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ネフローゼ症候群 中満分消飲加減治療 張琪氏漢方治療1 (腎病漢方治療236報)

2014-01-15 00:15:00 | ネフローゼ症候群の漢方治療

患者:付某 33歳 男性

初診年月日20011114

主訴:反復浮腫発作三年余

病歴

患者はネフローゼ症候群を三年余患い、水腫消えたり出現したりした。尿蛋白+~2+、ここ2ヶ月感冒に因り水腫が加重し、腹膨大、高度な腹水、尿量は減少し一昼夜で100ml程度、かつて?塞米(フロセミド)にて尿量は僅かに増えたが、

停薬すると尿量は減少した。

初診時所見

五心煩熱、悪心嘔吐、口干舌燥、腹張が耐え難く、舌苔白膩、脈象弦滑。

中医弁証:脾湿胃熱、昇降失常、湿熱中阻、気滞水停

西医診断:ネフローゼ症候群

治法:健脾清胃熱、除湿利水分消法。

方薬:中満分消飲加減:

澤瀉25g 猪苓20g 茯苓20g 白朮20g 干晒人参15g 乾姜10g 黄芩10g 川黄連10g 檳榔(行気利水消積殺虫)20g 姜黄(破血行気 通経止痛)15g 砂仁15g 川厚朴20g 枳実15g 半夏15g 知母15g 甘草10g

七剤、水煎服用、毎日1剤、二回に分服

二診 20011121日。

24時間尿量は増加し3000mlに至った。悪心嘔吐消失、腹部は緊張がなくゆったりしており、方薬を守り7剤。

方薬:中満分消飲加減:

澤瀉25g 猪苓20g 茯苓20g 白朮20g 干晒人参15g 乾姜10g 黄芩10g 川黄連10g 檳榔(行気利水消積殺虫)20g 姜黄(破血行気 通経止痛)15g 砂仁15g 川厚朴20g 枳実15g 半夏15g 知母15g 甘草10g

七剤、水煎服用、毎日1剤、二回に分服

三診 20011128

24時間尿量は35004000mlに増加、腹張全消、食納好転、さらに半年の治療にて、尿蛋白±、余症は悉く除かれた。

ドクター康仁の印象

本案の中満分消飲加減は加檳榔、去る陳皮です。僅か2週間で腹水、浮腫、尿蛋白ともに改善した医案です。うまく行き過ぎた治療経過といっても過言ではないでしょう。以前、張琪氏は中満分消飲を腎不全に応用しました。以下の医案です。

慢性腎不全 張琪氏漢方治療18.補脾腎化湿、通腑瀉濁法治療 (腎病漢方治療218報)

http://blog.goo.ne.jp/doctorkojin/d/20131224

上の医案では、四診から配伍を開始しました。

中満分消飲(ちゅうまんぶんしょういん)(李東垣 蘭宝秘蔵)

原典の組成:厚朴15g 枳実15g 黄連10g 黄芩15g 半夏15g 陳皮15g 知母15g 澤瀉15g 茯苓10g 砂仁10g 乾姜10g 姜黄5g 人参10g 白朮15g 猪苓15g 生甘草10g功能:清熱 利湿 和中となりますが、上の医案では人参は除かれています。母も除かれていましたが、清熱潤燥の知母の作用は石斛で代用しているとも言えると説明申し上げました。

中満分消飲の方意は以下のようになります。

「方中、人参 白朮 茯苓 甘草の四君子湯は健脾除湿に作用し、乾姜 砂仁は温脾陽に作用し燥湿に働く、四苓(白朮 澤瀉 猪苓 茯苓)は淡滲利湿に、二陳湯(半夏 陳皮 茯苓 甘草)は化湿痰に作用し、湿濁を除き、昇清を回復させる。黄連 黄芩の苦寒を用いて胃熱を清し、痞満を除き、知母の滋陰は黄連と共同して清熱に作用し、熱が清され、濁陰が降りる。清昇濁降となれば張満は自ずと除かれる。脾胃不和はすなわち木乗土であり、枳実 厚朴 姜黄は平肝解鬱、行気散満に働く。これらは、「素問 陰陽応象大論」の「中満者、内に之を瀉す」を根拠とする分消法であり、辛熱を以って散じ、苦を以って瀉し、淡滲をもって利し、上下分消となる。」

このような難解な方意は一般の方々は無視していいのです。

簡単な覚え方:漢方を覚えたい学生と臨床医へ

上下分消中満分消君子苓、半陳二黄芩連二姜厚朴枳実砂仁知母です。上海時代の語呂合わせですが、人参 白朮 茯苓 甘草の四君子湯、四苓散(白朮 澤瀉 猪苓 茯苓)二陳湯(半夏 陳皮 茯苓 甘草)、二黄(黄芩 黄連)、二姜(乾姜 姜黄)厚朴 砂仁 枳実 知母です。ともかく覚えておいた方が便利です。

再度、「じょうげぶんしょう ちゅうまんぶんしょう しくんししれい、はんちんにおうごんれん にきょうこうぼくきじつ さにんちも」です。馬鹿げているとお思いになられるかもしれませんが、役にたつんです実際。方剤を丸暗記する中国語の本もありますが、日本人にとっては語呂合わせの方が向いているような気がします。要はどんな覚え方でもでもいいのです。寿司盛のようにイメージしてもいいし、火鍋に放り込む順番をイメージしてもいいのです。

本案の尿量の急激な大量の増加経過は、私の経験では急性腎不全回復期の印象があります。

ネフローゼ症候群の診断を疑うわけでは有りませんが、データに乏しいようです。

ご安心ください。明日も明後日もネフローゼ症候群の中満分消飲治療をご紹介するつもりです。

2014115日(水)