秋田なまはげ旅行
「泣く子はいねだが」と言って、鬼の面をつけ、蓑を被り、包丁を持って、突然、家に入ってきて、「泣く子はいねだが」と叫んで、その家の住人を威嚇する伝統行事が、秋田の、なまはげ、である。これは、年の暮に行われる。なんで、鬼が来るかというと、鬼は、怖い物のようなイメージがあるが、実は、鬼は福をもたらす存在なのである。節分の時、「鬼は外。福は内」と言って豆をまくが、あれは、実は、鬼は福をもたらしてくれる、ありがたい存在であり、「鬼を、家の中に入ってくれるよう、呼びよせるために豆を撒くのである。しかし、鬼は角が生えており、怖い風貌から、いつの間にか、怖い、悪い物という意味に変わってしまったのである。言葉の意味が変わったら、新しい意味の方を使わねばならなくなる。
△
順子と京子は、会社の同僚である。新卒で今年の春、入社したばかりで、新入社員の給料は、低い。二人は相性が良く、すぐに親しくなった。
「順子。今年の正月は、どうやって、過ごそうか」
京子が、隣りの席に座っている順子に聞いた。
「そうね。スキー場は、混んでるし・・・。初詣にでも、行かない?」
順子が答えた。
「でも初詣も混んでるわ」
京子が否定的な意見を述べた。
「あっ。順子。面白そうなツアーがあるわ」
パソコンを操作していた京子が言った。
「なあに。それ?」
「秋田なまはげ旅館。二泊三日。豪華な郷土料理。旅費、宿泊費、なまはげショー付き、合計一万円だって」
「へー。安いわね。そういえば秋田は、まだ行ったことがなかったわね」
「残りあとわずか、って書いてあるわ」
「じゃあ、それにしましょう」
順子が言った。
「決まり。じゃあ、すぐに予約するわね」
そう言って、京子は携帯で、その旅館に電話をかけた。
「もしもし。ネットの広告で見たんですけど。秋田なまはげ旅館でしょうか?」
「はい。そうです」
相手が答えた。
「二人で泊まりたいんですけど、よろしいでしょうか?」
「ああ。誠にすみません。一週間前に全部、予約が決まってしまいまして。申し訳ございません」
相手がペコペコ頭を下げながら、話しているような光景がイメージされた。
「そうですか。わかりました」
そう言って、京子は携帯を切った。
「あーあ。残念だったわね」
「いい所は、早く決まっちゃうのは、仕方がないわ」
「じゃあ、どこかいい所がないか、また探すわ」
そう言って京子は、パソコンで、また年末年始のツアーを検索し始めた。
その時。
トルルルルル。
京子の携帯電話が鳴った。
「あっ。もしもし。寸刻前に電話を掛けて下さった方ですか?」
「はい。そうです」
京子は、発信者番号通知で、かけたのである。
「幸い。今、二人連れの客からキャンセルが入りました。もし、よろしければ、お泊り出来ますが、いかがいたしましょうか?」
相手が言った。
「はい。それは、すごく嬉しいです」
京子は、隣りの順子を見た。
「順子。いいわね?」
京子は順子の意志を確かめた。
「うん。異議なし」
順子に異論はなかった。京子は、携帯に口を当て、
「はい。それでは、お願い致します」
と元気に言った。
「二名様でございましょうか?」
相手が聞いた。
「はい」
京子は元気よく答えた。
「では、お名前と電話番号をうかがっても、よろしいでしょうか?」
「はい。佐々木京子と吉田順子の二人です。今、私は、自分の携帯電話でかけているので、電話番号は、今、そちらに表示されている番号です」
「わかりました。では、お待ちしております」
「よろしくお願い致します」
そう言って京子は、電話を切った。
「やったね。順子」
京子はガッツポーズをつくって嬉しそうに順子を見た。
「よかったわね」
順子も嬉しそうにニコッと笑った。
こうして、二人の年末の行き先が決まった。
一月一日と二日の二泊の、秋田なまはげ旅館である。
△
二人は、それぞれ仕事にもどった。
「こら。仕事中に何を話しているんだ」
と課長に叱られた。
「ごめんなさい」
と言って京子と順子はペロリと舌を出した。
△
大晦日になり、いよいよ仕事納めとなった。
「今年の我が社の経営は、政府の円安誘導により、まずまずだったが、今後の見通しは、不透明だ。来年からは、人件費を抑えるために、中国や東南アジアに生産工場を作る予定だ。来年も、皆も気を入れて頑張ってくれ」
と課長が言った。が、入社一年目の新入社員にとっては、自分達とは関係ないことだった。
△
その日(大晦日)の仕事の後、二人は駅前の喫茶店に入った。
「はー。やっと、今年の仕事も終わったわね」
京子が、ホットココアを飲みながら言った。
「終わったといっても、休めるのは、正月の三日だけ。年が明けたら、また仕事だわ」
順子がホットレモンティーを一飲みして言った。
「ぜいたく言うもんじゃないわ。賃金の安い発展途上国の製造工場では、一日中、流れ作業じゃないの」
「そんなこと言ったら、途上国の人達に失礼じゃない。私たちは、まだ、恵まれている方だわ」
順子がホットレモンティーを啜りながら言った。
「でも、ヨーロッパでは、一ヶ月もサマーバカンスをとったりしているじゃない。どうして日本は、一ヶ月のサマーバカンスがとれないのかしら?」
「それは、プラザ合意によるバブル崩壊と不良債権と、リーマンショックの影響だからよ」
二人は、共に中堅私立大出で、それでも、京子は、120社、順子は、150社、回ったあげく、やっとのこと、この会社に内定がとれたのである。内定をとれるまでに、何度、自殺を本気で考えたことか。今の日本では、自殺も一つの就職先の選択肢の一つなのである。
特技といったら、順子がTOEIC=875で、京子は、美人で、日本語文章能力検定準二級だった。
「今夜はどう、過ごす?」
京子が聞いた。
「そうね。年越し蕎麦を食べながら、紅白歌合戦を見るんじゃないからしら」
「私も、そうだわ」
京子が相槌を打った。
△
「じゃあ、明日の10時に東京駅で会いましょう」
「ええ」
そう言って二人は別れた。レジは京子が払った。
二人は、その晩、それぞれ、家で年越し蕎麦を食べながら、紅白歌合戦を見た。
そして、それが終わり、「行く年、来る年」を見た。
△
年が明けて新年になった。
町は、コンビニ以外どこも、シャッターを閉めている。そして、「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します」と書かれている。車のナンバープレートに、注連飾りが取り付けられている車は少なく、それでも、10台に一台くらいは、注連飾りをした車もあった。初詣に行く人々も、たった三日の休みだが、どこか、仕事の荷が降りて、ほっとしているような、のほほんとした雰囲気である。
