パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

まじめが一番?

2010-05-10 21:53:09 | Weblog
 古本屋で道元の「正法眼蔵…」を立ち読みする。

 なんか、嫌な感じがした。

 「バカになればいいんだ」みたいな。

 隣に、世阿弥の「風姿花伝」があって、立ち読みしたら大変清々しく、50円で購入。

 「経験した人でないとわからないが、その日の舞台をぱっと見て、あ、今日はうまくいくなと感じることがある」とか。

 「数万人の群衆が今や遅しと待ちかねている空気を見計らって、ドンと足を踏み鳴らして舞台に出る、って気持ちいー!」

 てな調子だ。

 「数万人」って、たしかにそう書いてあったのだが、本当にそうだったら、ちょっとすごい。

 当時の最高権力者、たとえば秀吉が見物に来るということを皆知っていて、それで秀吉を見に来る人も含めて「数万人」になってしまうのかも。



 その後、テレビで、「鶴瓶の家族万歳」みたいなのを見ると、中年の夫婦が出ていて、その奥さんが、「夫は実にまじめでこつこつやってきたのでおかげさまで」みたいなことを言い、隣の「夫」も、「まじめが一番です」と言っていた。

 道元の思想がいかに深く日本人の心に浸透しているかを感じ、鬱々とする。

 この夫婦がそうだとは決して思わないが、「まじめ」っていうのは、「まじめでないからダメ」という理屈につながると、怖いことになる。

 世阿弥の『風姿花伝』の隣に、辰野隆(隆で「ゆたか」と読むのだそうだ。初めて知った)の『フランス革命夜話』という文庫があり、面白そうだったので一緒に50円で購入したところ、めちゃくちゃ面白い。

 読んだのは、まだロベスピエールだけだが、これがまた、「まじめ」だけが取り柄の平凡な男。

 って、そこまで話を大げさにすることはないが、「まじめにさえやってれば、うまく行く」と「まじめであれ」は、別のこと。

 なんだか、今の日本はこれをごっちゃにしている感じがする。