患者:呉某 23歳 男性
初診年月日:1994年5月10日
主訴:断続性浮腫1年
病歴:
ネフローゼ症候群歴1年、20日前、外感後に頭部顔面から全身性の高度な浮腫が出現、腹部膨隆、尿黄赤、尿少、24時間尿量400~500ml、フロセミド等の利尿剤効果不明確。
初診時所見:
頭部顔面から全身性の高度な浮腫、腹部膨隆、尿黄赤、尿少、24時間尿量400~500ml、口干口苦を伴う、脈沈滑、舌苔厚膩。
中医弁証:脾胃湿熱壅盛、三焦熱壅滞の陽水
西医診断:ネフローゼ症候群
治法:発汗瀉下利尿、表裏内外分消
方薬:加味疏鑿飲子:
檳榔(行気利水消積殺虫)20g 商陸(苦寒/有毒 行水退腫、散結消腫)15g
茯苓(健脾利水滲湿)15g 大腹皮(下気寛中、行水消腫、止瀉)15g
椒目(温中燥湿)15g 赤小豆(利水消腫、解毒排膿)30g
秦艽(祛風湿、舒筋絡、退虚熱)15g 羌活(解表散寒、祛風勝湿、止痛)15g
木通15g 澤瀉15g 車前子15g 萹蓄(利水通淋)15g
二剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。
二診 1994年5月12日
2剤服用にて尿量増多、24時間尿量1000ml程度。継続前方とする。
方薬:加味疏鑿飲子:前方に同じ。
六剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。
三診 1994年5月18日
6剤服用にて24時間尿量は1500mlを越えた。浮腫は顕著に消退、その他の諸症減軽、ただ大便やや不爽あり、加味 大黄7.5g通腑泄熱、継続3剤
方薬:加味疏鑿飲子:前方に大黄7.5g加味
三剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。
四診 1994年5月21日
大便通暢、尿量24時間量2500mlを超えた。水腫は基本的に消退、尿色淡黄、舌苔転薄、尿蛋白+~2+、継続して益気養陰、清利湿熱治療3ヶ月、尿蛋白は転陰、臨床的に治癒した。
ドクター康仁の印象
1994年の症例で、前案より4年前ですね。前案では木通は腎毒性が注目されて除かれていましたが、本案では配伍されています。
疏鑿飲子の治療対象は感覚的に把握できましたか?
さて、四診の「継続して益気養陰、清利湿熱治療3ヶ月、尿蛋白は転陰」の記載は氏が一段落した後の蛋白尿の残存する患者を診て、気陰両虚、湿熱下注、あるいは湿熱内蘊と弁証した結果としての治法なのですね。
思い出しましたか?そうです、清心蓮子飲(参蓍茯車麦冬黄芩地骨石蓮子(さんぎぶくしゃ ばくとうおうごん じこつせきれんし)を思い出して下さい。果たして、本患者では柴胡が加味されたでしょうか。(腎病漢方治療247報)に再度戻ってご覧下さい。
本案も前案も治療結果は素晴らしいものでしたが、西洋医を納得させるにはデータが不足していることは否めませんね。
2014年1月28日(火)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます