パラドクスの小匣

南原四郎、こと潮田文のブログです。

ついに歯医者に……

2005-12-22 13:51:45 | Weblog
 三、四日前、冷えたピザをぐにゅっと力を入れて噛んだら、以前からちょっとおかしかったのだが、下前歯の一枚が変になって、歯茎が傷むようになった。手で顎を触ると、歯の根っこあたりが膨らんでいる。化膿しちゃったのだ。ブリッジや差し歯が数年前から外れてしまっていて、でも、歯医者に行くのは嫌で嫌で、ここまで引っ張ってきたのだが、あー、もう潮時かと、あっさり近所の歯医者に行った。
 診断によると、この前歯は実は虫歯で、虫食いが神経に及び、その神経が死んでしまっている。それが腐って炎症を起こしているのだそう。そして、何やら、前歯を裏側からごしごしこすりだした。「ずきずきしますか?」「いいえ、しません」。ごしごしごし……。
 作業が終わって、先生、「腐った神経と、膿みをかき出しました。抗生物質と痛み止めを出しますから、飲んでおいてください。ブリッジの作り直しは入れ歯でないと無理でしょう。差し歯の作り替えと合わせて、この前歯の治療が終わったらやります。全部で一ヵ月くらいかかります」と。
 歯医者の腕って、ピンからキリだそうで、キリにあたったらどうしようと不安だったのだが、この先生は、まあ慎重な先生のようでよかった。
 しかし、「入れ歯」かあ……まあ、ブリッジをつくった時も四本分ものブリッジを支えている歯は一本だけで、それこそ「橋を渡るような難工事」っぽくて、よくぞやったものだなあと思ったくらいだから、まあ、しょうがないかも。
 

 さて、もらった抗生物質を飲んでから数時間後、痛みも腫れもほとんどなくなった。私は幸いなことに、抗生物質がやたらによく効く体質なのだ。というか、ほとんど抗生物質を使ったことがないので、よく効くのだろう。覚えている限り、今回で三、四回目。もっとも、そうと知らされずに投与されていたこともあるかもしれないが、直近では、五、六年前、水虫をこじらせて抗生物質で助かった。医者には「昔だったら敗血症で危なかったぞ」と脅かされた。いや、脅しじゃない、真実でしょう。今回、あれほど嫌だった歯医者にすんなり行ったのも、この苦い体験があったため。

 翌日(今日)、薬を調合してもらった薬局に立ち寄り、痛みがすっかりなくなったのだが、抗生物質はもう飲まなくてもいいか、それとも与えられた分(三日分)飲み切った方がいいか、と聞いたら、黴菌が少しでも残っていると、またぶり返す恐れがあるので、飲み切っちゃってくださいと言われた。

 ところで、なんで歯医者が嫌いかと言うと、まあ、好きな人はいないと思うけれど、子供の頃に通った歯医者が、柔和で上品にしたようなおじいさんなのだが、そんな外見とは裏腹にあんまり腕がよくなく、痛い思いをした記憶があった。そんなところに、映画『マラソンマン』を見てしまった。
 「無事なのか!」と言いながら、ダスティン・ホフマンに迫るローレンス・オリビエの元ナチの極悪歯医者。
 「なんのことだ?」とホフマン。ホフマンはなにがなんだかわからない。
 「無事なのか?」と再度聞くオリビエ。
 「何いってんのかわかんないよ」とアンガールズのごとく、手足をバタバタさせるホフマン(イメージね、実際はイスに縛り付けられている)。
 「無事なのか!」とまたまたオリビエ。
 「ああ、無事だよ。いや、無事じゃないな~。あ~、無事かもォ」とアンガールズのように自棄を起こすホフマン(だからイメージね)。
 「これでも言わないか」と歯医者の七つ道具をかざして迫るオリビエ。ヒー。

 今から考えると、子供の頃にかかったその歯医者の先生、総研の内河所長にローレンス・オリビエをちびっと足して、二で割ったような感じだった。私の恐怖もむべなるかなである。