勿忘草 ( わすれなぐさ )

「一生感動一生青春」相田みつをさんのことばを生きる証として・・・

丘の上の眼日記・その8

2009-03-15 21:17:13 | Weblog
 退院の朝を迎えた。
 午前6時前には目覚め、病室のカーテンからそっと覗くと、窓の外の白みかけた空は、日本晴れ。
抜けるような青空にゆっくりと昇る朝日が、新しい門出を祝福してくれているかのようだ。

 眼帯を外したときは、曇りガラスのように何も見えない真っ白な世界だった左目は、右目の快復を追い越してしまったかと思うほど。
 手術後のふたつの目で見る丘の上からの景観は鮮明で、総天然色からハイビジョンの世界に変わった。
院長が自信を持って言った「すぐに見えるようになります」の言葉は、嘘ではなかったのだ。
 陽が昇り、佐伯眼科クリニックを暖かな春の陽射しが包む頃、どこからか鶯の鳴き声が聞こえてきた。
受付でそのことを伝えると、今年の初鳴きだわ、と言って微笑んだ。

 快適な入院生活に別れを告げて帰った見慣れた東京は、今までとは全く違う世界に見える。その明るさ、色、何もかもが色鮮やかで眩しい。

 「人生観が変わる」と、入院中に誰かが言ったとき、「見る世界は変わるかも知れないが、人生観まで変わるとは思わない」、と豪語した僕だが、これは人生観が変わってもおかしくないと思えた。
 佐伯院長の言葉、“手術が終ってよく見えるようになったとき、真っ先に緑豊かなこの景色を見て、新たな希望と勇気を持って再出発して欲しい”がうなずける。