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小説家、反ワク医師、空手家、浅野浩二のブログ

小説家、反ワク医師、空手家の浅野浩二が小説、医療、病気、文学論、日常の雑感について書きます。

栄小学校の女の先生(小説)

2025-09-02 08:56:51 | 小説

という小説を書きました。

浅野浩二のHPの目次その2にアップしましたのでよろしかったらご覧ください。

栄小学校の女の先生

埼玉県草加市の松原団地にある栄小学校である。
京子は今年から4年B組の担当になった。
教室に行くと40人の子供たちが先生が来るのを待っていた。
大体、皆、知っている顔だが一人、内気な子がいた。
名前は山野哲也だった。
皆ワイワイ騒いでいるのに一人ぼっちである。
経歴には小学校3年まで神奈川県にある喘息の施設に入っていて3年の終わりにそこを退院して親元に帰ってきて栄小学校に転入した・・・とある。
学科の成績は普通で特に優秀なわけではなく特に成績が悪いわけでもない。
昼休みは皆、教室でお喋りをしたり校庭に出てドッチボールをやったりしているのに、その子は一人で机に向かっている。
あの子は何を考えているのだろう?
趣味とかあるのだろうか?
学校の廊下で会った時ニコッと笑顔で「こんにちは」と言っても返事もしない。
しかしその子は図工だけは上手かった。
夏休みが終わって二学期が始まった時、図工で「夏休みの思い出」を絵で描きなさいと言ったら、あの子は野球場の絵を描いた。
きっとプロ野球観戦に行ったのだろう。
それであの子は野球場の絵を描いたのだろう。
しかし吃驚した。野球場を空中の一点からの視点で書いていて立体感を出している野球場を描いたからだ。ちょっと小学生に描ける絵ではない。皆は絵が下手なのに。しかしあの子の描いた絵は芸術的な価値はない。技術者的な正確さのある絵だ。
京子はその子(山野哲也)のことが気になるようになった。
「仏は子供を愛するのに区別はないが、その中に病気の子がいると仏の心はひときわその子に惹かれていく」
と仏教聖典にあるが京子もそれと同じ感覚だった。
元気で友達がたくさんいる子は何もしなくてもいい。
健やかに育つから。しかし友達もいなく挨拶も出来ないような子は何とか皆と同じように元気で活発になり友達も出来るようになって欲しい。
・・・・・・・・・・・・
その週の日曜日、京子は順子という大学時代の友人の家に行った。
順子は大学で心理学を専攻して心理のカウンセラーになっていた。
ピンポーン。
チャイムを押すと家の中から「はーい」という声がして玄関の戸が開いた。
順子が出てきて顔を出した。
「いらっしゃい。京子。待っていたわよ」
ささ、どうぞ入って、と言って順子は京子を家に入れた。
「やあ。順子。久しぶりね」
そう言って京子は順子の家に入った。
「元気?」
順子が聞いた。
「ええ。元気よ」
京子が答えた。
「順子は?」
今度は京子が聞いた。
「ええ。元気よ」
順子が答えた。
「京子。とりあえず食卓に座って。パスタを作ったわ。お昼まだでしょ」
「ええ。ありがとう」
そう言って京子は食卓に着いた。
順子はウキウキした様子でキッチンに行った。
そしてパスタとサラダとアイスティーを持って来た。
パスタには小エビがたくさん入っていた。
「小エビのタラコソースにしたの。どうぞ」
順子は嬉しそうに言った。
「ふふ。相変わらずね。順子は」
と言って京子はクスッと笑った。
順子は学生時代からパスタが好きだった。
仲良しの友達が集まって食事をしようということになると順子が「イタリアンへ行こう。パスタ。パスタ」と熱烈に言うので順子がいると食事はイタリアンの店と決まっていた。
幸い大学の近くに、イタリアンの店があったので、食事といえば、そのイタリアンの店ばかりに行った。順子はパスタが好きで、いつも色々なパスタを食べていた。
「さあ。どうぞ。食べて」
「ありがとう。あなたがお昼用意して待っているわと言ったから私も朝ごはん食べずに来たの。お腹ペコペコだわ」
京子の腹がグーと鳴った。
二人は「頂きます」と言ってパスタを食べ出した。
「どう。京子。お味は?」
順子が聞いた。
「うん。タラコの風味とほのかな塩気のクリーミーなソースが最高だわ。小エビのプチプチ感もいいわ」
京子が答えた。
「ふふふ、そう言ってもらえると嬉しいわ」
二人はパスタをパクパク食べサラダも食べ、そしてアイスティーをゴクゴク飲んだ。
「あー。おいしかった。ご馳走さまでした」
京子が言った。
「ご馳走さまでした」
順子も食べ終わって言った。
「京子。学校の先生はどう?」
順子が聞いた。
「うん。まあ楽しいわ。楽でもあるしね」
「よくわからないげど小学校の先生って楽そうね。京子は何を教えているんだっけ?」
「全科目教えているわ」
「担任しているクラスもあるんでしょ。何年生を担任しているの?」
「4年生だわ」
「ふーん。4年生か。小学生も4年生になったら、わーわー騒ぎ出すでしょ」
「ええ。みんな元気よ」
「クラスでいじめとかケンカとはあるの?」
「ないわ。有難いことに」
「そう。それはよかったわね」
そう言って順子はアイスティーを啜った。
「ところで京子、今日は何の用で私の所に来たの?いきなり、あなたが会いたいって電話してきたから少し驚いたわ」
「ねえ。順子。あなたは大学で心理学を専攻したでしょ。どんな資格を持っているの?」
京子が聞いた。
「臨床心理士、学校心理士、臨床発達心理士、認定心理士、産業カウンセラーの資格を持っているわ」
「すごいわね。それでどんな仕事をしているの?」
「いくつもの企業や団体でカウンセラーとして働いているわ。それと講演依頼も結構くるから講演もしているわ」
「すごいわね」
「いやあ。心理学部を出ても、なかなかこれといったいい職場はみつからないわ。だから心理学部を出た人は結構、色々な資格を取っているわ」
「謙遜しているけれど本当はすごいんでしょ」
京子がニヤッと笑った。
「ふふふ。さあ、どうかしら・・・・・」
順子は含み笑いして答えた。
「順子。今日、私が来たのは、あなたが優秀な心理学者だから聞きたいことがあって来たの」
「なあに?聞きたいことって?」
「ある生徒のことなの」
「どんな生徒なの?」
「私が担任している4年B組の生徒なの」
「男の子?女の子?」
「男の子」
「どんな性格なの?」
「無口で誰とも話さないの。昼休みになっても皆は校庭でドッチボールをやったり、教室でお喋りしたりしているのに、その子は机に着いたまま、じーとしているだけなの。廊下ですれちがって私が会釈しても少し目をそらして何の返事もしないの」
「ふーん。それで学科の成績は?」
「普通よ。5点評価で全科目3点くらい」
「親子関係は?」
「お父さんとお母さんがいるわ。一度、家庭訪問に行ったことがあるわ。優しそうなお母さんだったわ。お父さんは会社に出勤していたのでいなかったけれど、お母さんに、お父さんのことを聞いてみたけれど真面目な性格らしいわ。哲也くんを叱ったり間違っても虐待なんてしたこともないって言っていたわ」
あはははは、と順子は笑った。
「順子。何がおかしいの?」
「あなたの単純さが」
「どう単純なの?」
「だって考えてごらんなさい。子供を虐待している親に、あなたは子供を虐待していますか、って聞いて、はい。虐待しています、って言う親がいると思う?」
順子が言った。
「それは確かにそうだけど。人の性格は会って少し話せば大体わかるものだと思うわ。私の前では良い母親を演じて子供に対しては態度が豹変して虐待している、というような、そんなジキル博士とハイド氏のようには到底思えないわ。虐待されているのなら顔にアザが出来るでしょう。哲也くんは顔にアザが出来て学校に来たことなんて一度もないし・・・」
京子が反論した。
「殴るだけが暴力じゃないわ。言葉の暴力の方が肉体的な暴力より、つらいものよ」
順子が言った。
「私もそう思うわ。でも哲也くんのお母さんは哲也くんを叱りつけるようには、とても思えないわ」
京子が言った。
「ふむふむ。それで、その子のことをもっと教えて」
順子は哲也に興味を持ちだしたようだった。
「その子はね、栄小学校に入学したの。だけど小児喘息があって2年生の初夏の頃から神奈川県にある喘息の施設に入ったらしいの。小児喘息を治すために。そこで3年生まで、つまり1年半、喘息の施設に入っていたの。喘息も施設に入ったことで改善して4年からまた栄小学校にもどってきたの」
京子が言った。
「ふーん。なるほど。なるほど。もっとその子に対する情報はない?」
順子は謎を解く探偵のようだった。
「そうね。その子は図工だけは得意なの。美術の時間、夏休みの思い出で楽しかったことを絵に描きなさいって言ったら、その子は野球場の絵を描いたの。しかも空中の斜め上からの視点で描いた絵で立体感を出していて正確で、その時は、クラスの皆が寄ってきて、おおー、すげー、と驚いていたわ。私もよく小学校4年生で、よくこういう絵が描けるなって驚いたわ」
順子は、ふむふむ、といかにも得意げな余裕の表情をした。
順子には何かわかったことがあるのだろうと京子は思った。
「京子。あなたは(-)がないから問題ないと思っているけれど。(+)があるかどうかということは考えようとしないの?」
「(-)とか(+)って何なの?」
京子は首を傾げて順子を見た。
「哲也くんのお父さんもお母さんも哲也くんを叱ったり虐待してもいない、って言ったでしょ。叱ったり虐待したりするっていうのが(-)の行為だわ。そういうのは無いとお母さんは言ったんでしょ。私もそれを信じるわ。しかし(+)の行為があるかどうかは、あなたは聞かなかったから(+)の行為があるかどうかは、わからないじゃない」
「順子。(+)の行為って何なの?」
京子が聞き返した。
「(+)の行為っていうのは哲也くんのお父さんや、お母さんは哲也くんに(愛)を与えているかということよ。そして哲也くんは親を愛しているかどうかってことよ。親が子供に(愛)を与えていれば子供は親を愛するわ」
順子が言った。
「順子。確かにその通りだわ。でも私、家庭訪問で哲也くんのお母さんと会って明るい優しそうなお母さんだなって思ったわ。きっと哲也くんに(愛)を与えていると思うわ」
京子が反論した。
「私はそうは思わないな」
順子は自信に満ちた口調で言った。
「どうして?」
「その子は図工が得意で立体的な野球場の絵を描いたって言ったでしょう。それが理由よ」
順子が言った。
「ええ。私もどうして図工はあんなに上手いのかって驚いたわ。でも、それが親の(愛)とどういう関係があるの?」
京子が聞き返した。
「小学生は色々なことに興味を持つわ。夏休みの思い出を絵で書きなさいと言って、その子は野球場を描いたんでしょ。ということは、その子はプロ野球が好きで親と一緒に東京ドームにプロ野球の試合を見に行ったのにちがいないわ。だからその子は野球も好きなのよ。野球を見るのも好きだし野球をやりたいとも思っているはずよ。でも内気で喘息で体力がなくて友達がいないから、というか、友達の輪に入れないから野球が出来なくて、さびしがっているのよ。・・・・・私の推測をどう思う?」
順子が京子に聞いた。
「え、ええ。言われてみれば、その通りだと思うわ。さすが心理学者ね。もっと話して」
京子は順子の鋭さに感心し出した。
「その子のお父さんは仕事だけの人間で趣味もなく休日は寝ころんでテレビを観ているだけだと思うわ。哲也くんをかまってあげたり一緒に遊ぶということもしていないと思うわ」
順子が言った。
「ど、とうして、そんなことまでわかるの?」
哲也の父親まで分かる順子が京子には不思議だった。
「だって、もしお父さんに将棋とか釣りとか何かのスポーツとかの趣味があったら大抵、子供はお父さんと、その趣味を一緒にやるでしょ。そうは思わない?」
「お、思うわ。そ、それで・・・」
「だから哲也くんは家でも親にかまってもらえないから、きっと一人で絵を描いたり、プラモデルを作ったりと、一人で出来る遊びをしているのよ。内気な子はデリケートで繊細な性格だから絵が上手くて図工が得意になるのよ。だから哲也くんは、学校でも友達がいないし家でも親にかまってもらえないから(愛情)に飢えているのよ。つまり親から(愛)という(+)の行為は受けていないのよ。私はそう思うわ。京子はどう思う?」
順子が言った。
「そ、その通りだと思います。順子先生」
京子は順子を尊敬し出した。
「先生なんて呼ばないでよ。私は100万人以上の人間を見てきたから話を聞けば大体のことはわかるわ」
「では順子先生にお伺い致します。廊下を歩いていて哲也くんと会って私が会釈すると哲也くんは顔をそむけるんです。これはどうしてでしょうか?私を嫌っているんでしょうか?」
京子が聞いた。
「ははは。違うわ。正反対の逆よ。哲也くんは間違いなく、あなたのことが好きなのよ」
順子が答えた。
「ど、どうしてですか?好きな人が会釈したら会釈を返すものでしょう?会釈しないどころか、顔をそらすというのは私を嫌っているからじゃないんですか?」
京子が聞いた。
「京子。それは元気な子の場合よ。あなたは元気で明るい人間だから内向的な人間の心理が全然わかっていないわ」
「順子先生。好きな人を無視するという心理を教えて下さい」
京子はひれ伏して頼んだ。
「あなたはシャイな人間の心理が全然わからないのね。シャイな男の子は好きな女の人に、自分が相手を好いているということを気づかれたくないの。自分の感情を素直に示すということが出来ないの。鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす、という心理よ。これはシャイな人だけじゃなく社交的な人でも起こることがあるじゃない。だからことわざになっているほどでしょ。哲也くんはきっと毎日、熱烈にあなたのことを想っているに違いないわ」
こればかりは京子はわからなかった。信じられなかった。本当にそうなのかと疑った。
しかし今までの順子の言うことが、もっともなことばかりで納得させられることばかりだったので、そして順子が今まで100万人以上の人間を見てきた優れた心理学者なので信じることにした。
順子は続けて言った。
「哲也くんだってクラスの女の子で好きな子がいるはずよ。男の子たちとも友達になって一緒に野球をやったり、ドッヂボールをやったりして遊びたいと思っていると思うわ。でも病弱で体力が無いしシャイだから、それを言うことが出来ないのよ。(僕も仲間に入れて)って言うことが出来ないのよ。私はそう思うわ。京子はどう思う?」
そう言って順子はアイスティーを啜った。
「順子先生。天才的な心理学者である順子先生が仰るのだから、それが正しいのだと思います」
京子は最大限の尊敬の思いを込めて言った。
「京子。あなたは一人ぼっちの哲也くんを皆と友達になれるようにしたいと思っているのでしょ」
「え、ええ。ではどうすればいいのでしょうか?」
「哲也くんは、あなたを好きなのよ。まず、あなたが哲也くんに(愛)をあげたらどう?」
「それにはどうすればいいんでしょうか?」
「哲也くんは、人に甘えてはいけない、そして人から同情されたくないという信念を持っている誇り高い子だと思うわ。だから哲也くんの方からあなたに話しかけるということは絶対しないわ。だから、あなたの方から哲也くんに声をかけるのよ。哲也くんの心を開かせるのは極めて難しいと思うわ。だから哲也くんが一人になった時に、さり気なく話しかけて、あなたの家に連れていくのよ。内向的な子は集団の中では人と話すことが出来ないけれど1対1でなら話すことが出来るのよ」
「わかったわ。じゃあ今度、哲也くんが私の家に来るようにしてみるわ」
「うん。ぜひそうしてみるといいと思うわ」
京子は時計を見た。
もう帰ろうと思った。
「順子。今日は色々とためになるアドバイスをしてくれてありがとう。私、そろそろ帰るわ」
京子が言った。
「いやあ。いいわ。またいつでも私で役に立つことがあったら、いつでも私の所へ来て」
「ありがとう。順子」
「京子。ちょっと、あなたのスマートフォンにショートメールを送るわ」
そう言って順子はスマートフォンを開けてピッピッと操作した。
そして送信ボタンを押した。
すぐに京子のスマートフォンにピピピッと着信音が鳴った。
京子はショートメールを開けてみた。
それにはこう書かれてあった。
「パンへの飢えがあるように豊かな国にも思いやりや愛情を求める激しい飢えがあります。誰からも愛されず必要とされない心の痛み。これこそが最もつらいこと、本当の飢えなのです。与えて下さい。あなたの愛を。あなたの心が痛むほどに。マザーテレサ」
京子の目からポロポロと涙が溢れ出た。
「親から愛されなかった子、親から無償の愛を受けなかった子は性格が歪んでしまうのよ。ジェームス・ディーンの名作・エデンの東だってそれがテーマでしょ」
順子が言った。
京子は自分は先生なのに生徒の気持ちを全然わかっていないことに打ちひしがれていた。
「順子。今日はどうもありがとう。じゃあ今日は私、帰るわ」
「そう。じゃあ哲也くんの心を開かせるよう頑張ってね」
京子は立ち上がって玄関に向かった。
順子も玄関までついてきた。
「順子。今日は本当にどうもありがとう。さようなら」
今日はペコリと頭を下げた。
「さようなら。またいつでも来てね」
順子が言った。
こうして京子は順子の家を出た。
・・・・・・・・・・・・・
京子は家に帰った。
そして、どうしたら哲也くんを自分の家に連れてこれるかを考えた。
順子の思考力の深さに刺激されて、京子も自分で考えなきゃ、と思うようになったのである。
うーん、と京子は腕組みをして考えた。
1時間くらい考え込んで京子は一つの方法を思いついた。
「そうだ。算数の抜き打ちテストを明日しよう。哲也くん以外の生徒には誰でも解けるような簡単な問題を出して哲也くんだけには難しい問題を出そう。絶対、解けないような。それで哲也くんを教員室に呼び出すということをすればいいわ」
京子はわれながら名案を思いついたと嬉しくなった。
小学4年生の算数は、分数の足し算、引き算、少数の足し算、引き算、四捨五入、折れ線グラフと表の読み取り方や使い方、などである。
哲也くん以外の他の生徒には優しい問題にして哲也くんだけには難しい問題を出そう。
えーと。どんな問題がいいかしら?
そうだ。東大理三の数学の入試問題を出せば哲也くんは絶対、解けないわ。
と京子は思った。
しかし、ちょっと考えて、やっぱりそれはまずいことに気がついた。
東大理三の数字の入試問題なんて、あまりにも不自然すぎる。
カンの鋭い哲也くんに、おかしいと気づかれちゃう。
じゃあ小学6年生の算数の問題を出そう。
小学6年生の算数は、分数のかけ算(分数×整数、分数÷整数、分数×分数)、分数のわり算、小数と分数の計算、円の面積、比例と反比例、などである。
京子は急いで算数の問題を作った。
哲也だけには小学6年生の算数の問題にして他の生徒には小学4年生のやさしい算数の問題を書いた。
すぐに京子は問題を書いた。
書いた問題を見て京子は「よし。これなら大丈夫だわ」と思った。
京子はわれながら自分は頭がいいなと嬉しくなった。
もう夜おそくなっていたので京子は風呂に入ってパシャマに着替えて布団に入った。
・・・・・・・・・・・・
翌日。
京子は学校に行った。
4年B組に向かうとガヤガヤと生徒たちの声が聞こえてきた。
京子が教室に入るとお喋りがなくなった。
京子は教壇の壇上に立った。
「起立」
「礼」
「着席」
がいつものように行われた。
「みなさん。今日は算数の抜き打ちテストをします」
京子が言った。
「ええー。そんなー」
と生徒たちは困惑の声をあげた。
「大丈夫です。やさしい問題ですから。算数の成績が悪い人でも解ける簡単な問題です」
そう言って京子は問題用紙を裏側にして生徒たち全員に配っていった。
そして教壇にもどった。
生徒たちは全員、真剣な面持ちである。
「じゃあ、50分で解いて下さい。はじめ」
はじめ、の合図で生徒たちは全員、問題用紙を裏返して表にして問題を解き出した。
京子は生徒たちが問題を解くのを楽しそうに見ていた。
こういう時が小学校の教師冥利につきるのである。
50分、経ったので京子は、
「はい。終わり。みなさん。鉛筆を置いて下さい。問題用紙を裏側にして下さい」
皆は問題用紙を裏側にした。
「一番うしろの席の人、前列の人の問題用紙を集めて持って来て下さい」
席は6列あり一列が7人である。
言われて席が一番さいごの生徒が、その列の生徒たちの問題を集めて京子の所に持ってきた。
その時、ジリジリジリーと1時間目の終業のベルがなった。
「じゃあ1時間目の授業はこれで終わりです」
そう言って京子はスタスタと教室を出て行った。
生徒たちは、
「簡単だったな。オレ全問、正解できたよ」
「オレも」
「オレも」
と言い合っていた。
皆、全問正解できたようだ。
しかし哲也だけはしょんぼりしていた。
・・・・・・・・・・・・・・・
そして、その日の午後の授業も終わった。
皆は「あーあ、終わった。帰ろうぜ」と言ってランドセルを背負って教室を出て行った。
その時、京子が教室に入ってきた。
哲也も荷物をまとめてランドセルに入れようとしている所だった。
京子は哲也に近づいてきた。
「山野哲也くん。ちょっと教員室に来てくれない」
京子が言った。
「はい」
哲也は小さな声で返事した。
哲也は京子のあとについて教員室に行った。
京子は教員室の自分の席に座った。
しかし哲也は京子の前に立ったままである。
こういうふうに自分は座ったままで生徒を目の前に立たせて説教するのも教師の楽しみなのである。
「哲也くん。今日の算数の試験、全員、満点だったわよ。簡単な問題を出したからね。でも哲也くんは0点よ。皆、算数がどれだけわかっているのか調べてみようと思って抜き打ちテストをしてみたのだけれど。このままじゃ哲也くんは5年に進級できないわよ」
と京子は叱るように言った。
「す、すみません」
哲也はうつむいて小声で答えた。
「私は算数は、わかりやすく教えているつもりよ。皆もちゃんとノートしているわ。哲也くんはちゃんとノートしているの?」
京子は厳しく問い詰めた。
「す、すみません」
哲也はまたしても、うつむいて小声で答えた。
「哲也くん。私は謝れって言っているんじゃないのよ。ちゃんとノートしているのかって聞いたのよ。答えて」
京子は厳しく問い詰めた。
「す、すみません」
哲也はまたしても、うつむいて小声で答えた。
京子には哲也がまるで「俺たちの勲章<孤独な殺し屋>シーン1」の水谷豊のように見えた。
「それと。哲也くんは人が挨拶をしても挨拶しないでしょ。どうして?」
京子は厳しく問い詰めた。
「す、すみません」
哲也はまたしても、うつむいて小声で答えた。
「哲也くんは何を聞いても、すみません、しか言えないのね。そんなことじゃ中学生になっても一人ぼっちよ。社会人になっても、どんな仕事にも就くことも出来ないわよ。人と話さなくて出来る仕事なんて、この世の中にないんだから」
京子は厳しく言った。
「す、すみません」
哲也はまたしても、うつむいて小声で答えた。
京子はいい加減、苛立っていた。
「哲也くん。教師には生徒がちゃんとした社会人になれるように教育する義務があるの。ちょっと私に着いてきて」
そう言って京子は哲也の手をひいて教員室を出た。
校舎を出た京子は学校の駐車場にとめてあるラパンの助手席を開けた。
京子はラパンで学校に出勤していた。
「さあ。哲也くん。乗って」
京子に言われて哲也は助手席に乗った。
京子も運転席のドアを開けラパンに乗り込んだ。
京子はエンジンを駆け車を始動した。
ラパンは走り出した。
普通の子なら「どこへ連れて行くのですか?」くらいは聞くものだが哲也は何も話さない。
とことん無口な子だなと京子は思った。
車は団地を離れ松原団地の東の建売住宅の方へ向かって走った。
ほどなく車は一つの一軒家に着いた。
京子は家の前の駐車場に車をとめた。
「さあ。哲也くん。降りて。ここが先生の家なの」
言われて哲也は車から降りた。
京子も降りて京子は哲也を家に入れた。
京子は哲也を6畳の部屋に入れた。
「さあ。哲也くん。座って」
畳の部屋で木製テーブルがあり哲也はテーブルの前に座った。
しかし京子は哲也を自分の家に入れることが出来たので、内心しめしめと思っていた。
京子はキッチンに行ってストロベリーショートケーキと紅茶を持ってきた。
「さあ。哲也くん。ストロベリーショートケーキがあるから食べて」
京子が優しい口調で言った。
「有難うございます。頂きます」
と言って哲也はショートケーキをモソモソと食べて紅茶を飲んだ。
「哲也くん。今日の算数は哲也くんだけ小学校6年生の問題を出したの。だから解けなくて当然よ。ゴメンね」
京子が謝った。
「いえ。いいです」
哲也は小さな声で言った。
京子は驚いた。この子は何ておとなしい子なんだろうと思った。普通の子だったら「どうしてそんなことをしたんですか?」と聞き返すのに決まっているのに。
「ねえ。哲也くん。先生は哲也くんにわざと意地悪なことをしたのよ。どうして怒らないの?」
京子が聞いた。
「理由はわかりませんが先生なりのお考えがあってなさったことだろうと思います。ですから先生のお考えに従います」
哲也が答えた。
京子は吃驚した。この子は何ておとなしく礼儀正しい子なんだろうと。
こんなおとなしく礼儀正しい子は世界中を探しても、この子一人くらいしかいないだろうと思った。
「哲也くん。哲也くんはどうして人と挨拶しないの?」
京子が聞いた。
「・・・すみません」
哲也は小声で答えた。
「いいの。先生。内気で無口な子の心理って全く分からないの。先生が元気だからだけど・・・」
「・・・・」
哲也は黙っている。
「哲也くん。先生。哲也くんのこと知りたいの。少し質問してもいい?」
「はい」
「哲也くんはお父さん、や、お母さんと話することある?」
「あまりないです」
京子はなるほどなと思った。
哲也は順子の言った(+)の行為つまり親からの愛は受けていないんだなと思った。
京子は順子の推測がどれだけ当たっているかを知りたいと思った。
なので順子の言ったことを哲也、本人に聞いてみようと思った。
「哲也くんは、夏休みの思い出、を絵で書きなさいと言って野球場を描いたでしょ。じゃあ夏休みに野球観戦に行ったの?」
「はい。父が連れていってくれました。東京ドームです。巨人―ヤクルト戦でした」
哲也が答えた。
「じゃあ哲也くんは野球が好きなのね?」
「はい」
「哲也くんは野球が出来るの?」
「キャッチボールくらいは出来ます。でもあまり上手くは出来ません」
「キャッチボールはお父さんとやったの?」
「いえ」
「じゃあ誰とやったの?」
「僕は栄小学校に入学しましたが小児喘息の治療のため、2年生の1学期の途中から神奈川県にある喘息の施設に入りました。そこは皆、病弱な子ばかりなので友達の輪に入ることが出来たんです。皆と友達になれました。なので友達と一緒に野球をやりました。だから少しは出来るんです」
哲也は答えた。
「ええ。知っているわ。哲也くんが2年生の途中から国立小児病院二ノ宮分院に入ったということは。でもそこは小学校3年までだから4年でこっちにもどってきたのよね」
京子が言った。
京子は順子が言った「哲也くんは、お父さんにかまってもらえていない」ということが当たっていたので順子の炯眼さに驚いた。
「哲也くんはクラスの女の子で好きな子とかはいないの?」
京子が聞いた。
「・・・い、います」
哲也は顔を真っ赤にして答えた。
「その子に(好きです。付き合って下さい)と言うことは出来ないの?」
「で、出来ません」
「どうして?」
「だって僕のようなネクラな人間は女の子と話していても話題がなくて女の子を退屈させてしまうだけだと思うからです。それに告白する勇気なんて、とてもじゃないけれど、ありませんし・・・」
哲也が答えた。
京子は順子が言った「内向的な人間は自分の感情を素直に示すということが出来ない。鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす、ということが当たっていたので感心した。
そして、この子は何て相手思いな子なんだろうと感心した。
こんな他人思いな子は世界中を探しても、この子一人くらいしかいないだろうと思った。
「哲也くんは廊下で私とすれちがった時、私が挨拶しても黙っているでしょう。哲也くんは私が嫌いなの?」
京子が聞いた。
「い、いえ。嫌っていません。逆です。僕は先生が好きです」
哲也が即座に答えた。
「じゃあ、どうして私が挨拶しても黙っているの?」
京子が聞いた。
「恥ずかしいからです。それに人と挨拶するのって疲れちゃうからです」
哲也が言った。
「哲也くんが私を好きといってくれて。先生、嬉しいわ。どういうふうに好きなのか、もっと具体的に教えてくれない?」
京子が聞いた。
「きれいで優しい女の先生だからです。先生を初めて見た時から好きでした」
哲也が答えた。
京子は順子が言った「シャイな男の子は好きな女の人に、自分が相手を好いているということを気づかれたくない。自分の感情を素直に示すということが出来ない」ということが当たっていたので順子の炯眼さに驚いた。
「哲也くんが私を好きと言ってくれて、先生、嬉しいわ。私も哲也くんが好きだわ」
京子が言った。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
哲也が答えた。
素っ気ない返事で京子は残念だった。
京子は順子が言った「哲也くんは、人に甘えてはいけない、そして人から同情されたくないという信念を持っている誇り高い子」ということと「内向的な子は集団の中では人と話すことが出来ないけれど1対1でなら話すことが出来る」ということが見事に当たっていたので順子の炯眼さに驚いた。
しかし京子は(愛)を告白したのに哲也は「そう言ってもらえると嬉しいです」などと素っ気ない返事をしたのが残念だった。これはきっと哲也は順子の言った「人から同情されたくないという信念を持っている誇り高い子」だからだろう。
京子は哲也の心を開かせるのには、どうしたらいいか分からなかった。
それでもう真実を話して哲也がどう反応するか見てみようと思った。
「哲也くん。実は私、昨日、大学時代の同級生で心理学を専攻して心理学者になった順子という友達に会いに行ったの。私は哲也くんが何を考えているのか分からなかったから順子に哲也くんが何を考えているのか聞いてみたの。私はそれをテープレコーダーに録音しておいたわ。それを聞いてみて」
そう言って京子は机の上にテープレコーダーを置いた。
そして再生ボタンを押した。
昨日の京子と順子の会話が流れ出した。
哲也は黙って聞いていた。
しかしだんだん哲也の顔が青ざめていった。
会話が終わったので京子はテープレコーダーを止めた。
「哲也くん。順子は色々と哲也くんのことを言っているけれど順子の言っていることって本当なの?どこか間違った所はある?」
京子が聞いた。
「・・・あ、ありません。全部、正しいです」
哲也には自分は人に理解されない人間だという絶対の確信というか自信をもっていた。
それが全部あばかれてしまって哲也は動揺していた。
哲也の目からはポロポロと涙が流れ出ていた。
「哲也くん。順子は(哲也くんは毎日、私のことを熱烈に想っている)と言っているけれど本当なの?」
京子が聞いた。
「ほ、本当です」
哲也は泣きながら言った。
「私も哲也くんが好きよ。世界一愛しているわ」
そう言うや京子は自分の隣に座っている哲也を引き寄せてガッシリと抱きしめた。
「哲也くん。好き。愛しているわ」
そう言いながら京子は哲也を力一杯、抱きしめた。
そして母親が自分の子供にするように頭の髪の毛を優しく撫でたり手をギュッと握ったりした。
初めは受け身だった哲也も、うわーん、と大声を出して泣き出した。
「先生。好きです。ずっとずっと好きでした」
そう言って哲也も京子の体を抱きしめた。
「いいのよ。哲也くん。人に甘えちゃいけない、なんてことないのよ。うんと甘えて」
言われるまでもなく哲也はそういう心境になっていた。
孤児根性で歪んでいた哲也の心は変わっていた。
どんなに人に親切にされても、それを受け入れてもいいんだ、という心境に変わっていた。
「おかあさーん」
哲也はそう言いながら泣いた。
涙がとまらなかった。
哲也は、男はどんなに辛くても人に甘えてはならないと自分に言い聞かせてきた。
男は地獄で笑うものと強がってきた。
しかし哲也は京子に抱きつかずにはいられなかった。
虚勢をはっていても哲也は愛に飢えていた。
哲也は彼女の子宮に入るくらいの、小さな、小さな、小人になって、この世の全ての煩わしいことに悩まされないで済む、彼女の子宮の中に胎児のように入ってしまって、そこで、いつまでも眠りつづけたいと思った。
しかし哲也のそんな思いは誰にも知られたくなかった。
「先生。お願いです。このことは誰にも言わないで下さいね」
京子はニコッと笑って至極当たり前のように「言いませんよ。哲也くん」と言った。
そして「よしよし」と子供を可愛がるように哲也の頭を撫でた。
哲也はいつまでもこうしていたかった。
涙がポロポロと流れて止まらなかった。
哲也は何も考えていなかった。
ただ清々しい満足の中に静かに眠っているかのようだった。
・・・・・・・・・・・・・
哲也はその後、京子の作ってくれたカレーライスを京子と一緒に食べた。
「哲也くん。つらいことがあったら、いつでも私の家に来てね。私が哲也くんをうんと抱きしめてあげる」
京子が言った。
「有難うございます。先生」
哲也がカレーライスを食べながら言った。
もう夜の9時になっていた。
「じゃあ哲也くん。今日はもう遅いから家に帰ろう。私が車で送るわ」
「有難うございます。先生」
こうして哲也は京子のラパンで哲也の住んでいる公団住宅のB501に京子の車で行った。
「先生。今日は有難うございました。おやすみなさい」
「おやすみなさい。哲也くん」
哲也が住宅の中に入って部屋に入るのを見届けると京子はエンジンを駆けて車を出した。
・・・・・・・・・・・・・
翌日。
学校の廊下で京子と哲也がすれ違うと京子は、
「おはよう。哲也くん」
とニコッと会釈した。
「おはようございます。先生」
哲也も笑顔で挨拶した。
哲也は4年B組の前に来た。
よし、言おう、と哲也は勇気を出した。
ガラリと教室の戸を開けると、いつものように皆がワイワイ騒いでいた。
哲也は教室に入ると、ピタリと立ち止まった。
そして皆を見た。
「おはよう。みんな」
哲也は勇気を出して言った。
ワイワイ騒いでいた生徒たちのお喋りがピタリと止まった。
教室はシーンとなった。
皆は一瞬、顔を見合わせて困惑した。
哲也はいつも黙って教室に入り黙って自分の席に着くからである。
どういう心境の変化なのか皆はわからなかった。
しかし心境の変化の理由なんてわからなくても構わなかった。
困惑は瞬時に優しさに変わった。
優しさが皆の心にはちきれんばかりに起こっていた。
「おはよう」
「おはよう。哲也くん」
「よう。哲也。おはよう」
皆が哲也に温かい挨拶をした。
哲也はスタスタと歩いて自分の席に着いた。
哲也は自分の席に着くと隣に座っている大津チサ子という女の子に顔を向けた。
そして大津チサ子に、
「おはよう。大津さん」
と挨拶した。
大津チサ子はクラスで一番、明るく可愛い女の子だった。
「おはよう。哲也くん」
大津チサ子はニコッと微笑して挨拶した。
先生が4年B組の戸を開けた。
いつもは先生が来るまで生徒たちはガヤガヤ騒いでいるのだが今日は皆、静かだった。
皆がガヤガヤ騒ぐから、おとなしい哲也が一人ぼっちになってしまうのだ、ということに皆が気づいたからだ。
京子が教室に入ってきた。
京子は壇上に立った。
「起立」
「礼」
「着席」
がいつものように行われた。
1時間目は国語の授業だった。
「では皆さん。教科書35ページを開いて下さい」
京子が言った。
皆は教科書35ページを開いた。
そこには作家の小説が書かれてあった。
タイトルは「栄小学校の女の先生」で、作者は「浅野浩二」と書かれてあった。
「浅野浩二さんはお医者さんで作家という異色の小説家です。そして何と小学校は栄小学校を出ているのです。この小説は浅野浩二さんの小学4年生の時の自伝のような小説です。読みやすいので皆さん黙読してみて下さい」
京子が言った。
「へー、栄小学校を出ているのか」
「医者で作家なんてすごいな」
二人の生徒がそう言った後、皆は小説を読み出した。
初めは静かだったが10分くらいすると、うっ、うっ、という、すすり泣きをする生徒の声が聞こえてきた。
30分くらい経った。
「みなさん。読み終えましたか?読み終えた人は手を上げて下さい」
京子が聞くとクラスの生徒、全員が手を上げた。
「では感想のある人は手を上げて下さい」
すると何人もの生徒が手をあげた。
京子は誰に指名しようかと迷ったが五十嵐花子を指名した。
「では五十嵐さん。感想を述べて下さい」
京子に言われて五十嵐花子は話し出した。
「この哲也って子、可哀想で可哀想で涙が止まりませんでした。でもラストはハッピーエンドなので、ほっとしました」
次は後藤恵子が指名された。
「無口な子、って何を考えているのか、わかりませんでしたが、この小説を読んでわかりました。マザーテレサの言葉に感動しました」
次は大谷純が指名された。
「この栄小学校から、こんな優れた人が出たことを誇りに思います。この浅野浩二という人は天才だと思います」
等々。
色々な好意的な意見が述べられた。
・・・・・・・・・・・・・
1時間目の授業が終わった。
そしてその日の午後の授業も終わった。
「おい。野球をやろうぜ」と言って野球好きな、いつものメンバーが校庭に出て行った。
哲也はランドセルを背負ってすぐに家に帰るのだが、その日は帰らなかった。
哲也はおそるおそる校庭に出て行った。
そして野球をやっている生徒の一人(高橋)に声をかけた。
「ねえ。僕も入れてくれない?」
高橋は無口な哲也に初めて声をかけられて驚いた。
同時に嬉しくなった。
「おう。大歓迎だよ。哲也はどこのポジションをやりたい?」
高橋が聞いた。
「僕は下手だから外野でお願いします」
哲也が答えた。
「じゃあライトを守ってくれない?」
高橋が言った。
「うん」
哲也は急いでライトの守備位置に行った。
「よし。それじゃあ再開するぞ」
高橋が言った。
ランナーは2塁と3塁に二人いた。
まだノーアウトだった。
ピッチャーがボールを投げバッターが打った。
それはレフトの浅いフライになった。
哲也はそれを、おぼつかない足取りでキャッチした。
犠牲フライになれると思って、タッチアップで3塁ランナーがホームへ走った。
哲也はキャチャーめがけて思い切りボールを投げた。
しかしボールは暴投になってしまって3塁ランナーは楽々とホームインした。
「ドンマイ。哲也」
「でもよくフライとったな」
京子は教員室からその光景を見ていた。
京子は泣き崩れて、立っていられなくなり座り込んでしまった。
涙があとからあとから出続けて、それはいつまで経っても止まらなかった。


2025年8月31日(擱筆)








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東日本大震災(小説)

