患者:魏某 39歳男性
初診年月日:2002年5月18日
病歴:
患者の申告では、2001年3月より慢性腎炎を患い、尿蛋白(3+)、沈渣RBC 満視野/HP、中西薬治療を受けるが効果は不明確、腎生検を受けIgA腎病(中等度の増殖を伴う)、副腎皮質ステロイド、雷公藤治療を受け、尿蛋白(+)、血尿は好転しなかった。沈渣RBC50個以上/HP、時には減少し20~30個/HPになったが、再度増加、1年余反復出現。
症状:腰痛乏力、両下肢酸軟、舌淡紅、苔薄白、脈沈弱。
中医弁証:尿血(気虚不摂、腎虚失封蔵)
西医診断:IgA腎病(中等度増殖型)
治方:益気補腎 収斂固渋
方薬:益気補腎固摂合剤:
黄蓍30g 党参20g 熟地黄25g 亀板20g 女貞子20g 金桜子15g 烏梅炭(生津 渋腸 収斂止血)15g 龍骨20g 牡蠣20g 孩儿茶(清熱 生津 収斂止血)15g 赤石脂(渋腸止瀉、収斂止血)15g 五倍子(斂肺降火、固精縮尿、斂汗生津、固渋収斂止血)10g 茜草(涼血化瘀止血)20g 甘草15 石蓮子(益腎固渋 収斂止血)15g
水煎:毎日1剤、二回に分服。
付記)
石蓮子に関しては以前に
「ネフローゼ症候群の漢方治療 医案11 腎炎、腎不全の漢方治療139報
祝?予氏医案 脾腎両虚 水湿内停案」でご紹介していますので御一見下さい。
http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130606
雷公藤に関しては以前に何度もご紹介しました。以下は一部分です。御一見ください。
ネフローゼ症候群の漢方治療 医案14 腎炎、腎不全の漢方治療142報
張沛虬氏医案 陰虚陽亢 湿濁内停案
http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130609
慢性腎炎の漢方治療 第85報 紫斑病性腎炎の漢方治療 医案6
祝?矛氏医案 腎陰不足案
http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130329
慢性腎炎の漢方治療 第92報 紫斑病性腎炎の漢方治療 医案13
丁櫻氏医案 陰虚内熱兼血瘀案
http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20130406
二診 6月8日。
服薬14剤で血尿は明らかに好転、尿RBC10~20個/HP、原方を継続服用;三診での再検;尿RBC20~30個/HP、但しここ1年来血尿の程度は減少しているので、原方を継続服用するように言う。三ヶ月服薬80余剤で、尿RBC1~3個或いは3~5/HP、尿蛋白陰性、腰痛肢軟、全身乏力諸症皆除かれ、停薬し様子を見る。
2003年再診 尿検査転陰、再度の腎生検は行っていない。
ドクター康仁の印象
このような医案の方薬は、氏の経験方に近いものですが、参耆(人参、黄耆)を頭に、補腎陰の熟地黄、亀板、女貞子で補陰を強化、竜骨から石蓮子まで収斂止血が殆どですが、涼血化瘀止血の茜草がめだちますね。
2014年1月12日(日)