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ネフローゼ症候群 栝萋瞿麦丸(かろくばくがん)加減治療 張琪氏漢方治療1(腎病漢方治療250報)

2014-01-29 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

始めに栝萋(かろ)の読み方と、栝楼、瓜荽と記載されていることもありますのでご注意ください。張琪氏の医案では栝萋は天花粉を指していますので、栝萋根をすり潰して乾燥させたものになります。以前に要薬としてご紹介しましたので以下の記事をご参照ください。

要薬考 No6 栝萋或いは栝楼、天花粉と薤白

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121108

要薬 考 No7 天花粉の臨床

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121109

瞿麦(くばく)は利水通淋の作用が有りますが、活血作用もあるようです。活血利水通淋と覚えましょう。

栝萋瞿麦も薬性は共に寒ですが氏の栝萋瞿麦丸には附子(熱)が配伍されていますので、天花粉瞿麦附子甘草茯苓湯とそのまま覚えた方が、記憶が確かになります。

附子(大熱)は改めて説明する必要は無いと思いますが、記憶を整理するために、以前の記事をご参照ください。

要薬考 No8 附子 肉桂 連翹 藿香 佩蘭

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20121110

患者:呼某 38歳 女性

初診年月日:1999年10月3日

主訴:反復浮腫8年

病歴

ネフローゼ症候群歴8年、プレソニゾン、公藤?苷及び益気補腎清熱の中薬治療を受けたが全て無効。嘗てプレソニゾン、シクロフォスファミドの治療を受けるが、効果は不明確、難治性ネフローゼ症候群と診断されていた。

初診時所見

眼瞼及び双下肢の浮腫不消、口干咽痛、午後低熱37.8℃程度、尿少腰痛、畏寒面白、舌燥質紅、脈沈滑。尿蛋白3+~4+、尿RBC5~7/HP、血清総蛋白6.2/dL、アルブミン2.8/dL、グロブリン3.4/dL、総コレステロール、トリグリセリドは正常域の上限。

中医弁証:肺熱脾虚腎寒証

西医診断:ネフローゼ症候群

治法:清上温下利水

方薬:栝萋瞿麦丸:

天花粉(養胃生津 清肺熱 消腫排膿20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 附子15g 山薬20g 澤瀉20g 茯苓15g 麦門冬20g 知母(滋陰清熱潤燥)15g 桂枝15g 黄耆15g 甘草10g 山豆根20g 重楼30

14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

二診 19991017

体温は36.7℃に転じ、尿量増多、24時間2000ml程度に達し、浮腫は著明に減軽、尿蛋白2+~3+、方薬を変えず前方を継服。

方薬:栝萋瞿麦丸:前方に同じ

14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。

三診 199911

浮腫消退、口干咽痛大減、尿蛋白+~2+、この方薬を加減して50余剤、諸症は皆除かれ、尿蛋白マイナス~±、血清蛋白正常、かくして緩解した。

ドクター康仁の印象

さて「栝萋瞿麦丸」の原典は金匱要略で「消渇小便不利脈証併治編」であり、条文は「小便不利者、有水気、其人若渇、栝萋瞿麦丸主之」であり、原方は栝萋根瞿麦附子山薬茯苓の組成です。張琪氏は澤瀉20g 麦門冬20g 知母(滋陰清熱潤燥)15g 桂枝15g 黄耆15g 甘草10g 山豆根20g 重楼30gを加味しています

「張琪氏の栝萋瞿麦丸」の方薬組成は

天花粉(養胃生津 清肺熱 消腫排膿20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 附子15g 山薬20g 澤瀉20g 茯苓15g 麦門冬20g 知母(滋陰清熱潤燥)15g 桂枝15g 黄耆15g 甘草10gが基本となります。

重楼、?麦、山豆根の清熱解毒利湿利咽の手法は、氏の得意とするところです。氏の加味方は、陰虚内熱を意識した知母と麦門冬、澤瀉を加味した利水強化、桂枝を加味し、附子の温陽利水の効果を通陽利水で補助し、且つ、黄蓍で益気するという治療法になっているようです。

古典的な中医論で説明すると、反って理解しにくい組成です。以下は私流の解析ですから、もし不備があればコメントでご指摘いただきたく思います。

ステロイド治療を長く行っている症例では「陰虚証」が生じてきます。勿論、慢性病ですから耗気も生じます。つまり気陰両虚です。

口干、舌燥質紅は陰虚を示しています。そこで、栝萋、麦門冬、知母で養陰潤燥となります。舌苔の記載も欲しかったですね。

午後低熱37.8℃程度を陰虚火旺と判断すれば、なおのこと麦門冬、知母の配伍が納得できます。本案には便秘結がありません。37.8℃程度を気虚発熱と判断すれば、耗気からのものと考えて、黄蓍の加味も理解できます。

畏寒面色皓白で水腫となれば腎陽不足つまり腎寒証となるでしょう。そこで温腎補火の附子が配伍されてきます。しかし、蛋白尿、血尿の特に血尿は腎寒証ではありません。

口干咽痛の咽痛を実熱証、それも肺熱と直結すると考えれば、天花粉、山豆根、重楼の清肺熱清熱解毒利咽も納得がいくわけです。

患者を実際に診て見ないと、畏寒面白、舌燥質紅の色の程度が解りません。色は主観的なものだからです。

2014129日(水)