2025-07-20 21:21:30 | 小説
浅野浩二のHPその2

東日本大震災

ある中学校である。
偏差値の高い進学校である。
山野哲也はその中学にトップの成績で合格した。
佐藤京子もトップの成績で合格した。
哲也はガリ勉ではなかった。
哲也は将来は東大に入って官僚になったり大企業に入って出世したいという上昇志向はなかった。
基本的に哲也はニヒリストだった。
ただ勉強で人に負けるのが嫌いで小学校でも全科目トップでなければ気がすまなかったかのである。
哲也は小学校の時一刻も時間を無駄にしない主義の子供だった。
こんな子供はめずらしい。
だが1000人に一人くらいはいるものである。
哲也はくだらない漫画やテレビアニメやスマホゲームなどは一切しなかった。
そういうことをしている同級生を見るとバカにしか見えなかった。
だからといって哲也に将来の夢があったわけではない。
何事にも負けず嫌いだったから勉強に打ち込んでいただけのことである。
そうして哲也は都内でも有数の進学校に首席で合格したのである。
佐藤京子も女子では首席で入った。
京子はとても可愛らしい容貌だった。
「山野哲也くん。よろしく」
と入学して数日すると京子の方から哲也に接近してきた。
その笑顔から京子が哲也に好感をもっていて友達になりたがっていることを哲也は直感ですぐに感じとった。
「クッキー作ってみたの。よかったら食べてくれない?」
などと言って京子はクッキーのたくさん入った袋を哲也に渡した。
しかも周りに人のいない時に。
他の男子生徒には渡さず哲也だけに渡していたことからも京子が哲也と友達になりたがっていることは明らかだった。
京子のクッキーは美味かった。
・・・・・・・・・・
一方、哲也の方はどうかといえば。
哲也は京子にそれほど好感をもってはいなかった。
それは哲也は女とつき合うこともナンセンスだと思っていたからである。
それは京子に限らずどんなに美しい美形の女に対しても同様だった。
女と無駄話をして時間を無駄に過ごすより勉強したり読書したりすることに時間を使う方が有意義だと思っていたのである。
ただ哲也は京子は嫌いではなかったし京子のような頭のいい生徒となら知性的な有意義な会話が出来るし友達はもっていた方が何かと有利であるから哲也は京子と友達になった。
そういう理由で哲也は京子と友達になったので二人の付き合いは学校にいる時だけにした。
京子が「今度の日曜ディズニーランドに行かない?」とメールを送ってきても「用があるから行けない」と素っ気ない返信メールを送った。
哲也にとってはディズニーランドで一日遊んで一日を無駄に過ごすより勉強することの方が有意義だったからである。
哲也にとっては「遊ぶ」という行為は貴重な人生の時間を無駄に過ごすことと思われた。
しかしやっぱり考え直して「若い時の経験は貴重だ」と思って行くことにした。
実際に人間の活動というものを見ることは人間観察の社会研究になる。
なので哲也は京子とディズニーランドに行った。
・・・・・・・・・
学校では休み時間には一緒に勉強した。
お互いに勉強でわからないことを教え合うのはもの凄く有意義だった。
哲也がそういう自分に親しげな態度をしているので京子は哲也が自分に好感をもってくれているのだと思っていた。
・・・・・・・・・
しかし哲也に困ったことが起こり出した。
それは人間である以上免れられない思春期の第二次性徴が哲也に起こり出したことである。
哲也は陰毛が生え出し髭が生え出し声変わりし出し金玉やおちんちんが大きくなりだした。
そして女子生徒も日ごとに胸がふくらみ出した。
それが人間の成長であることはもちろん哲也は知っていた。
そういう外見的なことだけなら哲也にとって何ら問題はなかった。
哲也にとって困ったことは内面的精神的なことである。
女が同級生も大人もやたらと綺麗に見え出した。
性欲も小学生の頃からあったがそれはエッチなこと以外の他の色々な事。勉強や遊びと等価なことであり、どっちか面白い方を選べばすむことだった。
しかし今の哲也の性欲は違った。
毎日毎日いつもいつも女の裸のことばかりが頭に浮かんでしまってそれは自分の意志で止めることが出来なかった。
京子と一緒にいる時も京子の胸のふくらみが気になってしまって、また京子にエッチなことをしたくて仕方がなくなり、またそんなことばかりを考えてしまう自分に嫌悪が起こったり顔が赤面したり手が震えたりして京子と会話が出来なくなってしまった。
「哲也くん。どうしたの?何だかこの頃変よ」
と京子に言われても、
「い、いや。別に。なんでもないよ」
と哲也はあやふやな返事をするしかなかった。
・・・・・・・・・
家に帰って「さあ。勉強しよう」と思っても女のことばかりエッチなことばかりが頭に浮かんで勉強が手につかなくなってしまった。
いつまで経っても性欲はおさまらないので哲也はあきらめて一時、勉強を中止しベッドに寝転がった。
そしてパソコンのインターネットを開いてエッチなサイトを見た。
裸の女の画像やエッチな無料動画をおちんちんをしごきながら見た。
見ることによって少しは性欲の精神的な重圧が解消された。
哲也は小学校4年の時から保健・体育の授業で性教育の授業を受けた。
哲也は学究熱心だったのでセックスという行為や人間がセックスによって生まれることは知っていた。
しかし知識は官能の欲求の解決には何の役にも立たない。
哲也は孤高の人なので、他人の陰口しかしない同級生を、はなからバカにしていたので彼らとは口を聞かなかった。
なので同級生がマスとかカルピスとか言ってもマスターベーションの仕方を知らなかった。
なので哲也はインターネットを開いてエッチなサイトを見てそれによって多少性欲が満足されてから勉強にとりかかるようになった。
見たい物を見ないでいると欲求不満はますます高じてしまう。
見ることによって多少は欲求不満は解決する。
・・・・・・・・・・
学校で京子と話していてもどうしても京子の胸のふくらみが気になってしまう。
哲也が京子と友達になっておいたのは正解だった。
京子の方でも思春期の第二次性徴によって日に日に胸がふくらみ女らしい体つきになっていき、哲也を異性として意識し恥らうようになっていく態度がありありと見えた。
哲也はスキンシップを装って京子の肩に触れたり、頭を撫でるという口実でそっと髪を撫でたりした。
胸や太腿も触りたかったが京子がどう反応するかこわくて出来なかった。
小学校の時、女子生徒にスカートめくりとかエッチなことをする男子生徒は先生に厳しく注意されていたのを見ていたこともあるし、女の子も本気で嫌がっていたのを見ているので女の子は男にエッチなことをされるのは嫌なのだろうと思っていた。
しかしインターネットのエッチな動画では女はエッチなことをされて喜んでいる人もいるので女の心理が哲也にはわからなかった。
女にもエッチなことをするのが好きな女とエッチなことをするのが嫌いな女がいるのだろうと哲也は思った。
勉強が好きな人間と勉強が嫌いな人間がいるように。
京子はエッチなことをするのが好きな方の女なのかエッチなことをするのが嫌いな方の女なのか哲也にはわからなかった。
しかし真面目で勉強熱心な女はエッチなことは嫌いな方の女だと哲也は考えた。
しかし京子は肉づきがよく京子と話しているとどうしても性欲が高じてしまった。
ある日の夜のことである。
哲也は夢を見た。
それはこんな夢だった。
学校が終わって放課後近くの公園の芝生に座って哲也は京子と数学の勉強を教え合っている。
哲也はそっと京子の肩や背中を撫でた。
そしてそっと京子の太腿を触った。
「あっ。哲也くん。そこは触らないで」
と京子が慇懃に断った。
しかし哲也は性欲をおさえることが出来ず京子を押し倒し「いやっ。いやっ」と嫌がる京子を無視してセーラー服を無理矢理脱がしブラジャーもパンティーも脱がして丸裸にして京子の胸を揉み京子の股間を触った。
おちんちんから何かオシッコとは違う液体が出た。
最高の快感だった。
その時ガバッと哲也は目を覚ました。
夜中の3時だった。
「ああ。夢だったのか。しかしいい夢だったな。気持ちよかったな」
と哲也は快感の余韻に浸った。
しかしパンツの中がなにか変な感じがした。
パンツの中に手を入れてみると濡れていた。
哲也は電気をつけパンツを脱いだ。
パンツは濡れていた。
匂いを嗅いでみるとなんだか変なしかしちょっぴり蠱惑的な今まで嗅いだことのない匂いがした。
「これが精液なんだな」
と哲也は人生で初めてのことに驚いた。
・・・・・・・
翌日学校で京子と会った。
「哲也くん。おはよう」
と京子は屈託のない笑顔で哲也に挨拶した。
「や、やあ。おはよう」
と哲也も挨拶した。
その日の昼休み。
哲也は京子と校庭のベンチに隣り合わせに座って数学の勉強を教え合った。
昨日の夢と重なって京子を校庭ではなく誰もいない公園でいきなり押し倒したら京子はどう反応するだろうかと哲也は冷静に考えてみたがわからなかった。
昨日の夢では京子を無理矢理、裸にして胸や股間を触ったところで目が覚めてしまったのでその後京子が「ひどいわ。哲也くん。もう絶交するわ」と泣きながら言うのか「あんまり乱暴なことはやめてね」と寛容的で穏便なことを言うのかはわからなかったからだ。
しかし哲也は京子と話していてもそれほど性欲にさいなまされなかった。
それは昨日射精して金玉に溜まりに溜まっていた精液が無くなっていたからである。
しかし思春期の男の性欲は激しく一回射精しても金玉では精液があとからあとからどんどん量産される。
なので京子と話しているうちにまた哲也は京子にエッチなことをしてみたいという欲求が起こってきた。
その日の夜も哲也はインターネットのエッチな動画や裸の女の画像をハアハア興奮しながら見た。
・・・・・・・・・・
それから数日後のことである。
その日から体育教師が代わって男のきびしい先生になった。
それまではそんなに厳しい先生ではなかった。
新しい体育教師は名前を増岡修三といって元陸上競技選手でオリンピックにまで出たほどのバリバリの熱血漢でやたら「世界。世界」という言葉を連発するスパルタ教師だった。
それまでは体育は軟式テニスやサッカーやソフトボールなど生徒の好きなものを適当にやっていたが、この熱血教師は「お前たちは基礎体力が全然ない。そんなことで世界に通用するか?」とわけのわからないことを言って怒鳴った。
それで初日に生徒は全員フルマラソンの半分のハーフマラソンと腕立て伏せ300回とスクワット300回をやらされた。
生徒達は体育の授業でクタクタに疲れてしまった。
・・・・・・・・・・
その日の放課後。
「京子ちゃん。疲れちゃったね」
と哲也が言うと
「ええ。クタクタだわ。明日から筋肉痛がジーンと起こってくるわよ」
と京子が言った。
「筋肉痛だと勉強に集中できないな」
と哲也が言った。
「そうね。困ったわね」
と京子が言った。
哲也はあることを閃いた。
「ねえ。京子ちゃん。僕の家に寄っていかない?」
と哲也が聞いた。
「ええ。いいわよ」
と京子は用件も聞かずに受け入れた。
なので二人は一緒に哲也の家に入った。
以前にも哲也は京子を勉強で自分の家によんだことがあった。
二人は哲也の家に入った。
「お母さんは?」
京子が聞いた。
「お母さんはパートで働いているよ」
と哲也が答えた。
二人は哲也の部屋に入った。
「ねえ。京子ちゃん。今日は疲れたね」
「ええ」
「ほっといたら明日からジワーと筋肉痛が起こってくるよ」
「そうね。心配ね」
「じゃあ二人でマッサージしない?」
哲也が聞いた。
「いいわよ」
京子は屈託なく賛同した。
「じゃあ最初に京子ちゃんが僕をマッサージして。その後僕が京子ちゃんをマッサージするよ」
哲也が言った。
「わかったわ」
京子が言った。
それで哲也はベッドの上に乗りうつ伏せになった。
「京子ちゃん。やって」
哲也が頼んだ。
「はい」
京子はうつ伏せの哲也のふくらはぎから太腿、背中へと哲也の体を揉んでいった。
「ああ。気持ちいい」
哲也はマッサージされながら満足げに言った。
実際京子のマッサージは上手かった。
「京子ちゃん。ありがとう」
「どういたしまして」
京子は少し得意げに言った。
「京子ちゃん」
「なあに?」
「京子ちゃんも疲れるでしょう。背中や肩は僕の背中にまたがって体重を乗せてやって」
哲也が言った。
「わかったわ」
京子は哲也の尻の上にまたがって両手で背中や肩を指圧した。
「ああ。気持ちいい」
哲也はほんわかとした口調で言った。
実際京子のマッサージは気持ちよかった。
しかしマッサージ以上に気持ちのいいことがあった。
それは。
京子はセーラー服姿なので哲也にまたぐことによって京子のパンティーに覆われた尻が哲也の尻に触れているので京子の柔らかい尻の感触が気持ちよかったのである。
京子の尻を触ったことなど一度もない。
触ることなど出来ようはずがない。
人間の体は全ての部位に触覚がある。
もちろん尻にもある。
一番触覚の多い所は手だから一般的に「触る」というと「手で触る」ことを意味するが尻にも触覚はあるのである。
手ほど敏感ではないが。
しかし哲也は尻と尻が触れ合っていることに性的な快感を感じていた。
京子は哲也をマッサージし続けた。
京子は真面目でそれに哲也を好いているのでいつまでもマッサージを続ける。
哲也が「もういい」と言うまで続けるだろう。
なので十分マッサージを受けてマッサージと京子の尻の感触を十分に堪能した頃合いに哲也は、
「京子ちゃん。ありがとう。もういいよ」
と言った。
「どういたしまして」
そう言って京子はベッドから降りた。
「じゃあ今度は僕が京子ちゃんをマッサージするよ。さあベッドの上にうつ伏せに乗って」
哲也がそう言うと京子は、
「はい」
と素直に返事してベッドに乗ってうつ伏せになった。
今度は哲也が京子のマッサージを始めた。
ふくらはぎを念入りに揉み始めた。
「ああ。気持ちいいわ。哲也くん」
京子は目をつぶってリラックスしきって哲也に身を任せきっている。
哲也は京子のふくらはぎを念入りに揉んだ。
そしてその次には京子の腕を念入りに揉んだ。
もちろん哲也は人体のツボなど知らないが京子の体を隈なく指圧した。
じっくり時間をかけて。
すると。
クークーと京子の寝息が聞こえてきた。
京子は今日の体育のハードなトレーニングに加えてその後休みもなく一時間もかけて哲也を精一杯マッサージしたので疲れ切っていて寝てしまったのである。
頬の筋肉が完全に緩んでいることからまずタヌキ寝入りではなく本当に寝てしまったのだと哲也は確信した。
これは最初からの哲也の計算だった。
哲也は京子が起きないよう細心の注意を払ってそっと京子のスカートをめくってみた。
白いパンティーに覆われた大きな柔らかそうな尻が丸見えた。
哲也は激しく興奮した。
ネットの画像では何度も見ているが、現実の女のパンティーを目の前で見るのは初めてなので無理はない。
パンティーのクロッチ部分に哲也は興奮させられた。
哲也は京子が起きないよう気をつけながらそっとパンティーの上から京子の尻を触ったり撫でたりした。
そしてスマートフォンで京子のパンティー姿を撮った。
パンティーを降ろしてみたかったがそんなことをしたら京子が起きてしまいそうなのでさすがにそれは出来なかった。
その代りパンティーの縁からそっと中に少し指を入れてみた。
哲也は激しい興奮でびんびんに勃起していた。
そして尻だけではなく尻に続く太腿も念入りに触った。
太腿ならマッサージする所だから問題はなかった。
哲也は京子の尻を触りながら太腿をマッサージした。
そして哲也はさっき京子がしたように京子の尻の上に馬乗りなった。
そして京子の背中や肩を指圧した。
京子は泥のように疲れているのだろう。
そしてマッサージが京子の体に心地いい刺激を与えているのだろう。
哲也が力を入れて京子の体を指圧しても京子はビクとも言わなかった。
クークー寝息を立てているだけである。
しかし哲也はうつ伏せの京子にまたがって尻を乗せている。
哲也はびんびんに勃起している。
なので哲也はそっと勃起した股間を京子の尻にくっつけた。
お互い服を着ていてるが性器と性器をくっつけたことに哲也は激しく興奮した。
しかし京子が起きてしまうのは命取りなのでほんの触れるだけにとどめた。
京子のセーラー服からはブラジャーの紐が透けて見えた。
それも哲也を興奮させた。
哲也は一心に京子をマッサージしたが京子は寝息を立てているだけで起きないので哲也はそっと体を倒して京子の背中に自分の体をピタリとくっつけてみた。
これは男が女を背後から抱きしめている図である。
ほんの僅かな時間だったが哲也は最高の酩酊を感じた。
そして哲也はベッドから降りた。
もう十分京子の体を触る快感を堪能したからだ。
哲也は京子の頬っぺたを指で触れてみた。
しかし京子は起きない。
なので哲也はベッドの傍から京子の頬っぺたにそっとキスした。
それでも京子は起きない。
哲也は非常に慎重に一瞬だけ京子の唇に自分の唇を触れさせた。
幸い京子は起きなかった。
・・・・・・・・
もう空が暗くなっていた。
哲也の携帯がピピッと鳴った。
メールの着信音だった。
哲也は受信メールを開いた。
母親からだった。
「哲也君。今仕事が終わりました。これから帰ります。母」
と書かれてあった。
別に京子と家にいるところを見られても困ることはないが、やはり今日のことは母親にも気づかれたくなかった。
母親が不在中に思春期の男と女が二人きりというのはやはり母親に猜疑心を起こさせる。
それで哲也は寝息を立てて熟睡している京子を揺さぶった。
「京子ちゃん。起きて。マッサージもう終わりにしよう」
と声を掛けながら。
京子は体育の授業の疲れと哲也のマッサージの心地よさから熟睡していて揺さぶってもなかなか起きなかった。
哲也は揺さぶる強さと声を大きくした。
それでやっと京子も目を覚ました。
ポカンとした寝ぼけまなこで。
「あっ。哲也くん。マッサージありがとう。気持ちよくて眠っちゃった」
そう言って京子は大きく伸びをした。
「疲れがとれたわ。これで筋肉痛にならないですむわ」
京子はニコッと笑って言った。
「京子ちゃん。もう遅くなったから家に帰った方がいいよ」
哲也が言った。
「わかったわ。哲也くん。今日はありがとう。じゃあ私帰るわ」
京子が言った。
「僕の方こそありがとう」
哲也も礼を言った。
こうして京子は哲也の家を出た。
・・・・・・・・・
哲也は呆然と夢心地に浸っていた。
女の体を心ゆくまで触ったのは生まれて初めてなので無理もない。
一瞬だか軽くキスもしたのである。
京子が帰った後ベッドの上には京子の髪の毛が数本あった。
それも哲也は興奮した。
しかし神経質で疑り深い哲也には一つの心配があった。
それは哲也が京子をマッサージしていた時、本当に京子は眠っていたのかということである。
外見からは明らかに眠っているように見えた。
寝息も立てていたし頬の筋肉も弛緩していた。
しかし本当に寝ていたのかどうかは京子本人にしかわからないのだ。
哲也がしたことは京子の了解を得ないで京子の体を触ったことであり、女の同意を得ないで勝手に女の体を触ることは、いくら自分に好意を持ってくれている仲の良い友達関係とはいえ、よくない行為なのだ。
しかも哲也は京子が疲れ切っているからきっと眠ってしまうだろうから、その間に京子の体を触ってやろうと計画していたのだ。
もちろん哲也はよくない事をしたことに罪悪感を感じていたが。
もしかすると京子は寝ている間にエッチなことをされたと気づいたり疑ったりするかもしれない。
それによって京子が哲也を嫌いになったり遠ざかったりするのではないかという不安が哲也にはあった。
京子はカンがいい。
しかし今まで京子とつき合ってきて京子は真面目で明るく小細工をするようなことは一度もしたことがない。
寝たふりをして哲也の人格を試すようなことをするとはとても思えなかった。
ともかく。
京子が本当に寝ていたのかどうかは京子本人だけにしかわからないのだから、そのことはいくら考えても結論は出ないのだから哲也はそのことを考えるのはやめた。
しかし京子の素直な性格からしてまず京子は本当に寝ていたのだと信じることにした。
もうそれ以上疑うことはやめた。
そうするとぐっと肩の荷が降りた。
そして哲也は京子の体の感触を思い出して何度もその快感を牛のように反芻した。
・・・・・・・・
その時。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。
「ただいまー」
哲也の母親が帰ってきた。
哲也は急いで階下に降りた。
「おかえりなさい」
と哲也は言った。
「すぐに夕ご飯を用意するわ。お腹減っているでしょう?」
母親はそう言ってキッチンに向かった。
哲也はすぐにまた二階の自分の部屋にもどって京子との快感を反芻した。
しかしすぐに、
「哲也くん。ご飯ができたわよ」
と母親に呼ばれた。
ので階下に降りて食卓についた。
その晩の夕ご飯はカレーライスだった。
哲也は半年前から母親と二人暮らしである。
哲也の父親は大阪の会社に出向していていないのである。
今日の体育の授業の激しい運動で疲れ切ったが、その疲れは京子の精一杯のマッサージによって無くなっていてさらに初めて女の体を触った快感で、哲也は食欲旺盛の状態だったのでかきこむように食べおかわりを母親に求めた。
「哲也くん。なんだか随分嬉しそうね。何かいいことでもあったの?」
母親が聞いた。
「いや。別に」
哲也は笑顔で首を振った。
「さっき家の近くで京子ちゃんを見かけたわよ。家に寄ったの?」
母親が聞いた。
哲也はドキリとした。
「いいや。寄ってないよ」
哲也は焦って言った。
「そう。随分遅い時間だったけれど何をしていたのかしら?」
母親が独り言のように言った。
「さあ。わからないね」
哲也は内心焦りながら首を傾げて言った。
哲也はカレーライスを特盛りで二杯食べた。
「ごちそうさま」
哲也は手を合わせて頭を下げた。
そして二階の自室に入った。
あぶないあぶないと哲也は胸をほっと撫で下ろした。
母親は職場からの帰り道で家の近くで京子を見かけたのだ。
もし母親が京子に「こんばんは」と声を掛けて京子が「今哲也君とマッサージしてました」などと言っていたらちょっとやっかいだった。
京子は正直で隠しごとなどしないで何でも話すからだ。
しかし母親の態度から母親は夜目に京子を見かけただけで、声はかけず会話しなかったようだ。
そのことに哲也はほっと胸を撫で下ろした。
・・・・・・・
その時ピピッとスマートフォンの着信音が鳴った。
京子からのメールだった。
それにはこう書かれてあった。
「哲也くん。マッサージ気持ちよかわった。ありがとう。おかげで筋肉痛にならなくてすみそうだわ。京子」
哲也はそれを見てほっとした。
単純な文章だが文章からも京子はマッサージの最中に寝てしまったように感じられたからだ。
哲也は寝ている間に京子の体を触ったがマッサージもしっかりやったのだ。
なので哲也は京子はマッサージの気持ち良さに寝てしまって悪戯には気づかなかったのだと確信した。
「僕も気持ちよかったよ。ありがとう。お休みなさい。哲也」
と書いて哲也は返信メールを京子に送った。
哲也は返信メールで「また体育の授業の後はマッサージし合いませんか?」と書きたかったがマッサージしたすぐ後に京子にそれを提案すると京子に疲れをとる目的以外の下心を見抜かれるかもしれないと思ったのでそれは書かなかいことにした。
また次の体育の授業が終わって疲れている時に「ねえ。またマッサージしない?」と聞けばその方が自然で下心を疑われないだろうと哲也は思った。
・・・・・・・・・・
哲也はその夜布団に入ってもなかなか眠れなかった。
というか眠らずに京子の体を触ったことを何度も思い出して反芻して快感を味わった。
スマートフォンで撮った京子のパンティーの写真を見ながら。
また京子が帰った後ベッドの上には京子の髪の毛が数本あった。
それを見ながら。
哲也は今まで女の体を触ったことがなく写真や動画でしか女の体を見たことがない。
哲也は動画より写真の方が好きだった。
写真をじっと見ていると写真では女は動かないから、あたかも彫刻を見ているような気分になり女の体は大理石のように硬いもののように錯覚してしまっていた。
しかし今日京子の体を触って女の体は柔らかいものであるということを実感した。
哲也は京子の尻や寝姿の写真を見ながら、そして今日のことを思い出しながらおちんちんを揉んでみた。
哲也はマスターベーションということはネットで検索して知っていた。
夢精でなくてもおちんちんをしごくことによって射精できるらしい。
学校でも「オレ。昨日マスかいちゃったよ」などと言う男子生徒の発言は聞いていた。
哲也も一度試してみたことがあったがダメだった。
勃起して性欲の興奮は高まるが精液は出なかった。
これはひとえにマスターベーションはもっと激しく力一杯しごかなければ射精しないというごく基本的なことを知らなかったからだけである。
他の男子生徒をバカにして友達がいないのでマスターベーションの基本を知らなかったのである。
それに哲也は包茎なのであまり強くしごくとおちんちんが痛くなるので激しくしごくことは出来なかった。
しかしエッチな動画を見て性欲が高まった時、勃起したおちんちんを揉んでいると気持ちがいいのでそれだけにとどまっていた。
哲也はその夜遅くまで京子の体を触ったことを何度も思い出して勃起したおちんちんを揉みながら反芻して性欲の快感を味わった。
その日の興奮が激しかったためその夜も哲也は夢精した。
・・・・・・・
翌日。
学校では生徒みんなが筋肉痛を訴えていた。
「太腿がジーンと痛くて昨日は勉強できなかったよ」
「私はふくらはぎがまだ痛いわ」
「私も」
「私もよ」
そんな会話をみなが脚をさすりながら言っていた。
「おはよう」
京子が元気に教室に入ってきて哲也の隣りにやって来た。
そして哲也の隣りに座った。
「哲也くん。昨日はありがとう。おかげで筋肉痛にならずにすんだわ」
京子はニコッと笑って哲也に言った。
「あ、ああ。僕もさ」
哲也は恥ずかしそうに顔を赤くして答えた。
「ねえねえ。京子。京子は筋肉痛じゃないの?どうしたの。何かしたの?」
京子の隣りにいた順子が訝しそうな顔で京子に聞いた。
「えっ」
と京子は一瞬答えるのをためらった。
そして哲也の顔を一瞬見た。
哲也の判断を求めるかのように。
哲也はうつむいて黙っている。
「い、いえ。何もしていないわ」
京子は顔を赤くして順子に言った。
哲也は内心ほっとした。
京子は正直で隠し事はしない性格だが、またお喋りでもなく余計なことは言わない性格でもあった。
京子は哲也の顔を一瞬見てなんとなく哲也の思いを察したのだろう。
また京子も昨日哲也と二人でマッサージしあったなどと他人に言うのは恥ずかしそうな様子も見えた。
思春期は体の発達と同時に異性に対する恥じらいが起こってくる時期でもある。
小学生の時は男女は互いに相手の性別を意識することはあまりないが中学生になると男は女を女は男を異性として意識して恥らうようになるのである。
もちろん京子にもその兆しが起こり始めているのを哲也は日頃からの京子の態度から感じとっていた。
哲也はほっとした。
昨日マッサージしあったことはクラスの他の生徒には知られたくなかったからだ。
昼休み。
哲也と京子は二人で校庭に出てベンチに腰かけた。
「ねえ。京子ちゃん」
「なあに?」
「昨日マッサージしあった事誰かに言った?」
「ううん。言ってないわ」
「お母さんにも?」
「うん。言ってないわ」
「どうして?」
「だって恥ずかしいもの」
京子は顔を赤くして言った。
それを聞いて哲也はほっと安心した。
「哲也くんは誰かに言った?」
今度は京子が聞き返した。
「僕も誰にも言ってないよ。人に知られるとちょっと恥ずかしいからね」
「そうだろうと思ったわ」
京子が言った。
京子はカンが良く相手の気持ちを推測する能力が高いのである。
「ねえ。京子ちゃん」
「なあに?」
「昨日マッサージしあった事は誰にも言わずに秘密にしない?」
「ええ。そうね。そうしましょう」
こうして哲也はいとも簡単にさりげない会話で自分の持っていきたい方向に京子を説得することに成功した。
哲也としては京子に「また今度の体育の時マッサージしようよ」と言いたかったのだが翌日にすぐそう言うのは恥ずかしく言えなかった。
また今度の体育の授業の後にさりげなく言おうと思った。
・・・・・・・・・
哲也は次の体育の授業が待ち遠しくなった。
明日が増岡修三の体育の授業だった。
生徒達は「あー。嫌だな。また筋肉痛に悩まされるよ」と愚痴を言っていた。
哲也も授業でのハードなトレーニングは嫌だったが、しかし哲也は密かに喜んでいた。
明日の体育の授業が終わったら放課後、京子に「ねえ。今日もマッサージしない?」と言おうと思っていたからである。
・・・・・・・・
しかしその日予想外のことが起こった。
熱血体育教師の増岡修三が他のクラスの体育の授業でハードなトレーニングを生徒に課して生徒の二人が疲労骨折を起こしてしまったのである。
負傷した生徒の母親はパワハラの行き過ぎたスパルタ教育と学校に抗議した。
学校としてはことなかれ主義なのでニュースにでもなったら学校の恥なので体育教師の増岡修三は責任問題が起こる前に依願退職ということで辞めさせられてしまった。
生徒達はみな「やった。これであいつのパワハラ授業がなくなる」と喜んだ。
しかし哲也はちょっと、いやかなり残念だった。
なぜなら体育の授業でハードな練習がなくなってしまったので京子にマッサージをしようという口実がなくなってしまったからだ。
・・・・・・・・・・
翌日は体育の授業はなかった。
・・・・・・・・・・
なので哲也は京子とマッサージする口実を失ってしまったのでマッサージは出来なかった。
唯一京子の方から「体育の授業はなくなったけれどマッサージ気持ちよかったからまたしない?」と言ってくるのを期待した。
しかし京子は言ってこなかった。
一回最高の快感を味わっておいてその後それが出来なくなることほど欲求不満になることはない。
欲求不満というより性欲の欲求が激しく高まった。
・・・・・・・・・
夏が近づいてきた。
特別授業で。
新しく来た体育教師は井村雅代という女のおばさんだった。
このおばさんは元シンクロナイズドスイミングの選手で引退した後はシンクロナイズドスイミングのコーチをしてきた人だった。
体育の授業は水泳が多くなった。
この中学では水泳の授業は男女一緒にやった。
男は水泳の授業はずっとつづけて泳がされた。
女子生徒はハイレグ水着を着せられてシンクロナイズドスイミングの練習をさせられた。
「あなた達は将来の日本シンクロの星になるのよ」
というのが彼女の女子生徒たちに対する口癖だった。
で女子はハイレグ水着でシンクロナイズドスイミングをやらされた。
かなり厳しかった。
しかしそれは女子だけだったので男子は別に困らなかった。
女子生徒たちはハイレグ水着を男子生徒に見られるのが恥ずかしそうだった。
男子生徒たちの視線がチラッチラッと女子生徒たちに向かった。
もちろん男子生徒たちの視線は女子の股間の盛り上がりの部分に集中した。
女子生徒たちは恥ずかしがっていたが隠そうとする行為はますます恥ずかしくなってしまうので女子生徒たちは手のやり場に困った。
スマートフォンで時々女子生徒を写真に撮る男子生徒もいた。
哲也も京子のハイレグ水着姿を見た。
京子は哲也の視線に気づくと恥ずかしそうに顔を赤らめた。
クラスでは京子が一番可愛かったので男子生徒たちの視線は京子に集中した。
翌日。
男子生徒たちは「あー。昨日女子の水着の写真見ながらオナニーしちゃったよ」などと言う者もいた。
哲也もクラスの男子生徒から京子の水着姿の写真をもらった。
哲也は京子のパンティーの写真はもっているが水着によるプロポーションの美しさはそれ以上に美しくまた興奮させられた。
・・・・・・・・・・・
学校からの帰り道。
哲也と京子は一緒に帰るのが習慣だったが、ある時、哲也が「京子ちゃんの水着姿かわいいね」と言うと京子は顔を赤くして「いやだわ。恥ずかしいわ」と言った。
京子も思春期の恥じらいがあるのだなと哲也はあらためて感じさせられた。
・・・・・・・・・・・
クラスでは男子生徒の誰と女子生徒の誰がつきあっているとかキスしたなどという噂も流れるようになった。
女子生徒はお洒落する生徒が出てきた。
一人がピアスをつけたりマニキュアをつけたりと、お洒落するようになるとそれは他の女子生徒にも広まった。
・・・・・・・・・・・
ある保健体育の授業のことである。
その時は性教育を担任教師が教えた。
女の性器を書いた図を見せ、これがクリトリス、これが膣などと言ってその構造や機能を説明したり女の生理のことや男の性器のことセックスや妊娠する原理などを詳しく説明した。
女子生徒たちはキャーキャー騒ぎ声を上げていたが男子生徒たちは興味津々に聞き入っていた。
この時は勉強嫌いな男子生徒も目を皿のようにして授業を聞いた。
担任教師は、
「君たちは思春期だから異性に関心があるだろう。女子も初潮をむかえている者も多いだろう。しかし安易に性行為をすると妊娠する危険がある。しかし君たちにはまだ親となる経済力は無い。だから最低でも高校を卒業して大人として親から自立して結婚するまで性行為は我慢しなさい。友達としてつき合う分にはいいが君たちにはキスもペッティングもまだ早い。決してしてはいけないよ」
と厳しく注意した。
・・・・・・・・・
7月になった。
レジャープールが開館した。
7月の最初の日曜日のことである。
哲也は前日の夜、京子に「明日。豊島園に行かない?」と書いたメールを京子に送った。
京子からは「わかったわ。行くわ」という返信メールが来た。
・・・・・・・・・・
翌日の日曜日。
哲也は朝早く家を出て京子の家に行った。
ピンポーン。
「はーい」
チャイムを押すと家の中でパタパタと玄関に向かう足音が聞こえた。
玄関が開いた。
京子の母親が出た。
「こんにちは」
哲也は挨拶した。
「あら。哲也くん。こんにちは。どうぞ中へ入って」
京子の母親が言った。
哲也は京子の家にあがった。
哲也は居間に通されてソファーに座った。
「京子ー。哲也くんが来たわよ。降りてきなさい」
母親は階段の所から二階に向かって大きな声で京子を呼んだ。
しばしして京子が降りてきた。
「おはよう。京子ちゃん」
「おはよう。哲也くん」
一緒に大学生くらいの女性が降りてきた。
初めて見る女性である。
「こんにちは。じゃなくはじめまして。哲也君。君のことは妹から聞いています」
「は、はじめまして」
哲也はあせって挨拶した。
同時に哲也は驚いた。
京子に姉がいるとは聞かされていなかったからだ。
京子の誠実な性格からして姉がいるなら言っているはずだ。
哲也は疑問に思った。
「私。大坂の私立の中学から大学まである一貫校に行っているの。父親が大阪だからね。それで学校の寮で生活しているの。夏休みでこっちに帰ってきたの」
そう京子の姉は説明した。
「あっ。言い忘れたけど名前は冴子っていいます。大学一年生です。よろしく」
姉は早口でまくし立てた。
「よ、よろしく」
哲也はあらためて挨拶した。
姉の冴子はアカぬけた感じの女性だった。
哲也は首を傾げた。
京子はお喋りではなく余計なことまでは言わないが姉がいるなら「姉がいます」と言う方が普通である。
たとえ兄弟姉妹の有無について聞かれなくても。
哲也は今までに京子の兄弟姉妹について聞いたことがあったかどうか思い出そうとしてみた。
だが聞いたことがあったかどうだかは思い出せなかった。
しかし姉がいるのなら京子の真面目な性格からして「姉がいます」と言ってもおかしくないはずだ。
その方が普通のはずだ。
なぜ今まで京子は言わなかったのか哲也にはその理由がわからなかった。
「京子ちゃん。今日さあ。豊島園に行こう」
哲也はそのことは後まわしにしてとりあえず豊島園に行くことを催促した。
「え、ええ。私も行きたいけれど・・・」
と言って京子はその続きを言わなかった。
言葉を濁した。
京子は何だか行きたがらなさそうな顔つきをしている。
哲也はその理由を考えてみた。
水着姿を見られるのが恥ずかしいのだろうか?
しかしあれは体育の授業で女子は普段はいつも制服姿なのにそれが水着姿を男子生徒たちに見られてしまうというギャップが恥ずかしいのである。
京子も少し恥ずかしそうだったがそれほど京子は神経質ではない。
それにレジャープールに仲のいい男女が一緒に行くことは普通のことで恥ずかしがる理由もないはずだと哲也は疑問に思った。
レジャープールでは老若男女みな水着姿になるのは当たり前のことで皆が水着姿だから恥ずかしくないはずだし、それを恥ずかしがっていたらレジャープールが成り立たなくなる。
「あのね。哲也くん。京子は今生理で体調が悪いの。でも自分からは言いにくいから言えないのよ」
姉の冴子が京子に代わって説明した。
なるほどと哲也は思った。
「哲也くん。よかったら私と行かない?」
冴子が元気に言った。
なるほどと哲也は納得した。
京子は思いやりがあるので「体調が悪いから行きたくないです」とは言えない性格である。
「はい。行きます」
と哲也は冴子の誘いに答えた。
「ごめんね。哲也くん」
冴子の隣りに座っていた京子が言った。
「いや。いいんだよ。ちょっと残念ではあるけど」
と哲也は言った。
「よし。じゃあ行こう」
姉の冴子が言った。
哲也と冴子は立ち上がった。
そして玄関を出た。
「じゃあ行ってきます」
そう二人は京子と京子の母親に言った。
冴子は家のガレージにあるマーチのドアを開けた。
「さあ。哲也くん。乗って」
そう言って冴子は助手席のドアを開いた。
「冴子さんが運転するんですか?」
「ええ。そうよ」
冴子はあっさりと言った。
哲也は意外に思いながら助手席に乗った。
京子の父親は大阪の支社に出向していることは京子から聞いて知っていた。
京子の母親は買い物で車に乗っている。
今時女が車の運転をしてもおかしくないが冴子は大学一年生である。
免許は取ってまだ間がないだろう。
と哲也は思った。
その哲也の不安を払拭するかのように、
「ふふふ。哲也くん。私高校三年生で18歳の誕生日を迎えるとすぐに教習所に通って免許を取ったの。だからもう一年以上運転しているから大丈夫よ」
と笑って言った。
冴子はエンジンを駆けた。
「哲也くん。どこに行く。豊島園?読売ランド?大磯ロングビーチ?」
冴子が聞いた。
「哲也くん。大磯ロングビーチに行かない?あそこはプールから海が見るし車ならすぐよ」
冴子が聞いた。
「え、ええ。そこでいいです」
哲也が答えた。
「じゃあ行くわよー」
そう言って冴子はアクセルペダルを踏んだ。
第三京浜を一直線に車は走った。
冴子はあか抜けていて真面目な京子とは対照的な性格だと思った。
京子とレジャープールに行けなかったのは残念だったが冴子と行けることになったのは哲也にとってドキドキハラハラだった。
哲也の本心をいうと京子より冴子と行けることの方が哲也にとっては嬉しかった。
というのは哲也はレジャープールに行くという口実で京子の水着姿を見たいと思っていたのだが何といっても中学1年生より大学1年生の方が大人の体だからだ。
京子に対する友情という思いより友情に名を借りた性欲が哲也の目的だった。
それにレジャープールに行けばビキニ姿の大人の女が見られるからだった。
一人ではレジャープールに入りにくい。
性欲の対象は女なら誰でもよかったのである。
女は男を恋愛の対象と見ているが男は女を性欲の対象と見ているのである。
しかしどうして京子の姉は大阪の一貫校に通っているのかはわからなかった。
何か複雑な事情があるのかもしれないと哲也は思った。
・・・・・・・
大磯ロングビーチに着いた。
7月の初めの日曜なので駐車場は車でいっぱいだった。
空は雲一つなく太陽がさんさんと照りつけている。
哲也と冴子は車を降りて入り口で入場券を買った。
冴子が「大人二人一日券」と言って哲也の分まで買って一枚を哲也に渡した。
もう場内ではウォータースライダーでキャーキャーはしゃぐ嬌声がことさら大きく聞こえていた。
二人はテラスハウスに入った。
そして男女別々の更衣室に別れた。
冴子がグラマラスな肉体をピンク色のビキニを身につけて出てきた。
哲也は瞬時に「うっ。セクシーだ」と感じて、おちんちんが瞬時に勃起した。
・・・・・・・・・・・
その日哲也は冴子と夏の一日をうんと楽しんだ。
昼過ぎに二人は食事を食べた。
二人ともヤキソバを食べた。
食事の後哲也は色々と疑問に思っていることを冴子に聞いてみた。
「冴子さん。冴子さんは大阪の中高一貫校を出たんですよね?」
「ええ。そうよ」
「それで付属の大学に進学したんですね?」
「ええ。そうよ」
「その学校には中学から入ったんですか。それとも高校から入ったんですか?」
哲也が聞いた。
「小学部からよ」
冴子が答えた。
「それじゃあ京子ちゃんが生まれて、2、3年して大阪の一貫校の小学部に入ったことになりますね」
「そうね。そういうことになるわね」
冴子は他人事のような口調で言った。
「じゃあ冴子さんは京子ちゃんとほとんど別れて暮らしてきたということになりますね」
「ええ。そうよ」
冴子はあっさり言った。
「どうして冴子さんは大阪の一貫校で育ったのですか?姉妹別々に過ごすというのは何だか不自然に思えますが何か特別な理由でもあったのですか?」
哲也が眉間に皺を寄せて聞いた。
「哲也くん。京子から私のこと聞いてない?」
冴子が聞いた。
「ええ。今日初めて京子さんにあなたという年の離れたお姉さんがいることを知りました」
「京子はお父さんのことは何か言った?」
「大阪の支社に出向になったと聞きました」
「いつからと言っていた?」
「それは言いませんでした。でも僕は何となく2、3年くらい前からじゃないかと勝手に思っていました。京子さんの口調から何となくそんな感じがしたんです」
「そうか。あの子の性格なら言わないのも無理はないわね」
冴子は視線を一瞬青空に向けため息まじりに言った。
「何か複雑な事情があるみたいですね?」
「聞きたい?」
「ええ。でも京子さんが聞かれたくないことだったとしたら無理に聞き出したいとは思いません」
「哲也くんは将来、京子と結婚するの?」
「ええ。したいと思っています」
「それじゃあ話すわ」
そう言って冴子は話し出した。
「私は京子の実の姉じゃないの。従姉妹の関係なの」
「ええっ。そうだったんですか」
「京子の今の父親は京子の実の父親じゃなくて、死んだ京子のお兄さんなの。私はお父さんの一人娘なの」
哲也は驚いた。
「京子の実の父親は死んだんですか。それはいつですか?」
「京子が小学校5年生の時だわ。だから二年前ね」
「そうだったんですか」
「京子には姉もいたの。でも二年前に父親と一緒に死んだの」
「ええっ。そうだったんですか。知らなかった」
「二年前というと、もしかして東日本大震災で死んだんですか?」
「ええ。そうよ」
「東日本大震災で京子は姉と父親を失ったの。家も。友達も全て」
「そうだったんですか」
哲也は驚いて目を皿のようにして冴子を見た。
「それでね。京子のお母さんは夫も家も失ってこれからどうして生きていこうかと途方に暮れていたの。その時私のお父さん、つまり京子のお父さんのお兄さんが、京子のお母さんに結婚を申し込んだの。私の実の母親も私を産んですぐに交通事故で死んでしまったの。だから私は父親と二人きりでずっと生きてきたの。私もお母さんという存在が欲しかったわ。友達がお母さんと仲良くしているのを見るとすごく羨ましかったわ。私の父も私がさびしいだろうと思って再婚を願っていたわ。でもなかなかいい相手がいなくて結婚できずに過ごしてきたの。血のつながりがない赤の他人が母親だとかえって母子関係がややこしくなることだってあるしね。そこで京子のお父さんが死んだ時、私の父と京子のお母さんはちょうど一人親同士だし赤の他人でもないし、それまで何回か会ったこともあるし、お互い親戚として好感をもっていたし、京子のお母さんは迷わず私の父親と結婚したの」
「そうだったんですか」
「それで。父親も会社から本社勤めになりそうな話が来たから大阪の家を売ってその金で東京に安い物件があったから買ったの。それが今の京子の家なの。私の父親は東京の本社勤めになったわ。それで私の父と京子と京子の母親は三人一緒に暮らすことになったの。私は大阪で寮生活だったから関係なかったわ。でも父が本社勤めになってから半年でまた会社の事情で大阪の支社に出向することになったの」
「そうだったんですか」
哲也は溜め息をついた。
「僕は京子ちゃんを無二の彼女と思ってつき合っています。京子ちゃんも僕を無二の友達と思ってくれています。でも京子ちゃんが心から笑った顔を僕は見ていません。ふっと黙り込んでしまう時もあります。彼女は何を悩んでいるんでしょうか?」
哲也が聞いた。
「それは京子があまりにも誠実な性格だからよ。京子は友達が多くて京子は友達との友情がとても厚かったの。京子にとって友達の喜びは自分の喜びであり友達の悲しみは自分の悲しみそのものだったの。京子の友達も京子のことを自分の兄弟姉妹のように思っていたわ。そこで東日本大震災が起こってしまったでしょ。学校は津波で全部流されてしまって京子のクラスの友達は全員死んでしまったわ。唯一無二の親友を京子は全員失ってしまったの。京子は毎日泣いて悲しんだわ。京子にとって友達はかけがえのない存在だったもの。京子が生き延びて友達が死んだのは単に京子が運が良く友達が運が悪かったからでしょ。そのことに京子は罪悪感を感じているのよ。友達が死んでしまったのに自分だけが幸せになるということに京子は悩まされているの。だから京子の潜在意識には生きることを楽しんではならないという気持ちがあるのよ」
哲也はそうだったのか、そういう理由だったのかと理解した。
しかし哲也には京子のような気持ちは頭ではわかっていても実感ではわからなかった。
「哲也くんは京子の気持ちわかる?」
冴子が聞いた。
「・・・・」
哲也は答えられなかった。
そういう経験をしたことがなかったからである。
哲也は子供の頃から無口で友達などいなかった。
なので友達(同級生)が死んでも悲しいと思ったことはなかった。
哲也が答えないで黙っているので冴子は哲也を慰めるように口を開いた。
「哲也くんはそういう気持ちわからないかもしれないわね。だって京子から聞いたけれど哲也くんは内向的な性格で一人で友達がいなくても一人で生きるタイプだものね。しかし京子は外交的な性格で友達と生きることが喜びだもの。引け目に思ったり気にする必要ないわよ」
哲也は冴子の思いやりを嬉しく思うと同時に(僕だってそんな冷たい人間じゃないよ)と反駁していた。
なぜなら哲也は京子を愛していて京子が幸せになってくるのなら自分は死んでも構わないと思っていたからである。
哲也にとって京子は自分の本当の友達だったからである。
そう思うと友達と共に生きている京子の悲しみがわかるような気がした。
・・・・・・・・・・
哲也はその後冴子とウォータースライダーをして夏の一日を楽しんだ。
しかし生きることを楽しむことに罪悪感を感じている京子のことを思うと京子が可哀想に思えてしまって冴子と遊んでいても楽しくはなかった。
・・・・・・・・・・
大磯ロングビーチが5時になって哲也は冴子の運転する車で家に送ってもらった。
・・・・・・・・
その夜。
京子からメールが来た。
それにはこう書かれてあった。
「今日お姉さんと大磯ロングビーチで楽しかった?」
哲也は、
「うん。とても楽しかったよ」
と書いて返信メールを送信した。
しかしそれは哲也の本心ではなかった。
哲也は京子の心の病が治まる日まで(それはいつになるかはわからないが)そっと京子を見守り続けようと思った。


2019年の8月頃に書いた作品を古いフォルダの中にたまたま見つけた。
あまりストーリーに一貫性がないので出さなかったのだろう。
しかし一応、読める小説になっているので少し手を入れて発表する。

2025年7月20日(日)擱筆




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女教師と硬派生徒(小説)

2025-06-15 18:30:47 | 小説
女教師と硬派生徒

という小説を書きました。

浅野浩二のHPその2にアップしましたのでよろしかったらご覧ください。

女教師と硬派生徒

神奈川県にある湘南台高校である。
京子は大学を卒業して今年からこの高校に英語の教師として教鞭をとるようになった。
そして1年B組の担任も任されるようになった。
この高校は進学校ではない。不良生徒も結構いるのである。
1年には山野純という生徒が今年、入学してきた。
彼は頭が良く秀才で全学科、オール5だった。
彼の学力からすれば、もっと偏差値の高い高校にも入れたのに、なぜこんな優秀な生徒がこんな学校に入学したのかの理由はわからなかった。純は頭はいいが、無口で誰とも話そうとしないため友達は一人もいなかった。純は一応、空手部から勧誘されて空手部に入っていた。生徒の噂では純は子供の頃から空手をやっていて、強いので、対抗試合では純が出ると勝てるので試合の時だけ湘南台高校の空手部員として出場し、そして百戦して負けたことがない。朝倉未来にもタイマンでケンカをしてボコボコにしたことがある。しかし純は空手に情熱をもって打ち込んでいるというわけでは全くなく、学校の授業が終わると、空手部に練習に行くということを全くせず、さっさと家に帰った。
純は3年生の先輩にも敬語を使わずタメ口で話していた。もっとも純は人と話すことが、ほとんどなかった。なので何を考えているのか全くわからない謎の生徒だった。
京子も英語の試験を作って生徒に解かせることがあったが純はいつも満点で京子は驚いた。
「あ、あの。純くん。今回も満点よ。すごいわね」
と京子がおそるおそる言っても純は嬉しそうな顔もせず無表情で、うるさそうに顔をそらすだけだった。
1年B組のクラス委員長を決めなくてはならなかったので、京子は純に、
「純くん。クラス委員長をやってくれない?」
と打診したが純は「嫌だね。そんなの。面倒くさいぜ」の一言で断った。
京子にとって、否、全生徒にとって、否、全世界の人間にとって、純は何を考えているのかわからない、つかみどころのない生徒だった。
・・・・・・・・・・・・
ある金曜日の放課後である。
京子がアパートに帰る途中だった。
家屋の少ない人通りのない所だった。
京子のアパートと学校の間には、そういう所があったのである。
するといきなり、バラバラバラッと三人の湘南台高校の3年生が出てきた。
彼らは学校でも札つきの不良として教師も手を焼き生徒たちは恐れていた。
彼らはJOKERという暴走族に入っていて、校則は無視、酒、タバコを平気で吸い、飲み、ケンカばかりしていた。もちろん学校の女子にも、ちょっかいを出していた。
「へへっ。先生。この近くに廃屋があるんだ。ちょっとそこへ来てもらうぜ」
そう言って三人はいきなり京子に襲いかかった。
「や、やめてー」
京子は大声で叫んだ。
すると一人の生徒が出てきた。
純だった。
「やめなよ」
純は身長170cm、体重60kgと小柄だったが子供の頃から空手を身につけていて、その上、生意気なので、歳上で体のデカいヤツにタイマンのケンカを挑まれることがあったが、百戦して負けたことがなかった。
「おい。純。どきな」
3年生の不良が言った。
「なんで」
「いいから、どけよ」
純は無視した。
「おい。純。お前、生意気なんだよ」
「ああ。生でいきてるよ」
「野郎にゃ用はねえんだよ」
「なんだ。てめえら。婦女暴行か」
「てめえ。命が惜しくねえのか」
「それはこっちのセリフよ」
純はボキボキと指の関節を鳴らした。
京子がギュッと純の手を掴んだ。
「やめて。純君」
だが純は京子の言うことなど聞く耳をもたない。
「あっち行ってな」
言われて京子は走って近くの桜の木の裏に身を隠した。
そして木の裏から、そっと顔を出して見た。
「やっちまえ」
3人の不良は純を取り囲んで、じりじりと詰め寄ってきた。一人が飛びかかった。
「キエー」
純はジャンプした。ブルース・リャン顔負けの飛び後ろ回し蹴りが炸裂して、相手は一撃で倒れた。純はすぐに後ろを振り返って、後ろの一人を連続回し蹴りで倒し、残りの二人も横蹴りで倒した。倒れた四人は頭を振って起き上がると、
「おぼえてろ」
と捨てセリフを言って逃げ去っていった。それは、ちょうど「帰ってきたドラゴン」のオープニングのブルース・リャンの格闘シーンに似ていた。
「純くん。ありがとう。助かったわ」
京子が純に駆け寄ってきて、純の腕をヒシッと掴んだ。
「あいつら、反省することがないから、また、あんたを襲うぜ。学校への行き返りはこの道は通らない方がいいぜ。またアイツらが襲ってきたら、すぐオレに電話しな。ボコボコにしてやっからよ」
そう言って純はカバンを拾ってその場を去ろうとした。
「待って。純くん」
京子が声をかけた。
「なんだよ?」
純はうるさそうに立ち止まった。
「あ、あの。助けて下さったお礼がしたいんです。何をすればいいでしょうか?何でもします」
京子が言った。
「別に礼なんていらねーよ」
純はうるさそうに言った。
「あ、あの。明日の土曜日は学校が休みですから、私の家に来て下さらないでしょうか。腕に寄りをかけて料理を作って待っています」
そう言われても純はプイと顔をそむけて、その場を去ってしまった。
・・・・・・・・・・・・・
土曜日になった。
京子は朝からピザを作っていた。
純が来てくれるかもしれないからである。
しかし来ないかもしれない。来たとしてもいつ来るのかはわからない。
なので京子は朝から緊張しっぱなしだった。
京子はとても、つつましい気持ちになっていた。
そして、とても頼もしい気持ちになっていた。
まだ16歳で8歳も年下とはいえ、悪漢三人から自分を守ってくれたのだ。
強くて勉強も出来て正義感もある。学校では誰とも話さないが、それも魅力でもある。
純は来てくれるだろうか、来てくれないだろうかと京子の緊張はどんどん高まっていった。
やがて12時になった。
ピンポーン。
チャイムが鳴った。
ドキン。
京子は心臓が止まるかと思うほど緊張した。
「は、はーい」
京子は玄関の戸を開けた。
純が玄関の前で立っていた。
不愛想な顔で。
しかし、純が来てくれたことに京子は飛び上がらんほどに喜んだ。
「あっ。純くん。来てくれたのね。嬉しいわ。さあ。どうぞ上がって」
京子に言われて純は家の中に入った。
「純くんは硬派で女の人には興味がなさそうなので来てくれないんじゃないかと思っていたの。来てくれて嬉しいわ」
京子はウキウキしていたが純はポケットに手を突っ込んだまま不機嫌そうに黙っている。
「さあ。純くん。食卓について。もしかすると純くんが来てくれるかもしれないと思ってピザを作っておいたの」
純はポケットに手を突っ込んだまま不愛想に食卓についた。
京子はキッチンに行ってピザを焼いて食卓に持って来た。
そして京子も食卓についた。
「さあ。どうぞ。食べて」
京子が言った。
純は無造作に仏頂面でピザを食べた。
「純くん。昨日は本当にありがとう。助かったわ。あやうく襲われる所だったわ。でもあの三人もうちの学校の生徒でしょ。警察沙汰にしたら、あの子たちが退学させられちゃうでしょ。だから可哀想だから出来なかったと思うわ。私、泣き寝入りするしかなかったわ。本当に純くんには感謝しているわ」
京子は何とか純の心を開こうと色々と話しかけたが純は何も言わなかった。
もしかすると純にも性欲があってセックスすることになるかもしれない、という思いもあったが、強くて頭が良くて正義感の強い、女にとって理想の男性のような純になら、むしろ処女を差し上げたいとも京子は思っていた。
純はピザを食べ終わると水をゴクゴク飲んだ。
「先生よ。あんた。オレの言うことは何でも聞くと言ったよな」
「え、ええ」
(ああ。いよいよ、憧れの理想の男の子にバージンを捧げるのね)
と京子は思った。
しかし純の口から出た言葉は予想もしない以外な言葉だった。
・・・・・・・・・・・
「先生よ。オレ。先生に縄褌をかけたいんです」
「えっ」
京子は一瞬、耳を疑った。
純にそんなSМ趣味があるなんて以外も以外だったからだ。
何と言っていいかわからず黙っている京子に純は続けて言った。
「先生を素っ裸にして股間に縄褌をかけたいんです。そして、いじめて、いじめて虐めぬきたいんです」
京子は気が動転していたが昨日「何でも言うことを聞きます」と言ってしまった手前、断るわけにはいかなかった。
「わ、わかりました」
京子はオドオドと返事した。
「じゃあ。先生。着ている物を全部脱いで下さい」
「は、はい」
京子はブラウスを脱ぎ、スカートを降ろした。
京子は白いブラジャーとパンティーだけという姿になった。
「さあ。下着も脱いで下さい」
純に言われて京子はブラジャーをはずし、パンティーも降ろして足から抜きとった。
これで京子は体を覆う物何一つない丸裸になった。
京子は羞恥心から咄嗟に屈みこんだ。胸と秘部を手で覆って。
「や、やっぱり恥ずかしいわ。教え子の前で裸になるなんて」
しかし純の非情な態度は少しも変わることがなかった。
「先生。立って下さい」
「はい」
「それと僕に何か言うときは敬語を使って下さい」
「はい」
京子は立ち上がった。
「さあ。手をどかして」
京子は秘部を覆っていた手をどかした。純は一本の縄を二つに折った。そして京子の腰に巻いた。臍の所でそれを結び合わせると、あまった縄を股間に通した。
「さあ。足を開いて。ちゃんとまんこの割れ目に食い込ませなくちゃならないんだから」
言われて京子は閉じていた脚を肩幅ほどに開いた。純は閉じている京子の大陰唇と小陰唇を開き、二本の縦縄を、その間にしつかり通した。大陰唇と小陰唇は、再び閉じて縄をしっかりと挟んだ。
「は、恥ずかしいわ」
京子はやり所のない両手を胸に当てて乳房を覆った。
純は京子の後ろに回って、まんこに食い込ませた縦縄を後ろに回し、尻の割れ目に食い込ませるとグイツと思い切り引き絞った。
「ああー」
京子は苦しげな呻き声を上げた。純は引き絞った縦縄を腰縄の下をくぐらせて、腰縄にしつかりと結びつけた。これで京子の股間に食い込む縄褌が完成した。それは極めて原始的な女の秘部を隠すための下着のようでもある。
・・・・・・・・・・・・・
前後ともT字型になった縄褌の縦縄は意地悪く京子の秘部と尻の割れ目に食い込んでいる。いったん取り付けられた縄褌はもう取り外すことは出来ない。普段触れられる事の無い、それゆえ最も敏感な部分に激しく縦縄は食い込んでいる。京子は両手で乳房を覆い、脚をガクガク震わせながら、哀れみを乞うように情けない顔で純を見ている。純は京子の苦しみをせせら笑うように意地悪く、口元を歪め、苦しむ京子を楽しむように眺めている。取り付けられた縄褌はもはや意志をもった生き物になったかのように意地悪く女の秘所を虐めているといった感じである。純はニャニヤ笑いながら、震えている京子の弾力ある大きな尻をポンンと掌で叩いた。
「どうだ。縄が食い込む感触は。気持ちいいか」
純はポンポンと京子の尻を叩いた。京子は黙ったまま両手で乳房を隠している。その姿は、こぼれんばかりにたわわに実った二つの大きな柔らかい果実をこぼれ落ちないように、手で抱えているかのようにも見える。
純は笑いながら続けて言った。
「縄褌は普通、まんこと尻の穴の間の敏感な所に結び玉を一つ作っておくものだ。そうると、ちょっと動くだけで結び玉がこすれてたまらなくなるんだ。結び玉を作らないでやっただけ感謝しろ」
そう言って純は京子の尻をポンポンと叩いた。
「純君。先生、純君にいじめられるって約束したから、約束は守ります。どんなに恥ずかしい事をされても先生、耐えます。だ、だから、あんまりこわい事はしないでね」
京子は声を震わせながら言った。
純は黙って立ち上がり京子の背後に回った。
「ふふふ。おっぱいも隠せないようにしてやる。さあ。両手を背中に回せ」
純は乳房を覆っいる京子の両手首をムズと掴むと、グイと背中に回し、両方の手首を重ね合わせた。
「いいか。このままでいろよ」
京子は親指をギュッと残りの四指で握りしめた。純は背中の真ん中で交差されている両手首を掴むと縛り始めた。
「あっ。な、 何をするの」
京子は恐怖心から言った。
しかし純は無視して京子の手首を縛り続けた。まず、縦方向に巻き眺き、次に横方向に巻いてカッチリ縛った。もう京子の手の自由は利かない。純は余った縄を前に回し、まず京子の乳房の上を二巻き縛り、そして乳房を挟むように乳房の下を二巻き縛った。残った縄尻は手首の縛めに結びつけた。これでもう京子の手の自由は利かない。
純は京子の前へ回ると食卓の椅子にドッカと腰かけた。目の前には丸裸の体を、胸を縄がけされ、縄褌を締められた京子が純の食い入るような視線を避けるように、顔をそらして羞恥に頬を赤らめながら佇立している。縛めの縄とはいえ、乳房の縄と秘部の縄はブラジャーとパンティーを取り付けられているようにも見える。乳房の上下の胸縄は豊満な京子の乳房を体から激しくしぼり出している。華奢な上腕にかかっている縄の部分は柔らかい腕の肉に食い込んで凹んでいる。乳房を挟んでいる胸縄の下の縄は豊満な乳房の下垂によって見えない。
「ふふ。どうだ。京子。生徒の目の前で丸裸を見られる気分は」
「は、恥ずかしいわ」
「しかし見事なおっぱいだな。ボリュームと張りがあって下垂かげんも理想的だな」
そう言って純は京子がいつも授業の時、黒板を指し示す時に使っているアンテナペンを伸ばして京子の豊満な乳房をつついた。突かれる度に京子は、
「あっ。あっ」
と、苦しげに眉を寄せ呻いた。純は下垂してクッキリ輪郭が出来ている乳房の下部をペンで突いた。そして純は攻撃の矛先を乳首に変えた。京子の乳首はタコ糸が結び付けられるかと思うほど大きくクッキリと屹立していた。純は京子の乳首をつかまえようとしたが、なかなかつかまえられない。ポロリとはずれてしまう。しばし、ペン先と乳首はじゃれあった後、やっとペン先は乳首を捕まえた。純は乳首の下側をペン先でつかまえて、グイと持ち上げた。それにつられて乳房全体も持ち上がり、乳房に隠れていた胸縄の下の二本の縄があらわれた。
「ふふ。素晴らしい形の乳首だな。これならおもりをつけたタコ糸を結びつけて垂らしたり、いろいろ面白い遊びが出来るぜ。しかし乳首の大きい女は淫乱というからな。お前も淫乱なんだろう」
京子は硬く口を真一文字に結び、目をギュッと閉じて純のイジワルな揶揄に耐えている。
「しかし、これだけ大きなおっぱいなら男も揉みがいがあっただろう。今まで何人の男とセックスしたんだ」
「な、ないです」
京子は顔を真っ赤にして言った。
「ええー。お前、男とセックスしたこと無いのか」
「は、はい」
京子は頬を赤らめて黙って肯いた。
「じゃあ、お前、処女なのか」
「は、はい。そうです」
純は乳房の真ん中がへこむほど、激しくペン先を乳房にめり込ませた。
「ああっ」
京子は苦しげな表情で呻いた。
「京子。お前、いくつだ」
「二十四です」
二十四で処女なんていまどき天然記念物ものだぞ」
言われて京子は顔を赤くした。
「痴漢にあった事くらいはあるだろう」
「あ、あります」
「何回あった」
「よ、四回です」
「どこで」
「電車の中です」
「そうだろうな。こんなプロポーションのいい超美人を世の男がほっとくはずかない」
「夏、海に行った事はあるか」
「はい。あ、あります」
「ほーら。お前だってスケベな感情は持ってるじゃないか。水着はセクシーなビキニだっ
ただろう」
「は、はい」
「ほーら。やっぱり」
「親しい友達に無理やり誘われて仕方なく行ったんです。ビキニもその子が、私が嫌だというのに無理やりセクシーなのを買わせちゃったんです」
京子の訴えの真偽はわからない。
「海ではお前のセクシーなビキニ姿に男達の視線は釘づけだっただろう」
「は、はい。何人かの男の人は私をじっと見てました」
糸は乳房を押しつけていたアンテナペンを乳房から離し、ペンで太腿をピシャピシャ叩いた。
「どうだ。縄褌が股間に食い込む感触は」
「つ、つらいです」
「だが、Tバックだって尻の割れ目に食い込むからな。そうたいした違いはないだろう」
「わ、私、Tバックの下着は履いた事がありません」
純はアンテナペンで太腿の内側の柔らかい肉をピチビチ叩いた。股間には縄褌の縦縄が激しく食い込んでいる。
「ふふ。どうだ。素っ裸にされて、後ろ手に縛られ、まんこには縄褌が食い込んでいるという格好を目の前で生徒に見られている気分は」
「み、みじめです。は、恥ずかしいです」
「ふふ。だが約束は約束だからな。俺の言う事を聞かなかったら、この姿のまま外にほっぼり出すからな」
「純くん。そんなことだけは許してください」
京子は泣きそうな顔で哀願した。
「じゃあ、お前のみじめな姿を見せてやるぜ」
そう言って純は立ち上がった。そして京子の正面の壁に等身大の姿見の鏡を立てた。鏡には丸裸で胸縄と股縄をしたみじめな京子の姿が写っている。京子はみじめな自分の姿を鏡の中に見つけるや、すぐに目をそらした。羞恥で京子は真っ赤になっている。
「目をそらすな。鏡をしつかり見ろ。自分のみじめな姿をとくと自覚するんだ」
純にどなりつけられて京子はつらそうに、そむけた顔を鏡に戻した。京子は顔を真っ赤にして鏡の中のみじめな自分の縛められた裸の姿を見た。
「ふふ。じゃあもうソフトな責めは終わりだ。これからは悪魔も思いつかない地獄の責めだ。この部屋はお前の涙でびしょ濡れになるぜ」
純は京子の横に立った。そしてズボンからベルトを抜き取った
「いいか。今、立っている位置から動くなよ。動いたら殺すぞ」
純はベルトを握ると縄褌がカッチリと食い込んでいる京子の弾力のある形のいい大きな尻めがけてベルトを勢いよく振り下ろした。
ピシーン。
弾力ある柔らかい肉に速度のある皮ベルトが激しく当たる音が部屋の中に響いた。
「ああー」
京子は部屋中に響くほどの激しい悲鳴を上げた。
「痛―い」
京子は反射的に尻を前に突き出した。京子の尻にはベルトが当たった所にちょうど、その跡の赤い線が浮かんでいた。もし京子の手が自由だったら京子はすぐさま鞭打たれた尻に手を当てただろう。しかし京子は頭の後ろで両手を組むよう純に命じられているので、それは出来なかった。
・・・・・・・・・
そんな京子の苦しみなど何でもないかのごとくムチを振り下ろすべく純は打つ構えをした。
「待って。純くん」
「なんだ」
「純くん。お願い。鞭打ちだけは許して。先生、体が壊れちゃいそう」
「お前は俺に絶対服従すると約束したんだぞ」
「はい。その通りです。でも鞭打ちだけは、お願い。許して。先生、体が壊れてしまいそうで怖いの。先生、どんなにでもみじめになります。だから鞭打ちだけは許して」
純はベルトをダランと垂らして鞭打ちの構えを崩した。
「じゃあ鞭打ちのかわりに、擽り責めだ。それならいいか」
「は、はい」
「よし。特例の情けで鞭打ちは勘弁してやる。そのかわりに擽り責めだ」
「お、お慈悲を感謝します。純さま」
「じゃあ、くすぐり責めするには縄を全部、解かないとな」
そう言って純は京子の股縄を解いた。京子にとって股縄の縛めを解かれたことは嬉しくはあったが、アソコが丸見えになってしまったことに恥ずかしさを感じた。
次に純は京子の乳房を挟んでいる胸縄の上を解き、そして下も解いた。
そして次に純は京子の後ろ手の縄も解いた。
これで京子の縛めは全部なくなった。
縛めがなくなったが、それは全裸になったということで、京子は自由になった手をどうしていいかわからないといった様子でモジモジさせていた。
しかし女の本能から自然とアソコを手で隠そうとした。
しかし純はそれをすぐに制止した。
「おっと。京子。両手は頭の後ろで組みな」
純が命じた。
「はい」
京子は両手を頭の上に持って行き頭の後ろで手を組んだ。
こうされると擽ったい脇の下がガラ空きになり、京子はそこを責められることを恐れた。
「じゃあ、目隠しもしないとな」
そう言って純は手拭いを京子の目に当てて、それを頭の後ろに持っていって縛り京子に目隠しをした。
首筋。脇の下。脇腹。
女の体には、くすぐったい所が無数にある。
別にコチョコチョ擽らなくても、爪の先をスッと触れさせて、スーとなぞれば、背中も、腕も、太腿も、全身がくすぐったい所となる。
目隠しをされて回りが見えなくなったため、純がどこから責めてくるかわからない恐怖に京子はおびえた。
少しの時間が経ったが純の触手はやって来なかった。
どこをどう責められるか、わからない恐怖感だけが、どんどん募っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
京子はどんな責めをされようとも耐え抜こうと親指を残りの四指でギュッと握りしめている。京子の形のいい弾力ある尻にはベルトの跡が赤くクッキリと浮き出ている。純はポンポンと京子の尻を軽く叩いた。
「ふふ。ベルトの跡がクッキリ浮き出ているぜ」
「しかし見事なプロポーションだな。スラリとしたなで肩。折れてしまいそうなほど華奢な細く長い腕。引き締まった手首。繊細な形の指。見事にくびれたウエスト。張りのある形のいい大きな尻。柔らかいムチムチした太腿。スラリとした脚。ひきしまった足首。まさに芸術品だな」
言いながら純は京子の肩から足首までアンテナベンを這わせた。
純は京子の腰まで滝のように流れているクセのないストレートの黒髪をすくって、鼻に当てた。
「ふふふ。いい匂いだ。これが男を知らない乙女の匂いなんだな」
と純は言った。
純は擽り責めをしないで、さかんに京子の美しさを賞賛する。しかしこれは京子にとってつらかった。いずれは、つらい責めをされるのである。京子は恐怖感から声を震わせて言った。
「じゅ、純君。か、覚悟は出来ています。せ、責めるなら早くせめて。お願い。じらさないで」
そう言って京子は指をギュッと握りしめた。純の賛辞が止まった。
「そうかい。責めるのはかわいそうだから、ためらっていたのに。お前が責められたいというのなら望み通り責めてやるぜ」
「か、覚再は出来ています。好きなように責めてちょうだい」
京子は声を震わせて言った。
「よく言った。吠え面かくな」
しばし無言の時間がたった。
京子は指を握りしめ、体を小刻みにプルプル震わせている。
・・・・・・・・・・・・
突然、京子の首筋に両側に指先がピタリと触れた。まるで蜘蛛の脚のように。
純が京子の首筋の両側にそれぞれ中指を一本、触れさせたのである。
触手は敏感な首筋の上を、触れるか、触れないかの極めて微妙な感触で、まるで気味の悪い生き物のように首筋の上を這いまわる。激しい擽ったさが京子を襲った。
「ああー」
京子は眉を寄せ、激しい悲鳴を上げた。だが触手は容赦なく吸いついてくる。
「ああー。許してー」
触手は、脇の下、脇腹、太腿、など体の色々な所にいきなりやってくる。
その度に京子のその部位は反射的にサッと逃げようとした。
京子は目隠しされているので今度はどこに責めの触手がやってくるかわからない恐怖に気が狂いそうだった。
突然、京子の左の乳首に指ではない何かが触れた。
「ああっ」
純が爪楊枝の先で京子の左の乳首を突いたのである。
京子もそれが爪楊枝であることに気がついた。
純はツンツンと爪楊枝の先で京子の左の乳首を突いた。
「ああー」
京子は両手を頭の後ろで組んでいるように命じられていて、京子はそれに従わなくてはならないので、乳首を責められても、それを隠すことが出来ない。
丸出しの乳房の上の乳首を爪楊枝で突かれても、それに耐えるしかない。
「ふふ。教え子に丸裸で乳首を爪楊枝で突かれる気分はどうだ?」
純が意地悪く言った。
しかし京子は何も答えられなかった。
口をキュッと結び、恥ずかしい責めに耐えるしかなかった。
純が京子の乳首をツンツン突いているうちに、だんだん京子の乳首が勃起し出した。
「ふふ。京子。乳首が勃起し出したぜ」
純が揶揄した。
しかし京子は何も言い返せなかった。
「ふふふ。丸裸にされて乳首を突かれて感じるなんて、お前マゾなんじゃないか」
純が意地悪く言った。
しかし京子は何も言い返せなかった。
爪楊枝は今度は京子の右の乳首へ攻撃の矛先が行った。
京子の右の乳首も勃起した。
爪楊枝は京子の尻や臍の穴や、太腿や、まんこの肉へと、京子の体の色々な所に、いきなりゲリラ的に責めてきた。
その度に京子は、「ああっ。ああっ」と悲鳴を上げた。
「京子。つらいか?」
「はい」
「じゃあ別の方法で責めてやるよ」
純が言った。
別の方法とは、どんなことをするのか京子には想像もつかなかった。
純は一本の縄をとった。そして縄の真ん中に結び目を作った。
京子には音しか聞こえないので純が何をしているのか分からなかった。
「ほら。京子。股を少し開きな」
そう言って純は京子の尻をポンポンと叩いた。
京子は言われた通り足を少し開いた。
「ああっ」
京子は悲鳴を上げた。
なぜなら、股間に一本の縄がグイと食い込んできたからである。
純にしてみれば一本の縄を京子の股間の谷間に食い込ませたのである。
そして純は縄の前を左手でつかみ、縄の後ろを右手で、シッカリとつかんでいるのである。
純は適度な緊張度で谷間に食い込ませた縄をゆっくりと前後にしごき出した。
「ああー。やめてー」
京子は生まれて初めて体験する気色の悪い感触におののいた。
しかしそれは、つらいだけではない性的な興奮もあった。
立っていれば女の尻はただでさえムッチリと閉じ合わさっている。
股間の谷間に縄を食い込ませれば、左右の尻の肉はそれを自然と挟み込んでしまう。
縄は股間の谷間の深くに埋もれて尻がそれを挟みつけて離さないように見える。
股縄も股間を縛る縄ではあるが、股間の谷間を刺激する、その気色の悪い感触は股縄をされた時だけの一時のものであり、縦縄を腰縄に結びつけてしまえば、その後はTバックと同じで、感覚は低下していく。しかし、股間に縄を食い込ませ、その縄を前後に綱引きのようにしごかれては、たまらない。女の最も敏感な所が擦られる感触に京子は、
「ああー。やめてー」
と叫び続けた。しかし純はやめない。
ゆっくりと縄を前後にしごいている。
それは気色の悪い感触であると同時に、性的興奮をもともなっているので、京子のまんこは興奮して膨らみ大陰唇が両側から股間縄を挟み込んで、縦縄はまんこの割れ目の中に埋もれてしまった。
「ああっ。ああっ。純くん。やめてー」
と京子は叫び続けたが、純は黙って京子を責めている。
「どうだ。京子。気持ちがいいだろう。まんこがプクッと膨れているぜ」
と純が意地悪く言った。
やがて前後に動いていた縄の動きが後ろから前へと一方向に変わった。
前後にしごかれるのと違いはないと思っていた京子の予想は甘かった。
縄に作られた結び玉が京子の尻の割れ目の方からやって来たのである。
「ああっ。嫌っ」
京子は予期せぬ更なる責めにおののいた。
しかし結び玉は意地悪く京子の股間を擦っていった。
純は一度、結び玉を京子の股間の前方に出したが、今度は股間縄を後方に引いていった。
そのため今度は前方から後方へと結び玉が京子の敏感な所を擦っていった。
「ああっ。嫌っ」
京子は悲鳴を上げた。
やがて純は結び玉を京子の股間の最も敏感な所に固定すると、その位置で股間縄を素早く前後に振動させた。
「ああっ。嫌っ」
脳天を突くような刺激に京子は全身をガクガクさせた。
やがて純は股間縄の責めをいったんやめ、京子の体のあちこちを、爪の先でスーとなぞったり、爪楊枝で突く責めも加えるようになった。
純は股間縄の綱引きと、くすぐり責めを交互に気まぐれにして京子を責めた。
京子はつらい責めに全身がプルプル震えていた。
しばしの時間が経った。
「目隠しをとってやるぜ」
そう言って純は京子の目隠しをとった。
目隠しをとられたことで京子は少しほっとした。
しかしそれも束の間だった。
京子の前には等身大のカガミがある。
「さあ。自分の姿をしっかり見な」
純の命令には逆らえないので京子はカガミを見た。
全裸で頭の後ろで手を組み、太腿をピッチリ閉じて股間縄を挟み込んでいる姿は、みじめ極まりなかった。
「純くん。も、もう許して」
京子は涙を流しながら哀願した。
「よし。じゃあもう勘弁してやるよ」
純が言った。
「あ、ありがとう。純くん」
そう言うや京子はつらい責めから解放されてクナクナと座り込んだ。
「おっと。まだ終わりじゃないぜ」
純が厳しく言った。
まだ終わりではないのかと京子は愕然とした。
この次は何をされるのだろうかと京子はおそれた。
「よし。京子。お前は犬だ。犬になれ」
純が言った。
「は、はい」
「じゃあ食卓の上に乗って四つん這いになれ」
「は、はい」
京子は純に言われた通り食卓の上に乗った。
そして四つん這いの姿勢になった。
「おい。京子。お前は犬だからな。犬らしく堂々と腕を突っ張れ」
純が厳しく命じた。
「は、はい」
京子は手と足を踏ん張って堂々とした四つん這いの姿勢をとった。
しかしそれは犬ならば堂々とした姿勢と言えるが、それを人間がやるとみじめ極まりない。
「ああっ。恥ずかしいわ」
今までは立ち姿だったので女の股間はよく見えなかったが、四つん這いになったことで京子の恥ずかしい所は丸見えになってしまった。
純は京子の尻の方に椅子を持って行き、京子の尻の前に座った。
純の前には京子の丸出しになった尻がある。
京子は四つん這いの姿勢を保つために膝を少し開いていた。
そのため、尻の割れ目が開き、窄まった尻の穴と、その下のアソコの割れ目が丸見えだった。
しかし純は容赦なく京子を虐めた。
「おい。京子。もっと膝をガバッと開け」
純が言った。京子は純の命令には逆らえない。
「は、はい」
京子は純に言われたように、膝をもっと開いた。
そのため尻の割れ目がもっと開き、窄まった尻の穴とアソコの割れ目が丸見えになった。
「おい。京子。尻の穴とまんこが丸見えだぞ」
純が淡々とした口調で言った。
「ああっ。恥ずかしいわ。教え子の前で丸裸になって恥ずかしい所を見られているなんて」
京子の尻は羞恥のため、プルプルと震えていた。
しかし京子は、真・善・美のような純に恥ずかしい姿を見られることに被虐の快感が起こり始めていた。
しばし純はパックリと開かれた京子の尻の割れ目を眺めていたが、
「ふふふ。これだけだと思ったら大間違いだぜ」
と言った。
そして食卓の上の京子のアソコの下の位置に蝋燭を立てた。
そして蝋燭に火を灯した。
蝋燭の炎の熱が京子のアソコを炙り出した。
「ああっ。熱い。熱い」
京子はロウソクの炎から離れようと膝を上げ腰をくねらせた。
膝が食卓から離れたため尻はさらに高く上がった。
しかし、純に、四つん這いの姿勢をとるように命じられているので、手と足の位置を変えることは出来なかった。
下から蝋燭でアソコを炙られ、食卓の上で四つん這いになっている姿は惨め極まりなかった。
「ははは。どうだ。京子。こうやって嬲られる気持ちは?」
純は笑いながら聞いた。
「み、みじめです。つらいです。ゆ、許して。純くん」
京子は足をガクガク震わせながら純に許しを乞うた。
しばし京子が苦しむのを見ていた純は、
「よし。じゃあ、もう火責めは勘弁してやるよ」
と言って蝋燭の炎に、ふっと息を吹きかけて消した。
これで京子は火責めから解放されて、膝を食卓の上に着けた。
「あ、ありがとう。純くん。許してくれて」
京子は涙を浮かべながら純に憐れみを乞うような口調で言った。
「よし。もう食卓の上から降りていいぞ」
純が言った。
「あ、ありがとう。純くん」
そう言って京子は食卓の上から降りた。
「おっと。お前は犬なんだから床の上でも四つん這いでいろ」
純が厳しく言った。
「は、はい」
京子は食卓の上から降りても、すぐに四つん這いになった。
「よし。じゃあ、下着を返してやるよ。ただし、お前は犬なんだからな。四つん這いのまま口で咥えて持って来いよ」
そう言って純は、床の上にある京子のブラジャーとパンティーを拾うと、まずパンティーをポーンと遠くへ放り投げた。
「さあ。四つん這いのまま、口で咥えて持って来い」
純が命じた。
「はい」
京子は四つん這いのまま、這ってパンティーの所に行き、犬のようにパンティーを口で咥えて純の所にもどって来た。
「よしよし。じゃあ、次はブラジャーだ」
そう言って純は、次は京子のブラジャーを遠くに放り投げた。
「さあ。四つん這いのまま、口で咥えて持って来い」
「はい」
京子は四つん這いのまま、這ってブラジャーの所に行き、犬のように口でブラジャーを咥えて純の所にもどって来た。
「よしよし」
純は命令に忠実な犬を誉めるように京子の頭を撫でた。
「よし。ちゃんと物を拾ってこれるようになったからな。褒美として餌をやらなくてはな」
そう言って純はキッチンに行った。
純が冷蔵庫を開けたり、俎板でトントンと包丁で何かを切っている音が聞こえてきた。
餌とは何だろうと京子が四つん這いのまま、考えているうちに、すぐに純がもどってきた。
「さあ。ご褒美のエサだ。全部、食べろ」
そう言って純は、京子の顔の前にボウルをトンと置いた。
それを見て京子は、
「ああー」
と叫んだ。
なぜなら、ボウルの中には、生の、にんじん、じゃがいも、ピーマン、大根、なす、ごぼう、かぼちゃ、さつまいも、などの野菜がぶつ切りにしてうず高く積まれていたからである。
こんなものは生ではとても食べられない。
しかし純は非情に京子に命じた。
「さあ。京子。これを全部、食べろ。もちろん手を使わず犬のように口で咥えて食うんだ」
純は非情に命じた。
京子は純の命令には逆らえない。
「は、はい」
京子は純の非情さと、自分に起こり出した被虐心を感じながら、そっと生のジャガイモの角切りを一つ口に咥えてモグモグ噛んだ。
そして飲み込んだ。
しかし生のジャガイモはとても食べれたものではなく、京子は、ゲホッ、ゲホッとむせて吐き出してしまった。
一口でも食べられないのに、うず高く盛り上がったボウル一杯に入れられた生の野菜のぶつ切りをまぜたものを全部、食べなくてはならないと思うと京子は、気が狂いそうになり、ウエーンと泣き出してしまった。
「仕方がないな。じゃあ野菜は勘弁してやるよ。代わりにこっちのエサを食べな」
そう言って純はトンと京子の顔の前に、もう一つのボウルを置いた。
それには牛乳が入っていた。
それは500mlくらいで飲める量だった。
「さあ。これを手を使わず舌で掬って飲みな」
京子は純の情けに感謝した。
「あ、ありがとうございます。純さま」
そう言って京子は犬のように、ボウルに顔を近づけて、口でズズーとボウルの中の牛乳を飲んだ。
京子はボウルの中の牛乳を全部、飲んだ。
「よしよし。よく飲んだな」
そう言って純は飼い主がペットを可愛がるように京子の頭を撫でた。
「あ、ありがとう。純くん」
京子は純の非情さと優しさに泣きながら言った。
「よし。京子。じゃあ、もうお前を虐めるのは終わりにしてやるよ。もう立っていいぞ。立って服を着な」
純が言った。
「あ、ありがとう。純くん」
京子は泣きながら立ち上がり、パンティーを履き、ブラジャーを着けた。
そしてスカートを履き、ワイシャツを着た。
「一度、お前をこうして虐めてみたかったんだ。すまなかったな。もう気が済んだし、もうこれからは、こんな事はしないぜ」
「ありがとう。純くん」
「じゃあ、オレは帰るからな。三年のワルどもがまた、お前を襲いかかりそうになったら、オレに電話しな。すぐに駆けつけてボコボコにしてやっからよ」
そう言って純は京子のアパートを出て行った。
・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日の月曜日。
京子はいつものように、教壇に立って英語の授業をしていた。
その顔はいつもと変わりない笑顔だった。
純は京子が黒板に書くことはノートせず、Z会の数学の問題を解いていた。
やがて、その日の授業が終わった。
帰ろうと下駄ばき入れに純が行くと、京子がそっと近づいてきた。
「あ、あの。純くん」
京子は言いにくそうな様子だった。
「何だよ?」
純はうるさそうに聞き返した。
「あ、あの。純くん。今週の日曜日。よろしかったら、また私のアパートに来てくれない?お食事を作って待っています」
京子は顔を真っ赤にして言った。
「ああ。考えとくよ」
純は素っ気なく言った。
そうして純は去っていった。



2025年6月15日(日)擱筆

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住専問題(小説)

2025-06-06 15:03:47 | 小説
住専問題

1996年3月20日。私は都内の図書館で勉強して、帰りに新橋駅前のマクドナルドに寄った。そうしたら若い学生が二人、住専問題を話していた。一人が、
「いくら菊池桃子を使っても東海銀行もダメだよ」
と会話の流れの中で言っていた。
住専(住宅金融専門会社)はバブル景気の時に土地を担保にして銀行から資金を借り入れて貸し出していたが、バブル経済が崩壊し地価は下落し、それは不良債権となり政府は6850億円を1996年度予算の一般会計から支出することになってしまった。
だがまてよ。東海銀行は5年以上前から、彼女をイメージガールとしてつかっていたぞ。何となれば、私は5年前、東海銀行の前の彼女のポスターが、どうしてもほしくなったので、銀行の人に菊池桃子のポスターを下さいとたのんだ。そしたら快くくれた。住専問題が、おこったのであわてて、イメージ回復のため、とってつけたのではない。彼女は現代に生きる女キリスト者だ。彼女は金融の実体をしらなかったから安易に東海銀行のイメージガールをひきうけたのであろうか。
いや、ちがう。彼女は東海銀行を信じてイメージガールをひきうけたのだ。
これはミニコミの女生週刊誌にのっていたのだが、彼女は今、心をいためており、食事ものどを通らないらしい。夜も眠れない、ということだ。彼女のマネージャーが、そのことを東海銀行の社長に電話した。そしたら社長は緊急役員会議をひらくことにし、彼女にそれに出席してほしい、とたのんだ。彼女はそれを承諾した。そして東海銀行の本社へ行って、役員達に、
「モモコ、ゆるしません」
と言ったらしい。出されたケーキも紅茶も手をつけなかった、ということだ。役員達はうちひしがれてしまい、
「どうしたらいいのでしょうか」
と訓辞をあおいだ。彼女は、
「私、経済の勉強をします。今はまだ、お金のしくみのこと、わかりません。それまでは自分の良心にもとづいて、よいと思うことをして下さい」
と言った。役員の一人がポソッと、
「でも、これは政治もからんでいるんです」
と言ってしまった。そしたら彼女は、
「私、政治のことも勉強します。誰がかかわっているんですか」
ときいた。彼女の口調には、かくしだてを出来なくしてしまうものがあった。一人がつい、ポソッと、
「自民、社民、さきがけ、の与党三党、新進党、それに内閣総理の橋本首相・・・」
と言ってしまった。彼女は、あすにでも首相官邸に行きます、といってかえったらしい。彼らはこういう小さなミニコミを知らないであろう。
私は彼女があんまり政治に探入りしない方がいいと思っているのだが・・・。だが、一方で、彼女の一言で日本はガラリとかわることも事実だろう。彼女の澄んだ瞳ににらまれると、みな、しおれてしまい、罵詈雑言を言うことなどできなくなるのだから。


1996年3月20日擱筆

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羽生とリエ(小説)

2025-06-02 11:16:37 | 小説
羽生とリエ

あるキビしい試験前だったから、私はほとんど新聞もテレビもみる、読む、時間がなかったので、H名人という存在も七冠王という、こともピンとこなかった。私は将棋はルールを知ってて、ヘボ将棋で負けることくらいならできる。小学校の頃は少し、ヘボ将棋を友達と楽しんだ。そして橋本首相から総理大臣賞、だったかな、をうけとり、橋本首相と握手して、今総理は、住専問題でクタクタである。H名人に、何かいい手はないかね。ときいて、H名人が、将棋のことならわかりますが、政治のことはわかりません。と言った、と新聞にのってて、いかにも世人をよろこばせそうな答えであり、又、世間も彼の答えにこの上ない、安心感を、感じるのだが、あれは本心ではなかろう。彼ほどの電光石火のような思考力の人間なら、誰よりも深く世間もよめるはずだ。能ある鷹は爪を隠しているだけにすぎない。将棋小説の、真剣士、小池重明が大ヒットしたが、私には真剣士よりもプロの高段者の方がもっと真剣勝負を生きているように見える。というのはアウトローである真剣士は負けても恥にも黒星にもならなく、強気で勝負できるが、プロの高段者にとっては負けは命とりで、プロ棋士というのは耐えず命のかかった極度の緊張の綱渡りをしているように門外漢の私には見えるからだ。彼は若いのに、羽織袴に扇子をもった姿がファシネイティング。
彼がきれいな女優さんと結婚することになった。とても有名な人らしい。私はテレビをあんまりみないから、よく知らない。でも、その結婚を妨害するような電話が多くあったらしい。彼女のファンかな。よく知らない。私はこれで小説がつくれると思った。
 披露宴がおわった後、H名人は言う。
「僕、将棋のことしかわからないんです」
彼女は、微笑んで、
「私、ドラマの演技のことしかわからないんです」
H名人、子供っぽく笑う。
彼女「でも私たちって、とても相性があうような気がします」
芸能人は世俗の垢にまみれて生きてきた分、社会を知っている。役者が一枚上である。
彼女、いたずらっけがおこって、
「あなたが王座からおちたら、私、浮気しちゃおうかなー」
と独り言のように言う。この時、H名人は、「エエーそんなー」とはいわないのである。彼はコチコチに緊張してしまって、
「ハ、ハイ。いつまでも王座でいられるよう、ガンバリます」
と言う。彼女はくすくす笑って、
「ジョーダンよ。ジョーダン。ジョーダンもわからないんだから。しかたない人ね。まったく先が思いやられる・・・」
「えっ。先が思いやられるってどういうことなんです?」
「いや、いいのよ。何でもないのよ。一人言よ。一人言。深よみは将棋だけにしといて」
そう言えば、H名人は、橋本首相に、泰然自若と書いた色紙をあげたというように記憶している。人は自分のもっていないものを銘とするから、泰然自若を銘とする人は、気がちいさい。
H名人「あんまり、いじわるいわないでください」
という。面持ちに影がさす。いれかわるように、彼女はうれしくなる。彼女は聞いた。
「あなたは将棋について、どう思っているのですか。強い人がでてくるのがこわいのですか。あなたの将棋観を教えて下さい」
「僕はつよい人と勝負することが好きなんです。そして、勝負している時は、もう負けたくない、とか、何としてでも勝たねば、なんて感情はありません。もう自分というものがなくなってしまってるんです。ただただ、相手の指した一手に対し、それに対する最も有効な手は何か、ということが、意志と無関係に瞬時に頭に入ってきます。一手一手が無限の勝負です。だから勝ってもそれほどうれしくないです。気がついたらいつのまにか七冠王になっていたんです」
「あなたは絶対だれにもまけないわ。あなたなら一生日本一だわ」
彼女は語気を強めて言った。
「どうしてそんなことがわかるんですか。強い人はこれからもでてくるでしょう」
彼女はそれには答えず、少しさびしそうに、うつむいて、
「くやしいけど、私も勝てないわ」
と、つけ加えた。
・・・・・・・・・・・・・・・
ちなみに二人の初夜の様子を書いておこう。夫はなにぶん生まれてこの方、将棋にばかり熱中していて世間一般のことが疎い。
なので新妻に何をするのかわからなかった。結婚とは男と女が一つの家で一緒に暮らすことで、それだけだと思っていた。女の体を見るなどもってのほかだと思っていた。男は下品な本や下品な友人から大人の世界を知る。しかし彼には下品な友人との猥談もなければ下品な本をレジに持っていって、レジのおねーさんに「まあ、いやらしい子」と思われるのが怖くて出来なかった。彼は将棋の定跡本と学校の教科書しか読んだことがなかった。
それに気づいたのは、ある時、「あなた。うしろとめて」と言って、ブラジャーのホックをとめるよう頼んだ時だった。なかなかはまらない。何か様子がぎこちない。
「ごめんなさい。このホック、はまりにくいの。自分でやるわ。」
と言ってプチンとはめて、振り返ると夫が正座して顔を真っ赤にして冷や汗をタラタラ流している。妻はこの時、アキレスの踵を見つけた思いで微笑した。それ以後、イタズラがなんとも面白いようになった。楽しくおしゃべりしながら二人して食事している時、急にパタリと倒れたりして。
「ど、どうしたの。リエちゃん。救急車呼ぼうか?」
「ううん。いいの。私、先天性の不整脈があって時々気を失うことがあるの」
「ど、どうしたらいいの」
「ベッドに運んで下さる。少し休んでいればなおるわ」
若者は少女を抱き上げてベッドに運んだ。
「だ、だいじょうぶ。何か僕に出来ることある」
「む、胸をさすってくださると楽になるの」
若者はブルブル体を震わせながらなるたけそこは触れないよう、胸骨を恐る恐る、そっとブラウスの上からさすった。
「ありがとう。落ち着いてきたわ」
と言って少女はクークー寝入った。
彼女はパンツ洗うというのに夫は自分で洗うと断った。結婚とは男と女が一緒に住んで、手をつないで寝ることだと思っていた。結婚したからといって、断りもなしに自分の性欲を満たすために女を裸にしたりするのはもってのほかだと思っていた。
将棋の研究ばかりに熱心になっていたので女の心理の研究がおろそかだった。女の裸の写真を見ることは悪いことだと教えられ、それをもっともだと信じていた。
夏の暑さが劣情をかきたてた。新婦はベッドの上に髪をちらけて、無造作に子犬のような寝息をたてている。これ以上に男の劣情を刺激する状況があるだろうか。夫は欲情に抗しきれなくなり、彼女に気づかれないように、ゆっくりベッドにのって、彼女の顔をまじかに見ようと顔を近づけた。
その時、彼女がパッと目を開いた。ので、若者はあわてて、
「ごめんなさい」
と言って顔を真っ赤にして、飛び退こうとした。彼女は手をつかんで引き止めた。
「いいの。何をしてもいいのよ。結婚ってそういうものなの。今までだましててごめんなさい」
そう言って彼女は瞑目して頭を少し上に向けた。若者も目をつぶり、そっと口唇を重ねた。

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光子と三人の少年(小説)

2025-05-27 19:05:41 | 小説
光子と三人の少年

という小説を書きました。

浅野浩二のHPその2にアップしましたのでよろしかったらご覧ください。

光子と三人の少年

子供のころの思い出は、誰にとっても懐かしく、あまずっぱい、光と汗の実感でつくられた、ここちよい、肌が汗ばみだす初夏の日の思い出のようなものでしょうが、子供はまだ未知なことでいっぱいで、あそびにせよ、けんかにせよ、大人のように制限がなく、やりたいことを、おもいっきり発散できるからで夢のような自由な世界がなつかしくなるからでしょう。
私が中学1年生の時、光子という一人の少女が、ひときわ、なつかしく思い出されます。
私は小学校を神奈川県の藤沢市の湘南台で過ごし湘南台小学校へ通っていました。
猛勉強して偏差値の高い学校へ行って、偏差値の高い大学に入って、いい会社に就職したいという思いもなかったので、中学校も家に近い公立の湘南台中学校に入りました。
小学校が一緒で、光子と仲の良かった山田、高橋、山本、の三人の男の子も湘南台中学校へ入学しました。
小学校の時から、光子と3人の男の子はよくふざけあっていました。
その友達関係は中学生になっても変わりませんでした。
子供ですから、色々なふざけっこをしました。
ある時、話題が流行りのテレビアニメ「太陽戦士レオーナ」になりました。
内容は女戦士レオーナが大魔王ガルンテという悪の組織と戦い、悪の組織をやっつけるという単純なストーリーです。でもそれが面白かったのは、女戦士レオーナが、悪の組織との戦いにおいて、悪の組織につかまって、ピンチになるけれど、レオーナが悪いヤツラをやっつけて、最終的に勝つのですが、レオーナがピンチになる時が、ハラハラドキドキさせられるからでした。
「太陽戦士レオーナ、って面白いよね」と山田が言い出しました。
「そうだね」と他の3人も賛同しました。
「あれが面白いのは、やっぱりレオーナが美人なのに強いからだよね」
高橋が言いました。
「そうだね。でも、いつも、レオーナが悪の組織につかまってピンチになるだろう。それをレオーナがやっつける所が面白いんだよ」
山田が言いました。
「そうだね。でも僕はレオーナが悪の組織につかまってピンチになる所が一番、面白いね」
山本がキッパリと言いました。
「実は僕もそう思っていたんだ。アニメでは、いつも必ずレオーナがピンチを乗り切って悪の組織をやっつけるけど、レオーナが悪の組織につかまって徹底的に虐められるというストーリーでも面白いと思うんだ」
高橋が言いました。こういう発言は小学生の時には、思っていなかった、か、思っていても言えなかった発言でした。
「そうだね」と山田と山本の二人も賛同しました。
そこへ光子がやってきました。
「ねえねえ。何の話をしていたの?」
光子が興味深げな様子で男たちに聞きました。
「太陽戦士レオーナのことさ。お前は太陽戦士レオーナについてどう思う?」
高橋が聞きました。
「もちろん面白いわ」
「どんな所が?」
「それは、もちろん、レオーナは女なのに強くて悪い男たちをやっつけるでしょ。それが面白いわ」
光子が言いました。
3人はヒソヒソと話し合いました。
「それじゃあ、レオーナごっこをやらないか?」
「どうするの?」
「光子。お前は女で美人だからレオーナの役だ。オレ達3人が悪役になるよ。お前はオレ達をやっつけるという遊びさ」
女で美人、という誉め言葉が効いたのでしょう。光子はニコッと笑って得意げな表情になりました。
「わかったわ。やろう。やろう」
光子は嬉しそうです。
私たちは、学校の裏手の神社に行きました。
「よし。じゃあ、お前がレオーナで、オレ達3人が悪の組織だ。やるぞ」
と言って3人は光子と向き合って、身構えました。
「お前たち、悪の組織にこの世を渡したりはしないわよ」
そう言って光子も戦闘態勢に入り身構えました。
「ふん。超能力をもっているからって、たかが女戦士一人に何が出来る」
それっ、かかれっ、と言って男3人は三方から光子を取り囲み、ジワジワと光子に近づいていきました。
それっ、かかれと言って三人は光子に襲いかかりました。
光子の前から光子を捕まえようとした男は光子に両手でドンと胸をおされました。
うわっ、とことさら大きな声を上げて男は倒れました。
他の二人も左右から光子を捕まえようとしましたが、光子は襟首をつかんで倒しました。
二人は、うわっ、とことさら大きな声を上げて男は倒れました。
もちろん女と男では男の方が力が強く、しかも男は三人がかりです。
三人の男は手加減してわざと光子にやられる演技をしたのです。
男たちは、「うわっ。やられた」と言ってその場に倒れてしまいました。
「ふふふ。どうだ。まいったか」
光子は、あはははは、と笑って倒れている三人を踏みつけました。
光子は、山田の体に馬乗りに乗り、山田の頬っぺたをピシャピシャと叩きました。
「どうだ。もう悪事はやめるか?」
光子は山田の耳を引っ張って聞きました。
光子は本当に正義の女戦士になったようで、とても嬉しそうな様子でした。
「やめる。やめる。だからもう許してくれ」
山田はふざけて言いました。
「よし。それなら勘弁してやる」
そう言って光子は山田から離れました。
男三人は立ち上がりました。
そして顔を見合わせて、
「あはははは。面白かったな」
と笑い合いました。
「光子。お前も気分よかっただろう?」
一人が聞きました。
「うん。最高に面白かった」
と光子は笑いながら言いました。
「じゃあこれからも美少女戦士レオーナごっこをやらない?」
山田が聞きました。
「うん。やろう。やろう」
と光子も嬉しそうに言いました。
それから光子と三人の男の子は放課後や日曜日に、美少女戦士レオーナごっこをやるようになりました。
光子もだんだん調子に乗って三人を蹴ったり、ビンタするようになりました。
「あーははは、面白いったら、ありゃしない」
光子は得意満面です。
光子と三人は毎日、家でテレビで美少女戦士レオーナを見ては、翌日、そのストーリーを真似するようになりました。
いつも美少女戦士レオーナは、悪の秘密組織にやられてピンチになりますが、それがハラハラドキドキさせられるのです。しかしそのピンチをレオーナが知恵を使ってのがれ、悪の秘密組織をやっつける所に美少女戦士レオーナの面白さがあります。
ある時の回では、レオーナは敵に捕まって敵の秘密基地に連れていかれました。そして手首を縛られて吊るされてしまいます。レオーナの大ピンチです。しかしレオーナは縄抜けの術を使って縄を抜け、敵の秘密基地を脱出して敵をやっつけました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日の放課後。
男三人は光子に「今日もレオーナごっこをやろう」と誘いました。
光子も嬉しそうに「うん。やろう。やろう」と乗り気満々でした。
三人は光子を廃屋に連れて行きました。
いつもは、神社の境内でやっているのに。
「どうして今日はここでやるの?」
光子が聞きました。
「ここは敵の秘密基地さ。昨日のレオーナは敵の秘密基地に連れて行かれちゃっただろ」
と山田がふてぶてしく言いました。
男三人が光子をドンと押して廃屋に入れると、男三人はヒソヒソと耳打ちしていました。
そして「よし。わかった」と言って三人はニヤリと笑い、それっ、と言って一斉に光子に襲いかかりました。
いつもは男たちが手加減してわざと光子にやられていました。
三人の男の子たちも、きれいな光子にやられることに満足していました。
しかし今日はいつもとは違いました。
男三人は手加減せず、本気で光子を捕まえようとしました。
「ああっ。やめてっ」
と光子が言っても三人は手加減しません。
男三人と女一人で男たちが本気になれば女に勝ち目はありません。
男三人はガッシリと光子を取り押さえ、光子の手首を縛って、それを廃屋の梁に引っ掛けました。
そして縄の余りをグイグイと引っ張って光子を吊るしてしまいました。
「ふふふ。レオーナ。縄抜けの術でこの縄から抜けてみな」
山田がふてぶてしく言いました。
光子も何とか縄から抜けようと手首をモジモジと動かしましたが、縄から抜けることは出来ませんでした。
「ふふふ。レオーナ。よくもよくもオレたちの仲間をやっつけてくれたな。今日こそはお前を叩きのめしてやる」
そう言うや男三人は光子から少し離れ、そして、棒きれで、吊るされた光子をツンツンと突きました。
「あっ。嫌っ」
いつもと違って抗うことが出来ないので光子は咄嗟に本音を言いました。
レオーナ役の光子、最大のピンチです。
男三人は、吊るされて立ちっぱなしにされて身動きのとれない光子を勝ち誇ったように、しばし眺めていました。
男三人はきれいな光子を捕まえたことに今までにない快感と興奮を感じていました。
男三人は1mくらいの棒で光子の体をツンツンと突いていましたが、だんだん調子に乗って光子の制服のスカートを棒でめくり出しました。
「あっ。嫌っ。やめて」
光子は咄嗟に叫び声を上げました。
しかし光子は手首を天井の梁に吊られているので手が使えずスカートを押さえることが出来ません。
男たち三人はそれをいいことに光子のスカートを棒きれでめくりました。
光子の白いパンティーが見えてきました。
光子も中学生になってからパンティーを履くようになったのでしょう。
それまでも男たち三人は小学生の時、ふざけて光子のスカートをめくろうとしたことはありますが、そうすると当然、光子はサッとスカートを押さえ、「やめろ。スケベ男」と言ってスカートをめくろうとした男の子の頬っぺたをピシャリと叩きました。
女の子ならスカートをめくられたら皆、怒りますが。
真面目な女の子のスカートをめくるのはためらわれて男の子はしませんが、光子はお転婆でふざけるのが好きなので三人の男の子が「スカートめくり」をしても「やったなー」と怒って追いかけてくるのです。そして捕まえて仕返しとして、男の子の頬っぺたを叩くのです。
光子はそういう明るい元気な女の子です。
しかし今は光子は手首を天井の梁に吊られているので手が使えずスカートを押さえることが出来ません。
山田が棒きれでソロソロと光子のスカートを上げていくと、光子の白いパンティーが見えてきました。
「や、やめろ。やめろ」
と光子はあせりました。
「ふふふ。女戦士レオーナのピンチだ。さあ、縄抜けの術でのがれてみろ」
男の子たちはふざけながら言いました。
光子はあせって体をモジモジさせました。
しかし抵抗できない光子を虐めるのは初めてで、それはとてもエッチで刺激的でした。
男たちは図に乗って光子のスカートのチャックをはずしました。
パサリと光子のスカートが落ちて、光子のパンティーが露わになりました。
光子のパンティーをじっくり見るのはこれが初めてでした。
小学校の時もたまに光子のスカートをめくるふざけはしたことがありますが、すぐに光子がサッとスカートを押さえますので、スカートが見えるのは、ほんの一瞬です。
しかし、今はじっくりと光子のパンティーを見ることが出来ます。
光子はセーラー服と白いパンティーだけというみじめで恥ずかしい格好です。
光子があせって、足をモジモジさせ、顔を真っ赤にして「やめろ。やめろ」と本気で訴えている姿の面白さを男の子三人は余裕綽々で見て楽しみました。
しばしして、山田がニヤニヤして光子に近づき光子のパンティーのゴム縁をつかみました。
「な、何をするんだよ?」
光子はあせって言いました。
「ふふふ。捕まった女戦士レオーナが敵にやられるんだよ」
そう言って山田は光子のパンティーを下げました。
光子の尻の割れ目がニュッと出て見えました。
しかし、ふざけっことはいっても、まだ中学1年生です。
女の子や女性にエッチなことをしてはいけないことは教育されて知っている社会の常識です。
なのでパンティーは尻の割れ目が見える程度で降ろすのをやめました。
光子は上はセーラー服を着ているのに下はパンティーだけで、しかもパンティーを降ろされかけて尻の割れ目が見えているのです。
「やめて。見ないで」
光子は必死で訴えましたが、男三人は聞きませんでした。
女の子が困っている姿があまりにも刺激的で興奮したからです。
出来ることなら、もっとエッチなことをしたかったのですが、こういう事はしてはいけないことなので、しばしして山田は光子のパンティーのゴム縁をつかんで上げました。
そして光子にスカートも履かせてやりました。
山田は光子を吊っている手首の縄も解きました。
これによって光子は手足が自由になりましたが、その場にクナクナと座り込んでしまいました。
光子は生まれて初めて、スカートを降ろされ、パンティーも降ろされるという恥ずかしい姿を見られてしまって落ち込んでいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「さあ。光子。じゃなかった美少女戦士レオーナ。ピンチを切り抜けて今度はお前が反撃する番だぞ」
山田が言いました。
しかし光子はとてももう遊べる気分ではありませんでした。
「もういい。今日は帰る」
そう言って光子は立ち上がりました。
あとに残った三人の男の子たちは、
「あーあ。つまらないな。今度はオレたちがやられる番だというのに」
「光子のような美人に虐められるのって気持ちいいんだよな」
と不満をもらしました。
光子はカバンを拾うと速足で廃屋を出て行きました。
・・・・・・・・・・・・・・・
それから数日間は光子と男三人は、美少女戦士レオーナごっこは、光子が気まずい気分だったのでやりませんでした。
一週間くらい経ちました。
はじめは落ち込んでいた光子でしたが、日を経るごとにだんだん、元の元気で明るい表情が光子にもどってきました。
その日の前日の美少女戦士レオーナは、またレオーナが敵に捕まってしまい、さらに吊るされて拷問されるという過激なものでした。
「昨日のレオーナ凄かったな」
「ああ。でもレオーナは敵を殺そうと思っているんだからな。戦いではああいうことが起こってもおかしくないよな」
とレオーナの話で盛り上がっていました。
「でもねー。女って虐められることが嫌でない人もいるんだぜ」
と高橋が言いました。
「ええー。どういうこと?」
山本が聞きました。
「女の中にはねー、虐められることに快感を感じて虐められたがる人もいるんだぜ。そういうのをマゾヒストって言うらしいんだ」
山田が言いました。
「オレたちは光子に虐められることが楽しいだろう。だからオレたちはマゾヒストなんだ。でも光子はオレたちに虐められることを本当に嫌がっただろう。だから光子はマゾヒストじゃないんだ」
光子はそれを横で聞いていて顔を赤くしていました。
その日の放課後。
「さあ。帰ろうぜ」
と言う山田に、
「ねえ。山田くん」
と光子が話しかけてきました。
「何だよ。光子?」
山田が聞き返した。
「久しぶりにレオーナごっこをしない?」
光子が顔を赤くしてモジモジして言いました。
「おう。やろう。やろう」
男三人は美少女戦士レオーナごっこをしたいのに、光子が乗り気がしなくなったので、光子の方から「レオーナごっこをしない」と言ってきたので大喜びしました。しかしなぜ光子の方から、レオーナごっこをやろう、と言い出したのか、その理由が分かりませんでした。
「山田くん」
「何だよ?」
「またこの前の廃屋に連れて行ってくれない?」
光子はあの廃屋に嫌な思い出があるはずです。なのでこの発言には驚きました。
しかし男たちにとっては光子にエッチなことをしたスリリングな所です。
どうして光子がそこへ行きたいのかはわかりませんでしたが、男たち三人にとっては断る理由はありません。今度は光子がこの前の仕返しとして男たちを虐めるつもりなのかとも思いました。
そして光子と三人の男は廃屋の前に着きました。
「じゃあ、レオーナごっこをやろう。光子。この前はゴメンな。今日はオレたちが吊るされてお前に虐められるよ。お前になら何をされてもいいよ」
レオーナごっこを続けたがっている男三人は光子に吊るされてズボンやパンツを脱がされて光子に虐められてもいいや、むしろ、そうされたいと思ってワクワクしていました。
「じゃあ、光子。今日はオレたちがお前に虐められるよ。何をしてもいいぜ」
と山田が言いました。
しかし光子の様子が変です。
「山田くん。今日も私がこの前のようにピンチになるわ。私は抵抗するけれど私を捕まえて私に何をしてもいいわ」
光子は顔を赤くしてそう言いました。
「ええっ。本当か?」
「ええ。本当よ」
男たち三人はちょっととまどいましたが、ヒソヒソと話し合ってニヤリと光子を見て笑いました。
「じゃあ、レオーナごっこをはじめるぞ」
「光子。廃屋の中に入れ」
そう言って男三人はドンと光子を突き飛ばして光子を廃屋の中に入れました。
「ふふふ。レオーナ。とうとう捕まえたぞ。今日はたっぷり拷問してやるから覚悟しろ」
そう言って男三人は光子を取り囲むとジリジリと近づいて行きました。
それっ、という合図と共に男三人は光子に襲いかかりました。
そして光子の腕や体をガッシリと捕まえました。
「ふふふ。今日は容赦なく責めるぞ」
そう言って男三人は光子のセーラー服を脱がしにかかりました。
「あっ。嫌っ。やめて」
と言いながらも、男三人の力にはかなわず、また、光子も本気で嫌がっているようには見えませんでした。
男三人は光子のセーラー服を脱がし、そしてスカートも脱がしてしまいました。
光子は白いブラジャーと白いパンティーだけの下着姿になりました。
まだ光子の胸は発育しておらず小さなサイズのブラジャーでした。
しかし光子はブラジャーとパンティーだけの姿にされても、
「嫌っ。嫌っ」
と言いながらも、レオーナごっこをしているような感じです。
男三人は前回と同じように、光子の手首を縄で縛り、その余りを天井の梁に引っ掛けて、グイグイと引っ張り、光子を吊るしました。
光子の下着姿はエッチというより、まばゆいほど美しいと男たちは恍惚としていました。
「ふふふ。光子。これで終わりだと思ったら大間違いだぜ」
そう言って山田は光子のブラジャーのホックをはずして抜きとり、パンティーのゴム縁をつかんでスルスルと下げていき足から抜きとってしまいました。
これによって光子は一糸まとわぬ丸裸にされてしまいました。
・・・・・・・・・・・・・・
「嫌っ。嫌っ。やめてー」
と言いながらも、その哀願は本気でなく演技で捕まったレオーナ役をやっているように見えました。
三人の男は、ますます興奮していきました。
「ふふふ。光子。これで済んだと思ったら大間違いだぜ」
そう言って男三人は、光子の美しい黒髪をつかんでグイと引っ張り、のけぞって首を後屈させて上を向いた光子の口をこじ開けて、水の入ったヤカンを光子の口の中の突っ込みました。
光子は否応なく水を飲まされました。
「ふふふ。光子。これで済んだと思ったら大間違いだぜ」
男三人はそう言って、1mくらいの長さの棒きれを持って、裸の光子の体をツンツンと突きました。
男三人は裸の光子を三方から取り囲んでいましたが、光子はアソコを見られないようにと二人には背中を向けていました。
しかし背中には光子のピッチリ閉じ合わさった尻が丸見えです。
「おい。光子。尻の割れ目が丸見えだぜ」
そんな揶揄を言いながら後ろの二人は尻をツンツンと突いたりピシャリと叩いたりグリグリとこね回したりしました。
後ろの二人は光子の太腿や背中もツンツンと突いたりピシャリと叩いたりグリグリとこね回したりしました。
「あっ。嫌っ。やめてー」
光子は叫び声を上げました。
しかし、後ろの二人はやめません。
光子は後ろの二人には背中を向けていますが前に居る山田には光子の体の前面が丸見えです。
「ふふふ。光子。アソコが丸見えだぜ。女の子のアソコの実物をこんなに間近で見るのは生まれて初めてだぜ。おい。光子。恥ずかしくないのか?」
山田がふてぶてしく言いました。
「は、恥ずかしいです。お願い。山田くん。見ないで」
光子は顔を真っ赤にして言いました。
そう言われても山田は光子の哀願など聞く耳を持たず、光子の太腿を棒きれでピシャピシャ叩いたり、棒きれの先で光子の臍をグリグリとこね回したりしました。
丸裸にされて吊るされて、三人の男に取り囲まれて虐められている姿はまさに、女が男に捕まって拷問されている図です。
男たち三人はハアハアと興奮しながら、裸にされて吊るされている光子を三方からピシャピシャと棒きれで叩いて虐めました。
男たち三人は本当に光子を拷問している気分になっていました。
「ふふふ。女を裸にして虐めるのは何て楽しいんだ」
山田が光子の体をピシャピシャ叩きながら言いました。
男たち三人は、かなりの時間、思うさま、光子の裸をとっくりと眺め、そしてピシャピシャと叩いて虐めました。
「よし。じゃあ、次の責めに移るぞ」
そう言って山田は立ち上がりました。
山田がそう言ったので後ろの二人も光子を棒きれで叩くのをやめました。
光子は叩かれなくなって、少しほっとした様子でしたが、山田が言った「次の責め」という言葉におびえているようでした。
次はどんなことをされて責められるのか怖がっているのでしょう。
「こ、今度は何をするの?」
光子は恐怖感から小声で聞きました。
しかし山田は答えず、廃屋の中にある水道のホースを持つてきました。
そして水道のホースの先を光子に向け、そして水道の蛇口栓を全開にしました。
ブババババッ。
水道のホースの先から水が勢いよく光子の体に向かって放出されました。
「冷たいー。やめて。お願い」
光子は訴えましたが山田は聞く耳をもっていません。
山田は笑いながら、光子の体めがけて放水を続けました。
水は矢のように山田の狙った光子の体の部分に激しく当たります。
山田は最初、光子のアソコに目がけて放水していました。
光子は太腿をピッチリ閉じていましたが、放水の攻撃から逃れることは出来ません。
光子のアソコは激しい水流の攻撃を受け続け、水はダラダラと光子の太腿を伝わって流れ落ち光子の下肢はびしょ濡れになりました。
次に山田は標的を変え、光子の胸や腹にホースの先を向けました。
光子の体は全身びしょ濡れになりました。
「冷たいー。やめて。山田くん」
光子は訴えましたが山田は聞く耳をもっていません。
山田は笑いながら、光子の体めがけて放水を続けました。
山田は光子の顔にも容赦なく放水しました。
激しい水流が光子の顔に当たり光子の顔は強い水圧のために歪みました。
山田が光子の顔への水の攻撃を続けるので光子は目と口を閉じて耐えるしかありませんでした。
光子の美しい顔が水の強い圧力によって歪んで、光子がそれに苦しそうに耐えている図はまさに男たちが女を拷問している図です。
顔への攻撃をやめると山田は今度は光子の後ろに回って光子の尻めがけて放水しました。
山田はピッチリ閉じ合わさった光子の尻の割れ目めがけて強い水の攻撃を続けました。
あたかも水の攻撃によって光子の尻の割れ目を開かせようとしている様です。
確かに少しは強い水の圧力によって柔らかい尻の肉が押しのけられましたが、水圧では尻の割れ目を開かせるほどの力はありません。
なので光子の尻の割れ目はピッチリと閉じたままですが、山田の執拗な意地悪の意志に光子はこわくなりました。
「山田くん。お願い。もう許して」
光子は濡れた顔を山田に向けて哀願しました。
「よし。じゃあもう水責めは勘弁してやる」
光子を十分、責めたので他の二人の男ももう満足していました。
山田は光子を吊るしている手首の縄を解きました。
それによって光子は吊りから解かれ、手が自由になりました。
「ほら。光子。冷たかっただろ。これで体をふけよ」
そう言って山田は光子にバスタオルを渡しました。
「あ、ありがとう」
光子はバスタオルを受けとると濡れた体を丁寧にふきました。
「今日の責めはこれで終わりにしてやるよ。ほら。服を着な」
そう言って山田は床に散らかっている光子の下着とセーラー服を拾って光子に渡しました。
「ありがとう」
光子はパンティーを足をくぐらせて履き、そしてブラジャーを着けました。
そして紺色のスカートを履き、セーラー服を着ました。
激しく虐められたわりには、光子は、さびしそうな顔はしていませんでした。
「光子。ごめんな。虐めちゃって。つらかっただろ」
「じゃあ、オレたちは帰るからな」
そう言って三人の男は廃屋を出て行きました。
・・・・・・・・・・・・・・・・
帰り道で男たちはこんな会話をしました。
「光子は裸にされて、嫌っ、嫌っ、見ないで、と言っていたけれど本当は虐められたいんだぜ。光子はマゾヒストなんだよ」
「本当か?でもどうしてそんなことがわかるんだ?」
「だって光子の方から、美少女戦士レオーナごっこをやらない、ってオレたちを誘ってきたじゃないか」
「でも1週間前に光子を廃屋に連れ込んで裸にした時には、光子は本当に嫌がっていたじゃないか?」
「そりゃー。生まれて初めての経験だからさ。光子も気が動転していたんだよ。女の子が生まれて初めて、いきなり男たちに裸にされたら気が動転しちゃうのは当然だよ。でも1週間くらいしているうちに、光子も気持ちが落ち着いてきて、マゾの快感を味わいたくなったんだよ」
「でも光子は今日も嫌がっていたよ。どうして光子がマゾだとわかるの?」
「女の子でもマゾの性癖を持った子とマゾの性癖を全く持っていない子がいるんだよ。マゾの性癖を全く持っていない子にあんなことをしたら本当に泣いちゃって嫌がるよ。光子も嫌がる素振りをしたけれど、あれは演技さ。美少女戦士レオーナは敵に捕まっても嫌がるだろう。それが見ている男たちを興奮させるんだ。だから光子も嫌がる素振りを演じてオレたちを興奮させようとしたんだよ」
・・・・・・・・・・・・・
翌日。
光子と男たち三人はいつも通り学校に来ました。
光子は三人の男を見つけると、
「おはよう。山田くん。高橋くん。山本くん」
とニコッと笑顔で挨拶しました。
三人の男の子も、
「おはよう。光子」
と挨拶しました。
光子は昨日の虐めなど全く忘れているかのような態度でした。
そして光子は自分の席に着くとクラスの女の子たちとペチャクチャお喋りし出しました。
今年から中学生になってセーラー服を着るようになったとはいえ、まだ心は小学生の延長のようなものです。というより小学生の頃はまだ子供だったので、男の子と女の子は「異性」を意識することがなく友達と見ていたので、男も女も関係なく友達として付き合っていたのに、中学生になって急速に第二次性徴が起こりはじめ、女は胸が膨らみ出し、男はおちんちんに毛が生え出したりエッチな動画や写真を見てオナニーする子も出始めてきて、急速な心と体の変化に戸惑い出すようになったといえるでしょう。
男と女はお互いを「異性」と意識し出すようになり、その恥ずかしさのため、異性には容易には話しかけづらくなり、男の子は男同士で女の子は女同士で話すようになっていきました。
男が女に話しかけると、周りの生徒たちに、「アイツは彼女に恋してる」と思われたり噂話されたりするのが、こわくなるからです。
「ねえ。光子。昨日の美少女戦士レオーナ見た?」
光子の友達のクラスの女子生徒が光子に話しかけました。
「うん。見たわよ」
「光子。あれ。スリルがあって面白いわね」
「そうね」
「光子なら美少女戦士レオーナの役になれるわよ。だって光子がこの学校で一番、可愛いんだもの」
「そうかなあ?」
光子は独り言のように首を傾げて言いました。
「そうに決まっているわ。光子がAKB48のオーデイションを受けたら絶対、合格して女優になれるわよ」
「そうよ。光子は謙遜しているけれど、一度、原宿を一人で歩いてみなさいよ。絶対、芸能プロダクションのスカウトの人に声をかけられるから」
光子はそれには答えず、ふふふ、と笑いました。
「光子は将来、何になりたいの?」
「わからないわ」
「光子は国民的アイドルになるに決まっているでしょ。100年に一人出るか出ないかの」
「そうよ」「そうよ」と女子生徒、全員が賛同しました。
体育の授業の後、女子更衣室にもどると時々、光子の靴下やブラジャーなどが盗まれていることがありました。そして「ゴメンなさい。光子様。好きです。これで新品のを買って下さい」というメモが5000円札と一緒に置いてありました。光子は男子生徒の憧れの的でしたから光子を熱烈に恋い慕っている生徒が、光子の汗の沁み込んだモノをどうしても欲しくて盗んだのでしょう。光子は、やれやれ、と困ったものだと思うと同時に、男子生徒に好かれていることに喜びも感じていました。
もちろん光子はクラス委員長でありました。
やがて先生が来て授業が始まりました。
光子は勉強も出来るので、先生が黒板に問題を書き、
「この問題がわかる人は手を上げて」
と言うと、光子は「はい」と言って手を上げて黒板の前に出てきて「正解」を書きます。
それは、英語・数学・国語・理科・社会、の全ての科目でです。
クラスの女子生徒は皆、
「いいなあ。光子は才色兼備で」
と光子をうらやましがりました。
・・・・・・・・・・・・・
さて、その日の授業が終わりました。
山田、高橋、山本の三人は光子に、
「さようなら。光子」
と言ってカバンを持って立ち上がり教室を出て行きました。
「さようなら。山田くん。高橋くん。山本くん」
とニコッと笑って挨拶し光子もカバンを持って教室を出て行きました。
帰途、光子が人影の少ない林の中を歩いている時です。
木陰に隠れていた三人が、バッと出てきました。
そして光子を取り囲みました。
「なあに?何の用?」
光子は立ち竦んで聞きました。
「ふふふ。今日も美少女戦士レオーナごっこさ。敵はレオーナを待ち伏せして襲いかかることもあるだろう」
三人の男の子と女一人では抗っても逃れることは無理です。
光子は腕をつかまれて連れて行かれました。
やがて三人の男の子は光子を虐める廃屋の前に連れて行きました。
一人が廃屋の戸を開けました。
「さあ。入れ。光子」
そう言って三人は光子を廃屋の中に入れました。
「今日は何をするの?」
光子が脅えた表情で聞きました。
「ふふふ。だから、今日も美少女戦士レオーナごっこさ。お前は待ち伏せしていた敵に捕まってしまったんだ」
そう言って男二人が光子の腕をそれぞれ、つかみ、一人が光子の服を脱がせ出しました。
男たちは光子のセーラー服を脱がせ、スカートも降ろし、そしてブラジャーのホックもはずし、パンティーも降ろして足から抜きとってしまいました。
あっという間に光子は一糸まとわぬ丸裸にされてしまいました。
廃屋の中には食卓ほどくらいの大きさの古びたテーブルがあります。
「さあ。光子。このテーブルの上に乗れ」
山田が言いました。
「私をテーブルの上に乗せてどうしようというの?」
「いいから乗るんだ」
男の子三人の力には敵いませんから光子は仕方なくテーブルの上に乗りました。
「さあ。光子。犬のように四つん這いになれ」
山田が言いました。
仕方なく光子はテーブルの上で犬のように四つん這いになりました。
丸裸にされてテーブルの上に四つん這いの姿で乗せられている姿を男三人に取り囲まれて見られているのは、みじめと羞恥の極致です。
「ふふふ。光子。お前は犬だ。今日はお前の体を徹底的に調べてやる」
山田が言いました。
「や、やめてー」
光子が叫びました。
二人の男が光子の足をつかみ、思い切り大きくグイと開きました。
そのため光子の尻の割れ目がパックリと開きました。
男の子三人はパックリと開いた光子の尻の割れ目をまじまじと見つめました。
男三人は今まで、光子のムッチリと閉じ合わさった尻は見ていましたが、尻の割れ目やアソコは、ハッキリとは見ていませんでした。
丸裸でも立った姿勢では女のアソコは閉じた割れ目の一部がちょっと見えるだけです。
それが今では丸見えです。
尻の割れ目には窄まった尻の穴があり、その下に一筋の割れ目があります。
光子は成熟が遅い方なのか、アソコにはまだ毛がはえてはいませんでした。
胸の膨らみもまだ小さい方です。
三人の男はゴクリと唾を呑み込み、生まれて初めて見る女のアソコと尻の穴をじっくりと食い入るように見つめました。
物理的な時間としては数分と短いでしょうが、刺激があまりにも強いため、もうこの光景は脳裏に焼きついて一生、忘れることがないと思ったのでしょう。
「よし。じゃあ、光子の体を隅々まで徹底的に調べるぞ」
そう言って男三人は光子の体を触り出しました。
三人は光子の柔らかい尻を触ってその弾力を調べたり、まだ小ぶりな胸を揉んでみたり、光子の美しい黒髪を弄ったりしました。
「ひいー。やめてー」
光子は叫び声を上げ、全身をプルプル震わせていましたが、恥ずかしさと弄ばれる辛さに手がガクガクと震えて肘が曲がり出しペシャリと潰れそうになりました。
「動くな。光子。オレたちは犬の手入れをしているトリマーなんだぞ。しっかりと肘を突っ張って四つん這いの姿勢をキープしろ。倒れたら、また昨日のように吊るして拷問するぞ」
山田が強い口調で言いつけました。
また昨日のように長時間、吊るされて、叩かれたり水責めされたくはない、と思ったのでしょう。
光子は肘を突っ張って四つん這いの姿勢を保ちました。
三人の男は、光子の尻を触ったり、まだ小ぶりな胸を揉んでみたり、光子の美しい黒髪を撫でたり、鼻の穴の中を見たり、口の中に指を入れて指先で光子の舌や歯を触ったりと、徹底的に光子の体を触りまくり弄りまくりました。
山田がただでさえ開いている光子の尻の割れ目を指先でスーとなぞると、光子は、
「ひいー。やめてー」
と大きな叫び声を上げました。
特に指先が窄まった肛門に触れると、光子は、「ひいー」と一段と大きな叫び声を上げました。
無理もありません。
肛門など自分でも見たこともありません。
そして尻の穴には感覚神経が集中していて、体の中でも最も敏感な所なのです。
山田が光子の尻の穴に、ふー、と息を吹きかけたり、指先で尻の割れ目をスーとなぞると、光子は、今まで経験したことのない激しい刺激に、「ひいー」「ひいー」と叫び声を上げ、尻の穴はキュッと窄まり、つらい責めから何とか逃げようと、尻が左右に激しく揺れました。
「おい。高橋。山本。光子の尻が動かないように、しっかり足を押さえていろ」
山田が二人に言いました。
「おう。わかった」
そう言って高橋は光子の左足をしっかり押さえ、山本は光子の右足をしっかりと押さえました。
男二人に足をつかまれて足を大きく開かれては、もう逃げようがありません。
山田は逃げようがなくなった光子のパックリ開いた尻の割れ目に息を吹きかけたり、指先で、スーと尻の割れ目をなぞったりしました。
光子は、ひいー、ひいー、と叫び続けました。
とうとう光子は、
「山田くん。もうやめて。許して」
と涙がこぼれている目を男たち三人に向けて哀願しました。
ちょっとやり過ぎたな、と男たちは反省する気持ちも起こっていました。
「よし。じゃあ、もう十分、光子の体を調べたからな。許してやるよ」
そう言って、高橋と山本は、押さえていた光子の足を離しました。
「ありがとう」
光子は四つん這いの姿勢をやめて、テーブルの上から降りました。
光子は下着や服を着たいと思っていますが、それは、三人がそれぞれ持っています。
「山田くん。服を返して」
光子がためらい勝ちに言いました。
返して、と頼んでも返してくれない意地悪をする可能性が強いと光子は思っているのでしょう。
実際、三人には、もっと光子を征服したいという思いがありました。
「光子。お前はオレたちは犬なんだ。床の上で四つん這いになれ」
山田が言いました。
光子はもう、恥の全てを晒してしまっているので、もう観念して男三人の言う通りに、床の上で四つん這いになりました。
山田は光子のパンティーを放り投げました。
「さあ。光子。お前は犬なんだから、犬のように四つん這いで、パンティーを口で咥えて持って来い」
山田が言いました。
光子は山田に言われたように、四つん這いのまま、犬のように歩いて、パンティーを口で咥えて、そして、もどって来ました。
よしよし、と山田は忠実な犬を誉めるように、光子の頭を撫でました。
次には、高橋が光子のブラジャーを放り投げました。
「光子。犬のように四つん這いで、ブラジャーを口で咥えて持って来い」
光子は高橋に言われたように、四つん這いのまま、犬のように歩いて、ブラジャーを口で咥えて、そして、もどって来ました。
よしよし、と高橋は忠実な犬を誉めるように、光子の頭を撫でました。
こうして、三人の男は、スカートとセーラー服も同様に放り投げ、光子に四つん這いのまま、口で咥えて持って来させました。
「よし。光子。もう立っていいぞ。服を着ていいぞ」
山田が言いました。
男たち三人の許可が下りたので光子は立ち上がってパンティーを履き、ブラジャーを着けました。そしてスカートを履き、セーラー服を着ました。
丸裸を見た後でも制服姿の光子は美しく輝いていました。
なぜなら光子は彼ら三人の女神さまなのですから。
「光子。ゴメンな。済まなかったな。調子に乗り過ぎたよ」
「ううん。いいの」
「そうもいかないよ。じゃあ、今度は美少女戦士レオーナの反撃の番だ。オレたちをやっつけてくれ」
そう言って三人は床の上に仰向けになりました。
しかし光子は何をしていいのか、わかりません。
迷っている光子に、山田は、
「さあ。光子。オレたちの顔を踏んでくれ。ビンタしてもいいぞ」
と言いました。
光子は少し迷っていましたが、山田に言われたように、
「よくも。よくも。私を虐めてくれたわね。許さないわよ」
光子はそう言って、三人の男の顔をグリグリ踏んでいきました。
しかも光子は体重を全部、乗せて遠慮しませんでした。
踏まれる度に、男たちは、
「ああっ。美少女戦士レオーナにやられた」
とふざけて言いました。
「光子。じゃあ、次はオレたちの体に馬乗りになってくれ」
山田が言いました。
光子は言われたように仰向けに寝ている山田の体をまたいで山田の胸にトンと尻を乗せました。
「じゃあ光子。オレたちの口に唾を入れてくれ。今日はお前にやり過ぎてしまったと反省しているんだ」
山田が言いました。
「わかったわ」
光子は山田の顔の上に自分の顔を持って行きました。
光子の顔の真下には山田の顔があります。
山田は、アーンと口を大きく開きました。
光子は、ふふふ、と笑って唾を垂らしました。
唾は山田の口の中に入りました。
山田は光子の唾をゴクリと飲み込みました。
「ああっ。レオーナにやられちゃったよ。でも光子と間接キスしたみたいで嬉しいな」
山田が言いました。
高橋、山本も、
「光子。オレにもしてくれよ」
というので、光子は山田と同様に高橋、そして次には、山本の体に馬乗りになり、二人の口に唾を垂らしました。
「ああっ。レオーナにやられちゃったよ。でも光子と間接キスしたみたいで嬉しいな」
二人も山田と同じ事を言いました。
「じゃあもうこれで許してあげるわ」
レオーナ役の光子が、許す、と言ったので男三人はムクッと起き上がりました。
光子と男三人は、顔を見合わせて、あははは、と笑いました。
「じゃあ私は帰るわ」
そう言って光子はカバンを持って立ち上がりました。
「さようなら。山田くん。高橋くん。山本くん」
光子はニッコリ笑って言いました。
「さようなら。光子」
「じゃあね、バイバイ」と手を振って光子は廃屋を出て行きました。
男三人も立ち上がってカバンを持って廃屋を出て行きました。
「よかったな。今日はちょっとやり過ぎちゃったみたいだけど。光子は怒っていないからな」
「光子は寛容なんだよ」
「でも光子のアソコや尻の穴まで光子の体の隅々まで見て弄って今日は最高に楽しかったな。オレ、一生、今日見た光子の体と体の感触、忘れないよ」
「オレもだよ」
「オレもだよ」
と三人は帰り道で歩きながら言い合いました。
・・・・・・・・・・・・・・・
翌日の学校。
光子が教室に入って三人の男を見つけると、
「おはよう。山田くん。高橋くん。山本くん」
とニコッと笑顔で挨拶しました。
三人の男の子も、
「おはよう。光子」
と挨拶しました。
光子は昨日の虐めなど全く忘れているかのような態度でした。
「おはよう。光子」
「おはよう。光子」
女子生徒、みなが光子に挨拶しました。
「おはよう」
と光子も挨拶を返しました。
先生が入って来て午前中の授業が始まりました。
いつも通り、先生が黒板に問題を書き、
「この問題がわかる人は手を上げて」
と言うと、光子は「はい」と言って手を上げて黒板の前に出てきて「正解」を書きました。
そして午前中の授業が終わりました。
湘南台中学校は昼食は給食です。
配膳係りが皆に給食を配り全員が給食を自分の席に置きました。
普通ならここで、「いただきます」と言って食べ始めるのですが、担任の先生は頭がおかしいのか、食事の前に生徒たちに「おいしい給食」という歌を歌わせるのです。そして先生が作った変な歌を歌いながら、担任の先生も歌を歌いながら拳を握りしめて、はしゃぐのです。
生徒たちは、どう考えても先生は頭がおかしいと思っているのですが、1分にも満たない儀式なので、嫌々、歌を歌って、そして「いただきます」と言って食べ始めるのです。
昼食が済んだ後は30分くらいの昼休みです。
光子は山田、高橋、山本の三人の所へ行き、
「はい。これ。私が昨日、つくったクッキーなの。食べて」
と言って缶を渡しました。
「うわー。ありがとう。光子」
と言って三人は缶を開けました。
かなりたくさんのクッキーが缶の中に入っていました。
三人は「美味い。美味い」と言いながら、光子の作ったクッキーを食べました。
そして1時に午後の授業が始まる始業のベルが学校中に響き渡って、先生がやって来て午後の授業が始まりました。
午後は数学と国語でした。
そして午後5時に午後の授業も終わりました。
光子も山田、高橋、山本の三人に、
「さようなら。山田くん。高橋くん。山本くん」
と言ってカバンを持って立ち上がりました。
山田、高橋、山本の三人も光子に、
「さようなら。光子」
と挨拶しました。
光子が教室を出ると三人も一緒に教室を出ました。
帰途、光子が人影の少ない林の中を歩いている時です。
木陰に隠れていた三人が、バッと出てきました。
そして光子を取り囲みました。
「なあに?何の用?」
光子は立ち竦んで聞きました。
「ふふふ。光子。今日も美少女戦士レオーナごっこさ」
そう言って三人の男の子は光子を廃屋に連れて行きました。
一人が廃屋の戸を開けました。
「さあ。入れ。光子」
そう言って三人は光子を廃屋の中に入れました。
「今日は何をするの?」
光子が脅えた表情で聞きました。
男たちはそれには答えず、光子に襲いかかって光子の服を脱がせにかかりました。
男たちは光子のセーラー服を脱がせ、スカートも降ろし、そしてブラジャーのホックもはずし、パンティーも降ろして足から抜きとってしまいました。
あっという間に光子は一糸まとわぬ丸裸にされてしまいました。
「さあ。光子。両手を前に出せ」
光子は素直に両手を前に出しました。
男三人は光子の手首を縛り、その縄の余りを天井の梁に引っ掛けて光子を吊るしてしまいました。
三人は立ち姿の裸の晒し者にされている光子をしばし、じっくり見ていました。
「いやー。光子の裸は何度、見てもあきないな」
「光子はプロポーションが抜群だな」
三人はそう言いながらだんだん、興奮していき、ハアハアと息を荒くし出しました。
男たちはズボンの上から勃起したおちんちんをしごき出しました。
「も、もう我慢できない」
そう言って三人は、わっと裸の光子に襲いかかりました。
三人は光子の体を思うさま、触りまくりました。
特に光子の股間です。
「光子。足を閉じていないで開け」
そう言っても光子は足を開きません。
なので二人が光子の右足と左足をつかんで力づくでピッチリ閉じた光子の足を30cmくらい開きました。
男たちは光子の少し開いた尻の割れ目をさらに手でグイと開き、光子の尻の割れ目に手を入れたり、アソコを触ったり太腿を抱きしめたりしました。
「嫌っ。嫌っ。やめてー」
と光子は抵抗しました。しかし縄で吊られている上に男三人の力にはかないません。
二人が光子の股間を弄び、一人が立ち上がって、背後から光子の胸を揉みました。
美しい女が裸にされて男三人に弄ばれている姿は極めてエロチックな図です。
十分に光子の体を弄ぶと、三人はまた、裸にされて晒し者にされている光子を鑑賞するために、光子から離れました。
しばし晒し者にされている光子の裸を見ているうちに三人はだんだん興奮していき、ハアハアと息を荒くしながら股間をさすっていました。
「も、もう我慢できない」
そう言うや、山田は急いで着ている服を脱ぎ出しました。
山田に起こった興奮は光子を虐めたいというザディズムではなく、それとは逆の光子と共に晒し者にされたいというマゾヒズムでした。
山田はワイシャツを脱ぎ、ズボンも脱ぎ、そしてランニングシャツとパンツも脱いで丸裸になりました。
「おい。高橋。山本。オレの手首を縛ってくれ」
山田が言いました。
高橋と山本の二人は山田の手首を縛りました。
山田は光子の所へ行き、自分の背中を光子の背中にピッタリとくっつけました。
「さあ。オレの手首の縄の余りを天井の梁に引っ掛けてオレを吊るしてくれ」
山田が言いました。
言われて高橋と山本の二人は山田の縄を天井の梁に引っ掛けました。
これで、光子と山田は共に、背中をピッタリとくっつけ合わせて、天井の梁に吊るされました。
まるで山田は美少女戦士レオーナである光子の仲間で、二人は捕まってしまい、裸にされてしまって吊るされているようです。
高橋と山本の二人は二人から離れて、生け捕りにした二人をニヤニヤ見ています。
男の方が裸になるのは初めてです。
丸裸の山田のおちんちんは激しく勃起していました。
山田の尻と光子の尻はピッタリとくっついて、山田は光子の柔らかい尻の感触に興奮していました。
「ああっ。いいっ。こうやって光子と一緒に虐められるのは」
山田は光子と一緒に虐められる被虐の快感に浸っていました。
「ああっ。光子。幸せだ。お前と一緒になら殺されてもいい」
山田が興奮して言いました。
「私も幸せよ。山田くん」
光子が言いました。
山田は光子と一緒に晒し者にされることに被虐の興奮を感じてハアハアと息が荒くなっていきました。
山田のおちんちんは天狗の鼻のように激しく勃起していました。
「ねえ。高橋くん。山本くん。私の縄を解いて」
光子が言いました。
光子も山田と背中合わせに縛られることに被虐の快感を感じているのに、どうして「縄を解いて」と言うのか、二人には分かりませんでした。
しかし何か光子に考えがあるのだろうと思って、高橋は光子を吊っている縄を解き、そして光子の手首の縛めも解きました。
これで山田一人が裸にされて吊るされていることになりました。
手が自由になった光子は、すぐに山田の横に屈み込み、片手で山田のおちんちんを、つかみ、片手で山田のお尻を触ったり金玉を揉んだりしました。
そして光子は、山田の尻の割れ目を触りながら、勃起した山田のおちんちんを、しごき出しました。
「ああっ。気持ちいい」
山田は大きな声を出しました。
「山田くん。足を開いて」
光子が言いました。
言われて山田は30cmくらい足を開きました。
そのため閉じ合わさっていた尻の割れ目が開きました。
光子は尻の割れ目に手を入れて、山田の尻の割れ目をスーとなぞりました。
もう一方の手では山田のおちんちんをしごいています。
だんだん山田の興奮が激しくなっていきました。
クチャクチャと射精前に出るカウパー腺液の音が起こりました。
「ああー。出るー」
山田は大きな叫び声を上げました。
ピュッ、ピュッと山田のおちんちんから、精液が勢いよく放出されました。
精液は放物線を描いて、1mほども遠くに飛び散りました。
射精した後は山田はガックリと脱力してしまいました。
光子はティッシュペーパーで山田のおちんちんと床に飛び散った精液をふきとりました。
「あ、ありがとう。光子。最高に気持ちよかったよ」
そう言って山田は高橋と山本に向かって、
「おい。オレの縄を解いてくれ」
と言いました。
高橋が立ち上がって山田を吊っている縄を解き、手首の縄も解きました。
自由になった山田はパンツを履き、ランニングシャツを着て、ワイシャツとズボンを履きました。
「オレにもやって」
「オレにも」
高橋と山本も我慢できないといった様子で光子に言いました。
「じゃあ、また私を吊るして」
そう光子が言ったので、山本が光子の手首を縛り光子を天井の梁に引っ掛けて吊るしました。
そして今度は、高橋が服を脱いで、全裸になり、山本が高橋の手首を縛って天井の梁に縄を引っ掛けて、光子と背中合わせに吊るしました。今度は高橋が裸にされて吊るされて光子と一緒に山田と山本の二人に晒し者にされてしまいました。山田と山本の二人は服を着ていて、裸にされて晒し者にされている光子と山本の二人をニヤニヤ眺めました。
高橋もしばしの間、光子と一緒に晒し者にされることに被虐の快感に陶酔していました。高橋のおちんちんも激しく勃起し出しました。
そして、高橋が我慢の限界に達して、
「ああー。もう我慢できない」
というと山本が光子の縄を解きました。
光子は山田の時と同様に、高橋のおちんちんをしごいて、射精させてやりました。
「オレにもやって」
山本が言いました。なので光子は、
「じゃあ、また私を吊るして」
と言いました。なので高橋が光子の手首を縛り光子を天井の梁に引っ掛けて吊るしました。
そして今度は、山本が服を脱いで、全裸になり、高橋が山本の手首を縛って天井の梁に縄を引っ掛けて、光子と背中合わせに吊るしました。今度は山本が裸にされて吊るされて光子と一緒に背中合わせに吊るされて、服を着ている山田と高橋の二人に晒し者にされました。山本もしばしの間、光子と一緒に晒し者にされることに被虐の快感に陶酔していました。そして山本のおちんちんも激しく勃起し出しました。
そして、山本が我慢の限界に達して、
「ああー。もう我慢できない」
というと高橋が光子の縄を解きました。
光子は山本のおちんちんをしごいて、射精させてやりました。
「ありがとう。光子」
山本は礼を言いました。
高橋が山本の吊りを解いたので、山本は服を着ました。
光子も床に置いてある自分の服を着ました。
これで4人は全員、服を着ました。
三人の男はしばし、光子と背中合わせに吊るされて、残り二人の男に晒し者にされる被虐の快感に浸っていました。
「ああー。気持ちよかったな。光子と背中合わせに縛られるの」
「光子と一緒になら殺されてもいいよ」
「マゾがこんなに気持ちがいいなんて知らなかったよ」
三人はそんなことを言い合いました。
光子は、ふふふ、と笑っています。
「それじゃあ今日はこれで終わりにしよう」
そう言って三人は光子と一緒に廃屋を出ました。
・・・・・・・・・・・・・
やがて夏休みになりました。
光子は父親の仕事の都合で大阪に引っ越すことになりました。
光子は元気で明るい子なので、転校した中学校でもすぐに、友達が出来て学校に馴染んだようです。
その後の光子がどうなったかは三人の男は知りません。
しかし、小学校から中学1年の1学期まで、光子と遊んだ思い出は三人にとって一生、忘れることがないでしょう。


2025年5月27日(火)擱筆

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g00ブログ殺人事件(小説)

