾヒズムは、日本文化に限らず、あらゆる文化が本質として有しているわけで、そうであるが故に、「人間が人間であるために」という題目のもとに、それをドッカーン!とぶちやぶろう(それが、「オルガスム」だ)とするのが西洋なら、「マゾヒスティックな畸形性」を「美」と考える日本人は、それを「クール・ジャパン」とか言って、外貨獲得を政府主導でもくろんでいる。

 もちろん、外国にも「グロテスク」趣味の人は少なくないわけで、それなりの市場性があるのかもしれないが、もし仮にそうだとして、今現在、日本の輸出入は、依然として大幅に輸出の方が多いわけで、「クール・ジャパン」の成功は、それがさらに増えるということであり、したがって更なる「円高」を招くはずなんだけどねえ。

 この辺、マスコミ、とくに「クール・ジャパン」力を入れているらしいNHKはどう考えているのか。

 円高を利用して、海外に進出せよとか言っている人、マスコミがあったが、海外に出た企業が雇うのはその土地の人、つまり、「進出」の恩恵を蒙るのは、外国人なんだけどねえ。

 一方、円高だったら輸入品はもっともっと安くなるはずなんだが、マスコミは、それを「デフレの進展」と考えているのか、「安くせよ」なんて意見は全くなし。

 ひと月ほど前、JRの駅のエレベーターの前に立った瞬間の出来事である。

 エレベータの扉は、開いたままだが、これから閉まって出発するのか、または着いた瞬間で、これから中の人は降りようとしているのか、「一瞬」だが、わからなかった。

 キャリーバッグをもった人と目が合った。

 その人は、東洋人だったが、日本人とは少し違う感じがした。

 しかし、日本人かもしれない。

 要するに私は、このキャリーバッグをもった人が、降りようとしてい瞬間なのか、乗り込んだ瞬間なのか、中国人なのか、韓国人なのか、それとも日本人なのかについての判断を迫られたのが、「中の人」は、私の逡巡を察したのか、目で、乗るように促した。

 エレベーターは出発するところであり、「中の人」がどこの国の人なのかについては、わからなかったのだが、日本人同士ということがはっきりわかっていたら、こうした「コミュニケーション」はあり得なかっただろうと思う。

 いったい何を言いたいかというと、菅首相は「平成の開国」を叫んでいるようだが、主眼はどうも、そうしないと輸出が増えないと考えているようなのだが、そうではなく、人も物もどんどん輸入せよ、と言いたいのだ。

 それこそが、円高メリットの有効活用ではないのか。