ギターと木材をめぐって

2023-12-22 17:38:22 | Dano Column
現在発売中のギター・マガジン2024年1月号の特集は「エレキ・ギターと木材の話」である。それほど目新しい情報はないけれども、量的には充実した特集となっているし、さらに付録として、約50種類のトーンウッドを網羅的に掲載した「ギター用木材ハンドブック」もついてくる。

エレキ・ギターと木材の、その歴史をさかのぼれば、当然のことながらアコースティック・ギターがあり、中世・ルネサンス期のリュートやウードといった撥弦楽器にまで至るのだが、弦の振動を共鳴させる部分(棹や胴)に木材が使用されてきたことから、エレキ・ギターという、音を電気的に増幅させる機構を備えた楽器においても、木材がそのサウンドに与える影響については、果てしない探求と議論が続いているというのが現状だろう。そのため、ともすれば議論が過熱してしまうことがあり、ギターマニアの間では、木材の話になると場が「荒れる」と言われたりもするのだが、それゆえに今月のギター・マガジンが「売れる」のならば、それはそれでまことにめでたいことではあるまいか。

とはいえ、この特集においては、木材に関する様々なテーマについて、56個のQ&A形式で記事にしてはいるものの、センシティヴな内容にはなるべく踏み込まないように配慮されているようではある。

極端に言えば、エレキ・ギターを構成する一つ一つの材すべてがそのギターの出すサウンドに影響していると考えられるならば、アコースティック・ギターなどに比べればその影響は小さいかもしれないが、使われている木材が違えば音も違うはずだし、同じ木材でも部位が違う、いや、そもそも全く同一の木材などないわけだから、個体差はあるはずだ、同じギターでも温度や湿度、弾き込みや経年変化によって音も変わるはずだ、といったようにどんどん議論がひろがっていってしまう。そのような音の変化、違いが人間の耳によって識別できるものなのか、周波数などを計測しないとわからないものなのか、そもそも、その違いが音の良し悪しの判断に関与するほどのものなのかどうか。いずれにせよ、木材の違いによる音の違いをいったん語りだすと、そうそう簡単にはいかなくなってしまうのである。

その一方で、木材ではない素材を使用したギターというのも、エレキ・ギターの歴史には登場する。「Dano研」的にはどちらかといえばこちら側が本領となるわけだが、今回の特集でもそれらについては若干触れられている。これまでのエレキ・ギターの歴史においては、レゾグラスと呼ばれるFRP樹脂やアクリル、アルミニウムやカーボンなど、実に様々な素材が使われてきた。ここには、さほど遠くない未来に到来するだろう森林資源の枯渇を見越しながらの新素材の活用という側面があり、また、加工のしやすさや低コスト化を追求するといった側面もあったわけで、そのなかで、ダンエレクトロのギターについても記事の一つとして触れられているのだが、ダンエレクトロといえば、もちろんその素材はメゾナイトということになる。とはいえこれは木材チップを圧縮した材なので、木材といえば木材ということになってしまうため、新素材の話とは別枠での記事になったのだろうと思われる。



ダンエレクトロついでに蛇足を言えば、その最初期のモデルにおいてはネックの一部にアルミが使われていたことがあったし、また、通常の木材の使用ということで言えば、ネックにはポプラ、ボディにはパインが使用されていた。そして指板には今では希少材となったハカランダが使用されてもいた。このことからわかるように、ハカランダは、1950年代、60年代にあっては、通信販売で売られているような廉価なスチューデントモデルにも使用されるくらいありふれた木材だったのであり、そんなにありがたがらなくてもいいようなものだったのである。
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