2025-05-18 19:27:05 | 小説
gooブログ殺人事件

という小説を書きました。

浅野浩二のHPの目次その2にアップしましたのでよろしかったらご覧ください。

gooブログ殺人事件

哲也が小説を書き出したのは大学3年の時である。
医学部に入ってしまった哲也だが彼は医者になってバリバリ働こうとは全く思っていなかった。自分は将来、何をやろうか全くわからなかったからである。哲也は理系が得意だったが、どこかの大学の理工学部に入りたいとは思っていなかった。理系であろうと文系であろうと日本では大学とは、いい企業に就職するための手段に過ぎない。なので大学に進学する目的は学問を身につけようという志ではない。大学に入っても、ほとんどの生徒はアルバイトに励み、合コンで女と付き合い、部活やサークルに励み、海外旅行に行き、つまりは遊ぶために大学に行くのである。大学の授業に出るのは100人中2、3人である。そして教授は試験は過去問しか出さないから、勉強は試験の数日前から過去問題をわけがわからなくても丸暗記する。それで単位が取れて卒業できるのである。日本の大学は遊ぶためのレジャーランドであり、大学を卒業したからといって学問が身につくものでもない。日本の大学は四年間、遊ぶためのモラトリアムであり、いい企業に就職するための手段に過ぎない。
哲也が医学部に入ったのは、哲也は子供の頃から病弱で医学に興味があったからである。
哲也は真面目で勉強熱心だったので、1年2年の教養課程で誰も出席しない講義にも出席した。そして3年からは基礎医学が始まった。
しかし哲也は「ああ。オレも一介のどこにでもいる、つまらない医者になってしまうのか」とため息をつく毎日だった。
生きがいが欲しい。自分の全身全霊を打ち込めるような生きがいが。
そんな潜在意識が哲也の心の中でくすぶり続けていた。
3年の一学期のある日のことである。
「小説家になろう」という天啓が突然、哲也に下った。
今まで一度も小説など書いたこともないのに。
しかしその天啓は哲也をガッシリと捉えてしまって、哲也はその日から小説を書き出した。
もちろんプロ作家になって筆一本で生活していくのは至難である。
俗にも筆二本という。なので、せっかく医学部に入ったのだから卒業して医者として働き、それで収入を得て、そしてプロ作家を目指そうと思ったのである。
そして哲也は医学部を卒業して医者となり、医者の仕事の傍ら小説を書いた。
2001年に哲也は、それまで書いてきた短編小説をまとめて自費出版した。
デキのいいと思う18作品の短編小説と研修病院で働いていた時に書いた5編のエッセイも加えた。タイトルは「女生徒、カチカチ山と十六の短編」とした。
しかし無名の書き手の小説なので売れない。
ネットで宣伝しなくては売れないのである。
なので哲也は急いでホームページビルダーというソフトを買ってホームページを作った。
そして「女生徒、カチカチ山と十六の短編」をホームページに載せた。
しかしやはり無名の書き手の小説は読まれない。
だが哲也にとっては小説を書いていれば満足なので小説を書き続けた。
そして小説が完成すると、それをホームページに出した。
2005年くらいからブログというものが現れ始めた。
日記のようなものである。
皆がブログをするようになった。
哲也もブログには興味があった。
哲也は小説いがいでも色々と政治のこととか、医療のこととか、スポーツのことで書きたいと思っていることがたくさんあったからである。
それで哲也は2008年の4月にブログを始めた。
ブログをサービスしている会社はいくつもあったが哲也はgooブログにした。
そして自分の思っていることをブログで書いた。
哲也の書いた記事を読んでくれる人は結構いた。
もちろん小説を書き上げると、それはホームページだけではなくブログにも載せた。
しかしgooブログでは一つの記事に1万文字までしか入れられなかった。
哲也の書く小説の傾向も学生時代の時と変わっていった。小説を書き始めた頃は3000文字くらいの短編小説も書けたのだが、短編でキリッとうまくまとめることが難しくなっていったのである。
哲也の書く小説は長くなっていき、3万文字から6万文字と長くなっていった。
なので哲也は1万文字を越す小説を書いてもブログには載せなかった。
2万文字以下の小説なら記事を二コマ使って二つに分けて載せることも出来るが、哲也にはそれがしっくりしなくて嫌だった。やはり一コマの中に入れたかった。
しかし有難いことにブログの性能が向上してくれた。
2015年にgooブログがバージョンアップして一つの記事に2万文字まで入力できるようになった。
これは助かった。
さらにその3年後には一つの記事に3万文字まで入力できるようになった。
これも助かった。
これで3万文字以下の小説はブログの一コマの中に入れて出すことが出来るようになった。
6万文字以下の小説は(上)(下)として、分けて二コマ使って入れることにした。
そうして哲也は小説を書きながらブログ記事も書いた。
2020年に新型コロナウイルスのパンデミックが起こった。
gooブログにも変化が起こった。
gooブログの記事の下に4つの〇がつくようになったのである。
それは(いいね)、(応援)、(続き希望)、(役立った)、の4つある。
なぜか(いいね)は「グッド」で(応援)は「フレーフレー」で(続き希望)は「ワクワク」で(役立った)は「パチパチ」である。
全部、似たような意味だと思うのだが。
別に記事が役立っていなくても(役立った)ボタンを押すことが出来るのである。
他の所のブログでは気に入った記事には一つの「お気に入り」ボタンがあるだけである。
しかしgooブログでは4つの〇がつくようになったのである。
gooブログにログインすると「編集トップ」という画面が現れる。
ここで8人のgooブロガーの記事が出ている。
これは「アピールチャンス」という機能でgooブロガーに平等に突然やってくるという機能だった。
「アピールチャンス」が出たら他人に見せたい自分の一つの記事を選び「登録」ボタンを押すと「編集トップ」の画面に出ている8人のgooブロガーの一人として表示されるのである。
といってもgooブログの利用者は300万人もいるので表示されるのは、1秒にも満たないほんの一瞬である。
「アピールチャンス」はgooブロガー全員に平等に突然やってくるとgooブログでは言っているがこれはウソで記事をほとんど毎日書いている人にやって来やすいのである。
中にはたまにしか記事を書かない人もいる。そういう人には「アピールチャンス」はやってこないのである。
さらにgooブログでは「アドバンス」という機能をつけた。
「アドバンス」にすると「アピールチャンス」が出やすくなるという宣伝文句だった。
「アドバンス」にすると最初の一カ月は無料と宣伝した。
しかし一カ月を過ぎると月300円クレジットカードで引き落とされる。
月300円ならたいした金額ではないが、これを1年やると一人で一年間3600円である。
「アドバンス」にする人は結構いて、gooブログ利用者300万人の10人に1人くらいは「アドバンス」にしていた。gooブログにしてみれば、一年間で30万×3600円=10億8千万円の儲けである。これに味をしめてgooブログは金の亡者になるようになった。
しかしこんなのは道義的には可笑しなことである。
ブログ記事の「いいね」の評価は記事の内容の価値によって決められるべきものであり、金をとってブログを他人に宣伝させてやるというのは道義的に可笑しい。
しかも記事の内容は「今日はねむたい」とかの一言の何の価値もないクズ文でいいのである。
ちもろん哲也はそんなバカげたことはしたくない性格だったので、「アドバンス」にはしなかった。しかしこの「アピールチャンス」機能は哲也にとって都合がよかった。というのは、「アピールチャンス」に出ている8人の記事を開いて、(いいね)、(応援)、(続き希望)、(役立った)の4つの〇を押すと相手も哲也のブログを見てくれる人が出て来るのである。もちろん全員が見てくれるわけではない。さらに相手のブログをフォローすると相手も哲也のブログをフォローバックしてくれる人もいる。もちろん相手をフォローしてもフォローバックしてくれない人の方が多い。しかし100人に1人くらいはフォローバックしてくれる人もいるのである。こうしてフォロワー0だった哲也のブログもフォロワーが増えていった。
しかし有名人や価値のあるブログ記事を書く人はアメーバブログで、gooブログは内容のない記事ばかりのじいさん、ばあさんのブログだった。
記事の内容は、圧倒的にペットの飼い猫の写真と食事の写真とスポーツ選手の写真と釣りや旅行などの趣味の記事ばかりだった。しかし哲也は内容のない記事にも、(いいね)、(応援)、(続き希望)、(役立った)の4つの〇を押した。アピールチャンスに出てくる人は大体、決まっていて、ブログランキングの上位に入りたがっている人ばかりだった。そういう人たちは、ほとんど毎日、ブログ記事を書いて投稿していた。
そして相手の人柄というものもわかってきた。
誠実で親切な人間性の優れた人は哲也が(いいね)、(応援)、(続き希望)、(役立った)の4つの〇を押すと、相手も哲也の記事に(いいね)、(応援)、(続き希望)、(役立った)の4つの〇を押してくれた。これはやはり嬉しかった。
しかし中には、いくら哲也が(いいね)、(応援)、(続き希望)、(役立った)の4つの〇を押しても、全く無反応の人もいた。
・・・・・・・・・・・
その中に岩手県に住んでいて、食事、趣味、ペットのネコ、野鳥の記事などを投稿している南原恵子という人がいた。
いつも、クソつまらん記事に、(いいね)、(応援)、(続き希望)、(役立った)の4つの〇を押してやっているのに、無反応とは失敬なヤツだと哲也もいい加減、頭にきた。
それで哲也はその人のコメント欄に、
「いつも楽しい記事を拝見しています。ペットの猫は可愛いですね。いつか一度お会いしたく思っています。いかがでしょうか?山野哲也」
と書いた。
ついでに哲也のヤフーメールのアドレスも書いておいた。
コメントを表示するかどうかはそのブロガーに任されている。
その人は哲也のコメントを表示しなかった。
その代わりに彼女は哲也のyahooメールにメールを送ってきた。
それにはこう書かれてあった。
「山野哲也さん。いつも(いいね)を押して下さって有難うございます。私も山野さんにお会いしたく思っています。南原恵子」
と書かれて住所も書かれてあった。
その後、数回メールのやりとりをして一週間後に会うことになった。
哲也は東北新幹線に乗って南原恵子の家に行った。
彼女の家に着いた。
大きな家だった。
ピンポーン。
哲也は玄関のチャイムを押した。
「はい。どなたでしょうか?」
インターホンから女の声がした。
「あの。山野哲也です」
哲也は答えた。
「あっ。山野さんですね。いらっしゃい。今すぐに行きまーす」
彼女が答えた。
家の中でパタパタと走る音が聞こえた。
そして玄関の戸が開かれた。
女が出てきた。
彼女はニコッと笑った。
「あっ。山野哲也さんですね。お待ちしておりました。私が南原恵子です。今日はようこそおいでくださいました。どうぞお入り下さい」
彼女は丁重に挨拶した。
「はじめまして。山野哲也です。それではお邪魔します」
そう言って哲也は彼女の家に入って行った。
彼女といっても南原恵子は80歳のばあさんである。
彼女は腰痛や変形性膝関節症や痛風で、そのことがつらい記事も書いていた。
哲也は6畳の部屋に通された。
部屋には彼女が可愛がっているペットの猫のリリーがいた。
彼女はブログ記事でいつもペットのリリーの写真を何枚も出していた。
「リリーや。大切なお客様が来たからね。ちょっと出て行っておくれ」
と言って彼女は猫を追い払う仕草をした。
もちろん猫には人間の言葉はわからない。
だが追い払う仕草で主人が何を求めているかは理解できたようでリリーは部屋から出て行った。
「山野さん。お食事を作って待っていました。お食事を持ってきます」
そう言って彼女は立ち上がった。
そしてキッチンに向かおうとした。
哲也はしめたと思った。
山野はカバンの中からロープを取り出すと南原恵子に襲いかかった。
山野はロープを南原恵子の首に巻いた。
「ああっ。山野さん。何をするんですか?」
「何をするかだと?そんなこともわからないのか?」
「わかりません」
「オレはお前のクソつまらん記事に100回以上も、いいね、を押してやったのにお前はオレに一度も、いいね、を押してくれなかった。相手が好意を示したならそれに応えるというのが人間としての礼儀というものだろう。仁義礼智信忠孝悌に欠ける者は死ね」
そう言って哲也は力の限り首を絞めた。
南原恵子は体をバタつかせたが80歳の体力のない婆さんである。
10分くらい哲也が首を絞めつけているうちに南原恵子はダランと脱力して動かなくなった。
こうして南原恵子は死んだ。
リリーがのっそりとやって来て死んだ南原恵子の近くでニャーニャー泣いていた。
(ふん。猫が目撃者か。しかし猫になんか人間の言葉は理解できないし喋れないからな。目撃者とは成りえないな)
と哲也は思った。
哲也はすぐに犯罪隠蔽にかかった。
哲也は床に倒れている南原恵子の首を天井の梁に引っ掛けた。
こうすれば他殺ではなく自殺と思うだろう。
そして南原恵子のパソコンを開きログインした。
そして南原恵子になりすましてブログ記事を書いた。
「私は腰痛や変形性膝関節症や痛風があり毎日がつらいです。なので今日、死にます。私のブログを読んで下さった皆さん。ありがとう。さようなら」
記事を投稿したのは午後2時頃だった。
そして哲也は持ってきた自分のパソコンを取り出して開いた。
そして自分のブログにログインして政治に関するブログ記事を書いた。
その記事はかなり長く、それは以前に書いておいた文章で、それをコピペしたのである。
そして南原恵子のyahooメールにもログインして哲也に送ったり哲也から来たメールは削除した。
もちろん哲也も南原恵子の家に行く前に彼女とのメールは全部、削除していた。
(やった。これで完全犯罪が成功した。アリバイもちゃんとある)
と哲也は喜んだ。
そして哲也は急いで南原恵子の家を出た。
幸い岩手県は人が少ないので人通りのない裏路地を通って盛岡駅に行った。
人に見られることはなかった。
哲也は東北新幹線こまち号に乗って藤沢にもどってきた。
・・・・・・・・・・・・・・・
家に着くと哲也は急いでパソコンを開いた。
そして南原恵子のブログを開いた。
「本当ですか?南原さん」「すぐに救急車を呼びます」「死なないで。南原さん」
などと彼女を心配するコメントが多数、書かれてあった。
そしてネットの記事にも彼女の「死」がニュースとして出ていた。
「本日、午後2時頃、岩手県盛岡市に住む南原恵子さん(80)が首を吊って自殺しました。南原恵子さんはgooブログ記事を書くことが趣味で、今日の2時頃に投稿したブログ記事は死ぬことを書いた遺書でした。すぐに彼女と親しいgooブログ仲間が警察と消防署に連絡して、南原恵子さんは岩手大学医学部付属病院に搬送されましたが、その時はすでに死んでおり救命措置は行われませんでした」
記事はそういうものだった。
哲也は、あっははは、ざまあみろ、と高笑いした。
その夜のニュースウォッチ9、報道ステーション、news11でも南原恵子の死が報道された。
その夜、哲也は長年の不快感が解消されて、ぐっすり眠ることが出来た。
翌日。
朝起きるのが遅い哲也はいつも午前11時くらいに起きていた。
しかし、その日は午前10時くらいにピンポーンとチャイムが鳴って哲也は起こされた。
「はーい」
と言って哲也は玄関の戸を開けた。
警察官が二人、立っていた。
「山野哲也。お前を殺人容疑で逮捕する」
そう言って警察官は山野に逮捕状を見せた。
哲也はとまどった。犯行は完全なはずだ。アリバイもある。ばれるはずかない。
「一体、僕が誰をいつ殺したというのですか?」
哲也は強い口調で言った。
「それは警察署に来てから聞こう。ともかく警察署に来てくれ」
警察官も強気の口調だった。
仕方なく哲也は家を出た。
家の前にはパトカーが止めてあったので山野はそれに乗った。
そして山野は藤沢北警察署に連れて行かれた。
そして取り調べ室に入れられた。
「君は南原恵子という人を知っているかね?」
刑事が聞いた。
「ええ。知っています。昨日、自殺したお婆さんですね。ニュースでやっていましたから」
と哲也は答えた。
「君は昨日、盛岡に行かなかったかね?」
と刑事が聞いた。
「いえ。行っていませんよ。なぜ僕が盛岡に行かなくてはならないんですか?」
と哲也が答えた。
「それを示すアリバイはあるかね?」
と刑事が聞いた。
「昨日は家でブログ記事を書いていました。政治問題に関する僕の見解です。それを2時頃にgooブログにアップしましたからね。まあそれがアリバイです」
と哲也が言った。
「それはアリバイにはならないな。ブログ記事はパスワードを知っていれば、どこでもログイン出来て記事を投稿できるからね」
と刑事が言った。
「まあ、それは確かにそうですが・・・・」
と哲也が言った。
「南原恵子さんが遺書のようなブログ記事を投稿したのは昨日の午後2時頃ですよね。それで彼女のブログ友達がそれを岩手県警に電話して、岩手大学医学部付属病院に運ばれましたが、その時にはすでに死んでいたそうじゃないですか。これは彼女の自殺で、何で僕が警察に逮捕されなきゃならないんですか?」
と哲也。
「確かに彼女は昨日の午後2時頃にブログ記事をアップしているね。しかしブログ記事はパスワードを知っていれば、他人がログイン出来て書けるじゃないかね?」
と刑事。
「それはその通りです。あなたは何か僕を疑っているように思えますが、彼女は体調不良を苦にして自殺したんじゃないんですか?」
と哲也。
「ああ。確かに彼女は腰痛、膝痛、痛風に悩まされていたよ。しかしだね、彼女の体調不良はそんなひどいものじゃないと彼女がかかっていた主治医は言うんだ。それで死亡診断書を岩手大学医学部の法医学教室で作ろうとした時、彼女が死んだのが本当に縊死なのかどうか調べたんだ。結果は彼女の首の縄の跡から、彼女は縊死ではなく誰かに絞殺されて、その後、縊死に見せかけるように彼女を吊るしておいたということがわかったんだ。君も医者だから医学生時代に法医学を学んで、法医学の死因同定の技術が凄いことは知っているだろう」
と刑事。
「ええ。知っていますよ。でもそれと僕とどういう関係があるんですか?」
と哲也。
「もうしらばっくれるのはいい加減にしたらどうかね。南原恵子さんを殺したのは君だ。君は昨日、岩手へ新幹線で行き、南原恵子さんの家へ行って彼女を絞め殺したんだ。そして縊死に見えるようにしておいたんだ。昨日の彼女のブログ記事は君が彼女のパソコンで書いたものだろう。違うかね?」
と刑事。
「僕が彼女を殺す動機は何なんですか?それと僕が昨日、南原恵子さんの家に行って彼女を殺したという証拠はあるんですか?」
哲也はいささか興奮していた。
「証拠はあるよ。確実な証拠がね」
刑事は自信に満ちた口調で言った。
「じゃあ、それを見せて下さい」
哲也は強気に言った。
刑事はデジカメを一つ哲也の前に出した。
「彼女が自殺ではなく他殺だということがわかってから警察が彼女の家を捜査したんだ。そうしたら彼女の家の中を写すデジカメが彼女の部屋の中に設置されていたんだ。彼女は一人暮らしでね。買い物や病院に行く時には、彼女は彼女にとってかけがえのない愛猫のリリーの様子を写していたんだ。一人でいる時のリリーがどんなことをするのか、後で見るのが彼女の楽しみだったんだ。君が来た時もデジカメは回っていたんだ。だから君がとった行動は全てデジカメに録画されているよ」
そう言って刑事はデジカメで昨日の様子を写し出した。
哲也が南原恵子の部屋に入った時から彼女を絞め殺した様子、そして彼女が縊死したように見せかける様子、彼女のパソコンを開いてブログ記事を書いている様子が、ハッキリと写し出された。
そして山野がロープを南原恵子の首に巻いた時からの会話もしっかりと録音されていた。
「ああっ。山野さん。何をするんですか?」
「何をするかだと?そんなこともわからないのか?」
「わかりません」
「オレはお前のクソつまらん記事に100回以上も、いいね、を押してやったのにお前はオレに一度も、いいね、を押してくれなかった。相手が好意を示したならそれに応えるというのが人間としての礼儀というものだろう。仁義礼智信忠孝悌に欠ける者は死ね」
そして哲也が力の限り首を絞めた様子。
そして彼女のパソコンを操作している様子もしっかりと写し出された。
もうここまで決定的な証拠を見せつけられては哲也は言い逃れ出来なかった。
「け、刑事さん。その通りです。彼女は僕が殺したのです。動機は、僕が言っているように、僕は彼女のブログ記事に、いいね、を押してあげたのに、彼女は僕に、いいね、を押してくれなかったからです」
哲也はガックリと項垂れて罪を認めた。
「君は確かに天才だよ。君は頭が良く努力家で公立の医学部に入った。小説家になろうと志し30年以上も小説を書いてきた。君の関心事は政治や医療の真実を追求することだ。君は精神レベルが常人とは比べ物にならないほど高い。そういう君から見ると世の人間は、ペットの猫とか食い物やスポーツなど面白おかしいことにしか興味のない世の人間たちが低レベルの人間に見えるのだろう。それでイライラしていたんだろう。違うかね?」
刑事が聞いた。
「そ、その通りです。僕は世の人間たちが低レベルだなーといつしか見下すようになっていました。僕は罪を認めます。僕はいつしか傲慢になっていました。僕は死刑になるでしょう。しかしそれは自分の犯した罪に対する罰であり僕はそれを甘んじて受けます」
哲也はポロポロ涙を流していた。
・・・・・・・・・・・・・
「うわー」
哲也は目を覚ました。
全身、汗だくだった。
時計を見ると午前3時だった。
ハアハアと息が荒かった。
あー嫌な夢を見たものだ、と哲也は思ったが、だんだん落ち着いてくると、夢でよかったな、と思うようになった。
いつしか自分が傲慢になっていたことを哲也は反省した。
これはもしかすると「お前は最近、傲慢になっているんじゃないか。それは間違っているぞ」というお釈迦様のお告げなのかもしれないと思った。


2025年5月18日(日)擱筆

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伯父の妻と甥の恋(小説)(上)

2025-05-14 23:51:48 | 小説
伯父の妻と甥の恋

という小説を書きました。

浅野浩二のHPの目次その2にアップしましたのでよろしかったらご覧ください。

伯父の妻と甥の恋

山田健二は開成高校の3年生である。
開成高校の優秀な生徒が皆そうするように健二も東大理科三類を第一志望としていた。
別に特に医者になりたいわけではない。
優秀な生徒は日本で最難関の東大理科三類に合格することによって我こそは超秀才であるぞという権勢を誇示するためである。
東大理三に一番合格者を出しているのは灘高校である。
しかし健二は駿台の模擬試験でもトップの成績を出したほどだったので東大理三の合格可能性は十分にあった。
健二の母親は健二が幼い頃、死んで、健二は父親との二人暮らしだった。
健二が開成高校の3年になった時、健二の父親は大阪の支社に出向が決まった。
それで父親は健二を残して大阪に単身赴任してしまった。
なので二階建ての大きな家を健二ひとりで暮らすことになった。
・・・・・・・・・
大阪に出向する前、健二の父親は息子にこう聞いた。
「おい。東大理三は大丈夫か?」
「うん。駿台模擬試験でも十分、合格の可能性が出ているよ」
「そうか。しかし東大理三は偏差値のバケモノが何人も受験するからな。別に東大理三でなくてもいいぞ。東京医科歯科大学の医学部を受験してもいいぞ。駿台模試で東大理三の合格可能性が十分あるのなら東京医科歯科大学の医学部は余裕で合格出来るだろう。試験は水物だからな。落ちたら意味がないからな」
「うん。僕もそのことは考えているよ。これからラストスパートをかけて、最後の駿台模擬試験の結果で東大理三にするか東京医科歯科大学の医学部にするか決めようと思っているよ」
「そうか。ところで頼みがあるんだが、夏休みに一度、石川県のオレの弟の山田一秀さんの所へ行ってくれないか?」
「どうして?」
「まあ、ちょっとした理由があってな。嫌か?」
「いや。いいよ」
「よし。じゃあ、弟の所に一度行って泊めて貰え。頼むぞ」
「うん」
伯父さんの所と聞いて健二はドキンとした。
伯父さんは健二の父親の弟である。
伯父さんは日本全国および世界22カ国に支店をもつ化粧品会社の社長である。
伯父さんには10歳年下の智子さんという妻がいる。
以前、健二は伯父さんの妻の智子さんを見た時に(きれいな人だな)と淡い恋心を抱いてしまった。
それは1年前の高校2年生の時である。
伯父夫婦が健二の家に来た時である。
健二は石川県の金沢に興味があったので行くことにした。
父親にそのことを話すと父親は、
「伯父さんには智子さんという奇麗な妻がいるぞ。まだ30代だ。おれも数回、会ったことがあるが、凄くきれいで優しい人だぞ」
と言った。
「う、うん。行くよ」
健二は平静を装っていたが、内心は智子さんに会えると思うと心臓がドキドキと高鳴った。
・・・・・・・・・・
そう言って父親は大阪の支社に出向した。
あとには健二が一人残された。
父親がいなくなっても健二の生活は変わらなかった。
学校でも学校から帰っても、勉強、勉強の毎日である。
そんなことで3年の一学期が終わって夏休みになった。
健二は伯父の山田一秀さんに電話した。
「あ、あの。伯父さん。目的はわからないんですけど、僕の父親が夏休みに伯父さんの家に行くように言ったんです。行ってもよろしいでしょうか?」
「ああ。ぜひ来てくれ。健二くんにはぜひ来て欲しいんだ」
伯父さんの口調から、ぜひとも来て欲しいという思いが伝わってきた。
「じゃあ、行きます。いつなら都合がいいでしょうか?」
「いつでもいい。出来るだけ早く来て欲しいな。明日でもいいよ」
伯父さんの喜びように健二は驚いた。
どんな理由かはわからないが、父親と伯父さんの間では話をして、その理由を分かっているのだろうと健二は思った。
「じゃあ、明日、行きます」
「そうか。有難う。楽しみに待っているよ。何日泊まるかね?」
「2泊3日でいいでしょうか?」
「ああ。構わんよ。2泊3日と言わず一週間くらい泊っていって欲しいな」
こうして健二は翌日、伯父さんの家に行くことになった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日の北陸に行く日になった。
健二は午後2時に家を出た。そして東京駅で15時24分発のJR新幹線はくたか569号に乗った。新幹線は3時間かかって金沢駅には18時20分に着いた。
健二にとって北陸は初めてだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
1日目。
山田一秀の家に着くと、山田夫婦は健二を快く迎えてくれた。
「やあ。健二くん。よく来てくれたね。遠慮はいらん。ゆっくりくつろいでいってくれ」
と山田一秀は言った。
伯父さんは日本全国および世界22カ国に支店をもつ化粧品会社の社長である。
「健二くん。こんにちは」
と妻の山田智子も満面の笑顔で迎えてくれた。
健二はシャイで人見知りするタチだったので、
「こんにちは」
と小さな声で挨拶した。
しかし、健二は山田智子を見た時、思わず心臓がドキンと高鳴ってしまったのである。
彼女があまりにも美しかったからである。
その晩は、智子さんが腕によりをかけて豪華な料理を作って、もてなしてくれた。
山田一秀は大らかな性格だったので健二に色々なことを聞いた。
しかし健二はシャイなので、「はい」「はい」と言うだけで、緊張して、あまり喋れなかった。
健二が緊張してしまったのは、元々シャイな性格ということもあるが、健二は、山田さんの妻の智子さんに一目惚れしてしまって、智子さんを見ると顔が真っ赤になってしまうので、それを叔父の山田一秀さんに悟られるのが、こわかったからである。
その晩、健二は6畳の客間に寝た。
家は古くからの大きな日本家屋で部屋がたくさんあった。
他人の家では、なかなか寝つけない健二であるが、その晩は旅の疲れもあってか、容易に眠りについた。
しかし夜中の2時頃、あーあーという叫び声とも呻き声ともつかぬ何やら妖艶な声が聞こえて来て健二は目を覚ました。
健二は起き上がって声のする所へ向かった。
すると、山田夫婦の寝室が昼間のように煌々と明るい。
何か呻き声のようなものも微かに聞こえてきた。
こんな夜中に一体、何をしているんだろう、と健二は疑問に思った。
夫婦の夜の営みなら、電気を消して暗い中でするので、おかしいな、と健二は思った。
それで健二は山田夫婦に気づかれないよう音をたてずに伯父夫婦の寝室の方に行ってみた。寝室の障子は1cmほど開いていた。
健二はそっとその隙間から寝室の中を見た。
見て健二は心臓が止まるかと思うほど驚いた。
なぜなら、山田智子さんが丸裸にされて麻縄で後ろ手に縛られて、布団の上に横にされて、片足を高く吊られていたからである。
幸い一秀さんも智子さんも障子の隙間からは背中を向けていた体勢だったので健二は二人に見られないで二人を見ることが出来た。
夫の一秀さんは蝋燭を持って立っており蝋燭を妻の体の上から垂らしていた。
蝋涙がポタリと智子さんの体に垂らされる度に、智子さんは、ああん、と切ない喘ぎ声を上げていた。
「ふふ。智子。どうだ。蝋燭責めの味は」と一秀さんが、智子さんの体をグリグリ踏みながら聞くと、智子さんは「ああっ。いいわ。もっと虐めて」と口を半開きにして言った。
彼女は被虐の快感に浸っているのか目を閉じていて、一秀さんは健二に背を向けた状態だったので、健二は見られることがなくて済んだ。
健二は、その光景を一瞬、見ただけで、そーと音を立てずに障子を閉めた。
そして、伯父夫婦に気づかれないように、抜き足差し足で部屋にもどって布団の中に入った。
健二は興奮するというより、激しい緊張で心臓の鼓動がバクバク高鳴っていた。
あんなに明るくて大らかな伯父夫婦に、あんなSM趣味があったとは。
智子さんは、夫に虐められながらも、「ああっ。いいわっ。もっと虐めて」と酩酊した様子で言っていたので、智子さんは間違いなくマゾなのだろう。二人がどういう経緯で結婚したか、について詳細なことは健二は知らなかったが、見合い結婚ではなく、恋愛結婚ということは聞いて知っていた。なので、おそらく一秀さんはサドで智子さんはマゾで相性が合って結婚したのだろうと健二は思った。智子さんのように、あんな綺麗な人にあんな被虐性癖があったことに健二は驚いて、その夜は、なかなか寝つけなかった。
・・・・・・・・・・・・・
翌日(2日目)
健二は7時に起きた。
「もしもし。健二くん」
智子さんが健二の寝ている客間をトントンと叩いた。
「はい」
「健二さん。朝食の用意が出来ましたよ」
と知らせてくれた。
それで目を覚ました健二は、
「おはようございます」
とあわてて言って急いで浴衣を脱いで服を着て食卓に行った。
食卓には一秀さんと智子さんがもうすでに着いていて健二の来るのを待っていた。
食卓には智子さんが作ってくれた、厚切りトーストとスクランブルエッグとサラダとコーンスープが乗っていた。
「やあ。健二くん。おはよう」
一秀さんが読んでいた新聞をたたんで健二に挨拶した。
「お、おはようございます」
健二が挨拶した。
「昨日は眠れましたか?」
智子さんが笑顔で聞いた。
「は、はい。よく眠れました」
と健二は言った。
「今日の予定は何かね?」
伯父さんが聞いた。
「今日は定期観光バスで兼六園や金沢城公園などを見ようと思います」
健二は答えた。
「そうか。今ならギボウシ、ハギ、ナンテン、ハンゲショウが綺麗に咲いているよ」
伯父さんが言った。
二人の様子はごく普通の夫婦である。それが夜はあんな事をしているなんて、二人は、まるでジキル博士とハイド氏のように見えてきた。
三人食卓につくと、
「では。いただきます」
と言ってパクパクと朝食を食べ出した。
健二は昨日のことを思い出して恥ずかしくて智子さんを見ることが出来なかった。
「健二くん。急に仕事関係の用事が出来てね。私は今日から一週間くらい友人の家に泊まることになったよ。せっかく来てくれたのに済まないね。しかし智子が面倒を見てくれるから二人で過ごしてくれたまえ」
伯父さんが言った。
食事が終わって健二は部屋にもどった。
健二が出かける用意をしていると伯父さんがやって来た。
「健二君。面白いものを見せてやろう」
一秀さんはニヤリと笑って言った。
健二は無言で立ち上がった。
健二は一秀さんの後に着いて行った。
寝室の前に来た。
「健二君。面白いものを見せてやろう」
そう言って一秀さんは寝室の戸を開いた。
びっくりした。なぜなら、智子さんが丸裸にされて後ろ手に縛られて片足を吊られていたからだ。智子さんはアイマスクで目隠しをされていた。智子さんは唇を半開きにして酩酊している様子だった。智子さんは、服を着ている時には特別グラマラスな体形には見えず普通の体形に見えたが、裸になると、ムッチリとした男の欲情をそそる体だった。着やせするタイプなのだろう。
「ははは。健二くん。この女はマゾでね。こうされて恥ずかしい姿を見られることに興奮するんだよ」
一秀さんは健二にそう説明した後、智子さんに目を向けた。
「そうだな。智子」
「は、はい。そうです」
健二はどうして、一秀さんが健二にそんなモノを見せるのか、わからなかった。
それを察するように一秀さんが言った。
「結婚してから夜の営みは全部こういうのだった。しかし、二人きりでやっていても、厭きてきてね。もっと強い刺激が欲しくなったんだ。それで、君にも参加して欲しくてね。さあ。智子を君にあげるから、智子をオモチャにして、うんと楽しんでくれ」
じゃあ私は友人の家に行くよと言って伯父さんは寝室を出た。
「じゃあ私は出かけるよ」
すぐに伯父さんは家を出た。すぐにブロロロロと車のエンジン音がして伯父さんは去ってしまった。
あとには健二と一糸まとわぬ丸裸にされて後ろ手に縛られ片足を吊り上げられている智子さんの二人きりになった。
・・・・・・・・・・・・・・・
智子さんは目隠しをされているので健二を見ることはない。
健二はゴクリと唾を呑んだ。健二が女の裸を間近で見るのはこれが生まれて初めてだった。
健二は智子さんに見られていないのをいいことに丸裸の智子さんの体をしげしげと見た。
半開きになった唇。華奢な肩と腕。仲良さそうに並んでいる二つの豊満な乳房。大きな円柱状の乳首。雨だれで穿たれたような臍の穴。片足を吊り上げられているので女の恥ずかしい所は丸見えだった。恥毛はきれいに剃られていて恥丘は割れ目が丸見えである。片足を吊り上げられていたが割れ目はしっかりと閉じていた。大きな尻とそれに続く脂肪が程よくついた柔らかそうな太腿。
すべて健二にとって生まれて初めて見るものだった。
健二はハアハアと興奮しながら女の体を眺めた。
健二は極力、智子さんにさとられないように黙っていだが、智子は間近にいる健二の存在を感じとったのだろう。智子は健二に話しかけた。
「いいわ。健二くん。私をオモチャにして。うんと虐めて」
智子が言った。
「い、いいんですか。智子さん?」
「いいわよ。何をしても。私をオモチャにして」
健二は何をしようかと迷ったが、無防備の智子の首筋の右側を指一本でスーと触れた。
「ああー。ひいー」
くすぐったさのため瞬時に智子さんの首の右側がキュッと収縮した。
しかしそのため、左側の首筋がガラ空きになってしまった。
健二は今度はガラ空きになった左側の首筋をスーと指一本でなぞった。
「ああー。ひいー」
智子さんは大きな悲鳴を上げた。
「つらいですか?智子さん」
健二が聞いた。
「つらいわ。でもそのつらさがいいの。もっと私をつらい目にあわせて」
健二は、ふふふ、と笑った。
そして健二は、智子の脇腹や太腿の付け根のアソコの近くを指一本でスーと触れた。
その度に智子は、「ひいー。ひいー」と大きな叫び声を上げた。
健二は丸出しの乳房やアソコは触らなかった。
女の性器をわざと触らないことによって、女をじらし、恥ずかしい所を見られているという羞恥心を智子に起こさせるためだった。
智子は、ひいー、ひいー、と叫び声を上げ続けた。
智子のアソコからは白濁したドロドロした愛液が溢れ続けた。
健二は智子を責め続けた。
1時間くらいして健二は智子への責めをやめた。
「智子さん。僕は兼六園と金沢城公園に行かなくではならないので、これで終わりにします」
そう言って健二は、智子の恥丘に溢れ出ている白濁した愛液をティッシュペーパーで拭きとった。そして智子の片足を吊っている縄を解き、智子の後ろ手の縄も解いた。
これで智子のさんの縛めはなくなり彼女はムクッと起き上がった。
そしてアイマスクを外した。
「有難う。健二くん。健二くんって女を責めるのが凄く上手いのね。私、最高の快感だったわ」
そう言って智子はパンティーを履き、ブラジャーを着けた。
そしてスカートを履きブラウスを着た。
「じゃあ智子さん。僕は観光バスで兼六園と金沢城公園に行きます」
そう言って健二は玄関に向かった。
智子も玄関までついてきて、
「行ってらっしゃい」
と手を振って嬉しそうに健二を見送った。
・・・・・・・・・・・・・・
その日、健二は観光バスで、金沢駅→近江町市場→長町武家屋敷跡界隈→金沢21世紀美術館→兼六園→金沢城公園・玉泉院丸庭園→ひがし茶屋街→金沢駅、と見て回った。
健二が伯父さんの家に帰ってきたのは夜の7:00時になっていた。
ピンポーン。
チャイムを押すと家の中からパタパタと足音が聞こえ玄関の戸が開いた。
智子さんが嬉しそうに出てきた。
「お帰りなさい。健二君。金沢観光はどうだった?」
智子さんが聞いた。
「うん。とてもよかったよ」
健二は答えた。
「そう。それはよかったわね。ちょうど夕食の支度が出来て待っていた所だったの」
健二は家に上がった。
食卓にはすき焼きがぐつぐつ煮えていた。
二人は食卓に着いた。
頂きます、と言って二人は食べ始めた。
「今日はすき焼きにしたの。よかったかしら?」
「ええ。とても美味しいです」
健二は智子さんの作ったすき焼きをハフハフ言いながら食べた。
一秀さんはいないので、まるで智子さんが恋人のような感じだった。
出かける前に裸の智子さんを思う存分、虐めたのに、こうして一緒に食事していると、何だか、智子さんを虐めたことがウソのように思われてきた。
「健二君。お風呂が沸いているから入って」
食事が終わると智子さんが言った。
「有難うございます」
と言って健二は風呂に入った。
一日中、観光スポットを歩き回った疲れがとれていった。
健二の次に智子さんが風呂に入った。
健二は寝ようと思って客間に布団を敷いて布団の中に入った。
しかし智子さんのことが気になっていた。
案の定、トントンと部屋をノックする音がした。
「哲也君。開けてもいい?」
「ええ」
智子さんが戸を開けた。
風呂から出たばかりなのだろう。
智子さんは風呂上りでバスタオルを一枚、体に巻きつけただけの格好だった。
それが何を意味するかはすぐに予想がついた。
家には健二と智子さんの二人きりである。
しかし健二は一般の男のように、ベッタリと女と一緒になってしまいたくはなかった。
一つの家に男と女が居ながら何もせず、一人スヤスヤ寝ている智子さんを想い想像力で興奮を高めたいと思う変わり者だった。
「何でしょうか?智子さん」
「あ、あの。健二くん。お願いがあるの」
「何でしょうか?」
「来てくれる?」
智子さんに頼まれたのなら仕方がないと思い健二は起き上がった。
健二は智子さんについて行った
智子さんは一秀さんとの夫婦の寝室に入った。
そして智子さんは両手を前に差し出した。
「健二くん。手首を縛ってくれない?」
智子さんは切実そうな様子だったので、健二は畳の上に置いてある縄を拾って智子さんの手首を縛った。
「健二くん。縄尻を天井の梁に引っ掛けて」
言われて健二は智子の手首を縛った縄尻を天井の梁に向かって投げて天井の梁に引っ掛けた。
「健二くん。じゃあ縄尻を思いきり引っ張って私を吊るして」
健二は智子の言う通り縄尻をグイグイ引っ張っていった。
そして縄尻を智子の手首を縛っている縄に縛りつけた。
それによって智子の手は頭の上に引っ張られ智子は天井から吊るされる形になった。
智子は天井の梁から吊るされて湯上りの体をバスタオル一枚、巻きつけているという姿である。
「哲也くん」
「はい。何でしょうか?」
「胸の所でバスタオルを重ね合わせて留めてあるでしょう。それを解いて下さい」
智子さんが言った。
健二は一瞬、迷った。そんなことをしたら体に巻きつけているバスタオルが解けて落ちてしまう。しかし智子さんの頼みとあれば健二はそれに従うしかなかった。
健二は胸の所にあるバスタオルの重ね合わせを解いた。
パサリ。
バスタオルが落ちた。
それによって一糸まとわぬ丸裸があらわになった。しかも智子さんは天井から吊るされているので裸の体を隠す術がない。
「ああっ。恥ずかしいわ」
智子は体をモジモジさせた。
しかし智子は天井から吊るされているので裸の体を隠す術がない。
「け、健二くん」
「はい」
「私の惨めな姿をとっくり見て下さい」
そう言われても健二は自分がスケベなことを智子さんに知られるのはためらわれた。
なので智子さんを直視することは出来なかった。
しかし健二は寝室を去ることは出来なかった。健二が寝室を去ってしまったら智子さんは吊られっぱなしのままである。それは可哀想である。
智子さんは必死にアソコを隠そうと太腿をモジモジさせていた。
だが寝室には2つの等身大のカガミが立ててあるので智子さんが健二に対してどんな角度をとっても全裸を見られてしまった。
「ああっ。いいわっ。一人暮らしの女の部屋に押し入り強盗が入って女を裸にして吊るして虐めているようだわ。私、一度こういうふうに虐められたかったの。健二くんは一人暮らしの女の部屋に入った押し入り強盗よ。さあ私をうんと弄んで」
智子さんが言った。
うんと弄んで、と言われても健二はシャイなのでそんなことは出来なかった。
恥ずかしがって被虐の快感に浸っているのは智子さんだが、健二もスケベと思われたくなかったので、裸の智子さんを直視することは出来なかった。
しかし目をそらすには智子さんの全裸姿はあまりにもエロチックで健二はチラッ、チラッと智子さんを見た。
「健二くん。遠慮しなくていいのよ。一秀さんは日曜日には、必ず、私を色々な恥ずかしい格好にして、近所の人たちを呼んでいたの。近所の人たちが私を遠慮なく嬲るのを夫はニヤニヤして見て楽しんでいたわ。だから健二くんも遠慮しないで」
智子さんが言った。
一秀さんがそんなことをしていたと知って健二に、智子さんを思うさま嬲った人達に対する激しい嫉妬が起こった。
SM趣味のある人達はM女を遠慮なく嬲る。
そんな人たちに嬲られるくらいなら、いっそ女に優しい自分が智子さんを優しく虐めて智子さんに被虐の快感を味あわせてあげた方が、ずっといいと健二は思った。
それに全裸で吊られて太腿をモジモジさせている智子さんを見ているうちに健二に激しいサディズムの性欲が嵩じてきて、健二のおちんちんは激しく勃起していて、もう我慢の限界だった。
健二は吊られている智子さんの所へ行くと智子さんの背後から智子さんの腹をそっと抱きしめた。
「あっ。健二くん。私を虐めてくれるのね。有難う」
智和は嬉しそうに言った。
確かに誰もいない一軒家の一室で女が裸にされて吊るされて服を着ている男が裸の女を抱きしめている図は、一人暮らしの女の部屋に入った押し入り強盗が女を嬲っている図だった。
しかも智子は一糸まとわぬ丸裸で吊るされているのに、健二は浴衣を着ているので、その図は男が女を嬲っているように見える。
「と、智子さん。ごめんなさい」
そう言って健二は背後から智子の胸を揉んだり尻を触ったりした。
健二は智子を優しく愛撫した。
健二が智子の乳首の突起をコリコリさせると、智子の乳首はすぐに勃起した。
健二は屈み込んで智子の大きな尻に、チュッ、チュッとキスをした。
智子は、ああん、と喘ぎ声を出し続けた。
智子のアソコからは女が性的に興奮した時に出る白濁した愛液がドロドロと出ていた。
「健二くん。遠慮しなくていいのよ。アソコに指を入れて。愛液で濡れているから入れやすいわ」
健二の心を見透かしているかのように智子は言った。
そして、それは事実だった。
ウブでシャイな健二は女の体を触るのは、生まれて初めてであり、女のアソコに指を入れるのは、はばかられていたのである。
しかし智子の言葉は健二に勇気を与えた。
健二はそっと智子の股間をまさぐり、女の穴を探し当て、そっと中指を入れてみた。
智子の言った通り、股間は愛液でヌルヌルしていたので指はスルッと穴の中に入った。
「ああっ。いいわっ」
智子が喘ぎ声を出した。
初めて触れた女の穴の中はヌルヌルしていた。
これが女の穴なんだな、と健二は興奮する以上に驚いていた。
健二が指先を動かして、ある所に指先が触れると智子は、ああん、と喘ぎ声を出した。
「そ、そこ。Gスポットと言って女はそこを刺激されると感じるの」
Gスポットの存在は健二も知っていた。
女の膣の中の前面にはGスポットという所があり、女はそこを刺激されると興奮するということを。
健二がGスポットを刺激すると智子は、ああん、と喘ぎ声を出した。
そして智子の膣がキューと収縮して健二の指を締めつけた。
「女は興奮すると膣が収縮するの。男のモノを離さないようにするために」
智子は説明したが、健二もそのことは知識として知っていた。
ただ、あまりにも締めつける力が強いので驚いた。
健二は立ち上がった。
そして左手で智子の乳房を揉み、乳首をコリコリさせ、右手で智子の恥丘を触ったり、女の穴に指を入れたりした。
「ああっ。いいわっ。感じちゃうわ。押し入り強盗に裸にされて嬲られているのに感じちゃうなんて私マゾなのね」
そんなことを言って智子は健二のサディズムを刺激しようとした。
実際に健二の加虐心は激しく高まっていた。
「ねえ。健二くん。私の髪を後ろに思い切り引っ張ってくれない?押し入り強盗は女にもっと乱暴なこともするでしょ」
智子が言った。
「はい。わかりました」
そう言って健二は智子の長い美しい黒髪をグイと引っ張った。
「ああっ」
智子は髪を引っ張られて顔がのけぞり顔は天井を向いた。
鼻の穴が見え口は半開きとなった。
健二のサディズムを目覚めさせようとする智子の計画に健二はまんまとはまっていた。
もう健二は智子に対して遠慮がなくなっていた。
「健二くん。部屋の隅に箱があるでしょ。その箱の中にムチがあるわ。それで私をムチ打って」
智子が言った。
「はい」
健二は喜んで箱の中を見た。
箱の中には、縄、ムチ、蝋燭、洗濯バサミ、毛筆、アイマスクなどの責め具が入っていた。
健二は縄とムチを取り出して智子の所に行った。
そして健二は座り込んで智子の足首を縄で縛った。
「な、何をするの?」
智子が聞いた。
「智子さんが足をバタつかせないようにするためです」
健二は平然と言った。
そして健二は立ち上がってムチを手にして智子の背後に立った。
「じゃあ、やりますよー」
そう言って健二は智子の尻めがけて思い切りムチを振り下ろした。
ビシーン。
ムチは智子の柔らかい尻に当たった。
意気のいい炸裂音が鳴り、智子の尻にはムチ打たれた所に赤い跡が出来ていた。
「ああー」
智子は髪を振り乱し全身を震わせて叫んだ。
足もバタつく所だったろうが、健二が両足首を縄で縛ってしまったのでそれは出来なかった。
ビシーン。ビシーン。ビシーン。
健二は尻から背中、太腿の裏側と智子の背後を滅多打ちにした。
10分くらい健二は鞭打った。
「許して。お願い。健二くん。もう許して」
智子は本当に涙をポロポロ流しながら哀願した。
それはサド男が本当に女を虐めている姿だった。
しかし、智子が、許して、と言ったので健二は鞭打ちをやめた。
健二はムチを落として智子の所に駆けつけた。
「痛かったでしょう。智子さん。ごめんなさい。今、縄を解きます」
そう言って健二は智子の足首の縄を解いた。
そして智子を吊っている手首の縄も解いた。
これによって智子は手足が自由になった。
智子はクナクナと倒れ伏した。
健二は押し入れを開けて布団を出し寝室に敷いた。
そして智子を布団の上に乗せた。
健二は台所へ行き氷の入った冷水とタオルを持ってきた。
そして鞭打たれて赤くなっている智子の尻や背中をふいた。
「痛かったでしょう。智子さん」
「ううん。気にしないで。私が健二くんにサディストになるように仕向けたんだもの。健二くんに泣くまで鞭打たれて私、本当に嬉しかったわ」
健二は智子の体を冷水タオルで何度もふいた後、智子に布団をかけた。
そして「お休みなさい」と言って寝室を出た。
健二も客間にもどって布団に入った。
健二も責め疲れていたのですぐに眠りに就いた。
・・・・・・・・・・
翌日(3日目)
健二は7時に起きた。
「もしもし。健二くん」
智子さんが健二の寝ている客間をトントンと叩いた。
「はい」
「健二さん。朝食の用意が出来ましたよ」
と知らせてくれた。
それで目を覚ました健二は、
「おはようございます」
とあわてて言って急いで浴衣を脱いで服を着て食卓に行った。
食卓には智子さんが作ってくれた、厚切りトーストとスクランブルエッグとサラダとコーンスープが乗っていた。
「おはよう。健二くん」
智子さんがニコッと笑って挨拶した。
「お、おはようございます」
健二も挨拶を返した。
二人は食卓につくと、
「いただきます」
と言ってパクパクと朝食を食べ出した。
「昨夜は眠れましたか?」
智子さんが笑顔で聞いた。
「は、はい。よく眠れました」
と健二は顔を赤くして言った。
「智子さんこそ、あの後、眠れましたか?」
健二が聞いた。
「ええ。眠れたわわよ」
智子さんは平然とした様子で言った。
智子さんは昨夜あんなに責められたのに本当に眠れたのかなと疑問に思った。
「昨夜、あんなに責められたのに本当に眠れたのですか?」
健二が聞いた。
「ええ。本当よ。だって私、夫に夜おそくまで責められることに慣れているから」
「なるほど。そうですか」
健二はそれを聞いて納得した。
「健二くん。今日の予定は?」
智子さんが聞いた。
「今日は定期観光バスで金沢能楽美術館、鈴木大拙館、西田幾多郎記念哲学館などを見ようと思います」
健二は答えた。
「じゃあ私は健二くんが帰ってくるのを待っているわ。今日の夕食は何がいい?」
「智子さんの作って下さる物なら何でもいいです」
「わかったわ。じゃあ、今日も美味しい夕食を作るわ」
「有難うございます」
朝食が済んだ。
「じゃあ智子さん。僕は観光バスで金沢の色々な所に行ってきます」
そう言って健二は玄関に向かった。
智子も玄関までついてきた。そして、
「行ってらっしゃい」
と手を振って嬉しそうに健二を見送った。
智子さんはまるで健二の恋人であるかのようだった。
・・・・・・・・・・・・・・
その日、健二は観光バスで、金沢駅→尾山神社→長町友禅館→武家屋敷跡・野村家→金沢市老舗記念館→金沢能楽美術館→鈴木大拙館→西田幾多郎記念哲学館、と見て回った。
健二が智子さんの待つ伯父さんの家に帰ってきたのは夜の7:00時頃だった。
ピンポーン。
チャイムを押すと家の中からパタパタと足音が聞こえ玄関の戸が開いた。
「お帰りなさい」
智子さんが嬉しそうに出てきた。
健二は吃驚した。なぜなら智子さんは布面積が極めて小さな黒いビキニ姿だったからだ。
ビキニのトップは三角の紐ビキニで智子さんの豊満な乳房を包んではいたが、まるで智子さんの乳房に貼りついているだけのようで、ビキニの下は女の性器を隠しているだけの小ささで、それは、まるで智子さんのアソコに貼りついているだけのようだった。後ろはTバックで、大きな尻が丸見えだった。健二は昨日、さんざんに智子さんの裸を見ていたので智子さんに対して遠慮がなくなっていた。
「ああっ。智子さん。好きです」
そう言って健二は智子に抱きつこうとした。
しかし智子さんは健二を制した。
「ああん。それは食事の後にして。食事が冷めちゃうわ」
智子さんに言われて健二は智子さんに抱きつくのをやめた。
二人は食卓に着いた。
頂きます、と言って二人は食べ始めた。
「今日は金沢の郷土料理の治部煮にしたの。よかったかしら?」
「ええ。とても美味しいです」
健二は智子さんの作った治部煮をハフハフ言いながら食べた。
伯父の一秀さんはいないので、まるで智子さんが恋人のような感じだった。
「健二君。今日の金沢観光はどうだった?」
智子さんが聞いた。
「はい。とてもよかったです」
そうは答えたが健二の関心は食後のことで頭がいっぱいだった。
食事が終わると智子さんは健二の手を引いて昨夜の寝室に入った。
「さあ。健二くん。何でも好きなことをしていいわよ」
智子さんが言った。
「ああっ。智子さん。好きです」
健二は叫ぶように言って、立っている黒いビキニの智子に抱きついた。
健二は飢えた狼のように智子の前に屈み込んで、智子の黒い薄いビキニで覆われたアソコを、チュッ、チュッとキスした。
ビキニの下は腰を一本の紐で巻いて薄い生地でVラインの内側がかなり見えている女のアソコを隠すだけの褌のような形だったので、ほとんどアソコにキスしているような感覚だった。
健二はアソコにキスした次は、智子の後ろに回った。
後ろはTバックでムッチリ閉じ合わさった尻が丸見えだった。
「ああっ。智子さん。好きです」
健二は叫ぶように言って、智子の豊臀に顔を押し当てたり、チュッ、チュッとキスしたりした。次に健二は立ち上がって背後から智子を抱きしめようとした。
その時。
「待って。健二くん」
と智子が健二を制した。
「やはり私、被虐の快感を味わいたいの。私を弄ぶのは、昨日のように私を吊るしてからにして」
智子はあられもないことを言った。
「はい」
と健二は嬉しそうに返事した。
健二は畳の上に置いてある縄を拾って智子の手首を前で縛った。
そして縄の余りを天井の梁に引っ掛けた。
そして縄の先をグイグイ引っ張って、それを智子の手首を縛っている縄に縛りつけた。
智子の手は頭の上に引っ張られ智子は昨日と同じように天井から吊るされる形になった。
「ああっ。好きです。智子さん」
健二は叫んで智子を背後から抱きしめた。
そして、ビキニの上から智子の乳房を揉んだり、アソコに手を当てたりして智子の体を触りまくった。
「ふふふ。私、押し入り強盗に捕まって犯されているみたいだわ」
智子は余裕の口調で言った。
「智子さん。ビキニの紐を解いてもいいでしょうか?」
健二が聞いた。
「ええ。いいわよ」
智子が答えた。
健二は三角ビキニを吊っている首紐の後ろの蝶結びを解いた。
そしてブラ下部のサイド紐の背中の蝶結びも解いた。
ブラを支えていた二つの紐が解かれたので、ブラはスルリと落ちて、智子の乳房が露わになった。
次いで健二は腰に留めておくための下のサイド紐の両方の蝶結びも解いた。
それによってビキニの下もスルリと落ちた。
これによって智子は昨日と同じように、一糸まとわぬ丸裸になった。
「ああっ。好きです。智子さん」
そう叫んで健二は、片手で胸を揉み、片手でアソコを触って揉んだ。
健二は、乳首の突起をコリコリさせたり、ガラ空きの脇の下をくすぐったり、ムッチリと閉じ合わさった豊臀を触ったりと智子の体を触りまくった。
健二の愛撫というか責めに智子は、ああん、と喘ぎ声を出した。
「ああん。私、押し入り強盗に捕まって犯されているみたいだわ」
智子も被虐の快感に陶酔し興奮していた。
智子の乳首の突起は激しく勃起し、アソコからは愛液が出ていた。
・・・・・・・・・・・・・
健二は智子の股間を責めようと智子の横に座り込んだ。
健二は閉じている智子の足をつかんで30cmほど開いた。
そして智子の股間を間近に観察しながら、左手で智子のアソコを触り、右手で智子の尻を撫でたり尻の割れ目に手を入れたりした。
健二にとって女の股間を間近で見て弄ぶのは初めてだった。
健二は智子の女の穴を探し当て中指を入れようとした。
智子のアソコは愛液で濡れていたので中指はスポッと容易に入った。
健二がGスポットを刺激すると智子は、ああん、と喘ぎ声を出した。
そして智子の膣がキューと収縮して健二の指を締めつけた。
健二は右手で尻の割れ目をなぞった。
「け、健二くん」
「はい」
「私、健二くんにもっと恥ずかしい格好で責められたくなっちゃったわ」
智子はハアハアと息を荒くしながら言った。
「健二くん。そのために一度、縄を解いてくれない?」
「はい」
どんな格好なのだろうかと思いながら、健二は智子を吊っている縄を解いた。
智子を吊るしていた縄が解かれ智子は吊りから解放された。
両手首は縛られているが。
「健二くん。手首の縄も解いてくれない?」
「はい」
健二は智子の手首の縄も解いた。
これで智子は裸ではあるが手足が自由になった。
智子は畳の上に屈み、犬のように四つん這いになった。
そして智子は手を曲げて顔を床につけた。
そのため大きな尻がニュッと持ち上げられた。
智子は膝を大きく開いた。
そのため尻の割れ目がパックリと開き女の股間が丸見えになった。
ネットのエロサイトの画像でその格好は見たことがあったが、実物を目の前で見るのは、これが生まれて初めてだった。
窄まった尻の穴がもろに見え、その下には女のアソコの割れ目がもろに露出していた。
「さ、さあ。健二くん。私は動かないから、好きなように私を責めて」
智子が声を震わせながら言った。
健二は智子の尻の前に座り、智子のパックリと開いた股間をしげしげと眺めた。
健二はパックリと開いた智子の尻の割れ目を指でスーとなぞった。
「ああー。ひいー」
智子激しい叫び声を上げた。
よほど感じているのだろう。
健二はパックリと開いている智子の尻の割れ目を指で何度もスーとなぞった。
窄まった尻の穴に指が触れた時、智子は、ひいー、と大きな悲鳴を上げた。
尻の穴に触れられることが一番、感じるのだろう。
智子のアソコからは白濁した愛液が出続けている。
健二は尻の割れ目だけではなく、丸出しになっている智子の尻の肉や太腿やふくらはぎ、や、足の裏をも、指先でスーとなぞった。
智子は尻や太腿をプルプルと震わせながら、ひいー、ひいー、と叫び声を上げ続けた。
「い、いいわっ。感じちゃう」
智子は女の最も恥ずかしい所を見られ弄ばれていることに最高の被虐の快感を感じていた。
「け、健二くん」
「はい。何でしょうか?」
「お願いがあるの」
「はい。どんなことでしょうか?」
「お尻の穴に触れるだけではなく、お尻の穴に指を入れてくれない?」
健二はとまどった。そんな事したことがないからだ。女のアソコの穴は男のおちんちんを入れられるほどだから容易だが、お尻の穴はいつもきつく窄まっているので入れられないだろうと思っていたからだ。そもそも男女のセックスでもお尻の穴に指を入れるということはしない。そんな健二の思いを察してか智子が言った。
「箱の中にローションがあるでしょ。それをお尻の穴に塗ってくれれば入れられるわ」
健二は智子に言われてローションを取り出し、蓋を開け智子の尻の穴に塗った。
「さあ。入れて」
智子に言われて健二は智子の尻の穴に中指を当てて押し込んでみようとした。
予想と違ってローションが潤滑油の作用をはたして指はヌルッと容易に入った。
健二は指をどんどん入れた。指の付け根まで入った。
しかしいったん尻の穴に入ってしまった指を智子の肛門括約筋はキュッと力強く締めつけた。
「ああー。ひいー」
智子は悲鳴を上げた。
「ああっ。みじめの極致だわ。健二くんにお尻の穴にまで指を入れられてしまうなんて」
そう言いながらも智子は被虐の快感に興奮しているようだった。
智子の肛門括約筋はギュッと力強く締まって健二の指を離さない。
健二もそれを面白いと思った。
何もしなくても智子の尻の穴は健二の左手の中指を締めつけて離さないので、健二は右手で智子の乳房を触った。
智子は腕を伸ばして犬のように四つん這いになった。
重力で下垂している智子の乳房を健二は揉んだ。
まるで牛の搾乳をしているような感じだった。
健二は右手で智子の首筋や脇の下や脇腹や太腿など智子の体のあらゆる所を触りまくった。
「ああっ。みじめの極致だわ。私、人間じゃなく犬になったみたい。健二くんのペットの犬になったみたいだわ」
智子は自分の心境を告白した。
それには健二の加虐心を煽ろうとする意図もあっただろう。
「僕も何だか人間ではなく犬を愛撫しているような感じがします」
健二にも智子を虐めてやろうという加虐心が起こっていたので、そんな揶揄をした。
智子が被虐の快感に酔っているのは、アソコから白濁した愛液がドロドロと出ているのでわかった。
健二は左手の中指を智子の肛門括約筋に締めつけられたまま、右手で智子のアソコに指を入れた。
愛液で濡れているので指は容易に入った。
そして膣の中でGスポットを刺激した。
智子の膣がキュッと閉まって健二の指を締めつけた。
健二はゆっくり指を前後に動かした。
「ああー。ひいー」
尻の穴とアソコの穴の二点を指で刺激されて智子は激しく興奮していた。
健二は女の二つの穴に入れた指を前後に動かしていき、その速さを速めていった。
「ああー。イクー」
そう叫んで智子は全身をブルブル震わせてイッた。
健二はそっと智子の二つの穴から指を抜いた。
そして濡れている智子の愛液をティッシュペーパーでふきとった。
そして押し入れから布団を出して敷いて智子を布団の上に乗せた。
「有難う。健二くん。気持ちよかったわ」
智子は微笑して言った。
「僕も楽しかったです」
健二も嬉しそうに言った。
「ふふふ。私、健二くんに体の隅々まで見られて弄ばれてしまったわ」
智子はニコッと笑って言った。
智子はまだまだ元気だった。
「ねえ。健二くん。明日、帰るんでしょ?」
「ええ」
「じゃあ、もう一つ健二くんにやって欲しいことがあるわ」
そう言って智子はムクッと体を起こした。
「はい。何でしょうか?」
「私、裸で恥ずかしいわ。だからビキニを着せてくれない?」
「はい。わかりました」
そう言って健二は畳の上に落ちている智子の黒の三角ビキニを拾った。
そしてそれを智子の方へ持って行こうとした。
すると智子は首を振った。
「ふふふ。健二くん。そのビキニじゃないわ」
智子は思わせ振りに言った。
健二は訳が分からずとまどった。
「健二くん。箱の中に絵の具と筆とパレットがあるわ。それを持ってきて」
言われて健二は箱の中を見た。
箱の中には絵の具と筆とパレットがあったので健二はそれを持って智子の所に行った。
「健二くん。ボディーペインティングって知ってる?」
「ええ。ハロウィンとかで女の子たちがやっていますよね」
「その絵の具で私の体にビキニのボディーペインティングをして欲しいの」
健二はビキニのボディーペインティングも知っていた。
日本ではあまりされていないが欧米の女はかなり大胆なことをやる。
欧米の女は裸の体にビキニのようなペインティングをしてビーチを歩くこともしている。
遠くから見るとちゃんとビキニを着ているようにも見える。
近くで見ればビキニを着ているのではなくてボディーペインティングとわかるが。
智子はそれをして欲しいと言っているのだ。
「わかりました。では智子さんの体にペインティングさせて頂きます」
絵の具は青色しかなかった。
健二はパレットに青い絵の具を垂らし水と混ぜた。
そして筆に青色の絵の具をつけた。
「さあ。やって」
智子は豊満な乳房を健二に向かって突き出した。
「はい」
健二は絵の具のついた筆で智子の乳房に塗り始めた。
右の乳房に三角ブラに見えるように絵の具を塗っていった。
手で触るより筆で乳房に絵の具を塗りつける方が女の体にイタズラしているようで健二は興奮した。
これは手で触るよりエッチだなと健二は思った。
三角ブラに見えるように乳房全体を隈なく丁寧に塗っていった。
筆で智子さんの乳房を塗る度に智子さんの柔らかい乳房が揺れて健二は激しく興奮した。
乳首を塗った時には、智子さんは、ああん、と喘ぎ声を出し、智子さんの乳首は勃起した。
右の乳房をペインティングすると次は左の乳房をペインティングした。
健二は首紐とサイド紐もペインティングした。
これでビキニのトップのペインティングが完成した。
一見すると智子は青い三角ビキニを着けているように見える。
「上手いわ。健二くん。じゃあ今度はビキニの下もやって」
そう言って智子は立ち上がった。
智子はちゃんとペインティングしてもらえるようにアソコを隠さなかった。
両足を少し開いて健二がペインティングしやすいようにした。
健二はハアハアと興奮しながら、智子の恥部に絵の具を塗っていった。
恥丘をしっかりと塗り、女の太腿の付け根のVラインに沿ってビキニに見えるように塗った。
そして後ろに回り尻は臀溝はもちろんのこと智子の豊臀が半分くらい見えるように塗った。蝶結びのサイド紐も描いた。
これでビキニの上下のペインティングが完成した。
体に絵の具を塗っただけなのに、遠くから見ると本当にビキニの下を履いているように見える。
しかし近くで見ると、勃起した乳首が露出しているので、そして尻の割れ目が見えてしまうことでビキニを着ているのではなく、ペインティングであることがわかってしまう。
「有難う。健二くん」
智子は等身大のカガミでビキニを着けているようにペインティングされた自分の姿を見た。
結構、満足しているようだった。
「夏に夫がね。私にこういうペインティングをして、車で少し離れた海水浴場に私を連れて行き、私を波打ち際で歩かせたの。遠くの人は気づかなかった人もいるけれど、近くの男の人たちでペインティングだと気づいた人もいたわ。すごく恥ずかしかったわ。健二くんもそういう意地悪をする子なのかしら?それとも健二くんはそういう意地悪はしないでくれる子なのかしら?」
智子は健二を見て言った。
健二は智子さんが何を思っているのかわからなかった。
智子さんはマゾだから、健二にもそういう意地悪をして欲しいということなのか、それとも、それほどまでの意地悪はしないで欲しいということなのか、健二にはわからなかったのである。
智子は、ふふふ、と笑い、
「健二くんは優しいでしょ。だから私が、やってと言えばやってくれるだろうし、私がやめてーと言えばきっとやめてくれるだろうと思うの。健二くんになら安心して身をまかせられるわ」
智子が微笑して言った。
智子さんは健二にならそういう露出プレイをやってもいいわよ、と遠回りに言っているのだと思った。
健二はスマートフォンを取り出して、ビキニのペインティングをされた智子をパシャ、パシャと撮った。
「じゃあ私は風呂場でペインティングを洗い流して寝るわ。夜中に私をイタズラしたくなったらいつでも来ていいわよ」
そう言って智子は風呂場へ行った。
シャーとシャワーの音がした。
健二は客間に行って布団の中にもぐった。
智子さんは、浴衣で寝室で寝ているだろう。
智子さんはイタズラしたければ来ていいと言ったが、智子さんに色々な意地悪をしてしまったので健二はもう十分だった。
健二も疲れていたので、すぐに眠りに就いた。
・・・・・・・・・・・・・・・
翌日(4日目)。
昼頃、健二は目を覚ました。
三泊四日して今日は帰る日である。
健二が疲れていることを察して、智子さんは、健二がぐっすり眠っていると思って、健二の熟眠をさまたげないように気をつかってくれたのだろう。
昼頃。
智子さんがトントンと部屋の戸をたたいた。
「健二くん。起きている?」
智子さんが戸を少し開けて聞いた。
「は、はい」
健二はあわてて返事した。
「じゃあ、お食事にしない。もう11時よ」
智子さんが言った。
「はい」
健二は服を着て食卓に行った。
食卓には智子さんが作ってくれた、厚切りトーストとスクランブルエッグとサラダとコーンスープが乗っていた。
「頂きます」
健二は智子さんと遅い朝食を食べた。
「健二くん。昨日は有難う。すごく気持ちよかったわ」
智子さんは笑顔で言った。
「い、いえ。僕の方こそ、智子さんに、やりたい放題のことをしてしまって申し訳なく思っています」
「そんなことないわ。健二くんが、あんなに、女をじらせて虐めるのが上手いとは知らなかったわ」
智子さんは笑顔で言った。
智子さんの笑顔を見ていると、昨日のことがウソのように思えてきた。
あんな激しい性行為をしても、こうして服を着て、なごやかに話していると、SMプレイなんてスポーツのようなものに思えてきた。
スポーツをしている時は、絶対に負けないよう、絶対に勝つよう全力で戦う。
スポーツをしている時には、勝つか負けるかの真剣勝負の戦いである。しかし、試合が終わってしまえば、そんなことはケロリと忘れ、仲のいい友達にもどる。
SMもそれと同じだと思った。
こうして、日常的な会話をしている時が、つかれない、本来の人間の付き合いなのだ。
「智子さん。今日、僕は帰ります。今日も宝円寺と天徳院と見てから帰りますので食後、すぐにここを出ます」
健二が言った。
「そう。健二くん。楽しかったわ。ぜひ、また会いたいわ」
「僕もです」
食事が終わると健二は客間にもどってデイパックを持って出てきた。
智子さんは玄関までついてきた。
「健二くん。楽しかったわ。有難う」
智子が言った。
「僕もすごく楽しかったです」
健二が言った。
「智子さん。お願いがあるんです」
「なあに?」
「智子さんの履いているパンティーをくれないでしょうか」
「いいわよ。ちょっと恥ずかしいけれど」
そう言って智子さんは、スカートの中に手を入れて愛液の沁み込んだパンティーをくれた。
「健二くん。恥ずかしいけれど。これ、あげるわ」
そう言って智子さんは健二にUSBメモリーを渡してくれた。
「何ですか?何が入っているんですか?」
「あ、あの。夫が撮影した私の写真がたくさん入っているわ」
智子さんは恥ずかしそうに言った。
「有難うございます。では、さようなら」
「さようなら」
こうして健二は伯父の家を出た。
そして宝円寺と天徳院を見てから金沢駅に行った。
健二は金沢駅で15時24分発のJR新幹線はくたか569号に乗った。東京駅には18時20分に着いた。
・・・・・・・・・・・
健二はパソコンを持って行かなかったので帰りの電車の中では、智子さんが渡してくれたUSBメモリーの中を見ることが出来なかった。
見たくて見たくて仕方がなかったが。
なので家に着くと急いでパソコンを開きUSBメモリーをパソコンに差し込んだ。
何が出てくるかとハラハラドキドキしながら。
案の定。USBメモリーのフォルダーの中には、智子さんの緊縛写真や動画がたくさん入っていた。
蟹縛り、胡坐縛り、狸縛り、海老縛り、吊るし縛り、机上縛り、椅子縛り、大股開き。責めも、棒つつき、蝋燭、剃毛、擽り、顔踏み、虫責め、錘吊るし、梯子責め、など智子さんが丸裸にされて、あらん限りの恥ずかしい姿に縛られている写真が出てきた。
そして健二が智子さんを虐めた動画も出で来た。智子さんが隠しカメラを寝室に仕掛けて回していたのだろう。
健二はドキン、ドキンと高鳴る心臓の鼓動を感じながら、食い入るように智子さんの緊縛写真を時の経つのも忘れて眺めた。
伯父さんは健二がSMに興味を持っていることを知っていたのだろうか、という疑問が起こった。健二がSMに興味を持っていることなど誰も知らない。この性癖だけは態度や性格で見抜けるものではない。なので自分がSM趣味を持っていることは黙っていれば隠し通せるのである。
Mの女の人は別にサディストにだけ責められたいとは思っていない。むしろ、SMになんか関心のない人に、「変態」と軽蔑の目で見られることにもMの女の人は興奮するのである。むしろS男がM女を虐めるのは、完全な和解、理解の行為だから、SMプレイを長く続けているとマンネリ化して厭きてくる場合もあるのである。そういう意味で伯父さんは自分に智子さんを虐めさせたのかもしれない。そんな色々な思いが健二の頭の中をグルグルと駆け巡った。しかし智子さんという素敵なM女と出会えて健二は最高に幸せだった。またいつか智子さんと会いたいと健二は熱烈に思った。
そして智子さんがくれたパンティーのクロッチ部分を鼻に当ててオナニーした。
伯父さんの家に行って智子さんというマゾの女性と親しくなれたことは、健二にとって最高に嬉しかったことだった。
しかし健二は女に現を抜かして学業を怠るような性格ではない。
健二はすぐに気持ちを切り替えた。
智子さんとの出会いは、一夏の楽しい思いでとして、心の中の引き出しの中に仕舞い込み、第一志望の東大理三を目指して、1日12時間以上の、つまり朝起きてから夜寝るまで、一日中勉強に打ち込んだ。
・・・・・・・・・・・
年が明けて2024年になった。
元旦に能登半島でマグニチュード7.5の大地震が起こった。
伯父さんや智子さんは大丈夫かなと思ったが、もし何か甚大な被害を被っていたら、伯父さんや父が電話してくるだろうと思っていたので、何の連絡もないので、伯父さんや智子さんは無事なのだろうと思った。
健二は受験勉強のラストスパートをかけた。
そして健二は東大理三を受験した。
手ごたえは十分にあった。
結果。
健二は第一志望の東大理三に合格することが出来た。
駿台の模擬試験の結果から、まず合格は大丈夫だろうと確信していたが、そして、試験本番でも十分な手ごたえがあったが、合格発表の掲示板に自分の名前を見つけた時は、やはりほっとした。健二は大学に入学後も必死で勉強して主席で卒業するつもりだった。そして大学院に入って将来は研究者になるつもりだった。
すぐに大阪にいる父親から「健二。合格おめでとう」という電話が来た。
健二は正月の元旦に起こったマグニチュード7.5の能登半島地震が気になった。
伯父さんの家は大丈夫かなと心配だったが、伯父さんからは連絡はなく、連絡がないということは、大丈夫だと健二は思っていた。
しかし東大の合格発表があった翌日に智子さんから電話が来た。
「もしもし。健二くん」
「はい。そうです」
「私です。智子です。東大理三合格おめでとう」
東大の合格者は新聞にも載るからそれで知ったのだろう。
「有難うございます。ところで元旦に能登半島沖で地震が起きましたが、身の安全や家は大丈夫でしたか?」
健二は連絡がないので、大丈夫だろうと思い込んでいたので落ち着いた口調で聞いた。
「あ。健二くん。健二くんは受験のラストスパートだったでしょ。だから健二くんには余計な心配をさせないように何も連絡しなかったの。でも本当は、家は全壊してしまったの。今日、健二くんが合格したのを新聞で知って急いで連絡したの」
智子さんはそう言った。
「ああ。そうだったんですか。それは大変でしたね。それで今、智子さんはどうしているんですか?」
「東京に手ごろな一軒家の物件があったから、そこに住んでいるわ」
そう言って智子さんはその住所を教えてくれた。
「一秀さんは元気ですか?」
「夫は去年の12月に病気で死んでしまいました」
健二は吃驚した。
「ええっ。本当ですか。何の病気ですか?」
「ガンです」
「どこのガンですか?」
「大腸です」
「何か込み入った事情があるようですね。ところで智子さんは今、どこに住んでいるんですか?」
「東京の一軒家を買ってそこに住んでいます。夫の会社は東京に本社があるから、そして夫が死んでしまったから、私が社長になったわ」
「そうだったんですか。大変だったんですね」
「いえ。社長といっても、それは名ばかりで、優秀な取締役の人達が会社の経営をやってくれるから私は飾り物のようなものだわ」
「そうだったんですか。そんなことになっていたとは知りませんでした。でも僕の受験のことを心配してくれていたなんて、本当にどうも有難うございました」
「いえ。そんなことは気にしないで下さい。健二くん。合格おめでとう」
「有難うございます」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
智子さんが近くに引っ越してきたのかと思うと健二はドキドキと心臓が高鳴った。
健二は智子さんに自分にSM趣味があることは言っていない。だから智子さんは健二にSM趣味があることは知らない。世間の人間にはSM趣味がある人と無い人がある。無い人の方が多いだろう。世間の男は女とセックスしたいと思っている人がほとんどだからである。
抱き合い、キスし、ペッティングし、そして挿入する。それが正常な男の性欲である。
これに対し女を縛る、特に股縄などと女の股間を縛ってしまっては、男がもっともしたいと思っている挿入が出来なくなる。後ろ手に縛ったり、色々な奇態な格好にしたりするのも同様である。そんなことをしたらセックスがしにくくなる。だから正常な男はSMなどはわからないのである。一方、先天的SM的性倒錯者はセックスをしたいとは思っていないのである。サディストの男にとっては女を辱しめることに興奮し、苦しんでいる女を見ることに興奮するのであって、それだけでいいのである。一方マゾヒストの女は辱しめられ、死の恐怖におののくことに最高の性的快感を感じるのである。
受験というストレスから解放されて健二はやっと肩の荷がおりて気持ちがリラックスしてきた。
受験前は性欲など起こらなかったが、受験が終わってリラックスしているうちに、健二の心に潜む性欲が起こり出した。健二はパソコンを開いて智子さんの緊縛写真を見ることにふけった。去年の夏休みに智子さんにしたエッチな行為が思い出されて健二は興奮しながら、おちんちんをしごいた。
「智子さんは今どうしているだろうか」
「智子さんは僕のことをどう思っているだろうか」
という気持ちは「智子さんに会いたい」という激しい想いに変わっていった。
そんなある日のことである。
ピンポーン。
インターホンが鳴った。
「はーい」
健二は玄関に行って戸を開けた。
すると何と智子さんが玄関の前に立っていた。
「あっ。智子さん。お久しぶり」
「あ、あの。健二さん。連絡もせず、いきなり来てしまってごめんなさい」
「いえ。僕、あなたにぜひとも会いたいと思っていた所だったんです。どうぞお入り下さい」
お邪魔します、と言って智子さんは入ってきた。
健二は智子さんを6畳の部屋に案内した。
「健二さん。第一志望の東大理三に合格できておめでとう」
「あ。どうも有難うございます」
「ところで去年の夏、健二さんに変なことをさせちゃってごめんなさい。気持ち悪かったでしょう?」
「いえ。そんなことはありません。あの時は最高に楽しかったです」
「本当ですか?」
「ええ。本当です」
「健二さんには、ああいうSM趣味があるんですか?」
「ありますとも。あの時は恥ずかしくて言えませんでしたが。僕もあなたと同じように普通のセックスには興味がないんです」
「本当ですか?」
「ええ。本当ですとも」
そう言って健二は押し入れの戸を開けた。
押し入れの中にはSM写真集が200冊以上あった。
それは健二が神田の神保町で買い集めたものだった。
「僕は最近のSMには興味ありません。昔の1970年代から1990年代の頃の杉浦則夫の撮影による緊縛写真集にしか興味ありません。あの頃はSM出版社が7社もあってSMの全盛期でした。出版社のSMモデル募集に応募してくる女性は皆、お金目当てではなくMの願望がある女の人達です。人に言えない被虐心をどうしても抑えることが出来なくなって、出版社に救いを求めるように応募した人達です。僕はそういうM女性が好きです。2000年からパソコンやインターネットが急速に発達してからは、アダルト女優はMの気質がないのにSMビデオや写真は売れる、という理由でSMビデオが粗製乱造されるようになりました。しかしそれは残念です。なぜならSMとセックスがごっちゃになってしまいましたから。なので僕は最近のSMには全く興味がありません」
健二は自分のSM観を述べた。
「そうたったんですか。それを聞いて嬉しいです」
そう言って智子さんは話し始めた。
「ところで夫の一秀さんはどうしてガンで死んでしまったんですか?」
「実を言うと夫は大腸ガンのステージ4だったんです」
「ええっ。本当ですか?」
健二は吃驚した。
「ええ。本当です」
「それがわかったのはいつですか?」
「去年の4月です。血便が出るのに気づいて病院で検査してもらったら大腸ガンのステージ4だとわかりました。全身に転移していて長くもって1年の命だろうと医師に言われました。もちろん私は夫には生きて欲しいので、すぐに夫に病院に入院して治療するように勧めました。夫もそれを了解してくれて病院に入院して原病巣である直腸を切除して放射線治療や抗ガン薬の治療を受けました。しかしガンは全身に転移しているので抗ガン薬や放射線治療をしてもガンは再発して完治させることは無理だろうと医師は言っていました」
「そうだったんですか」
「長くもって1年の命と言われて夫も覚悟を決めていたようです。夫はどうせ死ぬのなら、つらい治療を受けて少しばかり寿命を延ばすよりも好きなことをやって生きることを夫は選択しました」
「そうだったんですか。そうとは知りませんでした」
「私、夫に死なれてからずっとさびしかったんです。夫とはSMパートナー募集のサイトで知り合った仲でした。SMの欲求は十分に満たされましたし、私は夫を愛していました。でも去年の夏、健二さんに恥ずかしいことをされて、もしかすると健二さんはSM趣味があるかもしれないとずっと思っていたんです。でも健二さんの受験に差し障りがあってはよくないと思って健二さんが大学に合格するまでは連絡をしなかったんです」
「そうだったんですか」
健二は疑問に思っていることを聞こうと思った。
「ところで去年の夏、父がさかんに伯父さんに会うように勧めましたが、それは伯父さんの病気と関係があるんでしょうか?」
「ええ。おおいにあります」
「どんなことでしょうか?」
「健二さんのお父さんは、健二さんがSMに興味を持っていることをうすうす知っていたようです。また私に好意を持ってくれていることも。それで夫が死んだあと、夫の一秀は私がさびしくならないよう健二さんに私のSMパートナーとなって欲しいと思っていたんです」
「そうだったんですか。僕は去年の夏、智子さんが虐められているのを見て心の中では物凄く興奮していました。うわべは平静を装っていましたが僕も智子さんを虐めたいと思っていました」
「それを聞いて安心しました。すごく嬉しいです」
「じゃあ伯父さんは死んだあと僕に智子さんのSMパートナーになって欲しいと思ってああいうことをしたんですね」
「ええ。そうです」
「そうですか。それを聞いて疑問が解けました」
・・・・・・・・・・・・・・