△
京子と順子は、東京駅の東北新幹線の中央口で、お互い相手を見つけた。京子が先に来ていた。京子は順子を見つけると、大きく手を振った。
「京子。待った?」
順子が聞いた。
「ううん。私も、ちょうど今、来たところ」
二人は、東北、上越、長野、新幹線の改札を通った。東北新幹線は、全て指定席である。スキーやスノーボードを持った人や、帰省と思しき人達が、所狭しと、待合室を占めていた。新幹線の発車時刻には、まだ20分ある。待合室のロビーの正面の電光掲示板では、最前の新幹線が発車する時刻と行き先と発車時間が示されていて、発車時間ちょうどになると、次の新幹線が繰り上げられて表示された。次発の新幹線が先発に変わって、それに乗る客が数名、立ち上がって、待合室から出ていった。
ちょうど二人隣り合った座席が空いたので、二人は、そこに座った。
「順子。何か飲む?」
京子が聞いた。
「じぇあ、粒入りのお汁粉」
京子は、立ち上がって自動販売機に行き、二つ缶を持って戻ってきた。
「はい」
京子は順子に、粒入りのお汁粉を渡した。
「ありがとう」
京子は、ホットレモンだった。順子が、財布をバッグから取り出そうとすると、京子が手を振って制した。
「いいわよ。たかが130円」
「ありがとう」
二人は、缶の詮をプシュッと開け、コクコクと飲んだ。
「寒い時に、暖かい所へ行くのも、いいけれど、雪国に行くのもいいわね」
「そうね。冬は雪が降って積もっていると、何だか、冬らしい楽しい気分になるからね」
「東京では、ホワイトクリスマスなんて見れないけれど、クリスマスに雪が降ってくれたらロマンチックな感覚になるものね」
「でも、東北の人にしてみれば、雪は嫌なものでしかないんじゃないかしら」
そんなことを話している内に、電光掲示板の一番上が、京子たちの乗る、秋田新幹線の表示になった。
「京子。行きましょう」
順子が言った。
「待って。新幹線は、車内清掃で、発車時間の5分前くらにならないと開かないから、まだ開いてないわよ」
と京子が制した。
時計を見ると、発車時間まで、あと10分あった。その間、二人は、じっと待合室にある時計を見守った。
発車時間の5分前になった。
「行きましょう」
二人は、立ち上がって、地下の待合室を出て、エスカレーターで、プラットホームに出た。
もう、秋田新幹線は、来ていた。ちょうど、車内清掃が終わって、客がゾロゾロと乗り込んでいる所だった。
秋田新幹線こまち号は、東北新幹線の前に連結されている。二つ、連結された新幹線は、岩手県の盛岡駅まで、連結されたまま、一緒に走って、盛岡駅で、切り離され、秋田新幹線は、西方の秋田に向かって走り、東北新幹線は、そのまま北上して、新青森へ行くのである。
途中の停車駅は、盛岡までは、上野、大宮、仙台、盛岡、の4駅で、盛岡駅で、後ろに連結されている東北新幹線が切り離されて、秋田新幹線こまち号だけとなり、秋田へ向かうのである。秋田新幹線は、雫石、田沢湖、角館、大曲、と止まって終点の秋田に着く。
仙台までは、雪は少なかったが、仙台を過ぎて、岩手県に入ると、窓外の景色は、一面、雪で覆われていた。
「うわー。すごい雪ね」
二人は、嬉しそうに叫んだ。
盛岡駅で、秋田行きの、こまち号と、新青森行きの、はやて号に、分かれ、秋田に向かうと、窓外の雪は、一層、積もっていた。
△
秋田新幹線が、終点の秋田駅に着いた。
「やっと、ついたわね」
「何だか、長かったわね」
二人は、それから、男鹿半島へ向かう男鹿線に乗り、約1時間で、終点の男鹿駅に着いた。男鹿線は、男鹿半島の右側に沿って走っている。
右手には、日本海があるが、沿線は住宅と防風林が視界を遮っており、車窓からは日本海が見えなかった。
男鹿駅では、二人を用意した旅館のバスが待っていた。回りは一面、雪で覆われている。
30位して、ようやく旅館に着いた。
「お客さんが、着きましたべ」
バスのザクザク雪を踏み鳴らす音で、わかったのだろう。旅館の主人が出て来た。頭の禿げた、かなり歳のいった、じいさんだった。
「こんにちは。初めまして。明けましておめでとうございます」
京子と順子は、笑顔で深々と頭を下げて挨拶した。
「よう来たべな。明けまして、おめでとうべな」
旅館の親爺も、嬉しそうに挨拶した。
△
二人は、親爺に案内されて部屋に入った。
「温泉があるべな。先に入るだがね。それとも、食事にするだがね?」
親爺が聞いた。
二人の腹がグーと鳴った。二人は、旅館での郷土料理を美味しく食べるために、新幹線の中でも、あえて駅弁を買わなかった。それでも、やはり長旅は、腹が減るので、ワゴンサービスが回って来た時、トッポを買って食べた。
「どうする?」
順子が京子に聞いた。
「そうね。まず温泉に入らない。寒くて仕方がないわ。温まってから、食事にしない?」
京子が、そう聞いた。
「そうね。そうしましょ」
順子が肯いた。
「そうかね。じゃ、案内するべ」
二人は部屋に入って、浴衣に着替えた。
そして親爺に案内されて、二人は、親爺の後についていった。
旅館から数分ほど歩いた所の、雑木林の中に露天風呂があった。
「ここは混浴じゃけんども、今日は、泊まり客は、あんたらしかおらん。安心して入りんしゃい」
そう言って旅館の親爺は、旅館に戻っていった。
△
「へー。京子。ここ。混浴だって。水着、持ってきた?」
「一応、着けてきたわ。でも、誰も来そうもないし、裸で入っちゃいましょう」
「そうね。ふふふ」
二人は顔を見合わせて、ふふふ、と笑った。
二人は浴衣を脱いだ。浴衣の下はビキニだった。
二人は、ビキニも、脱いで、全裸になった。そして、ドボンと温泉に入った。
なんやかんや言っても、女は結局、みんな露出趣味があるのである。女が露天風呂に行きたがるのは、温泉が好きなのと、もう一つ、男に見られるかもしれない、というスリルを味わいたいためである。
「はー。いい気持ち」
「一年の疲れが、スッキリとれるような感じね」
二人は温泉に浸かりながら、そんなことを言い合った。
その時である。雑木林の中でカサッと物音がした。
「誰。誰かいるの?」
京子が、雑木林の方に向かって言った。しかし返事は返って来ない。
「熊かしら。狸かしら。きっと、何かの動物よ」
順子が言った。
「ちょっと私、見てくるわ」
そう言って京子は、湯から上がると、バスタオルを体に巻いて、音のした方へ歩んだ。
すると一本の木の裏に、少年が縮こまっていた。小学生くらいの、男の子だった。
「ボク。何をしているの?」
京子が問いかけると、少年は、逃げようとした。京子は、少年の手をつかんで逃げれなくした。
