患者:張某 48歳 男性
初診年月日:2002年10月9日
主訴:反復性浮腫半年余
病歴:
ネフローゼ症候群病歴半年余、ステロイド、シクロフォスファミド、中薬補腎薬効果不十分。
初診時所見:
全身水腫、小便不利、口干咽痛、胸中煩熱、手心熱、腰痛畏寒、少腹痛喜按、大便溏、舌質紅少津、脈滑。尿蛋白3~4+、尿RBC5~7個/HP、Cre259μmol/L(2.93mg/dL)、BUN105mmol/L(630mg/dL:異常に高すぎますので10.5mmol/Lの誤植でしょう。63mg/dLでしょう。)
中医弁証:肺胃熱、脾腎虚寒、上熱下寒、寒熱錯雑証
西医診断:ネフローゼ症候群
治法:清上温下利水
方薬:栝萋瞿麦丸:
天花粉(養胃生津 清肺熱 消腫排膿)20g 瞿麦(活血利水通淋)20g 附子15g 山薬20g 澤瀉20g 茯苓15g 麦門冬20g 知母(滋陰清熱潤燥)15g 桂枝15g 黄耆15g 甘草10g 白朮30g 炮姜(乾姜を炮じて炭化したもの、温裏効果は乾姜に劣るが、温経止血作用がある)10g
(前案では清熱解毒利湿利咽の山豆根20g 重楼30gが加味されていましたが、本案では便溏、少腹痛を意識して健脾燥湿の白朮、温裏散寒の炮姜が加味されていますね。)
14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。
二診 2002年10月23日。
口干および下腹痛、便溏は均しく好転した、但し尿蛋白3+、尿RBC0~1個/HP、継服前方。
方薬:栝萋瞿麦丸:前方に同じ
14剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。
三診 2002年11月7日。
症状は顕著に好転、全身有力、舌潤、五心煩熱も軽減。前方を継続服用するように言う。
方薬:栝萋瞿麦丸:前方に同じ
60剤、水煎服用、毎日1剤、2回に分服。
四診 2003年1月7日
尿蛋白3回検査皆陰性、尿RBC(-)、Cre150μmol/L(1.69mg/dL)、BUN9.56mmol/L(57.4mg/dL)。この後、患者は上記基本方加減にてCre、BUNも皆下降し正常域に至った。追跡調査:病は癒えて職場に復帰5年余再発はない。
ドクター康仁の印象
2000年代にはいるとBUN、Cre値などが出現してきますね。栝萋瞿麦飲の方証は、全身水腫、口干咽燥、小便不利、胸中煩熱、手足心熱、腰痛畏寒の上熱下寒証ですが、便秘結ではなく便溏だということになりますね。
難しいですか?明日も栝萋瞿麦丸の症例を報告します。
2014年1月30日(木)