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伯父の妻と甥の恋(小説)(下)

2025-05-14 23:39:40 | 小説
「健二さん。お願いです。どうか私をうんと辱めて下さい。今日は健二さんに虐められたくて来たんです」
そう言って智子さんはどっと健二の前に身を投げ出した。
「ええ。わかりました。僕も智子さんを縛りたくて仕方がなかったんです」
こうしてサディストとマゾヒストの完全な欲求の一致が成立した。
「では智子さん。着ているブラウスとスカートを脱いでブラジャーとパンティーだけの下着姿になって下さい」
健二は言った。
「はい」
智子さんはブラウスを脱ぎスカートを降ろした。
豊満な二つの乳房を包んでいる白いブラジャーと腰にピッタリと貼りついて恥部を隠している白いパンティーだけの姿がまぶしいほどに露わになった。
健二は縄を持って智子さんの背後に回った。
「さあ。両手を背中に回して下さい」
健二は命令的な口調で智子さんの華奢な腕をつかみグイと背中に回し手首を重ね合わせた。
「ああっ」
智子さんが早くも被虐の喘ぎ声を上げた。
健二は智子さんの重ね合わさった手首を麻縄できつめに二巻き縛った。
そしてその縄尻を前に回して智子さんのブラジャーに覆われた豊満な乳房の上をカッチリと二巻き縛り、そしてその縄を智子さんの手首を縛った縄に固く結びつけた。そして今度は智子さんのアンダーバストを二巻き縛った。
豊満な乳房の下垂によって乳房の下の縄は一部、隠された。それがエロチックだった。
智子さんの乳房は上下の縄によって挟み込まれる、というか、縄の縛めから絞り出されるようになった。
健二は前に回って後ろ手に縛られて胸縄をされた智子さんをしげしげと眺めた。
智子さんは横座りしている。
「ああっ。健二くん。いいわっ。夫がいなくなって四ヶ月、ずっとごぶさただったの。久しぶりに縛られて最高の快感だわ」
智子さんはあられもない告白をした。
華奢な腕の肉にきつく縛った縄が食い込んで縄が彼女を虐めているかのようである。
ブラジャーとパンティーの女の恥部を覆う二切れの布を身につけているとはいえ、もう手は自由に使えない。これから何をされるんだろうかという想像力が彼女の恐怖感を高めていた。
叔父さんの家に行った時には、あくまで、伯父さんの許可のもとで智子さんを虐めはしたものの、そこには伯父さんに対する遠慮があった。しかし今は智子さんは完全に健二の支配下にある。
健二がどんな趣向で智子さんをどのようにするかは智子さんには分からない。その恐怖が智子さんの被虐心を激しく興奮させていた。
「ふふふ。智子さん。このままブラジャーとパンティーを抜きとってしまえばもっと恥ずかしい格好になりますね」
健二は智子さんの被虐心を刺激するためにそんなことを言った。
「あっ。ああっ。こわいわ」
智子さんは恐怖におびえて言った。
「ふふ。大きなおっぱいですね。もう乳首が勃起しているんじゃないですか?」
と言うと智子さんの意識が胸に行き、胸がブルッと揺れた。しかし、後ろ手に縛られている以上、ブラジャーに覆われている胸のふくらみを隠すことは出来ない。彼女はしげしげと見られることに耐えるしかないのである。
「あっ。嫌っ。虐めないで」
そうは言ったものの、そう言われることでM女は興奮するのである。
正常な男だったら、こういう状況ではすぐに女に抱きついて胸を揉み、ブラジャーとパンティーを脱がせてセックスする。しかし真のSM的人間は違うのである。真のSM的人間は相手には決して手を触れない。なぜならサディストの男にとっては女を辱しめることが、そしてマゾヒストの女にとっては辱められることにのみ最高の快感を感じるからである。
なので健二はこれ以上、彼女に何かをしたいわけではない。このまま、じっと彼女を見ているだけで十分なのだ。自由を奪われて、これから何をされるかわからないという恐怖感が高まっていくことに彼女の興奮の度合いも高まっていくのである。
健二は押し入れを開けてSM写真集を何冊も持って来て智子さんの前で開いた。
そこには、蟹縛り、胡坐縛り、狸縛り、海老縛り、吊るし縛り、机上縛り、椅子縛り、大股開き、棒つつき、蝋燭、剃毛、擽り、顔踏み、虫責め、錘吊るし、梯子責め、逆さ吊り、とM女が丸裸にされて、あられもない惨めの極致の格好にさせられている姿がページをめくる度にあらわれた。
「ふふふ。智子さんはどんな格好にされたいですか?」
健二は意地悪く質問した。
「こ、こわいわ」
恥ずかしい格好にさせられている女の写真を見せつけられて、智子さんも自分もそうさせられるかもしれないという恐怖感が現実的になったのだろう。智子さんは本当におびえて震えていた。
「ふふふ。こんなのはどうですか?」
健二はあるページを開いた。
それは美しい女が全裸にされて、後ろ手に縛られて、両足首を縛られて逆さ吊りにされている写真だった。
美しい長い黒髪が逆さになって床に垂れ、女はやるせない表情で顔は歪み、逆さ吊りの苦しみと、許しを乞う哀切的な表情で切れ長の目をじっと閉じて、いつ終わるかわからない、つらい責めに耐えていた。
「こ、こわいわ」
もろに、逆さ吊りにされている女の写真を見せつけられて、自分もそうさせられるかもしれないという恐怖感が起こったのだろう。智子さんは本当にこわがって震えていた。
しかし健二の目的は智子さんをこわがらせることで、いきなりそんな激しい責めをするつもりはなかった。
健二は智子さんの背後に回った。
「じゃあ、智子さん。後ろ手の縄を解きますから自分でブラジャーとパンティーを脱いで全裸になって下さい」
「はい」
健二は智子さんの後ろ手に縛った縄を解いた。
そしてすぐに智子さんの前に回った。
智子さんは恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら座っていた。
「さあ。智子さん。ブラジャーとパンティーを脱いで全裸になって下さい」
健二は命令的な口調で智子さんをせかした。
「はい」
智子さんはブラジャーの背中のホックを外し肩紐を外してブラジャーを抜きとった。
智子さんの豊満な二つ仲良く並んでいる乳房が丸見えになった。
智子さんは片手で二つの乳房を隠しながら中腰になり、急いでパンティーを降ろして足から抜きとった。そしてペタンと座ってしまった。もとのままの横座りである。
彼女は顔を火照らせて片手で胸を、片手でアソコを隠していた。
裸を見られることの恥ずかしさからではなく、裸を何とか隠そうとする行為をすることによって女のいじらしさ、羞恥心を自分に自覚させ、そして健二に加虐心を起こさせるためである。
「ああっ。いいわっ。感じちゃう」
彼女は被虐の快感を叫んだ。
健二は黙っていた。彼女は被虐心に久々に酔っているのだし。それに下手に言葉をかけたり下手な言葉責めはしない方がいいのだ。男が何を考えているのか分からないことが、M女の想像力を掻き立てるからだ。
智子さんは片手で胸を、片手でアソコを隠していた。だが手が自分の豊満な乳房に触れることによって、だんだん胸を隠すというより、手を乳房に触れさせることによって、健二に分らないようにそっと自慰したいと思っているのを、健二は乳房に触れている指が少し動く仕草で感じとった。
「ふふふ。智子さん。乳首が勃起し始めているんじゃないんですか?」
健二はさりげなく聞いた。
「ああっ。もうダメ」
智子さんはハアハアと息を荒くしながら胸を覆っていた指で乳首をつまんでコリコリさせた。
どんどん智子さんの乳首が勃起していった。
アソコを覆う手もアソコを隠すというより、アソコの肉を揉む動きに変わっていった。
ああっ、ああっ、と喘ぎ声を上げながら。
もう智子さんはオナニーを見抜かれても、オナニーを隠そうとはしなくなっていた。
「ふふふ。智子さん。ご主人に死なれてからエッチなことはしていたんですか?」
「し、していません」
「じゃあ、さびしくなったらどうしていたんですか?」
「オナニーしていました。受験が終わって健二くんの家に行って健二くんに虐められることを想像して」
「じゃあ智子さんはこの部屋でオナニーして下さい。僕は出て行きます」
そう言って健二は智子さんの居る部屋を出た。
健二は別の部屋から、一人になった智子さんの様子を見た。
智子さんは初めデジカメが何処にあるのだろうかと部屋の四隅を見ていたが見つけられなかった。もしかするとデジカメは設置されていないと思ったのかもしれない。かえって見られていない状態に一人にして思う存分、長い間、一人でさびしくしていたオナニーを、今度はいつでも虐めてもらえる保障がある立場で思う存分オナニーさせてやろうという健二の考えなのかもしれないと考えたのかもしれない。そんなふうに考えが変わったのだろう。
また見られているか見られていないか、わからない事にも興奮したのだろう。
智子さんはだんだんハアハアと息を荒くしながらオナニーを始めた。
智子さんは乳房を隠すのをやめて、荒々しく乳房を揉み、乳首をつまんでコリコリさせた。
乳首は激しく勃起した。
「ああっ。いいっ」
智子さんにもう恥じらいはなかった。
智子さんは畳の上に犬のように四つん這いになると膝を開いて、片手を伸ばして床を押さえ、片手でアソコを揉み出した。
豊満な二つ仲良く並んだ乳房がその重さによって床に向かって下垂していた。
クチャクチャとだんだんバルトリン腺液の鳴る音が聞こえ出した。
「ああっ。いいっ」
智子さんは全身をプルプル震わせながら喜悦の叫びを上げた。
彼女は片手で床を支えるのをやめた。顔と肩が床にくっつき、顔と乳房がへしゃげた。
床に押しつぶされた乳房も色っぽかった。
彼女は両手を背中に回し、背中で手首を重ね合わせた。
尻を突き出した屈辱的なポーズをとるため。
実際、彼女は膝を開いて手首を背中で重ね合わせているので、大きな尻が高々と天井に向けられ、それを支えているムッチリした太腿はプルプルと小刻みに震えていた。
膝を大きく開いているので尻の割れ目が開いて窄まった尻の穴は丸見えで、激しい被虐の興奮のため、恥丘の肉がふくらんで、そのため女の割れ目は閉じていた。
「ああっ。いいっ」
尻の穴はヒクヒクと窄まったり開いたりした。
それはこれから健二に尻の穴まで晒して虐めて欲しいという智子の意思表示なのだろう。
かなりの時間、智子は尻を上げるポーズをとっていたが、足も疲れてきたのか、太腿の力を抜いた。そのため智子は床にペシャンとうつ伏せになった。
智子はすぐに起き上がった。そして持ってきたカバンから縄を取り出した。
智子は一本の縄を二つに折った。そして折った所を首の後ろにかけた。そして体の前面に垂れている二本の縄を胸の所で固結びにし、さらに臍のすぐ下でまた固結びにした。智子はハアハアと喘ぎながら、縄尻を股間に持って行った。智子は股間を開き、二本の縄をその中にグイと食い込ませた。ああっ、と智子は喘ぎ声を上げた。智子はさらに、アソコの割れ目に食い込ませた縄を後ろに持って行き、尻の割れ目に厳しく食い込ませた。そして股間に食い込ませた縄を背中の上に持って行き、首の後ろの縄に通した。そして、今度は、その縄を胸と臍の下を結んでいる体の全面の二本の縄に両側から通して、背中に引っ張った。これによって智子の胸と臍の所に◇が出来た。智子はさらに胸の下と臍の下の固結びの所に、同様に、縄尻を背後から前に出して、引っ掛け、背中の方にグイと引っ張って固結びにした。これで胸と臍の下にも◇が出来た。菱形縛りが完成した。縦縄がただでさえ股間に厳しく食い込んでいるのに、それを横縄で引っ張ることで縄がさらに引っ張られて智子の柔らかい体に厳しく食い込んだ。ああっ、と智子は喘ぎ声を上げた。
菱形縛りは自分でも出来るので智子は時々、していたのであろう。
菱形縛りは柔らかい女の体に意地悪く食い込んでくる縄ではあるが、二本の股間縄が女の性器を隠す役割りも果たしていた。女の股間に深く食い込んだ縦縄は、女がどんな格好をしても女の恥ずかしい所を隠している。智子はそれを確かめるように、カガミに向かって、立ったり、大きく足を開いたりして、それを確かめた。また智子には、菱形縛りを健二にして欲しいという思いもあるのだろう。
智子が体を動かす度に意地悪な股間の縄が智子の敏感な所を擦り、智子は、ハアハアと喘ぎ声を上げた。
智子さんの興奮が高まったのだろう。
彼女は股間に食い込んでいる縦縄の前を右手でつかみ後ろを左手でつかんだ。
そして縄を前後に動かし出した。ただでさえ縦縄は彼女の股間に厳しく食い込んでいるのに、縄を前後に動かすことによって、縄は陰核から肛門までの女の感じやすい所を刺激した。
「ああっ。ああっ」
と智子さんは蛭のような唇を半開きに開け、苦し気に眉を寄せ、その行為を続けた。
智子さんは時々、左手を離してその手で乳房を揉んだり乳首をつまんでコリコリさせたりした。やがて智子さんにオルガズムが起こったのだろう。
彼女は髪を振り乱し、全身を激しくブルブル揺すり出した。
そして。
「ああーイクー」
と叫んで全身を震わせた。
オルガズムに達した後は、智子さんはガックリと死人のように床に倒れ伏してしまった。
彼女はしばらくの間、ピクリとも微動だにしなかったが、やがてムクッとゆっくりと起き上がった。そして背中に手を回して菱形縛りを解いていった。
縦縄を弓のように引っ張って体に◇を作っていた横縄が解けた。
次いで智子さんは首の後ろにかかっていた横縄の縄尻を首から抜き、股間に食い込んでいた縦縄を解いた。三つの固結びのある菱形縛りの縄を智子さんはカバンにしまった。
智子さんは少し、ソワソワした様子だったが、やがてパンティーを履き、ブラジャーをつけた。そしてスカートを履き、ワイシャツを着た。
そして彼女はつつましく正座した。
・・・・・・・・・・・・・
健二は戸を開けて智子さんの居る部屋に入った。
そして彼女の前に座った。
彼女は健二が部屋を出たあとに、四つん這いになって尻を突き上げたり、自分で亀甲縛りをしたりしてオナニーしていた姿を健二が見ていたか、見ていなかったかどうかはわからない。
彼女が服を着てつつましく座っているのは、健二が部屋を出た後に彼女はすぐに服を着て、おとなしく、じっとしていたということを装うためだろう。しかしそれはこの部屋に隠しカメラが仕掛けてなくて健二が彼女のあられもないオナニーを見ていない場合である。しかし見られていたとしても健二が部屋にもどってきた時に、亀甲縛りの姿のままでいるのを見られるのも彼女としては恥ずかしいだろう。ともかく女は服を着ていれば美しいのである。
しかし彼女は、あられもない淫らな姿や行為を見られたのか見られていないのか、わからないので緊張して顔を火照らせていた。
健二はその膠着状態を穏やかな口調で破った。
「ふふふ。智子さん。この部屋には隠しカメラが仕掛けてあります。僕は別の部屋で智子さんが、四つん這いになってお尻を突き上げたり、自分で亀甲縛りしたオナニー姿を全部見させてもらいました」
健二はニヤリと笑って言った。
「健二くん。見ていたのね。恥ずかしいわ」
智子さんは顔を赤くした。
「智子さん。今日はこれからどうしますか。まだ何かやりますか。それとも今日は帰りますか。それは智子さんにまかせます」
健二は判断を彼女にゆだねた。
「健二さん。私、夫に死なれて四ヵ月、ずっとモヤモヤした気持ちでいたんです。今日、やっと決断して、健二さんに徹底的に虐めてもらいたいと思って来たんです。健二さん。お願いです。どうか私を徹底的に私を虐めて下さい」
彼女はあられもない懇願をした。
「わかりました。じゃあ、また続きをしましょう」
「有難う。嬉しいわ」
「智子さんは何をされたいですか?」
「健二くんにまかせます。健二さんはどんなことをして虐めてくれるのか、ワクワクします」
健二はニヤリと笑った。
「じゃあ、智子さん。またワイシャツとスカートを脱いで下さい」
「はい」
彼女はワイシャツのボタンを外した。そして中腰になってスカートを降ろした。
豊満な二つの乳房を包んでいる白いブラジャーと腰にピッタリと貼りついて恥部を隠している白いパンティーだけの姿がまぶしいほどに露わになった。
健二はどんな方法で智子さんを虐めようかと迷った。
責め方は無数といえるほどある。
彼女を後ろ手に縛ってパンティーを膝の所まで降ろしてしまえば彼女は手を使えないのでパンティーを引き上げることは出来ない。そういうふうな、もどかしい羞恥責めをしようかとも思った。あるいは彼女がさっきやったように、後ろ手に縛って四つん這いにさせ尻を上げるポーズをとらせようかとも思った。
あるいは彼女のブラジャーを外し、両方の乳首を割り箸とゴムで挟もうかとも思った。
しかし彼女は四ヵ月もSMプレイをしておらず、やむにやまれぬ思いで健二の家にやって来たのだから、そしてさっきの彼女のオナニーからも、彼女の被虐心は炎のように彼女の心の中でメラメラと燃え盛っているだろうし、健二も羞恥責めではなく、もっと激しく彼女を虐めたいというサディズムが募っていた。
それで健二はある意地悪な責めをしようと決めた。
「さあ。智子さん。ブラジャーとパンティーも脱いで全裸になって下さい」
健二は命令的な口調で智子さんに言った。
「はい」
智子さんはブラジャーの背中のホックを外し肩紐を外してブラジャーを抜きとった。
智子さんの豊満な二つ仲良く並んでいる乳房が丸見えになった。
智子さんは片手で二つの乳房を隠しながら中腰になり、急いでパンティーを降ろして足から抜きとった。そしてペタンと座ってしまった。もとのままの横座りである。
彼女は顔を火照らせて片手で胸を、片手でアソコを隠していた。
さっきの亀甲縛りの縄の跡が体に印されていた。
健二は縄を持って彼女の背後に座った。
そして彼女の両手をつかんで背中に回し、手首を重ね合わせて縄でカッチリと縛った。
そして健二は丈夫な太い縄を二本もって、一本の縄を彼女の右の足首に結びつけ、もう一本を彼女の左の足首に結びつけた。
「な、何をするの?」
彼女はいきなり全裸にされ、後ろ手に縛られて、両方の足首をそれぞれ縄で縛られて何をされるのだろうかと分らない様子だった。
健二は椅子を持って来た。
そして彼女の足首を縛った縄を持って椅子の上に乗った。
そして天井の梁にその縄を引っ掛けて、まずは右足の縄をグイグイと引っ張っていった。
「ああ。健二くん。逆さ吊りにしてくれるのね」
智子さんが気づいて言った。
健二は智子さんの右足が天井に引き上げられて、尻が浮き、背中も床を離れ、頭と肩だけが床に着いている状態で右足を縛った縄を天井の梁に結びつけた。
そして、左足の縄も右足と同じ高さまで引き上げて天井の梁に結びつけた。
両足首の間隔は1mくらいに開いた。
そして健二は椅子から降りて逆さ吊りにされている智子さんをしげしげと見た。
智子さんのムッチリ閉じ合わさった大きな尻が丸出しになり、アソコも丸見えになった。
といっても、アソコの割れ目は閉じている。
激しい興奮で恥肉がふくらんでいることもあるが、女の大陰唇は自分や他人が意識して手で開かない限り構造的に閉じているものなのである。
智子さんの豊満な二つの乳房も丸見えになっている。
「どうですか。智子さん。こういう格好で縛られる気持ちは?」
「い、いいわっ。惨めの極致だわ。だって健二さんが許してくれるまで私はずっと全裸で逆さ吊りの惨めな格好でいなくてはならないもの」
彼女は被虐の陶酔に酔っていた。
健二も少しの間、全裸の逆さ吊りの彼女の姿を眺めた。
健二の目の前には彼女の美しい顔があり、ばらけて床に散らかった彼女の美しい黒髪がある。
彼女は手と足を拘束されているので健二は彼女の体を自由に触ることが出来る。
普通(ノーマル)な性欲の男だったら、飢えた狼が獲物に襲いかかるように彼女の体を思うさま弄ぶだろう。しかし健二はそうしなかった。なぜならSMとは相手を惨めの極致にして、羞恥心を弄ぶものだからである。彼女は今、惨めの極致にされて、その姿を見られる被虐に陶酔している。なので健二は何もせず、彼女を見下すだけでいいのである。
しかし健二にはもっと意地悪な計画があった。
健二はニヤニヤ笑いながら太い蝋燭を取り出した。そして蝋燭の棒の真ん中をヒモで縛った。
「な、何をするの?」
智子さんが不安そうに健二の方を向いて聞いた。
しかし健二は黙っていた。
健二は蝋燭を持って椅子の上に登った。
そしてヒモを智子さんの両足首を縛りつけてある梁の真ん中に結びつけた。
蝋燭の棒は梁からダラリと垂れている。しかし蝋燭のすぐ下は智子さんのアソコである。
健二はライターを取り出して火を灯した。
そして蝋燭の芯に火をつけた。蝋燭は少し傾いていたが、おおむね水平だった。
すぐに蝋燭に灯った火によって熱せられて蝋燭が溶け出し、ポタリ、ポタリと蝋涙が垂れ始めた。それは否応なしに智子さんの股間に垂れていった。
蝋涙はポタリ、ポタリと智子さんの尻の肉から股間、アソコの肉に容赦なく垂れた。
蝋涙が智子さんの柔肌に垂れると同時に智子さんは、
「ああっ。熱い。熱い」
と叫んで蝋燭の攻撃を避けようと身を捩った。
しかし頭と肩がかろうじて床に着いているだけで、ほとんど逆さ吊りのような状態なので、いくら身をくねらせても、股間を蝋涙の攻撃からそらすことは出来なかった。
意地悪な蝋燭は情け容赦なくポタリ、ポタリと智子さんの尻の肉から股間、アソコの肉に向かって蝋涙を放ち続けた。
「ああっ。健二くん。お願い。許して」
智子さんは身をくねらせながら哀願した。
ここに至って、智子さんは、この意地悪な責めから逃れることは出来ないのだとさとった。
それと同時に健二のサディズムの激しさにも。
健二はもう完全なサディストになりきっていた。女が苦しみもがく姿は何て愉快なんだろう。
口にこそ出さね、健二は心の中で、「女を虐めるのは何て楽しいんだろう。智子。もっと苦しめ。もっと苦しめ」と悪魔の喜びに歓喜していた。
蝋涙は智子さんの股間にポタポタと滴り落ち続け、その蝋涙がくっつき合って智子さんのアソコは蝋涙の面によって隠されて見えなくなるまでになった。「許して。許して」と言って体を苦し気にくねらせていた彼女だってが、彼女も太腿や体をくねらせ続けることに疲れはててしまったと見え、ぐったりと動かなくなってしまった。健二はふっと蝋燭の火に息を吹きかけて蝋燭の火を消した。
「ああ。健二さま。お許し下さり有難うございます」
智子さんが言った。
「智子さん。疲れたでしょう」
健二は椅子の上に乗った。そして智子さんを逆さ吊りにしている縄の固定を解き、ゆっくりと彼女の足首を降ろしていった。彼女の尻が床に着き、そしてさらに縄を緩めることによって、彼女の足も床に着き、彼女の逆さ吊りは完全に解かれた。
「ああ。健二くん。許して下さって有難う」
健二は彼女の両足首の縄を解いた。そして彼女の後ろ手の縄も解いた。
彼女の引き締まった足首には彼女の体重を支えていたために、クッキリと赤い縄の跡が印されていた。彼女は全裸ではあるが縄の縛めは全部なくなり彼女の手足は自由になった。
しかし彼女はよっぽどクタクタに疲れていると見え、何をする気力も起こらないのだろう。そして被虐の余韻に浸りたいのだろう。グッタリと床に伏したまま動かなかった。
健二は彼女の股間に貼りついた蝋涙をペリペリと剥がした。蝋涙はくっつき合って面になっていたので、ペリペリと簡単に剥がれた。彼女は久しぶりの被虐の余韻に浸っていたいのだろうが、いつまでも裸にさせてはおきたくなかった。なので健二は床に散らかっている彼女の服を集めて持ってきた。そして彼女の足首にパンティーをくぐらせて腰まで引き上げた。そして彼女の上半身を起こして、彼女の胸にブラジャーを着けた。そして彼女にスカートを履かせ、ワイシャツを着せた。疲れているとはいえ彼女も自分で服を着ることは出来るだろう。しかし彼女が健二に身をまかせていたのは、健二のお人形になるためであり、実際、健二は彼女を生きた着せ替え人形のように扱うことに楽しさを感じていた。
彼女はしばしぐったりとしていたが、やがてムクッと体を起こした。
「健二くん。有難う。久しぶりに被虐の快感を味わうことが出来て幸せだったわ」
「智子さん。僕も楽しかったです」
「でも健二くんが、あんなハードな責めが出来るなんて驚いたわ」
「僕は真面目な人間を装っていますが本当は凄くスケベなんです」
「健二くんはSMに興味があるの?」
去年の夏、伯父の家で彼女を弄んだことや彼女が渡してくれた彼女の緊縛写真から彼女は健二が無理して彼女の欲求を満たしてあげたのか、それとも本当に健二にSM趣味があるのか知りたくて聞いたのだろう。
「智子さん。正直に言います。僕は先天的にSMの性癖があります」
「それを聞いて安心したわ。ところで健二くんはサディストなんでしょう?」
「ええ。でもマゾヒズムもあります」
「そうかなあ。そうは見えないけど」
「智子さんは僕にとって女神さまです。だから僕は智子さんに虐められたいとも思っています」
「嬉しいわ。でも私そんな事できないわ」
「そうでしょうね。智子さんにサディズムは感じられません。僕のマゾヒズムは精神的な男から女への変身です。僕は裸にされて縛られている女の人の緊縛写真を見ると、その女の人に感情移入してしまうんです。虐められている女になりたいと思うんです。それが僕が最も興奮する性欲の形なんです」
「そうだったの。嬉しいわ。これからもまた私を虐めてくれる?」
「ええ。智子さんが虐められたくなったら、またいつでも来て下さい」
「有難う。健二くん」
そう言って智子さんは去って行った。
智子さんは伯父さんの会社の社長として働いている。
健二も医学部に入って高校とは違う大学の勉強が始まった。
しかし医学部の1年と2年は教養課程で本格的な医学の勉強は3年からである。
教養課程はかなり楽で、皆、車の免許を取りアルバイトに励んでいた。
健二も自動車教習所に通って運転免許を取った。
しかし土曜日には、智子さんから電話がかかってくることが多かった。
「健二くん。明日、うかがってもいいでしょうか?」
健二は智子さんから電話があると、「はい。構いません。楽しみに待っています」と言っている。虐められたいという被虐心が耐えられなくなると彼女は健二に電話してきた。
健二は毎回、趣向を変えた方法で、智子さんを虐めている。
こうして健二は智子さんとSMパートナーとして付き合っている。