「ははあ。覗きにきたのね」
京子は笑って言った。
「ち、違います」
少年は即座に反駁した。
「じゃあ、何をしにきたの?」
「あ、あの。温泉に入りに来たんです。でも、あなた達、二人が入っていたから、入るのを、ためらっていたんです」
「どうして私達がいると入れないの?」
「そ、それは。この温泉は、入浴料、500円、旅館の主人に払って、断らないといけないからです」
「子供は200円よ。そんなの、私が払ってあげるから、入りなさいよ」
そう言って京子は、少年の手を引いて、露天風呂に連れてきた。
「さあ。遠慮しないで、入りなさい」
ためらっている少年に京子は強気の口調で言った。
△
相手は女とはいえ、小学生の力では、大人の力にかなわない。
逃げられない、と少年は観念したのだろう。少年は服を脱ぎ出した。セーターを脱ぎ、厚手の上着とズボンを脱いで、パンツ一枚になった。ズボンを脱いだ時、ポケットから、小型の高性能デジカメがポロッと落ちた。京子は、それをサッと拾った。
調べると、それには、ここの露天風呂に浸かっている若い女の写真がたくさん、写されていた。
「うわー。すごーい。盗撮の常習犯なのね。秋田県警に連絡しなくちゃ」
「ち、違います」
少年は焦って反駁した。
「どう違うの?」
「そ、それは・・・つまり・・・その写真は・・・温泉に来た人の記念として、相手の同意を得て、写してあげたものなのです」
「それにしては、若い女のスナップ写真ばかりじゃない。普通、相手の同意を得た記念撮影の写真なら、カメラに向かってピースサインをしている写真なはずよ」
「そ、それは・・・つ、つまり・・・女の人に、どういう写真を撮って欲しいかと聞いたら、スナップ写真の方が芸術的で、スナップ写真を、お願いします、という返事ばかりだったからです」
「わかったわ。ともかく、温泉に入りなさいよ。そのために来たんでしょ」
そう言われても、少年は、パンツをなかなか脱げないで躊躇している。
しかし、京子が、さあ、早く入りなさいよ、と催促するものだから、少年も、ついに、観念したらしく、少年は、パンツを履いたまま、温泉に入ろうとした。
京子が、サッと少年の手をつかんだ。
「パンツを履いたまま、温泉に入る、なんて聞いたことないわ。パンツが濡れちゃうじゃない。さあ、パンツも脱ぎなさい」
京子が、少年の手をつかんで、言った。
「混浴風呂では、男はみんな裸よ。女は水着を着ることもあるけれど、私達は全裸よ」
少年は、パンツのゴムの縁に手をかけた。しかし、躊躇して、なかなか下げられない。
京子は、少年の後ろに回って、パンツの縁を、つかむと、グイと降ろした。
「ああっ」
少年は、あわててパンツを引き上げようとした。しかし京子は、素早く、パンツを足から抜きとってしまった。
少年の、石棒は、天狗の鼻のように、激しく怒張して、せせり立っていた。
「うわー。すごーい」
京子と順子は、それを見て、驚嘆の声をあげた。
少年は、見られる恥ずかしさから、のがれるように、急いで、湯に入った。
京子も湯に入った。
京子と順子は両方から少年を挟むように、少年の間近に寄ってきた。
少年は、茹で蛸のように、真っ赤になっている。
「やっぱり、普天風呂では、男と女が一緒に入るのがいいわね」
しばし、三人は、黙って、露天風呂の心地よさに浸っていた。
しかし、少年は、心地よかったか、どうかは、わからない。
少年は、真っ赤な顔で真正面を見ていた。
順子が二人から、離れて、二人の対岸に行き、振り返って、京子と少年の方を向いた。
「はあ。ちょっと、長く浸かっていたんで、湯疲れしちゃたわ」
そう言って、順子は、湯から上がって、湯の縁に腰かけた。
「温泉では、温まるのと、体を冷ますのを交互に繰り返して、交感神経と副交感神経の活動を切り替えるのが、自律神経を整えるのにいいのよ」
そう言って、京子も、湯から上がって、湯の縁に腰かけた。
少年は、目のやり場に困っている。目の前には全裸の順子が、縁に腰かけているし、後ろには、全裸の京子がいる。
「順子―。凄くセクシーでいいわ。温泉に来た記念として、写真を撮ってあけましょうか?」
「ええ。お願い」
順子は、立ち上がって、乳房と恥部を手で覆った。それは、ボッティチェリのビーナスの誕生のポーズだった。
「ボク。写真を撮りたいから、デジカメを借りてもいい?」
京子は少年に聞いた。
「は、はい」
カシャ。カシャ。
京子は、少年のデジカメで、順子の全裸の写真を、何枚も撮った。
「私も撮って」
そう言って、京子はデジカメを順子に渡し、順子に全裸の写真を何枚も撮ってもらった。
「ボク。旅の一期一会で、出会えたんだから、一緒に写真を撮りましょう」
そう言って京子は、少年の手をつかんだ。
「えっ。そんな。いいです」
「そう遠慮しないで」
そう言って、京子は、少年の手を引っ張った。
やむなく、少年は、湯からあがった。
少年の石棒は、天狗の鼻のように、ビンビンに反り上がっていた。
「すごーい。やっぱり盗撮魔だけあって、すごくスケベなのね」
京子は、立ち上がって、少年を後ろから、抱くようにした。京子は、少年の後ろから、少年と手をつないだ。少年の頭の上には、京子の豊満な、乳房が、乗っている、京子の恥部は、少年の体で隠されて、見えない。しかし、少年の、ビンビンに勃起した石棒は、丸見えである。
「さあ。順子。撮って―」
カシャ。カシャ。
少年は、ジタバタ抵抗したが、順子は、何枚も、写真を撮った。
「じゃあ、今度は、凌辱の図」
京子は、そう言って、座った。
「ボク。手で、アソコと胸を隠して」
京子は少年を後ろに座らせて、片手を京子の恥部に、片手を京子の胸に当てさせた。
「ふふ。これで、恥ずかしい所は、写らないわね」
「京子。凄いエロティックよ。何だか、京子が、少年に凌辱されているみたい」
そう言って順子は、何枚もそのポーズの写真を撮った。
少年は、ハアハアと、激しく興奮していた。
「ボク。精液がいっぱい、溜まっちゃってるでしょ。体内に溜まり過ぎた物は出さないと健康に悪いわよ」
京子が言った。
「さあ。横になって。体に溜まっている悪い物を出してあげるわ」
そう言って、京子は、順子の方を見た。
「順子―。こっちに来てー」
京子は、仰向けになっている少年の腹の上に、跨いでドッカと尻を乗せた。
少年は、身動きがとれない。
順子は、仰向けに寝た少年の両足を開いて、つかんだ。
京子は、少年のビンビンに勃起した、石棒を握って、ゆっくりと、しごき出した。
「ふふ。私の体を触ってもいいわよ」
京子に言われて、少年は、京子の白桃のような尻を触った。
