パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

『大阪府警潜入捜査官』

2008-12-29 18:03:28 | Weblog
 『大阪府警潜入捜査官』なんてのを見てしまった。

 珍しく冒頭近くから見たのだけれど、タイトルを見逃したので,最初、大友克洋の『ワールドアパートメントホラー』かと思い、今時奇特なテレビ局もあるものだなと思っていたら、見ているうちにちがうと気がついた。

 結構面白く、最後まで見てしまったけれど、その半分は,今時の日本映画の傾向を知りたいと思って見た。

 テレビで広告されている映画は、みんな「感動もの」だそうで、「よかったです」と言って涙を拭いている若い女性なんかがかり出されていて、とてもじゃないが見る気が起こらないのだ。

 たとえば、少し前の作品だが、『3丁目の夕陽』とやらのテレビCMを見ると、街全体がくすんでいるし、ミゼットの3輪トラックなんかも、表面にさびが出ている。

 そりゃあ、40年前の街なんだから、くすんでいて当たり前かもしれないが、しかし、40年前には「今」だったわけで、ミゼットも、ちゃんときれいだったはずだ。

 もちろん、レトロ感覚を煽るためにわざとやっているのだろうけれど、なんか、おかしい。

 この「おかしさ」を、『大阪府警――』でも感じた。

 というのは、時代設定が「現在」なのに、なんか雰囲気が古くて、「なるほど、今、世の中はこうなっているのか」という感想が出てこない。

 たとえば、暴力団に潜入した警官がなんとか言うスナックに逃げ込む。(そこのママが藤真利子なんだが、最初、誰だかわからず、ハイヒールのモモコかと思った。あの藤真利子さんが、とちょっとショック)

 その雰囲気がまるで70年代なのだ。

 といっても、私は酒を飲まないので、最近の「スナック」とやらがどういう雰囲気になっているのか全然わからない。もしかしたら、70年代で時が止まっている可能性もあるが,『大阪府警――』の雰囲気はそういう自然なものでもなく、極めて作り物めいている。

 要するに、『3丁目の夕陽』の昭和3,40年代のセットを、そのまま現代の街(大阪なんだそうだが、どうもそういう雰囲気は感じられなかった)に移行したような、ややこしい感じがする。

 覚せい剤が切れて、幻覚を起こす場面で畳の隙間からウジ虫が湧いて出てきたり、ああいうのは、私が小学校にの入る前か、1年生の夏の夜、近くの豪徳寺の墓場の脇の空き地でヒロポン防止の宣伝映画で見たのと同じ場面・感覚だ。

 いったいいつの話だ!という感じなんだが、でも、書いたように、結構面白いことは面白く、たとえば、普通の日本映画だと、怪我をして逃げ込んだスナックのママとほにゃららの関係になったりするのだろうが、それが全然なく、かといって、ストーリーに関係ないかというと、そうではなく極めて重要な役回りになっているところなんか感心したが、調べたらどうやらこの作品は、韓国映画の翻案らしい。

 今は、韓国映画の方が優れていることを端無くも露呈してしまった感があるが,それはそれで韓国映画に学ぶなら学べば良いのであって,そんな意味も含め、今の日本映画では、「最良」にはいるのではないかなあと思った。