2025年5月14日(水)擱筆





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高校野球小説「頭脳的勝利」(小説)

2025-04-30 11:03:00 | 小説
高校野球小説「頭脳的勝利」

という小説を書きました。

浅野浩二のHPその2にアップしましたのでよろしかったらご覧ください。

高校野球小説「頭脳的勝利」

2025年の第107回全国高校野球大会である。
全国の球児たちが甲子園を目指しこの大会のために頑張ってきたのである。
当然、どの高校も甲子園出場を咽喉から手が出るほど望んでいる。
甲子園に出場するためにはまず地区予選に勝たねばならない。
地区予選で甲子園に出場するのも甲子園大会で優勝するのも一発勝負のトーナメント制である。
ここ。神奈川県でも地区予選の組み合わせが行われた。
その結果、何と神奈川で強豪校の横浜高校と湘南台高校が第一回戦で対戦することになった。
どちらも甲子園出場の経験があり、どちらの高校も甲子園で優勝する可能性が十分あった。
地区予選の第一試合が甲子園大会の決勝戦になってしまったようなものである。
当然、全国の注目の的となった。
横浜高校も湘南台高校も投打において強かった。
横浜高校のエース横田は160km/h以上のストレートとカーブが持ち味だった。
一方の湘南台高校のエース山野はサイドスローでストレートは140km/h台しか出せなかったが、チェンジアップ、カーブ、スライダーなどほとんどの変化球を自在に操ることが出来てコントロールも抜群で打たせてとる頭脳派のピッチャーだった。
この試合は投手戦になりそうだ、と野球解説者は予想した。
しかし超高校級の160km/hのストレートを投げられる横田がいる横浜高校が勝つだろうというのがほとんどの野球解説者の予想だった。
ウーウーウー。
試合開始のサイレンが鳴り試合が始まった。
先攻は横浜高校で後攻は湘南台高校となった。
予想通り試合は投手戦となった。
湘南台高校の打者たちは横田の超高校級の160km/hのストレートには手が出なかった。
当たってもファールになるか差し込まれて内野ゴロになるかだった。
湘南台高校の打者はセーフティーバントをしてかろうじてパーフェクトゲームは逃れることが出来た。しかし後続が続かないので得点することは出来なかった。
・・・・・・・・・・・・・・
湘南台高校の監督も選手たちに、
「お前たち。お前たちの実力では到底、横田の160km/hのストレートは打てない。カーブを狙っていけ」
と指示をした。
選手たちも監督の指示に従って横田のストレートは捨ててカーブに絞った。
解説者は、それを見て、
「どうやら湘南台高校の監督は横田のストレートはあきらめてカーブに絞るように指示したらしいですね」
と言った。
しかし湘南台高校のバッターたちは横田のカーブも打つことは出来なかった。
むなしく空を切り空振りするだけだった。
3番4番5番のクリーンアップトリオも横田のカーブを空振りした。
三振した湘南台高校のバッターたちは、チクショウと言ってバットを地面に叩きつけた。
横田も自分のカーブを空振りしている湘南台高校の打者を見て自信に満ちた顔でニヤリと笑った。それはオレのカーブを湘南台高校は打てないという自信の嬉しさだった。
解説者も、
「うーん。横田君のカーブはそれほど良く落ちているようには見えないんですがね。湘南台高校の打線の実力から考えると打てるように思えるんですが・・・・やはり打席に立ったバッターには落差が大きく見えるんでしょうね。あるいは湘南台高校では打撃練習ではあまり変化球を打つ練習をしてこなかったのかもしれませんね」
と言った。
一方の横浜高校の打者たちも湘南台高校の山野の打たせてとる技巧派ピッチングに苦しめられランナーを3塁まで出すことが出来てもホームベースを踏むことは出来なかった。
こうして試合は9回裏まで0対0で進んでいった。
これは延長戦になるな、1点を先にとった方が勝ちだな、と観客たちは思った。
9回裏の湘南台高校の攻撃になった。
3番の末吉がバッターボックスに立った。
横田は一球目は160km/hのストレートを投げた。
末吉はその球をセーフティーバントしようとした。
バットに当てることは出来たが残念ながらファールになってしまった。
湘南台高校は3回セーフティーバントに成功している。
得点にはつながらなかったが。
湘南台高校は対横浜高校対策としてセーフティーバントや短距離走の練習をしてきたのだろうと横田は思った。
うかつにストレートを投げてセーフティーバントが成功して、足も速いので盗塁されて得点されることを横田はおそれた。
しかし打線の実力から言えば横浜高校の方が湘南台高校よりも上である。
延長戦になるが、もう勝ったも同然だ、という喜びが横田の顔に浮かんでいた。
二球目に横田は得意のカーブを投げた。
すると、3番の末吉はニヤリと笑い、横田のカーブをフルスイングした。
それまで一度もかすらなかった末吉のバットは横田のカーブをバットの芯でとらえた。
ボールはきれいに宙を舞いライトスタンド上段に叩き込まれた。
観客たちは、おおー、と歓声を上げた。
末吉は余裕で一塁、二塁、三塁とベースを踏んでいきホームベースを踏んだ。
「ホームイン。1対0で湘南台高校の勝ち」
審判が言った。
横浜高校の選手たちはキツネにつつまれたような様子だった。
うわーと湘南台高校を応援していた観客たちは歓声を上げた。
「よくやったな」
と湘南台高校の監督は選手たちを讃えた。
一方、横浜高校のエース横田はマウンドにひれ伏し涙を流した。
解説者は、
「いやー。野球はまさに筋書きのないドラマですね。まさか甲子園出場は当然のこと、甲子園大会でも優勝候補の横浜高校がまさか地区予選の第一試合で敗退してしまうとは・・・・しかしこう言っては失礼ですが、これは湘南台高校の、まぐれ当たりのラッキー勝利ですね。ボクシングでも実力が明らかに上の世界チャンピオンがランキングにも入っていない格下の挑戦者に一発のラッキーパンチがきっかけで負けてしまうということはありますからね。湘南台高校には失礼ですが、これは湘南台高校のまぐれ勝ちとしか言いようがありませんね。横浜高校の横田君は160km/hのストレートはもちろんのことカーブも湘南台高校にかすらせもしませんでしたからね」
と言った。
神奈川県で最強の横浜高校に勝ったことで、湘南台高校はその後の試合で難なく勝ち進み、地区予選の決勝戦でも勝って甲子園出場を果たした。
当然、藤沢市では湘南台高校の勝利を町をあげて祝福した。
そして甲子園大会でも湘南台高校は優勝して真紅の優勝旗を手にした。
・・・・・・・・・・・・
試合後に監督のインタビューが行われた。
記者「優勝おめでとうございます」
監督「どうもありがとうございます」
記者「勝因は何だったんでしょうか?やはり地区予選の第一試合で優勝候補の横浜高校に勝ったことで選手たちに自信がついたからでしょうか?」
監督「いや。違いますね。我々は実力で勝ったんです。まあ頭脳作戦の勝利でしょうね」
日本人は謙虚なので普通、勝ったチームの監督は相手チームの善戦を褒めたたえるのだが、湘南台高校の監督は自信に満ちた態度だった。記者もそれを不思議に思った。
記者「頭脳作戦の勝利とはどういうことでしょうか?」
監督「優勝した今だから、その秘密を言ってもいいですよ。聞きたいですか?」
記者「ええ。ぜひうかがいたいです」
監督「では話しましょう。実力で勝ったのに、まぐれで勝ったなどと思われたままでは我が校の選手たちが可哀想ですからね」
監督のあまりにも自信のある態度に記者はキツネにつつまれたような顔をしていた。
監督は話し出した。
監督「実はですね。我が校の選手たちには、横田君のカーブをわざと9回裏まで空振りするように指示していたんです」
記者「ええー。野球の試合で、わざと空振りさせるなんてことがあるんでしょうか?一体、何のためにそんなことをしたんですか?」
記者は目を白黒させて驚いた。
監督「横田君の160km/hのストレートは我が校の打者の実力では打てません。地区予選の前に1度、交流試合をしたことがありますが、それを痛感しました。しかし横田君はカーブも投げられます。しかし解説者も言っていましたが、あのカーブは特別、落差の大きい打てないカーブではありません。そこそこのピッチャーなら誰でも投げられるカーブです」
記者「そうでしたね。解説者もそのようなことを言っていましたね」
監督「そこで我が校は横浜高校対策として徹底的にカーブ打ちの練習をしました。そしてセーフティーバントおよび短距離走の練習も徹底的にしました」
記者「どうしてそういう練習を重点的にしたのですか?」
監督「横田君にカーブを投げさせるためです。私は選手たちに、横田君がカーブを投げても、決して打つな、球筋を良く見るだけで振らないか、打てると思っても決して打つな、空振りしろと厳しく言いましたからね」
「・・・・」
記者は何と言っていいかわからず黙っていた。
なので監督が続けて話した。
監督「もし我が校の打者が横田君のカーブを最初から打っていたらどうなったでしょうか?ヒットが出たことでしょう。そうすると横田君はカーブを投げるのは危険だと感じて、カーブは投げなくなり、160km/hのストレートのみで勝負してくるでしょう。そうされたら負けたでしょう。あのストレートは打てませんからね。我が校のエースの山野君は横田君ほどの強肩ではありません。しかし山野は多彩な変化球を投げられ、打たせてとる技術を持っています。なので、横浜高校との試合は投手戦となり、1点をとった方が勝ちだ、と思ったのです。案の定、9回裏まで0対0の1点をとった方が勝つ投手戦となりましたよね。横田君は自分のカーブは打たれないという自信があります。と言うより我々が自信をつけさせてやったのです。そして我が校の打者たちにはセーフティーバントと短距離走を徹底的に練習させていましたから、試合でも3回、セーフティーバントが成功しましたよね。だから横田君はストレートだけでは危険だ、カーブもまじえて投球しなければいけない、と思ったはずです。案の定、横田君は9回裏にカーブを投げてきましたよね。私の予想通りです。そして予想通り3番の末吉は横田君のカーブを打ってホームランにしましたよね。まぐれ当たりでも何でもないです。3番の末吉君が打てなくても次の4番の高山君か5番の佐々木君がホームランを打ったでしょう。私の考えた作戦、および私の提案した作戦を信じて私についてきてくれた部員たちの頭脳的野球の勝利なのです」
監督は堂々と言った。
記者「なーるほど。打てる球をわざと空振りさせるなんてことは前代未聞の作戦ですが。打てる球をわざと空振りさせて相手の投手に自信をつけさせ、その球を最後に投げさせるなんていう戦法はまさしく頭脳的野球ですね」
湘南台高校の選手たちが藤沢市に帰ると藤沢市では湘南台高校の勝利を町をあげて祝福した。
山野はスマートフォンで落ち込んでいるであろう横浜高校の横田に電話した。
「横田君。僕たちが優勝したけれど君は負けていないよ。僕たちの野球部の監督のおかげで勝てたようなものだよ」
と山野が横田を慰めた。
「ああ。してやられたよ。でもいい勉強になったよ。油断は大敵だな」
横田が言った。
「君のチームは負けたけど君は負けていないよ。君は間違いなくセ・パ両リーグからドラフト1位で指名されるよ。羨ましいな。僕は今回の甲子園大会での勝利投手だけど、勝ったのは監督のおかげだよ。僕を指名してくれる球団があるか心配だな。ははは」
そんな会話がなされた。
夏が終わり秋になった。
ドラフト会議が行われ、当然のごとく横田は全球団からドラフト1位で指名された。
しかし山野もかろうじて横浜DeNAベイスターズに指名された。
横田は読売ジャイアンツがドラフトのくじ引きで引き当てたので横田は読売ジャイアンツに入団した。一方、山野は横浜DeNAベイスターズに入団した。
二人はプロ野球選手として活躍している。
めでたし。めでたし。


2025年4月29日(火)擱筆

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コンタクト眼科医の恋(小説)

2025-04-09 19:20:27 | 小説
コンタクト眼科医の恋

という小説を書きました。

浅野浩二のHPその2にアップしましたのでよろしかったらご覧ください。

コンタクト眼科医の恋

山野哲也はコンタクト眼科医である。このコンタクト眼科医というのはコンタクトレンズの処方、コンタクトレンズを装用することによって起こるアレルギー性結膜炎、角膜の傷、その他、麦粒腫(ものもらい)、角膜異物の除去、などの簡単な治療をする医師である。
いわゆる眼科医とは日本眼科学会が認定する眼科専門医である。
眼科専門医は5年間の眼科医としての常勤の経験が必要で、その上日本眼科学会が行う眼科専門医の試験に通った医師のことである。眼科専門医ほどになれば白内障、緑内障の手術も出来、要するに普通の、というか本当の眼科医である。それにくらべ山野は眼科専門医の資格など持っていない。大学の眼科の医局にも所属したことがないので眼科の臨床経験は一日もない。しかしコンタクト眼科はコンタクトレンズの処方やアレルギー性結膜炎には抗アレルギー薬、角膜の傷にはヒアレインを処方すればいいくらいなので、一週間もやれば出来るようになるのである。山野は大学(奈良県立医科大学)を卒業した後、Uターンして千葉にある下総精神医療センターという所で精神科医として二年間研修した。別に精神科をやりたかったわけではない。山野は医学部に入ってしまった手前、医師になるしかなかったので楽だと言われている精神科を選んだのに過ぎない。実際、精神科は楽だった。2年間の研修が終わった後は地元の神奈川の精神病院に就職が決まった。
なので藤沢市に引っ越して賃貸アパートを借り週4日という条件で働いた。
しかし山野は医師という仕事に生きがいを感じられなかった。
山野は大学3年の時から小説を書きだして小説を書くことに自分の生きがいを感じるようになってしまって医師の仕事はつまらなくなってしまったのである。
それでも山野は医師いがいに出来る仕事もないので精神科を続けた。
出来ることなら精神保健指定医の資格は取っておきたかった。
しかし精神保健指定医の資格は大学の医局に所属していなければ取れないということがわかった。精神保健指定医の資格を持っていないと精神病院に就職も出来ないとわかった。
なので仕方なくコンタクト眼科医のアルバイトをして収入を得ていた。
中央コンタクトが中央コンタクトのコンタクトショップに隣接した所に眼科クリニックを出していて、山野は中央コンタクトの隣接眼科クリニックで仕事した。
精神病院に常勤で働いていた時より収入は、ずっと落ちたが、仕事は楽だし小説を書く時間も持てるので山野に不満はなかった。
眼科クリニックで働いていると時々、中央コンタクトの社員の人がやってきた。
要件は「今度、どこどこでコンタクト眼科クリニックを開きますので院長になってくれませんか」というものだった。しかし山野は断った。なぜかというと、中央コンタクトが求める条件として、週4日~5日は働いて欲しいと言ってくるので、金より小説創作に時間をかけたい山野にとっては、それが嫌だったのである。
そんなことで山野はコンタクト眼科のアルバイトをしながら小説を書いていた。
しかしある時。
「今度、岩手県の盛岡に新しくコンタクトショップと隣接眼科クリニックを開くので院長になってくれませんか」と中央コンタクトの人が言ってきたのである。
条件は土日の週二日で、交通費とホテル代は出すということだった。
山野は二つ返事でこれを引き受けた。
盛岡と場所は遠いが、週二日、という条件が山野の心を動かしたのである。
それで山野は土日に盛岡に行って働くようになった。
土曜日の朝5:00に起きて湘南台→戸塚→東京駅→東北新幹線で盛岡である。
土曜日も日曜日も10:00時~19:00時までである。
新しくオープンした所なのでなのか、あまり患者は来なかった。
クリニックは小さく、待合室に受け付けがあり、その奥が検査室で、その奥が院長室だった。
山野はここでの院長は長くやろうと思っていた。
というのは今までは、どこかのコンタクト眼科クリニックの院長の代診という形で働いていたので院長が休まなければ仕事の募集はなく不規則だったからだ。
しかし院長になれば盛岡と遠くはあるが、毎週二回、土日と仕事が決まっている。
なので中央コンタクトの方からクリニックを閉鎖するか別の院長に替えると言ってくるまで働こうと思っていた。別の院長に替えるというのは、中央コンタクトの方でも出来れば院長は眼科専門医であって欲しいと思っているからである。
盛岡駅と直結しているショッピングモールの中のフェザンの三階が眼科クリニックで二階に中央コンタクトのコンタクトショップがある。
コンタクトを欲しいと思う客はまず、三階の眼科クリニックで検査を受けて、処方箋を出して貰い、それを二階のコンタクトショップに持って行き処方されたコンタクトを買い、その他ケア用品を買う。
眼科クリニックには中央コンタクトのコンタクトショップの社員かアルバイトの人が一人来てくれて、事務と検査をやってくれる。山野はスリットランプで目とコンタクトのフィッティングを見てカルテに「近視性乱視」と書いて中央コンタクトの人に渡す。それだけである。
それで山野は4年間、院長を続けた。
クリニックの仕事を手伝ってくれるスタッフはほとんどが若い女の人でアルバイトが多く3~4ヵ月で変わることが多かった。
スタッフの人がきれいで優しそうな女の人になると山野はすぐに恋した。
しかし山野は彼女たちに親しげに声をかける勇気がなかった。
なので事務的な関係以上になることはなかった。
女が好きになる男のタイプはイケメンで格好いい男だが山野はイケメンではなかった。
なので山野はほとんどスタッフの女に好かれなかった。もつとも嫌われてもいなかったが。それはスタッフの山野に対する、素っ気ない態度でわかった。
しかし山野は可愛いスタッフが来るとすぐに好きになった。
「恋人」という関係でなくても「友達」という関係でも十分満足だったのだが、好かれていない女に親しげに話しかけても女に気がなければ、さびしいだけである。
なので山野は一人さびしく院長室に居るだけだった。
しかし。5年目に新しい女のスタッフが入って来た。
彼女を一目見た途端、山野は「うっ。きれいだ」と思った。
その子は鈴木さんという名前だった。アルバイトなのか正社員なのかはわからない。
鈴木さんも他のスタッフ同様、山野に対しては特別な感情は持っていなかった。
しかし彼女は他のスタッフとは性格がちょっと違っていた。
それは彼女が、あまり物事にこだわらない、おっとりした性格だったということである。
彼女になら「好きです」と告白して彼女が「ごめんなさい」と断っても、それほど気になることはないように思えた。し事実そうだろう。
なので山野は彼女に「好きです」と告白してみたいという気持ちが募っていった。
盛岡に行く週末が近づくと山野は鈴木さんと会えることにワクワクし出した。
「今度行ったら、好きですと告白しよう」と思っていたが、しかしやはり山野は臆病でシャイなので、なかなか声をかけることは出来なかった。
それでも鈴木さんの姿を見れるだけで山野は嬉しかった。
そんなことで鈴木さんが来てから二カ月ほど経った。
・・・・・・・・・・・・
ある時、午前中の診療が終わった時である。
鈴木さんは受け付けに座っていた。
山野は鈴木さんの所に行った。
「ちょっとスリットランプの事でわからないことがあるんですけれど教えてもらえないでしょうか?」
山野は勇気を出して言った。
彼女は「はい」と言って席を立って山野と一緒に院長室に入った。
彼女が院長室に入ると山野はすぐに内カギをかけた。
そして彼女の背後に回って両手でそっと彼女の腰をつかんだ。
そして「あ、あの。鈴木さん。好きです」と告白した。
彼女は動くことなく黙っていた。
なにせそれまでずっと無表情、無感情だった山野に腰をつかまれ「愛」を告白されたのだから。彼女はどう対処していいかわからないといった様子だった。
山野は腰に触れていた片手を彼女の腹に回した。
それでも彼女は嫌がる素振りを見せなかった。
「あ、あの。鈴木さん。ごめんなさい。いきなりこんな事をして。嫌だったら言って下さい」
山野が聞いた。
「い、いえ。別にかまいません」
彼女は答えた。
この答は山野を安心させた。
本当は彼女は嫌なのかもしれない。控えめな彼女の性格のため、そう言っているのかもしれない。しかし山野はもうあまり彼女の心を詮索するのをやめた。
山野は膝を曲げて腰を落とし膝立ちになった。
彼の目の前には鈴木さんのピンクの制服のヒップがある。
山野はそっとピンクのスカートの上から鈴木さんの尻に頬を当てた。
これはかなり勇気が要った。山野は鈴木さんのヒップにさかんに頬ずりした。
「あ、あの。鈴木さん。嫌ですか?」
山野が聞いた。
「い、いえ」
彼女は答えた。もしかすると彼女は嫌なのかもしれない。山野の方が院長という立ち場なので断れないでいるのかもしれない。しかし山野は我慢に我慢をし続けていたので自分の感情を抑えることが出来なかった。手でヒップを触るのはいやらしいが頬ずりをするのは女を愛している意思表示であるような気がした。実際の所は、山野は彼女に対し「性愛」と「恋愛」の両方を持っていた。十分にヒップに頬ずりをすると山野は立ち上がって彼女の正面に立った。
そして彼女の背中に手を回して彼女をそっと抱きしめた。
彼女は嫌がる素振りを見せなかった。
山野はそっと彼女の唇に自分の唇を触れさせた。
タッチだけのソフトキスである。
しかし彼女は嫌がる素振りを見せない。
なので山野はそっと彼女の口の中に自分の舌を入れた。
彼女は拒まなかった。
山野の舌が彼女の舌に触れた。
彼女は拒まなかった。というより触れ合った舌を引っ込めるとそれは相手を拒否している意思表示になるので、拒否する意思表示を示せない彼女にはそれが出来なかったのかもしれない。しばらく舌と舌が触れ合いじゃれあった。彼女の口腔からは性的に興奮した時に出る粘稠な唾液が出ていた。山野はそれを吸い込んだ。あながち彼女も嫌がっているようには思えなかった。
ピンポーン。
クリニックのチャイムが鳴った。
まだ1時にはなっていなかったが午後の患者が来たのだろう。
山野は唇を彼女の唇から離した。
「ごめんなさい。鈴木さん。いきなりこんなことをして」
山野は謝った。
「い、いえ。いいんです。実を言うと私も先生、好きだったので・・・でも先生は私のことをどう思っているのかわからなかったので親し気に話しかけなかったんです」
と彼女が少し顔を赤らめて言った。
患者が来たので彼女は急いで受け付けに行った。
山野も院長室の机の前の椅子に座った。
彼女が裸眼視力、RGテスト、眼圧、などをする声が聞こえてきた。
そして患者が希望するコンタクトを入れての矯正視力を計った。
「先生。2Wのソフトレンズご希望の患者さんです」
そう言って彼女はカルテを山野に渡した。
彼女は今あったことなどなかったかのように平静な態度だった。
山野はスリットランプの上に患者の顔を乗せてもらい、角膜にキズはないか、アレルギー性結膜炎はないかを調べ、コンタクトが目にフィットしているかを調べた。
どれも問題はない。なのでカルテに「異常なし」と書いて彼女に渡した。
その日の午後は結構、患者が多く、彼女と話す時間はなかった。
ようやく18:30時になり彼女はクリニックの前に「本日受け付け終了」のボードを出した。
19:00になりクリニックが終了した。
山野は荷物をまとめて院長室を出た。
早く行かないと、いつも乗っている上りの東北新幹線に間に合わなくなる。
彼女は今日来た患者の事務処理をやっていた。
「あ、あの。鈴木さん。さようなら」
山野は彼女の前をきまり悪そうに通ろうとした。
「さようなら。先生」
彼女はニコッと笑って挨拶した。
「今日はいきなり突飛な事をしてしまってごめんなさい。気にさわりましたか?」
山野は謝った。彼女はニコッと微笑んだ。
「いえ。いいんです。私、先生、好きですから」
この言葉に山野は喜んだ。
「あ、あの。鈴木さん」
「はい。何でしょうか?」
「ちょっと言いにくいんですが・・・・」
「はい。何でしょうか?」
「今、履いているパンティーを貰えないでしょうか?」
山野は勇気を出して言った。
「はい」
彼女は少し恥ずかしそうな顔でスカートの中に手を入れてパンティーを抜きとった。
そしてそれを山野に恥ずかしそうに差し出した。
普通の女の子だったら、そんな変態な要求をされたら、ためらうだろうが彼女はおっとりした性格なので山野の要求を聞いてくれた。
「うわー。嬉しいです。ありがとう」
山野は照れくさそうにそれを受けとった。
・・・・・・・・・・・・
普通の女だったら、そんな事を言われたら恥ずかしくてためらうだろうが、彼女はおっとりした性格なので別に気にしていなさそうだった。
山野は彼女に頼んで立ってもらってスマートフォンで彼女の写真をパシャパシャと数枚、撮らせてもらった。彼女も写真を撮られてまんざらでもない様子だった。
「さようなら」
「さようなら」
こうして山野はクリニックを出た。
最終の上りの東北新幹線こまち号には間に合った。
山野は嬉しさで有頂天だった。
彼女が来てからずっと恋焦がれていたが想いを告白することが出来ず煩悶していた想いが叶ったのである。
山野の性格はそうなのである。
山野はイケメンではないが、そんなにブサイクでもなく彼の評価は「普通」だった。
しかし山野は好きな女に告白するということをしたことが人生で一度もなかった。
山野は極度に神経質で「好きです」と告白して相手に断られることを極度におそれていた。
そして奥手だった。医学部の4年の時に初めて風俗店(SМクラブ)に勇気を出して行ってみた。風俗店といっても働いているのはアルバイトの女の子である。
山野はそこで、きれいな女の子とペッティングした。別にSМクラブである必要もないのだが、SМクラブ以外の他の風俗店がどういうものかわからなかったからである。
きれいな女の子でも山野に好感を持ってくれた。
SМクラブだからといって縛ったりすることはなかった。
縛るのは女の子を拘束して怖がらせるのが目的だが、SМクラブはSコースなら90分3万円、Мコースなら90分2万円が相場だった。90分で相手を解放できると双方わかっている以上、わざわざ縛るのは時間がもったいない。山野は女をペッティングした。Sコースで入っても山野は女の子に顔面騎乗させたりした。
風俗店では店外デートは禁止である。しかし店の中の空間だけというのはさびしかった。
それに風俗店の女の子はエッチが好きで仕事とわりきっている子が多い。
所詮、部屋の中の金銭関係での付き合いである。
なので山野は一度、金銭関係でない異性との付き合いをしてみたかったのである。
その夢がかなったのである。
山野は家に着くと布団の中に入り、鈴木さんの写真を見ながら、鈴木さんがくれたパンティーを鼻に当てて、その匂いを嗅いだ。
「ああ。鈴木さん。好きだ。好きだ」
と言いながら。
ああ、ここに鈴木さんの女の部分が当たっていたんだと思うと山野は激しく興奮した。
そして鈴木さんの写真を見ながらオナニーした。
そしてその晩は寝た。
・・・・・・・・・・
翌日の月曜日になった。
山野の唯一の生きがいは小説を書くことだった。なので図書館に行ってパソコン席でパソコンを開いた。書きかけの小説の続きを書こうかと思ったが、やっと夢がかなって鈴木さんと親しくなれたので鈴木さんとのことを私小説ふうに書こうと思って書き出した。
けっこうスラスラと楽に書けた。
山野は女に飢えていた。いつも頭の中は女のことだった。
しかし「現実の女との恋愛」と「小説創作」を比べると山野にとっては「小説創作」の方が上だった。好きな女と付き合えるのは嬉しい。しかし「現実の女との恋愛」は精神的な心地よい快楽ではあっても、それはやがて消えてしまうもの。しかし芸術はその出来が良ければ形として残るものである。それは世間で認められないかもしれない。しかし山野は小説を書いていればそれで満足だった。山野は「現実の女との恋愛」は虚しいと思っているがそれは風俗の女の子との場合である。今回の鈴木さんは金銭関係でも90分の部屋の中だけの関係でもない。生まれて初めての「生きた恋愛」である。彼女のおっとりした性格ならもしかすると長続きするかもしれないし、一生の伴侶となるかもしれない。そう思うと彼の筆は進んだ。
鈴木さんはおっとりした性格なので前回、彼女に携帯電話の番号とメールアドレスを聞けば教えてくれただろう。しかし山野はあえて聞かなかった。山野はおくゆかしい所があって携帯電話やメールのやりとりが出来てもそれをしたがらない所があった。
それは好きな人が出来るとすぐに電話やメールをするのは趣きがないと思っていたからである。文明の利器を利用してすぐに相手となれなれしくなってしまうのは軽率で、軽々しく山野は嫌だった。好きな人とは会いたくても会えない時間があって、やっと会える方が恋愛のボルテージが高くなると思っていたのである。
実際、日を経るごとに山野の鈴木さんに対する想いは激しく募っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・
そしてとうとう待ちに待った土曜日になった。
山野は金曜日に盛岡に行って盛岡駅前のホテルに泊まることもあったが、土曜日の朝はやくに家を出て、そのまま土日の診療をすることもあった。
それはその時の状況によっていた。
山野は朝5:00時に起き、始発の5:20分の市営地下鉄ブルーラインに乗って東京へ出て、東北新幹線に乗って盛岡駅に着いた。
クリニックは10:00時から始まるが、クリニックには9:50分に着いた。
クリニックのガラスの戸を開けると受け付けに鈴木さんが座っていた。
「こんにちは」
「こんにちは」
何もなかったような挨拶が交わされた。
山野はすぐに院長室に入った。
10:00時になると患者(というか客)がちらほらと入って来た。
鈴木さんは受け付けをして、患者の求めるコンタクトレンズを聞き、裸眼視力、テストレンズによる矯正視力、RGテスト、眼圧、などを書き込んだカルテを山野に渡した。
テキパキと極めて事務的に仕事をこなした。
山野も客に顔をスリットランプの上に乗せてもらい、角膜、結膜、コンタクトレンズのフィッティング、をチェックした。
ようやく12:00時になった。
彼女は「午前の診療は終了しました。午後の診療は1:00時からです」と書かれたボードをクリニックの前に出した。そして受け付けにもどった。
山野はドキドキと高鳴る胸の鼓動を抑えながら受け付けに座っている鈴木さんの所に行った。
「鈴木さん。ちょっと来てくれませんか?」
と聞くと彼女はニコッと微笑んで黙って院長室に入ってくれた。
山野は彼女の背後に回り、前回と同じように彼女の腰を触り、そしてすぐに手を伸ばして彼女の腹を触った。背後から彼女を抱きしめる形になった。
山野が彼女によせる想いは「恋愛」も強かったが「性愛」も強かった。
あまり彼女に近づきすぎると勃起したおちんちんが彼女の尻に触れてしまう。
なので山野は腰を引いて、おちんちんが彼女の尻に触れないようにした。
山野は腰を落とし前回と同じようにスカートの上から鈴木さんのお尻に頬を押しつけた。
「ああ。鈴木さん。好きです」
と言いながら山野は彼女の柔らかい尻の感触を味わっていた。
彼女は「ふふふ」と笑って山野を軽くいなした。
山野は彼女の二本の太腿をタックルのようにからめて抱きしめた。
そして太腿に少し頬ずりしてから、彼女のピンクの制服の短めのスカートの中に顔を入れた。
そして彼女のパンティーの尻に顔を押し当てた。
こうやって順序を踏んでいくと女は警戒しなくなるものである。
尻を手で触るのは痴漢のようで嫌らしいが、頬を当てられるというのは男が女の母性を求めていると女は思うのである。実際、山野は彼女に母性愛を求めていた。
彼女の尻の感触を十分、味わうと山野は前回と同じように、立ち上がって彼女の前に立った。
そして前回と同じように、彼女の背中に手を回して彼女をそっと抱きしめた。
彼女は嫌がる素振りを見せない。
山野はそっと彼女の唇に自分の唇を触れさせた。
タッチだけのソフトキスである。
しかし彼女は嫌がる素振りを見せない。
なので山野は相手の反応を確かめながら、そっと彼女の口の中に自分の舌を入れた。
彼女は拒まなかった。
山野の舌が彼女の舌に触れた。
彼女は拒まなかった。というより触れ合った舌を引っ込めるとそれは相手を拒否している意思表示になるので、拒否する意思表示を示せない彼女にはそれが出来なかったのかもしれない。しばらく舌と舌が触れ合いじゃれあった。彼女の口腔からも性的に興奮した時に出る粘稠な唾液が出ていた。山野はそれを吸い込んだ。あながち彼女も嫌がっているようには思えなかった。山野はもっと彼女の体を愛撫したかったのだが、キスだけでやめておいた。
山野は彼女に対して「性愛」をしたい欲求があったが、彼女は山野の「性愛」を受けたいのかどうかはわからなかったからである。彼女の心はわからない。彼女は山野を嫌っていないから山野がもっと彼女をペッティングしても彼女は嫌がらなかったかもしれない。彼女はそういう、おっとりした子なのである。男の性欲は女に対して積極的だが女の性欲は能動的である。男はいつも発情しているが女はそうではない。女は全身が性感帯だから男の愛撫を受けているうちに男以上に性欲が亢進するものである。そういう男の手技によって女の性欲を開花させることも男には出来るのだが、山野はそれが嫌だった。そういう小賢しい戦術によって彼女の性欲を開花させてしまうことが嫌だったのである。山野は性格の良い人間につけこむことが嫌いだったのである。
しばしのディープキスの後、彼女は舌を引っ込めて唇を離した。
「先生」
「はい。何でしょうか?」
「あ、あの。先生にお弁当つくってきました」
「あっ。それは有難う」
「今持って来ます」
そう言って彼女は院長室を出た。
そしてハンカチで包んだアルミの弁当箱を持ってもどってきて山野に渡した。
「はい。先生」
「ああ。どうも有難う」
山野は弁当を受けとった。
これは山野のペッティングを回避するためではなく彼女の心づくしである。
彼女はそういう心づくしのある優しい子なのである。
弁当はのり弁にハンバーグと卵焼きだった。
女の子にしてみれば、この程度は簡単なことで日常的なことなのだろうが料理など何も出来ない山野にとってはとても嬉しいことだった。
山野は「ああ。この弁当は鈴木さんが作ったんだ」ということを噛みしめながら食べた。
とても美味しかった。彼女も受け付けで同じ内容の弁当を食べていた。
こういう時は、せっかく彼女が作ってくれた弁当なので二人ならんで食べるのが普通の男女だろうが、山野はシャイで女の子と二人になっても何を話したらいいのかわからないので院長室で一人で食べた。
食べ終わると山野は弁当箱をもって受け付けにいる鈴木さんの所に行き、
「有難うございました。美味しかったでした」
と言って弁当箱を渡した。
「そう言ってもらえると嬉しいです」
と彼女はニコッと微笑んだ。
そうこうしているうちに1:00になり午後の診療が始まった。
患者はそれほど来なかったが、クリニックは予約制ではないので、ちらほら来た。
いつ患者が来るかはわからないので、患者がいなくても山野は院長室に居て彼女は受け付けに居た。
ようやく午後7:00になって診療が終わった。
・・・・・・・・・・・
「鈴木さん」
「はい」
「よかったら、焼き肉店に行きませんか?」
「はい。行きます」
彼女は喜んで答えた。
山野はいつも土曜日の診療が終わると、駅近くの東横インホテルに泊まって翌日、診療してそれが終わると東北新幹線で家に返るのだが、鈴木さんと親しくなったので、焼き肉店に誘ったのである。
山野と鈴木さんは焼き肉店で焼き肉を食べながら色々と話した。
「鈴木さん。あなたはどういう経歴でここで働くようになったのですか。というよりあなたは正社員なのですか、アルバイトなのですか?」
「私はアルバイトです」
「そうだったんですか。僕は中央コンタクトの人が来ても事務的なことを話すだけで、その人が正社員なのかアルバイトなのかも聞かないんです。鈴木さんはどっちかなと思っていたんですが、たぶんアルバイトじゃないかと思っていたんです」
「私も正社員で中央コンタクトに応募したんですが、アルバイトということで採用して貰えました」
「そうだったんですか。ところで鈴木さんは高校は女子高ですか。それとも男女共学ですか?」
「男女共学です」
「なら、彼氏とかナンパとかされなかったんですか?」
「それは数回あります。でも相手の男の人にあまり魅力を感じなかったので付き合いませんでした」
「そうですか」
「じゃあ今度は先生の経歴を教えて下さい」
彼女が聞いてきた。
「そうですね。僕は医者になりたいと思って医学部に入ったんではありません。医者は収入がいいからという理由でもありません。僕は子供の頃から喘息で病弱で高校生の時から過敏性腸症候群が発症してしまって、自分の病気は自分で治そうと思って医学部に入ったんです」
「大学はどこですか?」
「奈良県立医科大学です。本当は家に近い横浜市立大学医学部に入りたくて受験もしたんですが落ちてしまって・・・・」
「そうだったんですか。それでどうしてコンタクト眼科クリニックの院長になったんですか?」
「僕は大学を卒業した後、Uターンして千葉県の下総精神医療センターという所で2年間、研修しました。それでその後、藤沢の130床の精神病院に就職したんですが、僕は大学の時、小説を書く喜びを知ってしまって、医者の仕事はむなしいように思うようになってしまったんです。それでそこの病院も辞めることになって。でも精神科いがいの科目はやったことがないし、楽なコンタクト眼科のアルバイトをしていたんです。それで今度、盛岡に眼科クリニックを開くから院長になって週2日、土曜と日曜日に働いて欲しいと誘われてやることに決めたんです」
「そうだっんですか。先生は地元の神奈川県のどこかの病院に勤めていて、ここでの仕事はアルバイトなのかなーと思っていました。もしかするともう結婚もしていて、ローンで家を買ったため、その支払いのためのアルバイトなのかなーと思っていました」
「いやー。僕にはそんな体力はないです。それに僕は結婚したいとも思っていません」
「どうしてですか?」
「僕は結婚とは女性を幸せにしてあげることだと思っているんです。でも僕は病弱ですし、その自信がないんです」
「先生って理想が高いんですね」
と言って彼女は微笑んだ。
「でもあなたのような人となら結婚できるかもしれないな」
山野は独り言のように笑って言った。
「ええ。私も先生のような人となら結婚したいと思っているんです」
本心なのか冗談なのか彼女もそんな事を言った。
「鈴木さんは何だか淡泊な性格ですね。それが魅力なんですが・・・」
「ええ。私、よく友達に、あなた、おっとりしているわね、と言われます」
「普通、女ってもっと、じっとしていられなくて、お喋りで一瞬たりとも黙っていられない人が多いですよ」
「ええ。私もそう思います」
そう言って彼女は微笑した。
「ところで先生は小説を書くんですか?」
「ええ。山野哲也というペンネームでホームページに書いた小説を出しています」
「そうなんですか。すごいですね。あとで読ませてもらいます」
そう言って彼女はスマートフォンを取り出すと「山野哲也」で検索した。
「あっ。本当ですね。先生って本も一冊、出版しているんですね」
「え、ええ。でも自費出版です」
「自費出版でも凄いと思います。先生は作家になりたいんですか?」
「そりゃーなれるものならなりたいですけど・・・プロ作家になるのは大変ですからね。僕にはその体力もないし、そもそも僕の気質からいってプロ作家にはなれないように思うんです」
「そうですか」
「あなたと出会えたことも一つの大きな物語ですから小説に書こうと思っているんです」
「私のことを小説に書くんですか。何だか恥ずかしいです」
「大丈夫です。あなたは素晴らしい人ですから、素晴らしい小説になると思います」
山野がそう言うと彼女はニコッと笑った。
焼き肉を食べながら、そんな事を話して山野は彼女と別れた。
そして山野はいつも泊っている駅前の東横インホテルに泊まった。
山野はストイックな性格だったので、彼女をホテルに呼ぼうと思えば呼ぶことも出来たが、それはしなかったし、したくなかった。
なぜなら山野は彼女と行きつく所までは行きたくなく、彼女を一定の距離をもった憧れの女性にとどめておきたかったからである。それは鈴木さんだけではなく、女全般に対する山野の態度だった。
・・・・・・・・・・
翌日の9:50分に山野はクリニックに行った。
鈴木さんはもう来ていて受け付けに座っていた。
「おはよう」
「おはようございます。先生。昨日の夜、先生の小説のうち、短いのを読みました。先生って恋愛小説を書くんですね。上手いと思いました」
「いやあ。恥ずかしい。僕はエッチな小説もかなり書いていますからね。あまりそういうのは読まないで下さいね」
そんな事を言って山野は院長室に入った。
10:00時になり午前中の診療が始まった。
いつものように仕事中は山野は院長室に居て彼女は受け付けにいて、患者が来るとそれぞれの仕事をした。
12:00時になり午前中の診療が終わった。
山野は受け付けに居る鈴木さんの所に行った。
もう鈴木さんも山野が何を要求しているかわかっていて、黙って微笑して立ち上がり山野と一緒に院長室に入った。
「ああ。好きだ。鈴木さん」
院長室に入るや否や山野は鈴木さんを背後から抱きしめた。
そして腰を落として膝立ちになった。
「ああ。好きだ。鈴木さん」と言いながら山野は鈴木さんのピンクの制服のスカートの上からお尻に頬を押し当てた。
何て大きくて柔らかいんだろうと山野は恍惚としていた。
彼女は、ふふふ、と笑った。
「鈴木さん。ちょっとお願いがあるんですが・・・」
そう言って山野は立ち上がった。
「はい。何でしょうか?」
「これを着て貰えないでしょうか?」
山野はワンピースの競泳水着をカバンの中から取り出した。
「これ。ここのショッピングモールの中の水着売り場で買ったんです。鈴木さんの体ならМサイズで合うと思います」
「はい。わかりました」
と彼女は理由も聞かず山野の要求を受けてくれた。
山野はクルリと後ろを向いた。
女性の着替えを見るのは失礼でおもむきがないからだ。
カサコソと服を着替える衣擦れの音がした。
「はい。先生。着ましたよ」
すぐに彼女が言った。
クルリと山野が振り返ると、ワンピースの競泳水着を着た鈴木さんが立っていた。
それを見た瞬間、山野は、ああ、と感嘆した。
ワンピースの水着姿の鈴木さんがあまりにも美しかったからである。
水着はハイレグではなく、お尻もフルバックの普通のワンピース水着だが、山野は一度、鈴木さんのワンピース水着姿を見てみたいと思っていたのである。
ハイレグではなくフルバックとはいえ、女のヴィーナスの丘はモッコリと盛り上がり、フルバックは彼女の大きな尻を弾力をもって形よく収めて整えていたからである。
体のボリュームのある女は着やせするものである。
ワンピース水着の縁からニュッと弾け出ている太腿、華奢な腕、繊細な手、理想的なプロポーションだった。
山野は急いでスマートフォンを取り出して、パシャパシャと水着姿の彼女を撮った。
そして。
「ああ。好きだ。鈴木さん」
と言って山野は背後から膝立ちになって、水着の縁からニュッと出た太腿を抱きしめ、お尻に頬を当てた。
「ふふふ」
と彼女は山野をいなすように笑った。
山野は健康のため屋内プールでよく泳ぐのだが、たまにプールの女の監視員や水泳好きでやって来る若い女のワンピース水着姿を見ると激しく欲情していたのである。
「ああ。鈴木さんの競泳水着姿を見たいとずっと思っていたんです」
山野は鈴木さんのお尻を水着の上からチュッ、チュッとキスした。
そして前に回って、彼女のヴィーナスの丘の部分にもキスをした。
「あん。恥ずかしいです」
と言いながらも水着ということもあってか彼女は拒まなかった。
山野はいつまでもこうしていたいと思った。
が、鈴木さんは、
「先生。今日もお弁当、作って持って来ました」
と言ったので彼女から離れた。
山野としてはいつまでも彼女に触れていたいと思っていたのだが、彼女の好意を拒むわけにもいかない。
山野はクルリと彼女に背を向けた。
カサコソと服を着替える衣擦れの音がした。
彼女は水着を脱いでピンクの制服を着ていた。
そして受け付けに行って、弁当を持って院長室にやって来た。
「はい。先生。お弁当です」
そう言って彼女は弁当を差し出した。
「ありがとう」
山野は彼女から弁当箱を受けとった。
今回は鯵のフライにほうれん草のおひたしだった。
やがて1:00時になり午後の診療が始まった。
そして19:00に診療が終わった。
「鈴木さん。今日はありがとう」
「いえ」
彼女はニコッと笑って言った。
「鈴木さん。出来たらあなたと大磯ロングビーチに行きたいです」
山野は思い切って自分の思いを告白した。
「そのためにこの水着を買ってくれたのですか?」
「いや。大磯ロングビーチに来る女の客はみんなセクシーなビキニですよ。ワンピースの水着なんか着ていると返って目立っちゃいますよ」
山野は夏、最低一度は大磯ロングビーチと片瀬西浜の海水浴場に行っていた。
もちろん泳ぐためではない。
ビキニ姿の女を見るためである。
片瀬西浜に来る女は肉体に自信のある女ばかりだが、大磯ロングビーチに来る客は遊びに来るのが目的なのである。
山野には彼女がいないので、ビキニ姿の彼女と手をつないで、ビーチサイドや海水浴場を歩いてみたい、というのが山野の夢だったのである。
「僕はあなたのようなきれいな人とビーチサイドや海水浴場を手をつないで歩くのが夢なんです。そんなこと普通の男なら簡単に出来ることなんでしょうが、僕は垢ぬけていないので、しかもネクラなので普通のことが出来ないんです」
山野は勇気を出して言った。
「じゃあ、私、先生と大磯ロングビーチに行きます。いつがいいですか?」
「ええっ。本当ですか。それは嬉しいな。大磯ロングビーチは7月は土日に行きたいですね。土日祝日は人がたくさん来ますから。出来るだけ多くの人に僕とあなたが一緒に居るのを見られたいですから」
幸い明日の7月15日は「海の日」の祝日だった。
「先生。明日は祝日ですね。じゃあ、さっそく明日、行くというのはどうでしょうか?」
「えっ。いいんですか。鈴木さんの都合は大丈夫ですか?」
「ええ。大丈夫です。私、明日は休みですし・・・」
「それは嬉しいです。じゃあ、今日、僕の家に来てくれませんか。それで明日、車で大磯ロングビーチに行くというのは」
「はい。そうします」
こうして山野と彼女は盛岡駅に行って、上りの東北新幹線に乗った。
そして二人で並んで座った。
東北新幹線は時速300km/hで走り出した。
山野は口下手なので女の子と何を話していいのかわからなかった。
なので黙っていた。
彼女もおっとりした性格で沈黙が苦痛ではない女の子だった。
その性格も山野が彼女を好きになった理由である。
鈴木さんはスマートフォンを出して山野の小説を読んでいた。
東北新幹線は仙台、大宮、上野、東京、と止まる駅が少なく2時間で東京駅に着いた。
そして東海道線に乗って戸塚で降り、横浜市営地下鉄ブルーラインで湘南台駅に着いた。
山野は湘南第一ホテルに空きがあるか、スマートフォンで聞いた。
空いていて十分、空きがあるとのことだった。
「じゃあ、鈴木さん。今日は湘南第一ホテルに泊まって下さい。明日の朝、8:00時に車で迎えに来ます」
「はい。わかりました」
そう言って二人は別れた。
山野としては自分のアパートに泊めてもよかったのだが、やはり彼女とは一定の距離をとった関係でいたかったのである。
その夜、山野は翌日、鈴木さんと大磯ロングビーチに行けると思うと至福の思いでなかなか寝つけなかった。
翌日になった。
山野は50万円で買ったホンダのライフに乗って、8:00時に湘南第一ホテルに行った。
鈴木さんはホテルのロビーにいた。
彼女は山野を見つけると、急いでフロントに行き、チェックアウトした。
「あっ。先生。おはようございます」
「おはよう。鈴木さん」
そう言って山野は助手席を開けた。
彼女が助手席に乗り込んだ。
「昨日は眠れましたか?」
山野が聞いた。
「ええ」
「それはよかった。じゃあ、行きますよ」
そう言って山野はアクセルペダルを踏んだ。
「鈴木さん。大磯ロングビーチに行ったことはありますか?」
「いえ。ないです。名前と場所は知っていますが・・・」
「そうですか。昨夜は湘南台のホテルではなく大磯ロングビーチのホテルに泊まってもらってもよかったですね。あそこのホテルからは相模湾の海が目前に見えますから・・・でもこうして、あなたとドライブしていることが僕には凄く嬉しいんです」
山野が助手席に女の子を乗せてドライブするのはこれが初めてだった。
なので山野は有頂天だった。
「先生。私、ビキニ持っていないんですが・・・」
「ははは。大丈夫ですよ。大磯ロングビーチで色々な種類のを売っていますから」
「そうですか」
そんなことを話しながら、山野は車を飛ばした。
やがて大磯ロングビーチに着いた。
もう多くの人がチケット売り場の前に並んでいた。
山野も彼女と一緒に列の後ろに並んだ。
8:30分になり、チケット売り場が開いた。
客がチケットを買ってゾロゾロと場内に入り始めた。
すぐに山野と鈴木さんの番になった。
「チケット大人二人一日券」
山野は最高の快感でそう言った。
山野は夏、最低一回は大磯ロングビーチに来ることにしているのだが、チケット売り場で「大人一人」と言う時が、恥ずかしくさびしかったのである。
他人はそうは思っていないかもしれないが、あの人ひとりで彼女いないのねー、クライわよねー、と言われているような気がしていたのである。
しかし今日は違う。鈴木さんという可愛い恋人がいるのである。
山野はチケット二人分、買うと、その一つを鈴木さんに渡した。
「有難うございます。先生」
「鈴木さん。お礼なんか言わないで下さい。お礼を言うのは僕の方です」
二人は一緒に場内に入った。
入ったすぐの所が、女のビキニ、や、男のトランクス、浮き輪、ビーチサンダル、ビニールシートなど水泳用品を売っている場所だった。山野は鈴木さんに一万円、渡した。
「さあ。鈴木さん。好きなビキニを買って下さい」
「たくさんあるんですね」
彼女はビキニをキョロキョロ見ていたが、なかなか決められなかった。
あまりカットが大きく布面積の小さいのからは恥ずかしそうに目をそらした。
「これにします」
彼女はやっとシンプルなピンク色のビキニに決めた。
「ええ。それがいいですね」
山野もその方がいいと思った。
セックスアピールを意識していない女の方が魅力的である。
シンプルなビキニを恥ずかしそうに着る方が、かえってセクシーなのである。
更衣室の前で二人は別れた。
山野はすぐにトランクスを履いてロビーに出た。
そして鈴木さんが出てくるのを待った。
ほどなくピンクのビキニを着た鈴木さんが出てきた。
彼女もすぐに山野を見つけた。
山野は思わず、うっ、と息をのんだ。
「うわっ。鈴木さん。きれいだ。セクシーだ」
山野が言った。
「なんだか恥ずかしいです。私、ビキニ着るの初めてなので。なんだか下着を着て人前に出ているような感じです」
彼女は顔を赤らめて言った。
「大丈夫ですよ。ここに来る女の人はみんなビキニですから。夏は女の人は解放的な気持ちになりますから。女の人はみんなもっとセクシーなビキニですよ」
二人は並んでロビーからプールサイドに出た。
空は雲一つない快晴で真夏の太陽がサンサンと無限の青空の中で光と熱を放っていた。
もう入場者はかなり居てビーチサイドを歩いていた。
山野が言った通り女はセクシーな露出度の高いビキニを着ている人が多い。
鈴木さんは山野の右に居る。
山野はそっと右手を鈴木さんの方に近づけた。
それは鈴木さんの左手の甲に触れた。
鈴木さんは山野の右手をギュッと握った。
山野も鈴木さんの左手を握った。
「ああ。幸せです。鈴木さん。あなたのようなきいな人とこうして手をつないでプールサイドを歩くのが僕の夢だったんです」
山野にとってはそれが長年の夢だったのである。
夢がかなえられた時の幸福感はたとえようもなかった。
普通の男にとっては彼女を作り手をつないでプールサイドを歩く、なんてことは簡単なことである。誰でも出来る。しかし山野はそういう凡庸なことが出来なかったのである。
山野は自分は今、憧れのビキニ姿の鈴木さんと手をつないでプールサイドを歩いているんだ、という事実を牛が食べ物を反芻するように何度も噛みしめた。
「ふふふ。先生。何だか私たち恋人のようですね」
鈴木さんが笑って言った。
山野はこうやってビキニ姿の鈴木さんとプールサイドを歩くことが夢で目的だったので、「ビニールシートを何処に敷きましょうか」と言いう口実で、彼女と手をつないで大磯ロングビーチの中を歩き回った。
「ここにしましょう」
「ええ」
ようやくダイビングプールの前の芝生にビニールシートを敷いた。
「鈴木さん。あなたの美しいビキニ姿を写真に撮らせて下さい」
「はい」
彼女は立ち上がった。
山野は鈴木さんに「はい。髪を搔き上げて」とか「腰に手を当てて」とか「顔を上に向けて」とか言って色々なセクシーポーズをとってもらって色々な角度からスマートフォンで撮影した。何だが女優を撮影するカメラマンになったような気分だった。
鈴木さんもまんざらでもなさそうだった。
20枚くらい彼女のビキニ姿を撮影した。
「はい。もういいです」
と言うと鈴木さんも、
「先生。どんなふうに撮れたか私にもちょっと見せて下さい」
と急いで山野の所に来た。
「わあ。恥ずかしいわ」
と言いながらも彼女も自分のビキニ姿に満足しているようだった。
その後はビーチで日光浴をした。
「じゃあ日光浴をしませんか」
「はい」
山野と鈴木さんは並んで仰向けに寝た。
こうやって女性と真夏のプールサイドで日光浴をするのが山野の夢だったのである。
彼女も真夏の太陽を浴びる日光浴を楽しんでいる様だった。
「鈴木さん。紫外線は体によくないですからコパトーンを塗った方がいいですよ」
「え、ええ」
「僕が塗ってもいいでしょうか?」
「え、ええ。お願いします」
山野は内心、やったーと思った。
山野はコパトーンを仰向けの鈴木さんの体に隈なく塗っていった。
ビキニで覆われた所いがいは全て。
彼女は山野に身をまかせているかのようだった。
鈴木さんは目をつぶって脱力して、まるで柔らかい生きたお人形さんのようだった。
仰向けの状態の彼女の体にコパトーンを塗り終わると山野は鈴木さんに、
「じゃあ今度はうつ伏せになって下さい」
と言った。
「はい」
山野に身をまかせるのが気持ちいいのか、鈴木さんはクルリと体を反転してうつ伏せになった。山野は鈴木さんの背面にもコパトーンを塗った。
ビキニの縁から出ている所は全て。
ただ単に塗るだけじゃなくて、たっぷりした肉を時間をかけて揉みほぐすように。
彼女も気持ち良さそうに目をつぶっていた。
しかし山野には性的興奮は起こっていなかった。
エロティシズムは精神と肉体が結合して起こる。
なので精神の入っていない肉体は単なる柔らかい物質に過ぎない。
「先生。気持ちいいです。何だか先生にマッサージしてもらっているようで」
彼女も夏の女がみなそうなるように夏の解放的な気分になっているようだった。
そのあと、二人でビーチサイドにある売店で、焼きそばを買って食べ、二人乗りのウォータースライダーで滑走したりして夏の一日を満喫した。
時計を見ると午後4時になっていた。
「鈴木さん。今日は楽しかったです。もう帰りましょうか?」
「ええ」
大磯ロングビーチは午後6時までやっている。
しかし鈴木さんにも明日からきっと何か予定があるだろうと山野は気をつかったのである。
山野と彼女は手をつないでロビーに向かった。
そしてお互い更衣室で着替えて出てきた。
「先生。今日は楽しかったです。夏を満喫しました」
「僕も楽しかったです」
二人は車に乗った。
山野は大磯駅まで彼女を送った。
「先生。今日は楽しかったです。有難うございました」
「鈴木さん。さようなら」
こうして二人は別れた。
山野はその夜、大磯ロングビーチで撮った鈴木さんのビキニ写真を眺めながら寝た。
・・・・・・・・・・・・
一週間経って土曜日になった。
山野は朝5:00時に起きて東北新幹線に乗り盛岡に向かった。
盛岡には9:50分に着いた。
鈴木さんはいなかった。
代わりに別の女の子が来ていた。
こういうアルバイトの交代はよくあることだった。
「おはようございます」
「おはようございます」
「鈴木さんはどうしたんですか?」
「盛岡仲通り店のスタッフが辞めてしまったもので鈴木さんはそっちに行くことになりました。私は千田祥子と言います」
千田祥子さんも可愛かったが彼女は鈴木さんのような、しとやかさ、がなかった。
山野は鈴木さんが来なくなったことで彼女との付き合いはこれで終わりにしようと思った。
鈴木さんは20代で若い。彼女には彼女にふさわしい若い素敵な男と付き合って欲しい。短い期間ながらも鈴木さんという素敵な人と付き合えたことだけで山野にはもう十分だった。彼女の山野に対する想いはわからないが、彼女の人の良さにつけ込んではいけないと山野は思った。
その日、中央コンタクトのエリアマネージャーがやって来た。
クリニックの院長募集に眼科専門医の先生が応募してくれたので山野には三ヵ月後に辞めて欲しいとのことだった。そして経営も医療法人としてやると言った。
山野もそのことは覚悟していた。
眼科専門医は日本眼科学会が認める専門医資格だが、5年間の眼科医としての常勤の経験と日本眼科学会が行う眼科の学科試験に通った医者である。白内障や緑内障の手術も出来る一人前の眼科医である。
山野は眼科専門医の資格など持っていないので、眼科専門医でクリニックの院長をやる人が見つかったら、辞めさせられるだろうことは覚悟していた。もっともここのクリニックはスリットランプと眼底鏡くらいしかなく、手術器具もなく、眼科専門医がやっても山野がやっても同じようなものだが、眼科専門医の方が何かと有利なのは間違いない。
中央コンタクトの方からか、山野の方からか、辞めたいと言ったら院長交代しなくてはならない、という契約書を交わしているので仕方がない。
しかしそのため仕事がなくなってしまった。
なので山野はネットにある医師の斡旋業者の募集で何か自分に出来る仕事を探した。
それで人工透析の仕事の募集があったので、それに応募してみた。
仕事の条件に「経験不問」と書いてあったし、以前から人工透析の仕事は楽と聞いていたので、どんなものかやってみようと思っていたのである。
それで人工透析の仕事をやってみた。
これが結構、簡単で楽だった。
外来の血液透析は一つのクリニックに患者が40人くらいで、「具合はどうですか?」と聞いて、カルテ記載し、透析ナースが求める臨時処方にサインするのと、緊急時に紹介状を買いて救急病院に送ることくらいだった。
これなら最初からコンタクト眼科ではなく、人工透析をやっていれば良かったと山野は後悔した。人工透析というからには、腎臓内科や人工透析の知識が必要で難しそうという先入観があったのだ。人工透析が楽だとわかって、山野も人工透析の本を5~6冊買って勉強した。
理屈がわかると面白いものである。
なので山野は今、人工透析をやっている。
しかし、盛岡でコンタクト眼科をやっていた時に知り合った鈴木さんとの思い出は山野の人生にとって貴重なものとなっている。