京子は、しごく度合いを強めていった。
クチャクチャとカウパー腺の音がし出した。
「ああー。で、出る―」
そう叫ぶや、少年の亀頭から、勢いよく、白濁液が放射状に飛び出した。
「ふふ。気持ち良かったでしょ」
「は、はい」
「本当は、ボク。物凄くエッチなんでしょ」
「は、はい」
少年は、とうとう正直に告白した。
三人は、また風呂に入った。
「じゃあ、もう、そろそろ、私たち旅館にもどるわ」
「あ、有難うございました」
服を着ると、少年は、そう礼を言って、雑木林の中に去って行った。
△
「ふふふ。楽しかったわね」
「そうね。せっかく温泉旅館に来たんだから、このくらい面白いことが、ないとね」
「私。お腹ペコペコだわ」
「私もよ」
二人は旅館にもどった。
「いい湯でしたわ」
二人は旅館の親爺に、そう言って、旅館に入った。
「そうか。そりゃよがっだべな。食事をすぐ持ってぐけん」
親爺が言った。
トントン。
しばしして、戸がノックされた。
「どうぞ」
スーと戸が開いて、親爺が入って来た。
「食事を持ってきたべな」
そう言って親爺は、卓の上に、食事を並べだした。
秋田の郷土料理の、きりたんぽ、や、比内地鶏、の鍋物をメインに、小皿で、色々な山菜や、海鮮料理が、ボリュームたっぷりに、卓上に並べられた。
「うわー。美味しそー」
腹を減らして来ただけに、二人の腹がグーと鳴った。
「全部、食べても、まだ足りなかったら、言うべさ。料理は、ぎょうさん、あるけん」
親爺は、そう言って、出ていった。
「いただきまーす」
△
二人は、ハフハフ言いながら、料理を食べた。
「美味しいわね。順子」
「そうね。五臓六腑にしみわたる、みたいな感じだわ」
二人は、ボリュームたっぷりの料理を全部、食べた。
そして、デザートのアイスクリームを食べ、地酒を飲んだ。
「はー。食べた。食べた」
「美味しかったわね」
「何か、面白いことはないかしら?」
「また、露天風呂に行ってみる?」
「そうね。また、あの子が来るかもしれないし」
二人が、そんな、とりとめのない話をしている時だった。
突然、ノックもなく、部屋がガラリと勢いよく開いた。
恐ろしい鬼の面を被り、蓑を着て、木製の包丁を持った二人が、断りも無く、ズカズカと部屋に入ってきた。鬼たちは、
「泣く子はいねだが」
「泣き虫はいねだが」
と言いながら、京子と順子を、威嚇するように、四股を踏んだ。
「はー。吃驚した」
「なまはげ、って本当に、いきなり入ってくるものなのね」
「きっと、これは、旅館のサービスね」
京子と順子は、そう言い合った。
「でも、面白いわね」
「でも、幼児だったら、本当に泣いちゃうんじゃないかしら」
「でも、なんで、正月に、なまはげ、が来るのかしら?」
「それは、鬼は、厄払いの来訪神だからよ。鬼は、本当は、幸福を呼ぶ存在なのよ」
京子と順子は、立ち上がって、
「ふふふ。鬼さん。こちら。手のなる方へ」
と言って、笑いながら、手を叩きながら、キャッ、キャッ、と叫びながら、部屋の中を、逃げ回った。
鬼は、二人を追いかけて、二人を、それぞれ、部屋の隅に、追いつめた。
キャーと二人は、叫んだ。
一匹の鬼は、京子を捕まえると、京子の両手を背中に捩じ上げて、縄で手首を縛り上げた。順子を、追っていた鬼も、京子と同様、順子の両手を背中に捩じ上げて、縄で手首を縛り上げた。
二人は、後ろ手に縛られたまま、畳の上に正座させられた。
「ふふ。かなり、本格的なのね」
「ふふふ。かなり、際どいことをするのね」
二人の鬼は、それぞれ、京子と順子の縄尻をとると、背中を突いて、部屋から、連れ出した。
「ふふ。かなり、本格的なのね」
「でも、スリルがあって、面白いわ」
二人は旅館の外に、連れ出された。
旅館の外には、車が止めてあった。
二人の、なまはげ、は、京子と順子を車の後部座席に乗せると、自分達は、運転席に乗った。そして、エンジンをかけて、車を出した。
「あ、あの。これは、どういうことなのですか?」
「どこへ連れていくのですか?」
二人は、後ろ手に、縛られたまま、運転席と助手席の、なまはげ、に聞いた。
だが、なまはげ、は、何も答えない。
「きっと、どこかのレジャー施設に連れて行って、新年の御馳走をしてくれるのよ」
「秋田の、なまはげ、の行事って、かなり本格的なのね」
二人は、そう言い合った。
車は林の中を走っていった。
「あ、あの。どこへ連れていって下さるのですか?」
そう聞いても、なまはげ、は、何も喋らない。
もう、外は真っ暗である。
しばし走った後、車は、ある建物の前で止まった。
なまはけ、に、促されて、二人は降ろされた。二人は、その建物の裏手に入らされた。
「どういうことかしら」
「わ、わからないわ」
二人の、なまはげ、は京子と順子を、ある小さな部屋に入れた。そこは、小さな楽屋のような感じだった。その部屋の一面は大きなカーテンで仕切られていた。閉められたカーテンの隙間から、その先が見えた。
「ああっ」
二人は、驚いて叫んだ。
そこは、コウコウとスポットライトの点いた、小劇場のようなステージだった。ステージの前は、客席になっており、客達は、みな、なまはげの面を被っていた。それは、ちょうどストリップ劇場のようだった。
二人の、なまはげ、は、京子と順子の二人の縄尻をとりながら、背中をトンと押して、ステージの中央に引き出した。
「おおっ。すげえ美人」
客達は、一斉に叫んだ。
「こ、これは、どういうことなの?」
京子と順子は、彼女らの縄尻をとっている、なまはげに聞いた。
しかし、なまはげ、は、黙っている。
△
「やあ。みな様。本日は、ようこそ、お出で下さいました。秋田なまはげSMショーを、たっぷりと、お楽しみ下さい。本日のスターは、飛び切りの美女二人です」
と一人の男が言った。背広を着て、蝶ネクタイをしていることから、おそらく司会者なのだろう。
「順子。これは、なまはげ、の行事なんかじゃないわ」
「そ、そうだわ。これは本当の犯罪だわ」
「なまはげ、の、仮面をかぶって人を脅す行事を利用した、本当の犯罪だわ」
ここに至って、二人は、やっと事実に気づいて青ざめた。
「どうしよう。京子?」
「どうしようって、どうしようも出来ないわ」
「私たち、どうなってしまうのからしら?」
「わ、わからないわ」
二人は恐怖に引き攣った顔を見合わせた。
ステージの両脇に、もう二人の、なまはげ、が仁王立ちしていて、か弱い女の身では、逃げようもない。
「さあ。着てるもんさ。全部、脱ぐべ」
二人の縄尻を、とっている、二人の、なまはげ、が、言った。
そして、二人の後ろ手の縛めを解いた。
手が自由になったが、か弱い女の身では、逃げようがない。
