「エレクトリック・ギター革命史」

2018-09-22 17:05:47 | Music Life
ブラッド・トリンスキー、アラン・ディ・ペルナ「エレクトリック・ギター革命史」

ギターに関する本であればとりあえず読んでおこうと思っているので、今回も手に取ってみたわけだが、この本は原題に「Play It Loud」とあるように、ギターが大音量を獲得するためにどのような工夫がなされてきたかをたどるものであり、そうして生まれたエレクトリックギターの歴史を革命の歴史としてとらえ記述していくもの。

この革命の担い手には二つのタイプがある。一つは技術者であり、もう一つはギタリストである。
技術者といっても、もともとはギタリストであった場合も多いのだが、彼らはギターの音を大きくするために、ギターそのものを改良していった存在である。この本の前半はギターにコーンを仕込んだリゾネーターギターやピックアップを搭載することで弦の振動音を拾い、アンプによって増幅させるエレクトリックギターを開発した技術者の歴史が記述されている。ジョージ・ビーチャム、アドルフ・リッケンバッカー、レス・ポール、ポール・ビグスビー、レオ・フェンダーといった名前を挙げれば、自ずと開発の歴史が紡がれるというものだ。

この著者の立場なのか、一般的なものなのかはさておき、フェンダーのストラトキャスターとギブソンのレスポールの登場によって、エレクトリック・ギターはひとまずの完成を見る。そうだとしたら、それ以降の革命はギターを弾くギタリストが担っていくことになる。開発者の意図を超えて、まったく予想もされなかった使い方によって、エレクトリック・ギターのサウンドに革命が起こる。

ジミ・ヘンドリックスのアームの使い方を見てレオ・フェンダーが激怒したというのは有名な話であるが、ギターを弾くという行為がステージでのパフォーマンスとしてアクロバティックな要素を増していくようになるのが60年代後半くらいからのこと。ギターを破壊したり、背中に回して弾いたり、歯で弾いたり、火をつけたり。こうした革命を経て70年代後半になるとエドワード・ヴァン・ヘイレンが登場し、奏法自体に革命が起きる。そしてスティーヴ・ヴァイによるそうした奏法の発展形が示されて、ギタリスト側からの革命はひとまずの完成を見る。

それ以降の革命は既存のものの再利用であったり、組み合わせの妙を狙ったりだったりとオルタネイティヴなものとして出てくる。技術者の側からはポール・リード・スミスが登場し、ギタリストの側からはジャック・ホワイトやダン・オーバックのような存在が登場する。彼らはそれまでゴミのような扱いしか受けてこなかったようなギターやアンプを敢えて使うことで独自のサウンドを生み出した。

とまあ、大まかにいえば、こういった一連の流れが記述されているということなのだが、この本には目新しい事柄が盛り込まれているわけではないにせよ、その分厚い量を一気に読み終わらせる程度には面白い本になっているということはできるだろう。

さて、「だの研」的には、やはり指摘しておかなければならないことが一つある。それは、この本にはダンエレクトロのような後発メーカーによる「革命」の記述が欠けているということである。
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