パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

目下には丁寧に

2010-05-12 15:25:49 | Weblog
 道元の言葉で、「あ、いいな」と思ったのは、「人にものを伝える時はたとえ相手が7歳の童子でも礼をつくさなければならない」という箇所。

 昭和の初め頃、ある小説家が自作のなかで、学校の先生が自宅を訪ねてきた教え子を迎える場面で、先生に「おあがんなさい」と言わせたところ、評論家(か、ほかの小説家)が、「目上のものが目下に敬語を使うのはおかしい」と文句を付け、ひとしきり論争がもちあがったらしいが、「おあがんなさい」は文法的には敬語ではなく、丁寧語だろうし、文法を云々しなくたって、上記の道元の言葉を知っていれば、自ずと回答は出るはず。

 大正デモクラシーを「小泉の規制改革」と比べるのはちょっと見当違いのところもあるかもしれないが、それに対する反動が「無知」を招いているところは、昭和初期は、今とよく似ているような気がする。