△
「泣く子はいねだが」と言って、鬼の面をつけ、蓑を被り、包丁を持って、突然、家に入ってきて、「泣く子はいねだが」と叫んで、その家の住人を威嚇する伝統行事が、秋田の、なまはげ、である。これは、年の暮に行われる。なんで、鬼が来るかというと、鬼は、怖い物のようなイメージがあるが、実は、鬼は福をもたらす存在なのである。節分の時、「鬼は外。福は内」と言って豆をまくが、あれは、実は、鬼は福をもたらしてくれる、ありがたい存在であり、「鬼を、家の中に入ってくれるよう、呼びよせるために豆を撒くのである。しかし、鬼は角が生えており、怖い風貌から、いつの間にか、怖い、悪い物という意味に変わってしまったのである。言葉の意味が変わったら、新しい意味の方を使わねばならなくなる。
△
順子と京子は、会社の同僚である。新卒で今年の春、入社したばかりで、新入社員の給料は、低い。二人は相性が良く、すぐに親しくなった。
「順子。今年の正月は、どうやって、過ごそうか」
京子が、隣りの席に座っている順子に聞いた。
「そうね。スキー場は、混んでるし・・・。初詣にでも、行かない?」
順子が答えた。
「でも初詣も混んでるわ」
京子が否定的な意見を述べた。
「あっ。順子。面白そうなツアーがあるわ」
パソコンを操作していた京子が言った。
「なあに。それ?」
「秋田なまはげ旅館。二泊三日。豪華な郷土料理。旅費、宿泊費、なまはげショー付き、合計一万円だって」
「へー。安いわね。そういえば秋田は、まだ行ったことがなかったわね」
「残りあとわずか、って書いてあるわ」
「じゃあ、それにしましょう」
順子が言った。
「決まり。じゃあ、すぐに予約するわね」
そう言って、京子は携帯で、その旅館に電話をかけた。
「もしもし。ネットの広告で見たんですけど。秋田なまはげ旅館でしょうか?」
「はい。そうです」
相手が答えた。
「二人で泊まりたいんですけど、よろしいでしょうか?」
「ああ。誠にすみません。一週間前に全部、予約が決まってしまいまして。申し訳ございません」
相手がペコペコ頭を下げながら、話しているような光景がイメージされた。
「そうですか。わかりました」
そう言って、京子は携帯を切った。
「あーあ。残念だったわね」
「いい所は、早く決まっちゃうのは、仕方がないわ」
「じゃあ、どこかいい所がないか、また探すわ」
そう言って京子は、パソコンで、また年末年始のツアーを検索し始めた。
その時。
トルルルルル。
京子の携帯電話が鳴った。
「あっ。もしもし。寸刻前に電話を掛けて下さった方ですか?」
「はい。そうです」
京子は、発信者番号通知で、かけたのである。
「幸い。今、二人連れの客からキャンセルが入りました。もし、よろしければ、お泊り出来ますが、いかがいたしましょうか?」
相手が言った。
「はい。それは、すごく嬉しいです」
京子は、隣りの順子を見た。
「順子。いいわね?」
京子は順子の意志を確かめた。
「うん。異議なし」
順子に異論はなかった。京子は、携帯に口を当て、
「はい。それでは、お願い致します」
と元気に言った。
「二名様でございましょうか?」
相手が聞いた。
「はい」
京子は元気よく答えた。
「では、お名前と電話番号をうかがっても、よろしいでしょうか?」
「はい。佐々木京子と吉田順子の二人です。今、私は、自分の携帯電話でかけているので、電話番号は、今、そちらに表示されている番号です」
「わかりました。では、お待ちしております」
「よろしくお願い致します」
そう言って京子は、電話を切った。
「やったね。順子」
京子はガッツポーズをつくって嬉しそうに順子を見た。
「よかったわね」
順子も嬉しそうにニコッと笑った。
こうして、二人の年末の行き先が決まった。
一月一日と二日の二泊の、秋田なまはげ旅館である。
△
二人は、それぞれ仕事にもどった。
「こら。仕事中に何を話しているんだ」
と課長に叱られた。
「ごめんなさい」
と言って京子と順子はペロリと舌を出した。
△
大晦日になり、いよいよ仕事納めとなった。
「今年の我が社の経営は、政府の円安誘導により、まずまずだったが、今後の見通しは、不透明だ。来年からは、人件費を抑えるために、中国や東南アジアに生産工場を作る予定だ。来年も、皆も気を入れて頑張ってくれ」
と課長が言った。が、入社一年目の新入社員にとっては、自分達とは関係ないことだった。
△
その日(大晦日)の仕事の後、二人は駅前の喫茶店に入った。
「はー。やっと、今年の仕事も終わったわね」
京子が、ホットココアを飲みながら言った。
「終わったといっても、休めるのは、正月の三日だけ。年が明けたら、また仕事だわ」
順子がホットレモンティーを一飲みして言った。
「ぜいたく言うもんじゃないわ。賃金の安い発展途上国の製造工場では、一日中、流れ作業じゃないの」
「そんなこと言ったら、途上国の人達に失礼じゃない。私たちは、まだ、恵まれている方だわ」
順子がホットレモンティーを啜りながら言った。
「でも、ヨーロッパでは、一ヶ月もサマーバカンスをとったりしているじゃない。どうして日本は、一ヶ月のサマーバカンスがとれないのかしら?」
「それは、プラザ合意によるバブル崩壊と不良債権と、リーマンショックの影響だからよ」
二人は、共に中堅私立大出で、それでも、京子は、120社、順子は、150社、回ったあげく、やっとのこと、この会社に内定がとれたのである。内定をとれるまでに、何度、自殺を本気で考えたことか。今の日本では、自殺も一つの就職先の選択肢の一つなのである。
特技といったら、順子がTOEIC=875で、京子は、美人で、日本語文章能力検定準二級だった。
「今夜はどう、過ごす?」
京子が聞いた。
「そうね。年越し蕎麦を食べながら、紅白歌合戦を見るんじゃないからしら」
「私も、そうだわ」
京子が相槌を打った。
△
「じゃあ、明日の10時に東京駅で会いましょう」
「ええ」
そう言って二人は別れた。レジは京子が払った。
二人は、その晩、それぞれ、家で年越し蕎麦を食べながら、紅白歌合戦を見た。
そして、それが終わり、「行く年、来る年」を見た。
△
年が明けて新年になった。
町は、コンビニ以外どこも、シャッターを閉めている。そして、「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します」と書かれている。車のナンバープレートに、注連飾りが取り付けられている車は少なく、それでも、10台に一台くらいは、注連飾りをした車もあった。初詣に行く人々も、たった三日の休みだが、どこか、仕事の荷が降りて、ほっとしているような、のほほんとした雰囲気である。
△
京子と順子は、東京駅の東北新幹線の中央口で、お互い相手を見つけた。京子が先に来ていた。京子は順子を見つけると、大きく手を振った。
「京子。待った?」
順子が聞いた。
「ううん。私も、ちょうど今、来たところ」
二人は、東北、上越、長野、新幹線の改札を通った。東北新幹線は、全て指定席である。スキーやスノーボードを持った人や、帰省と思しき人達が、所狭しと、待合室を占めていた。新幹線の発車時刻には、まだ20分ある。待合室のロビーの正面の電光掲示板では、最前の新幹線が発車する時刻と行き先と発車時間が示されていて、発車時間ちょうどになると、次の新幹線が繰り上げられて表示された。次発の新幹線が先発に変わって、それに乗る客が数名、立ち上がって、待合室から出ていった。
ちょうど二人隣り合った座席が空いたので、二人は、そこに座った。
「順子。何か飲む?」
京子が聞いた。
「じぇあ、粒入りのお汁粉」
京子は、立ち上がって自動販売機に行き、二つ缶を持って戻ってきた。
「はい」
京子は順子に、粒入りのお汁粉を渡した。
「ありがとう」
京子は、ホットレモンだった。順子が、財布をバッグから取り出そうとすると、京子が手を振って制した。
「いいわよ。たかが130円」
「ありがとう」
二人は、缶の詮をプシュッと開け、コクコクと飲んだ。
「寒い時に、暖かい所へ行くのも、いいけれど、雪国に行くのもいいわね」
「そうね。冬は雪が降って積もっていると、何だか、冬らしい楽しい気分になるからね」
「東京では、ホワイトクリスマスなんて見れないけれど、クリスマスに雪が降ってくれたらロマンチックな感覚になるものね」
「でも、東北の人にしてみれば、雪は嫌なものでしかないんじゃないかしら」
そんなことを話している内に、電光掲示板の一番上が、京子たちの乗る、秋田新幹線の表示になった。
「京子。行きましょう」
順子が言った。
「待って。新幹線は、車内清掃で、発車時間の5分前くらにならないと開かないから、まだ開いてないわよ」
と京子が制した。
時計を見ると、発車時間まで、あと10分あった。その間、二人は、じっと待合室にある時計を見守った。
発車時間の5分前になった。
「行きましょう」
二人は、立ち上がって、地下の待合室を出て、エスカレーターで、プラットホームに出た。
もう、秋田新幹線は、来ていた。ちょうど、車内清掃が終わって、客がゾロゾロと乗り込んでいる所だった。
秋田新幹線こまち号は、東北新幹線の前に連結されている。二つ、連結された新幹線は、岩手県の盛岡駅まで、連結されたまま、一緒に走って、盛岡駅で、切り離され、秋田新幹線は、西方の秋田に向かって走り、東北新幹線は、そのまま北上して、新青森へ行くのである。
途中の停車駅は、盛岡までは、上野、大宮、仙台、盛岡、の4駅で、盛岡駅で、後ろに連結されている東北新幹線が切り離されて、秋田新幹線こまち号だけとなり、秋田へ向かうのである。秋田新幹線は、雫石、田沢湖、角館、大曲、と止まって終点の秋田に着く。
仙台までは、雪は少なかったが、仙台を過ぎて、岩手県に入ると、窓外の景色は、一面、雪で覆われていた。
「うわー。すごい雪ね」
二人は、嬉しそうに叫んだ。
盛岡駅で、秋田行きの、こまち号と、新青森行きの、はやて号に、分かれ、秋田に向かうと、窓外の雪は、一層、積もっていた。
△
秋田新幹線が、終点の秋田駅に着いた。
「やっと、ついたわね」
「何だか、長かったわね」
二人は、それから、男鹿半島へ向かう男鹿線に乗り、約1時間で、終点の男鹿駅に着いた。男鹿線は、男鹿半島の右側に沿って走っている。
右手には、日本海があるが、沿線は住宅と防風林が視界を遮っており、車窓からは日本海が見えなかった。
男鹿駅では、二人を用意した旅館のバスが待っていた。回りは一面、雪で覆われている。
30位して、ようやく旅館に着いた。
「お客さんが、着きましたべ」
バスのザクザク雪を踏み鳴らす音で、わかったのだろう。旅館の主人が出て来た。頭の禿げた、かなり歳のいった、じいさんだった。
「こんにちは。初めまして。明けましておめでとうございます」
京子と順子は、笑顔で深々と頭を下げて挨拶した。
「よう来たべな。明けまして、おめでとうべな」
旅館の親爺も、嬉しそうに挨拶した。
△
二人は、親爺に案内されて部屋に入った。
「温泉があるべな。先に入るだがね。それとも、食事にするだがね?」
親爺が聞いた。
二人の腹がグーと鳴った。二人は、旅館での郷土料理を美味しく食べるために、新幹線の中でも、あえて駅弁を買わなかった。それでも、やはり長旅は、腹が減るので、ワゴンサービスが回って来た時、トッポを買って食べた。
「どうする?」
順子が京子に聞いた。
「そうね。まず温泉に入らない。寒くて仕方がないわ。温まってから、食事にしない?」
京子が、そう聞いた。
「そうね。そうしましょ」
順子が肯いた。
「そうかね。じゃ、案内するべ」
二人は部屋に入って、浴衣に着替えた。
そして親爺に案内されて、二人は、親爺の後についていった。
旅館から数分ほど歩いた所の、雑木林の中に露天風呂があった。
「ここは混浴じゃけんども、今日は、泊まり客は、あんたらしかおらん。安心して入りんしゃい」
そう言って旅館の親爺は、旅館に戻っていった。
△
「へー。京子。ここ。混浴だって。水着、持ってきた?」
「一応、着けてきたわ。でも、誰も来そうもないし、裸で入っちゃいましょう」
「そうね。ふふふ」
二人は顔を見合わせて、ふふふ、と笑った。
二人は浴衣を脱いだ。浴衣の下はビキニだった。
二人は、ビキニも、脱いで、全裸になった。そして、ドボンと温泉に入った。
なんやかんや言っても、女は結局、みんな露出趣味があるのである。女が露天風呂に行きたがるのは、温泉が好きなのと、もう一つ、男に見られるかもしれない、というスリルを味わいたいためである。
「はー。いい気持ち」
「一年の疲れが、スッキリとれるような感じね」
二人は温泉に浸かりながら、そんなことを言い合った。
その時である。雑木林の中でカサッと物音がした。
「誰。誰かいるの?」
京子が、雑木林の方に向かって言った。しかし返事は返って来ない。
「熊かしら。狸かしら。きっと、何かの動物よ」
順子が言った。
「ちょっと私、見てくるわ」
そう言って京子は、湯から上がると、バスタオルを体に巻いて、音のした方へ歩んだ。
すると一本の木の裏に、少年が縮こまっていた。小学生くらいの、男の子だった。
「ボク。何をしているの?」
京子が問いかけると、少年は、逃げようとした。京子は、少年の手をつかんで逃げれなくした。
「ははあ。覗きにきたのね」
京子は笑って言った。
「ち、違います」
少年は即座に反駁した。
「じゃあ、何をしにきたの?」
「あ、あの。温泉に入りに来たんです。でも、あなた達、二人が入っていたから、入るのを、ためらっていたんです」
「どうして私達がいると入れないの?」
「そ、それは。この温泉は、入浴料、500円、旅館の主人に払って、断らないといけないからです」
「子供は200円よ。そんなの、私が払ってあげるから、入りなさいよ」
そう言って京子は、少年の手を引いて、露天風呂に連れてきた。
「さあ。遠慮しないで、入りなさい」
ためらっている少年に京子は強気の口調で言った。
△
相手は女とはいえ、小学生の力では、大人の力にかなわない。
逃げられない、と少年は観念したのだろう。少年は服を脱ぎ出した。セーターを脱ぎ、厚手の上着とズボンを脱いで、パンツ一枚になった。ズボンを脱いだ時、ポケットから、小型の高性能デジカメがポロッと落ちた。京子は、それをサッと拾った。
調べると、それには、ここの露天風呂に浸かっている若い女の写真がたくさん、写されていた。
「うわー。すごーい。盗撮の常習犯なのね。秋田県警に連絡しなくちゃ」
「ち、違います」
少年は焦って反駁した。
「どう違うの?」
「そ、それは・・・つまり・・・その写真は・・・温泉に来た人の記念として、相手の同意を得て、写してあげたものなのです」
「それにしては、若い女のスナップ写真ばかりじゃない。普通、相手の同意を得た記念撮影の写真なら、カメラに向かってピースサインをしている写真なはずよ」
「そ、それは・・・つ、つまり・・・女の人に、どういう写真を撮って欲しいかと聞いたら、スナップ写真の方が芸術的で、スナップ写真を、お願いします、という返事ばかりだったからです」
「わかったわ。ともかく、温泉に入りなさいよ。そのために来たんでしょ」
そう言われても、少年は、パンツをなかなか脱げないで躊躇している。
しかし、京子が、さあ、早く入りなさいよ、と催促するものだから、少年も、ついに、観念したらしく、少年は、パンツを履いたまま、温泉に入ろうとした。
京子が、サッと少年の手をつかんだ。
「パンツを履いたまま、温泉に入る、なんて聞いたことないわ。パンツが濡れちゃうじゃない。さあ、パンツも脱ぎなさい」
京子が、少年の手をつかんで、言った。
「混浴風呂では、男はみんな裸よ。女は水着を着ることもあるけれど、私達は全裸よ」
少年は、パンツのゴムの縁に手をかけた。しかし、躊躇して、なかなか下げられない。
京子は、少年の後ろに回って、パンツの縁を、つかむと、グイと降ろした。
「ああっ」
少年は、あわててパンツを引き上げようとした。しかし京子は、素早く、パンツを足から抜きとってしまった。
少年の、石棒は、天狗の鼻のように、激しく怒張して、せせり立っていた。
「うわー。すごーい」
京子と順子は、それを見て、驚嘆の声をあげた。
少年は、見られる恥ずかしさから、のがれるように、急いで、湯に入った。
京子も湯に入った。
京子と順子は両方から少年を挟むように、少年の間近に寄ってきた。
少年は、茹で蛸のように、真っ赤になっている。
「やっぱり、普天風呂では、男と女が一緒に入るのがいいわね」
しばし、三人は、黙って、露天風呂の心地よさに浸っていた。
しかし、少年は、心地よかったか、どうかは、わからない。
少年は、真っ赤な顔で真正面を見ていた。
順子が二人から、離れて、二人の対岸に行き、振り返って、京子と少年の方を向いた。
「はあ。ちょっと、長く浸かっていたんで、湯疲れしちゃたわ」
そう言って、順子は、湯から上がって、湯の縁に腰かけた。
「温泉では、温まるのと、体を冷ますのを交互に繰り返して、交感神経と副交感神経の活動を切り替えるのが、自律神経を整えるのにいいのよ」
そう言って、京子も、湯から上がって、湯の縁に腰かけた。
少年は、目のやり場に困っている。目の前には全裸の順子が、縁に腰かけているし、後ろには、全裸の京子がいる。
「順子―。凄くセクシーでいいわ。温泉に来た記念として、写真を撮ってあけましょうか?」
「ええ。お願い」
順子は、立ち上がって、乳房と恥部を手で覆った。それは、ボッティチェリのビーナスの誕生のポーズだった。
「ボク。写真を撮りたいから、デジカメを借りてもいい?」
京子は少年に聞いた。
「は、はい」
カシャ。カシャ。
京子は、少年のデジカメで、順子の全裸の写真を、何枚も撮った。
「私も撮って」
そう言って、京子はデジカメを順子に渡し、順子に全裸の写真を何枚も撮ってもらった。
「ボク。旅の一期一会で、出会えたんだから、一緒に写真を撮りましょう」
そう言って京子は、少年の手をつかんだ。
「えっ。そんな。いいです」
「そう遠慮しないで」
そう言って、京子は、少年の手を引っ張った。
やむなく、少年は、湯からあがった。
少年の石棒は、天狗の鼻のように、ビンビンに反り上がっていた。
「すごーい。やっぱり盗撮魔だけあって、すごくスケベなのね」
京子は、立ち上がって、少年を後ろから、抱くようにした。京子は、少年の後ろから、少年と手をつないだ。少年の頭の上には、京子の豊満な、乳房が、乗っている、京子の恥部は、少年の体で隠されて、見えない。しかし、少年の、ビンビンに勃起した石棒は、丸見えである。
「さあ。順子。撮って―」
カシャ。カシャ。
少年は、ジタバタ抵抗したが、順子は、何枚も、写真を撮った。
「じゃあ、今度は、凌辱の図」
京子は、そう言って、座った。
「ボク。手で、アソコと胸を隠して」
京子は少年を後ろに座らせて、片手を京子の恥部に、片手を京子の胸に当てさせた。
「ふふ。これで、恥ずかしい所は、写らないわね」
「京子。凄いエロティックよ。何だか、京子が、少年に凌辱されているみたい」
そう言って順子は、何枚もそのポーズの写真を撮った。
少年は、ハアハアと、激しく興奮していた。
「ボク。精液がいっぱい、溜まっちゃってるでしょ。体内に溜まり過ぎた物は出さないと健康に悪いわよ」
京子が言った。
「さあ。横になって。体に溜まっている悪い物を出してあげるわ」
そう言って、京子は、順子の方を見た。
「順子―。こっちに来てー」
京子は、仰向けになっている少年の腹の上に、跨いでドッカと尻を乗せた。
少年は、身動きがとれない。
順子は、仰向けに寝た少年の両足を開いて、つかんだ。
京子は、少年のビンビンに勃起した、石棒を握って、ゆっくりと、しごき出した。
「ふふ。私の体を触ってもいいわよ」
京子に言われて、少年は、京子の白桃のような尻を触った。
京子は、しごく度合いを強めていった。
クチャクチャとカウパー腺の音がし出した。
「ああー。で、出る―」
そう叫ぶや、少年の亀頭から、勢いよく、白濁液が放射状に飛び出した。
「ふふ。気持ち良かったでしょ」
「は、はい」
「本当は、ボク。物凄くエッチなんでしょ」
「は、はい」
少年は、とうとう正直に告白した。
三人は、また風呂に入った。
「じゃあ、もう、そろそろ、私たち旅館にもどるわ」
「あ、有難うございました」
服を着ると、少年は、そう礼を言って、雑木林の中に去って行った。
△
「ふふふ。楽しかったわね」
「そうね。せっかく温泉旅館に来たんだから、このくらい面白いことが、ないとね」
「私。お腹ペコペコだわ」
「私もよ」
二人は旅館にもどった。
「いい湯でしたわ」
二人は旅館の親爺に、そう言って、旅館に入った。
「そうか。そりゃよがっだべな。食事をすぐ持ってぐけん」
親爺が言った。
トントン。
しばしして、戸がノックされた。
「どうぞ」
スーと戸が開いて、親爺が入って来た。
「食事を持ってきたべな」
そう言って親爺は、卓の上に、食事を並べだした。
秋田の郷土料理の、きりたんぽ、や、比内地鶏、の鍋物をメインに、小皿で、色々な山菜や、海鮮料理が、ボリュームたっぷりに、卓上に並べられた。
「うわー。美味しそー」
腹を減らして来ただけに、二人の腹がグーと鳴った。
「全部、食べても、まだ足りなかったら、言うべさ。料理は、ぎょうさん、あるけん」
親爺は、そう言って、出ていった。
「いただきまーす」
△
二人は、ハフハフ言いながら、料理を食べた。
「美味しいわね。順子」
「そうね。五臓六腑にしみわたる、みたいな感じだわ」
二人は、ボリュームたっぷりの料理を全部、食べた。
そして、デザートのアイスクリームを食べ、地酒を飲んだ。
「はー。食べた。食べた」
「美味しかったわね」
「何か、面白いことはないかしら?」
「また、露天風呂に行ってみる?」
「そうね。また、あの子が来るかもしれないし」
二人が、そんな、とりとめのない話をしている時だった。
突然、ノックもなく、部屋がガラリと勢いよく開いた。
恐ろしい鬼の面を被り、蓑を着て、木製の包丁を持った二人が、断りも無く、ズカズカと部屋に入ってきた。鬼たちは、
「泣く子はいねだが」
「泣き虫はいねだが」
と言いながら、京子と順子を、威嚇するように、四股を踏んだ。
「はー。吃驚した」
「なまはげ、って本当に、いきなり入ってくるものなのね」
「きっと、これは、旅館のサービスね」
京子と順子は、そう言い合った。
「でも、面白いわね」
「でも、幼児だったら、本当に泣いちゃうんじゃないかしら」
「でも、なんで、正月に、なまはげ、が来るのかしら?」
「それは、鬼は、厄払いの来訪神だからよ。鬼は、本当は、幸福を呼ぶ存在なのよ」
京子と順子は、立ち上がって、
「ふふふ。鬼さん。こちら。手のなる方へ」
と言って、笑いながら、手を叩きながら、キャッ、キャッ、と叫びながら、部屋の中を、逃げ回った。
鬼は、二人を追いかけて、二人を、それぞれ、部屋の隅に、追いつめた。
キャーと二人は、叫んだ。
一匹の鬼は、京子を捕まえると、京子の両手を背中に捩じ上げて、縄で手首を縛り上げた。順子を、追っていた鬼も、京子と同様、順子の両手を背中に捩じ上げて、縄で手首を縛り上げた。
二人は、後ろ手に縛られたまま、畳の上に正座させられた。
「ふふ。かなり、本格的なのね」
「ふふふ。かなり、際どいことをするのね」
二人の鬼は、それぞれ、京子と順子の縄尻をとると、背中を突いて、部屋から、連れ出した。
「ふふ。かなり、本格的なのね」
「でも、スリルがあって、面白いわ」
二人は旅館の外に、連れ出された。
旅館の外には、車が止めてあった。
二人の、なまはげ、は、京子と順子を車の後部座席に乗せると、自分達は、運転席に乗った。そして、エンジンをかけて、車を出した。
「あ、あの。これは、どういうことなのですか?」
「どこへ連れていくのですか?」
二人は、後ろ手に、縛られたまま、運転席と助手席の、なまはげ、に聞いた。
だが、なまはげ、は、何も答えない。
「きっと、どこかのレジャー施設に連れて行って、新年の御馳走をしてくれるのよ」
「秋田の、なまはげ、の行事って、かなり本格的なのね」
二人は、そう言い合った。
車は林の中を走っていった。
「あ、あの。どこへ連れていって下さるのですか?」
そう聞いても、なまはげ、は、何も喋らない。
もう、外は真っ暗である。
しばし走った後、車は、ある建物の前で止まった。
なまはけ、に、促されて、二人は降ろされた。二人は、その建物の裏手に入らされた。
「どういうことかしら」
「わ、わからないわ」
二人の、なまはげ、は京子と順子を、ある小さな部屋に入れた。そこは、小さな楽屋のような感じだった。その部屋の一面は大きなカーテンで仕切られていた。閉められたカーテンの隙間から、その先が見えた。
「ああっ」
二人は、驚いて叫んだ。
そこは、コウコウとスポットライトの点いた、小劇場のようなステージだった。ステージの前は、客席になっており、客達は、みな、なまはげの面を被っていた。それは、ちょうどストリップ劇場のようだった。
二人の、なまはげ、は、京子と順子の二人の縄尻をとりながら、背中をトンと押して、ステージの中央に引き出した。
「おおっ。すげえ美人」
客達は、一斉に叫んだ。
「こ、これは、どういうことなの?」
京子と順子は、彼女らの縄尻をとっている、なまはげに聞いた。
しかし、なまはげ、は、黙っている。
△
「やあ。みな様。本日は、ようこそ、お出で下さいました。秋田なまはげSMショーを、たっぷりと、お楽しみ下さい。本日のスターは、飛び切りの美女二人です」
と一人の男が言った。背広を着て、蝶ネクタイをしていることから、おそらく司会者なのだろう。
「順子。これは、なまはげ、の行事なんかじゃないわ」
「そ、そうだわ。これは本当の犯罪だわ」
「なまはげ、の、仮面をかぶって人を脅す行事を利用した、本当の犯罪だわ」
ここに至って、二人は、やっと事実に気づいて青ざめた。
「どうしよう。京子?」
「どうしようって、どうしようも出来ないわ」
「私たち、どうなってしまうのからしら?」
「わ、わからないわ」
二人は恐怖に引き攣った顔を見合わせた。
ステージの両脇に、もう二人の、なまはげ、が仁王立ちしていて、か弱い女の身では、逃げようもない。
「さあ。着てるもんさ。全部、脱ぐべ」
二人の縄尻を、とっている、二人の、なまはげ、が、言った。
そして、二人の後ろ手の縛めを解いた。
手が自由になったが、か弱い女の身では、逃げようがない。
△