2025年4月9日(火)擱筆



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OLとおじさんの恋(小説)

2025-04-07 18:41:25 | 小説
OLとおじさんの恋

という小説を書きました。

浅野浩二のHPその2
にアップしましたのでよろしかったらご覧ください。


OLとおじさんの恋

電車の中で居眠りをしている人は、夢とうつつの間の状態であり、眉を八の字にして、苦しそうな顔して、コックリ、コックリしてる。女の人だった。OLらしいが、英会話のテキストブックを持っている。きっと、海外旅行へ行くためだろう。となりには、50才くらいの、会社の中堅、(か、重役かは知らない)の、おじさんが座っている。とてもやさしそうな感じ。また、おじさんは、この不安定な状態をほほえましく思っている様子。彼女は、きっと今年、短大を卒業して就職したばかりなのだろう。まだ学生気分が抜けきらない。とうとう彼女は、おじさんに身をまかせてしまった形になった。彼女の筋緊張は完全になくなって、だらしなくなってしまった。口をだらしなく開け諸臓器の括約筋はゆるんだ状態である。脚もちょっと開いている。(とてもエロティック)おじさんは、いやがるようでもなく、かといって少しも、いやらしい感じはない。(ゆえに、この不徳はゆるされるのダ)
おじさんは山野哲男という名前で湘南台に家があり、妻と一人息子がいる。息子は東北大学医学部の6年生で来年、卒業である。だから彼女はおじさんの息子と同い年くらいの年齢なのである。
この電車は、次の駅(上大岡)で降りる人が多い。彼女もそこで降りる人かもしれない。それで、おじさんは彼女を少しゆすった。
「もし、おじょうさん」
彼女は、よほど深いねむりに入ってしまったらしく、数回ゆすった後に、やっと目をさまし、首をおこした。彼女はまだポカンとした表情で、半開きの口のまま、ねむそうな目をおじさんに向けた。おじさんが微笑して、
「だいじょうぶですか。次、上大岡駅ですよ」
と言うと彼女は、やっと現実に気づいて真っ赤になった。おじさんのやさしそうな顔は彼女をよけい苦しめた。彼女はうつむいて、
「あ、ありがとうございます」
と小声で言った。彼女は膝をピッタリ閉じて英会話のテキストをギュッと握った。彼女は、まるで裸を見られたかのように真っ赤になっている。おじさんは、やさしさが人を苦しめると知っていて彼女に、ごく自然な質問をした。
「英会話ですか?」
彼女は再び顔を真っ赤にして、
「ええ」
と小声で答えた。
「海外旅行ですか?」
つい、おじさんの口からコトバが出てしまう。彼女はまた小声で、
「ええ」
と答えた。
「ハワイでしょう」
「ええ」
この会話は、おじさんの自由意志というよりライプニッツの予定調和だった。この時、彼女の心に微妙な変化が起こった。きわめて、自然な、そして、不埒ないたずらである。彼女は早鐘を打つ心とうらはらに、きわめて自然にみえるよう巧妙に、コックリ、コックリと、居眠りをする人を演じてみた。そして、とうとう、おじさんの肩に頭をのせた。おじさんは少しもふるいはらおうとしない。安心感が彼女をますます不埒な行為へいざなった。彼女は頭の重さを少しずつ、おじさんの肩にのせて、さいごは全部のせてしまった。そして、おじさんにべったりくっついた。でもおじさんは、振り払おうとしない。彼女は生まれてはじめての最高の心のなごみを感じた。
(こんな、やさしい、おじさんと、ずーとこーしていられたら・・・)
いくつかの駅を電車は通過した。その度に人々のおりる足音がきこえた。しかしその足音もだんだん少なくなっていった。
・・・・・・・・・・・・・
やがて電車は終点の湘南台駅に着いた。
「もしもし。お嬢さん。終点の湘南台駅ですよ」
おじさんがお嬢さんの肩を揺すった。
「あ、有難うございます」
彼女は狸寝入りをしていたのだが、あたかも、おじさんに起こされたように演じた。
彼女はペコペコと頭を下げてお礼を言った。
「終着駅ですけれど大丈夫ですか?降りる駅を乗り越してしまいませんでしたか?心配していたんですけれど、あなたがあまりにも気持ちよさそうに寝ているので、つい声をかけて起こしてしまうのをためらってしまっていました。それと・・・ちょっと私もあなたのような奇麗な人に触れられているのが心地よくて・・・ははは・・・つい言えませんでした」
おじさんは屈託ない表情で笑った。
「いえ。このターミナルの湘南台駅が私の降車駅です。どうも有難うございました」
彼女はペコリと頭を下げた。
「そうですか。それはよかった」
そう言って、おじさんは立ち上がった。彼女も立ち上がった。
そして二人ならんでエスカレーターに乗って改札口に向かった。
二人はSUICAで改札を出た。
「夜道は暗いですから気をつけて下さい」
そう言って、おじさんは東口に向かって歩き出した。
「あ、あの。どうも有難うございました」
彼女は少し頬を赤らめて礼を言い西口の出口に向かって歩き出した。
・・・・・・・・・・・
ピンポーン。
おじさんは家に着くとインターホンを押した。
「はーい」
家の中から妻の声がしてパタパタと玄関に向かう足音が聞こえた。
玄関の戸が開いて妻の悦子が顔を出した。
「お帰りなさい」
「ただいま」
夫は靴ベラで革靴を脱いで家に上がった。
そして居間のソファーに座った。
「お帰りなさい。あなた。今日は遅かったわね。何かあったの?」
妻が聞いた。
「いやね。アメリカでトランプ大統領が再び選出されただろう。各国に高い関税を課すと言っているからね。我が社としては、どういう対策で対抗するかという臨時の会議があってね。それで遅くなったんだ」
「そうだったの」
「ああ。悦子。水をくれ」
言われて妻の悦子は台所に行ってコップに冷水を入れて持ってきた。
「はい。あなた」
夫は妻の持ってきた水を受けとってゴクゴクと飲んだ。
「それはそうと。あなた。会社の健康診断の結果はどうだった?」
「コレステロールが260と高かったよ。前回は240なのにさらに上がってしまったな。体重も2kg増えたよ」
夫は笑いながら言った。
「あなたは焼肉が好きだからよ。仕事の後の会合でも焼肉たくさん食べているんでしょ」
「ま、まあ。そうだけれどね」
と夫は子供のように笑った。
「ねえ。あなた。健康のためにNASスポーツクラブで水泳をしたら?水泳がダイエットに一番いいと浅野浩二先生が言っていたわ」
「水泳か。面倒くさいなあ。それにNASスポーツクラブに入会すると入会金と月会費も払わなくちゃならないんだろう?三日坊主で終わっちゃいそうな気がするな」
夫は独り言のように言った。
夫は妻が近くのNASスポーツクラブに入ってランニングしたり筋トレしたりしているのを知っていた。
「ううん。そんなことないわ。NASスポーツクラブは一人、入っていれば、その家族や友人も使うことが出来るのよ。だから、あなたはタダで使うことが出来るわ」
「え、そうなの?」
「ええ。そうよ。もう、あなた用に水泳用トランクスとキャップとゴーグルも買っておいたわ」
そう言って妻はそれらを夫の前に出した。
「用意がいいなあ。でもどうしてそんなにダイエットにこだわるんだ?」
夫が聞いた。
「そりゃー。私が生涯の伴侶として選んだ人ですもの。長生きして欲しいし。いつまでも若々しくいて欲しいわ。水泳をすると新陳代謝が活発になって、そのおかげで私、肌もつやつやだわ」
実際、妻はNASスポーツクラブで運動しているため、20代の頃のプロポーションを維持していた。
「わかったよ。仕方がないな。じゃあ今度の日曜に行ってみるよ」
こうして夫は妻の作った夕食を食べ、そして翌日の仕事のために寝た。
夫は妻との営みはしなかった。
毎日のデスクワークで疲れて、その気になれなかったのである。
妻には夫が運動して新陳代謝がよくなれば、その気にもなってくれるかもしれない、という思いもあった。
・・・・・・・・・・・・・
さて。その週の日曜日になった。
「さあさあ。あなた。NASスポーツクラブに行ってらっしゃい。最低5時間は泳ぐのよ。あそこは日曜日は子供のスイミングスクールが無いからすいているわよ」
妻は学校嫌いの子供を送り出すように言った。
「わかったよ」
妻に背中を押されるように夫は家を出た。
夫はデイパックに、妻が夫のために買った水泳用トランクスとキャップとゴーグルと運動靴とタオルを入れて、自転車に乗ってNASスポーツクラブに行った。
夫はエレベーターで3階に行った。そしてロッカーに脱いだ着物を入れ、水着を着て2階に降りた。NASスポーツクラブは3階がロッカールームと風呂、サウナであり、2階が屋内プールだった。妻の言った通りプールはすいていた。
5レーンある25mプールに利用者は3~4人ほどだった。
夫はプールに入り泳ぎ出した。
夫は水泳は嫌いではなかった。しかしそれは夏に50mの屋外プールで10回くらい泳げばそれでよく、屋外プールをやっていない季節に、わざわざ、25mのプールで泳ぎたいとは思っていなかった。しかし有酸素運動の不思議な作用で、泳いでいるうちに脳内にβエンドルフィンが分泌され出したのだろう。だんだん気分が良くなってきた。
夫は25mをクロールで泳ぎ、25mを平泳ぎで泳いでいた。
・・・・・・・・・・・・
2時間くらい経った頃だろうか。
山野はプールから出て、プール室内のベンチに座って一休みしていた。
その時である。
プールの入口の方から紺色のワンピースの水着を着た若い女性が入って来た。
(う、美しい)
と山野は思わずため息をついた。
山野の視線が彼女の体に向けられているので彼女もそれを感じとって山野の方を見た。
「あっ」
という声が山野と女の両方から出た。
彼女はまだスイミングキャップをかぶっていなかったので、お互いの顔は一目でわかった。
彼女は数日前に電車の中で眠ってしまって山野の肩に頭を乗せて終点の湘南台駅まで隣り合わせに一緒に並んでいた女性だった。
彼女の方でもベンチに座っている男が電車の中で肩を乗せていた優しい、おじさん、ということにすぐに気がついた。
彼女はベンチに座って一休みしている山野に近づいてきた。
「あっ。先日は失礼しました」
と彼女は笑顔でペコリと挨拶した。
「あっ。いえ。こちらこそ」
山野もへどもどして挨拶した。
彼女はさり気なく山野の隣に座った。
「いやあ。奇遇ですね。こんな所でお会いするなんて」
山野が笑って言った。
「そ、そうですね」
彼女も山野に合わすように微笑して言った。
「あ、あの。あなた様はここのスポーツクラブの会員なのでしょうか?」
山野が聞いた。
「え、ええ。私、こっちに越して来て、まだ日が浅いのですが近くのスポーツクラブに入ってみようと思いまして・・・ここに入会しました」
「そうですか。あなた様はここのスポーツクラブの会員なのですか?」
彼女が聞いた。
「い、いえ。妻がこのクラブに入会しているんです。一人入会すれば、その人の友人、知人もここを利用できますからね。運動不足なものなので妻にプールに行って泳いできなさいと言われてしぶしぶ来てみたんです」
山野が言った。
「そうだったんですか」
そう言って彼女はニコッと微笑んだ。
彼女のワンピースの競泳水着姿は美しかった。
スラリと伸びたしなやかな脚。細い華奢なつくりの腕と肩。細くくびれたウェスト。それとは対照的に太腿から尻には余剰と思われるほどたっぷりついている弾力のある柔らかい肉。それらが全体として美しい女の肉体の稜線を形づくっていた。
競泳水着はただでさえ美しい女の肉体をピッチリと少しきつめの弾力によって絞めつけるように女の肉体を引き締めていた。それが女の体を美しく見せる効果を発揮していた。
特に女の股間の肉をしっかりと収めて引き締めて、ほどよく出来て上がっている小さな盛り上がり(ヴィーナスの丘)と、競泳水着のクッキリした輪郭からニュッと露出している太腿は小心な山野を激しく刺激した。
山野の心臓は興奮でドキドキと高鳴った。
「い、いやあ。お美しいですね」
山野は少し赤面して言った。
「いえ。そんなことないですわ」
彼女は、ふふふ、と微笑んで言った。
彼女は山野に名前を聞いてみようという気持ちになっていた。
「あ、あの。お名前は何と言うんでしょうか?」
女が聞いた。
「私は山野哲男といいます」
彼女が名前を聞いてきたので、山野はここぞとばかり彼女にも名前を聞いた。
「あ、あなたのお名前は?」
「私は佐藤京子と申します」
彼女はニコッと微笑んで言った。
お互い名前を教え合ったことで二人の気持ちは少しほぐれていた。
「佐藤さんはどうしてスポーツクラブに入っているんですか?」
山野が聞いた。
「私、小学生の時、体が弱くて水泳の授業に出れなかったんです。でも泳げている人を見ると羨ましくて。私も泳げるようになりたいなと思っていたんです。私、海が好きで人魚のように海を自由に泳ぎ回れるようになりたいという憧れがあるんです」
彼女は照れくさそうに言った。
「ふーん。佐藤さんはロマンチックなんですね」
「そうかもしれません。もちろん現実に人魚になることなんて出来ないですから、それは無理です。でも夏に屋外で50mプールを何時間でも泳げるようになりたいな、とは思っているんです」
「そうですか。僕も夏、屋外の50mプールで長時間泳いでいると確かに海を自由に泳ぎ回っているような感覚になりますからね」
「山野さんはクロールで泳げるんですね?」
「ええ。泳げますよ」
「うらやましいわ。私クロールは下手なんです。遅い平泳ぎがちょっと出来る程度なんです。平泳ぎなんてカエルみたいで格好よくないですね。やっぱりクロールで泳げるようになりたいと思っているんです」
彼女と話しているうちに山野はだんだん彼女の泳ぎの実力を知りたくなってきた。
しかしその前に自分がクロールで泳ぐ姿を彼女に見せて自慢したい気持ちが起こった。
「じゃあ、ちょっと泳ごうかな」
山野はさりげなく独り言のように言ってプールに入った。
そしてプールの壁を蹴ってクロールで泳ぎ出した。山野はいかに速く泳ぐかではなく、泳ぎのスビートは全力ではなく少しセーブして、バシャバシャ水飛沫をたてないように意識した。
エントリーでも水飛沫を立てないように、スーと入水し、バタ足もバシャバシャと水飛沫を上げないで、それでいて、可能な限り速く泳いだ。華麗なクロールを彼女に見せて得意になりたかったのである。
25mを1往復して元の所にもどると山野はプールから出た。
そして京子の座っているベンチに腰掛けた。
「わあー。山野さん。上手いんですね。スーと魚が泳いでいるみたいだわ」
京子は一切の夾雑物のない羨望で山野の泳ぎを誉めた。
「いやー。僕は小学生の頃、親に言われてスイミングスクールに通わされましたからね。泳げるのは当たり前ですよ」
山野は謙遜して照れくさそうに言った。
「じゃあ、今度は京子さんの泳ぎを見せてくれませんか?」
山野はソフトに言った。彼女はクロールは出来ず遅い平泳ぎしか出来ないと言ったから山野は気をつかったのである。
「はい。下手ですけど笑わないで下さいね」
そう言って彼女はベンチから立ち上がった。
山野は思わず、うっ、と声を洩らしそうになった。
なぜなら、彼女の体に弾力をもってピッチリと貼りついている競泳水着の後ろ姿がもろに間近に見えたからである。競泳水着はハイレグではなく、フルバックだったが、ほどよく脂肪の乗った女の柔らかい体を小さな面積の布で絶えず窮屈そうに縮むように貼りついているだけのワンピース水着は裸以上に女の体を美しく引き締めて見せる効果を発揮していた。
絶えず縮もうとする僅かな面積の布の中に豊富な量の女の肉を窮屈そうに収め込んでいるワンピース水着姿の女はこの上なく美しかった。
・・・・・・・・・・・・
彼女は長い髪をスイミングキャップの中に入れた。
そして目にゴーグルをかけた。そしてプールの中に入った。
彼女は平泳ぎでゆっくり泳ぎ出した。
まだ十分、水のキャッチが出来ていない。水は粘度のある流体であり水泳が上手くなるとは水をしっかりとつかめるようになることなのである。しかし、ゆっくりではあっても彼女は25mプールを一往復してもどって来た。
彼女はプールの底に足をついてプールの中から顔を出した。
「これが私に出来る精一杯なんです」
彼女は目からゴーグルを外して山野に言った。
彼女はハアハアと息を切らしていた。
「いやあ。平泳ぎはしっかり出来ていますね」
そう言って山野もプールに入った。
「佐藤さん。クロールは出来ますか?」
「ええ。でも全然ダメです」
「ちょっとクロールで泳いでみて貰えませんか?」
「はい」
彼女は目にゴーグルをかけ、壁を蹴ってクロールで泳ぎ出した。
水のキャッチが出来ていないので入水した手を強く下へ押すことによって顔を必死に上げ呼吸している。バタ足も下半身が沈まないように、バタバタとあわてて蹴っているので、お世辞にもきれいなクロールとは言えなかった。それでも何とか25mプールを往復して50m泳いでもどってくることは出来た。
彼女は壁にタッチするとプールの底に立って水中から顔を出した。
ハアハアとかなり息が荒かった。
「下手でしょう。これが私のクロールの限界なんです」
彼女はハアハアと荒い呼吸をしながら言った。
「いやあ。水泳の初心者はみなそうですよ。僕も最初はそうでした」
山野が言った。
「私、You-Tubeでクロールの動画をいくつも見てみました。さかんに水をキャッチすると言っていますが水のキャッチってどういうことなんですか?水をつかまえるってどういうことなんですか?」
彼女が聞いた。
「まあ、それはちょっと説明が難しいですね。水を掻き出す時、掌に水の抵抗がグッとくるような感覚のことなんですけれど・・・」
「それでは。どうすれば、その水のキャッチというものが出来るようになるんですか?」
彼女が聞いた。
「それは、今の泳ぎ方でいいですから根気よく続けること・・・その一言に尽きます・・・・そうすればいつか、水をキャッチ出来るようになります。僕もそうでした。難しく考える必要はありませんよ」
山野は言った。
「運動は根気よく反復練習しているうちに、雨だれが岩をも穿つように、体の動きがその運動の動作に順応していくものなのです」
山野はそう説明した。
「そうですか。それを聞くと何だか安心しました」
彼女はニコッと微笑んだ。
山野は何だか彼女のコーチになったようで嬉しかった。
「ただ。反復練習して疲れてきたら少しインターバルの休みを入れて、疲れをとってから再び練習した方がいいです。疲れている時にがむしゃらに泳いでも上達の効果はあまり期待できませんからね」
と山野はアドバイスした。
「そうですか。それではこれからそういうふうに練習するようにしてみます」
上手く泳げている山野のアドバイスなので京子は山野のアドバイスの理論的な意味はわからなかったが彼の意見に従おうと思った。
山野は、バタ足はムチのようにしなやかに、だとか、S字プル、や、息継ぎはどうだのこうこうだの、だとか、だのの些末的な事は言わなかったし言いたくもなかった。
なので言わなかった。世のスポーツコーチはやたらと、そんな事をくどくどと説明したがるものなのだが、そんなことは反復練習して上手くなっていけば自然とそうなっていくからだ。その点において山野は世のスポーツコーチをスポーツの理論がわかっていない頭の悪い人間だとバカにしていた。
「僕は妻に最低、5時間は泳ぐように言われていますので、あと2時間は泳ぎます」
そう言って山野は目にゴーグルをかけた。
「じゃあ私も一緒に泳ぎます」
彼女が自分についてきてくれることが山野にはこの上なく嬉しかった。
彼女もゴーグルをした。
山野は平泳ぎでゆっくりと泳ぎ出した。
京子も山野のあとを追って平泳ぎで泳ぎ出した。
同じレーンの中を山野と京子は往復して泳いだ。
ゴーグルはマジックミラーの役割りをするので彼女には山野の視線がわからない。
山野はその利点を生かして水中で揺らめくワンピース水着姿の京子の肉体を思うさま眺めた。当然、山野の方が泳ぎが速く京子はゆっくりなので、山野と京子の距離は開いていった。
山野は平泳ぎで泳いでいる京子の2mくらい後ろになると、泳ぎの速度を京子と同じにした。
京子が平泳ぎで足を後方に開いて蹴る時に、下肢がパックリと開き、水着で隠されている京子の股間がもろに見えた。水圧が京子の柔らかい太腿を揺らめかしていた。
その光景はとてもエロティックで悩ましかった。
山野は、こんなことはもう二度とないかもしれないと思い、しっかりと目に焼きつけるように、とろけるような快感と共に、しっかりと水着が貼りついている京子の股間をゴクリと息を呑みながら眺めて泳いだ。
しかしあまりそればかりしていると京子に不埒な企みを気づかれてしまうことをおそれ、山野は速度をあげて京子を抜いた。あくまでそんな企みは無く、純粋に有酸素運動としての水泳に励んでいるように装った。京子も山野の密かな企みには気づいていないように見えた。
京子は時々、クロールでも泳いだが、山野にアドバイスされたように疲れると時々、プールの端に着いて立ち止まって休みをとっていた。それも山野には無上の光景だった。
ワンピース水着で覆われている京子の股間の盛り上がりを水中でまじまじと見ることが出来るからである。恥肉を窮屈に収めてこんもりと形よく盛り上がっている女の悩ましい股間のふくらみ(ヴィーナスの丘)を山野は無上の幸せで眺めた。もちろん、そんな不埒な目的は無く純粋に有酸素運動としての水泳に励んでいるように装ったが。京子も山野の密かな楽しみの企みには気づいていないように見えた。
ふと見ると屋内プールの時計が6時を示していた。
NASスポーツクラブはウィークデーは夜11時までの営業だが、日曜は夜8時までの営業だった。
(よし。今日はこれくらいにしておこう)
壁にタッチすると山野は立ち止まってターンして泳ぎをやめた。
京子が平泳ぎでもどってきた。
京子も泳ぐのをやめた。
「京子さん。私は今日はこれで帰ります」
山野は京子に言った。
「じゃあ私も今日はこれで帰ります。疲れてきましたし・・・」
京子は微笑して言った。
二人はプールから上がった。
山野としては本当はもっと京子のワンピース水着に包まれたセクシーで美しい体を見ていたかったのだが、それを彼女にさとられないように、自分の方から「やめる」と言い出したのである。
二人は更衣室のある3階に上がった。
左側が男性更衣室で、右側が女性更衣室だった。
「山野さん。今日は色々とためになるアドバイスをして下さり有難うございました」
そう言って彼女は頭を下げた。
「いえ。嫌々ながら来てみましたが、奇遇にもあなたと出会えて私の方こそ楽しかったでした」
山野も笑顔で言った。
「あ、あの。山野さん」
「はい。何でしょうか?」
「またお会いしたいですね。今まで一人で泳いでいましたが、二人の方がモチベーションが上がってやる気が出るような気がします」
「私もです」
「山野さんは今度はいつ来られますか?」
「そうですね。スケジュール表にもありますが、平日は子供のスイミング教室でいっぱいなので、また来週の日曜日にでも来ようかと思っています」
「それはラッキーです。私もいつも日曜日に来ているので・・・また来週の日曜日にお目にかかりたいですね」
・・・・・・・・・・・・・・・
お互い笑顔で「さようなら」と言って二人は別れた。
山野は彼女に「ちょっとお食事しませんか」とか「よろしかったらアドレスを教えてくれませんか」とは言わなかった。山野の気持ちとしては熱烈にそうしたかったのだが、山野はいい歳してシャイなので自分が京子に熱烈に恋焦がれているということをさとられたくなかったのである。あくまでたまたま出会った女性と親しくなったと彼女に思わせておきたかったのである。歳も親子ほど離れているし、山野には妻も一人息子もいる。京子には彼女と同い年くらいの若者と親しくなって幸せになって欲しいと思っていたのである。
NASスポーツクラブにはいくつもの風呂がありサウナもあった。
山野は体を洗ってジェットバスや薬湯に浸かった。
おそらく彼女も風呂やサウナに入っているだろう。せっかくあるのに利用しない理由はない。
山野は想像力過多なので、彼女が着替えする姿や体を洗っている姿が頭に浮かんできた。
山野は10分ほどサウナに入ってからロッカールームで服を着てNASスポーツクラブを出た。
すると薄いブラウスに白いスカートを着た女性が自転車に乗って湘南台駅の方に向かっていく後ろ姿が見えた。京子さんだった。後ろ姿でも彼女のプロポーションや洗いたての長い黒髪からそれはわかった。山野は丁度いいタイミングで彼女がNASを出たことに感謝した。
山野は自転車に乗って彼女に気づかれないように、十分な間隔の距離をとり、彼女の跡を追った。彼女は山野の今までの態度から尾行されているとは思っていないのだろう。後ろを気にしたり振り返ったりする様子は全くなかった。湘南台駅の周辺は車の通行をスムーズにするためだろう、駅の近くには踏切りがなく、小田急線の下をくぐる車道が駅から少し離れた所に作られていた。彼女は湘南台駅の西口に住んでいる。
東口から西口に出るには湘南台駅の地下を通るのが一番の早道である。
山野は彼女に気づかれないように自転車で彼女を追った。
予想通り彼女は地下に入る坂道の前で自転車を降りて自転車を押しながら湘南台駅の地下に入って行った。山野も彼女に気づかれないようにあとを追った。
湘南台駅の地下には広いスペースがあって、いつも若者が集まってヒップホップダンスをしていた。しかし少し前から時々、ピアノが置かれている時も出てきた。ストリートピアニストのハラミちゃんの影響だろう。全国の大きな駅にはかなりストリートピアノが置かれるようになった。ストリートピアノは誰でも自由に演奏していいのである。
彼女はストリートピアノを見つけると自転車を止めた。演奏者はいなかったので、彼女はストリートピアノの椅子に腰かけた。ピアノの前には椅子が10個ほど並んでいて彼女がピアノの前に座ると、通行人が数人、椅子に座った。彼女は鍵盤にしなやかな指を乗せ、リストの愛の夢・第3番を演奏し出した。しなやかな指が腱板の上で力強く踊った。山野はピアニストの演奏の巧拙はわからなかったので、彼女の演奏がプロ級なのかそれとも趣味レベルのものなのかは判別できなかった。しかし間違えることなく、よどみなく美しいメロディーを奏でることが出来ることから、かなり上級者なのではないかと思った。演奏が終わると皆がパチパチと拍手した。彼女は立ち上がって皆に一礼し、自転車を押して西口を出た。
山野も彼女のあとを追った。
もう日が暮れて真っ暗だった。
彼女は円行公園の隣にある賃貸アパートの一室に入った。
部屋の明かりがポッと灯った。
山野は内心しめしめと思った。彼女がどこに住んでいるかは山野にとっては咽喉から手が出るほど知りたかったことだったからである。彼女には彼女の生活があり、山野は彼女の生活にズカズカ入り込んで行く気は全くなかったが、彼女との縁はどうしてもつなげておきたかったのである。
・・・・・・・・・・・・・
山野は自転車に乗って家にもどった。
「お帰りなさい。あなた」
妻が玄関に出迎えた。
「ただいま」
夫は家に上がった。
そしてソファーに座った。
「あなた。もう10時よ。こんな時間に帰って来るということは、ちゃんと5時間以上、泳いだということなのね?」
「ああ。お前の言う通りちゃんと5時間以上、泳いださ」
「立派。立派。よく頑張れたわね」
妻は子供を誉めるように言った。
「どうせつまらないだろうという予想は外れるものだね。やってみると結構、いいことがあるものだね」
「何?いいことって?」
「つまりだね。有酸素運動を長時間、続けていると脳からβエンドルフィンが出るのだろう。ランナーズハイと同じでね。お前もNASでランニングを続けられるのはβエンドルフィンが出て気分がハイになるからだろう」
「ええ。そうよ。ところであなた。夕食はまだでしょ。今日はステーキにしたわ。いますぐ焼きますわ」
夫は妻を見た。運動しているのでプロポーションは20代の頃をキープしている。
というより妻は絶対20代のプロポーションを維持しようという強固な意志を持っていた。
「いや。夕食はいい」
「どうして?」
「食欲が起こらないんだ」
「有酸素運動では、息が切れる寸前の強度(最大酸素摂取量の60%前後)を超えると、運動誘発性食欲不振が生じやすくなるらしいわ。少しの運動では返って食欲が亢進してしまうから逆効果だけど、あなたは頑張ったから、きっと運動誘発性食欲不振が起こったのね」
夫はあらためて妻の悦子をまじまじと見た。
初めて悦子を見た時は、世の中にこれほど美しい女性がいるだろうかと山野の頭は悦子のことだけで一杯になった。美しい女に対する恋愛と性愛に山野は毎日、悩まされた。
しかし結婚して10年以上も経つと、初心の頃の熱い想いは徐々に薄れ、男の関心事は女から離れて仕事になるようになった。それは男の宿命である。
妻とは夫が働く傍らで買い物をし、食事を作り、育児、家事をこなすハウスキーパーという感覚に落ちていくものである。
だから世の中では不倫が絶えないのである。
「ど、どうしたの?あなた」
夫になぜかまじまじと見つめられて妻は、その訳がわからなかったのである。
「悦子。お前はワンピース水着をもっているだろう?」
夫が聞いた。
「え、ええ」
「じゃあ、ワンピース水着に着替えてくれないか?」
「ど、とうして?」
「まあ理由なんていいじゃないか」
「わ、わかったわ」
夫は妻を連れて二階の寝室に入った。
「さあ。悦子。ワンピース水着を着てくれ」
夫に言われて妻は引き出しを開けて黄色のワンピース水着を取り出した。
そして着ている服を脱いでワンピース水着を着た。
妻はスポーツクラブでしっかりとランニングしているので、その肉体は20代の時と変わらぬ美しいプロポーションを保っていた。
「うっ。美しい」
夫はそう言うと妻の後ろに回って水着に包まれた妻の尻に唇を当て、チュッ、チュッとキスをした。
そして今度は妻の正面に回り、太腿を抱きしめて、もっこり膨らんでいるヴィーナスの丘や太腿に貪るように、チュッ、チュッとキスをした。
「あ、あなた。どうしたの?いい歳して?」
妻は夜、夫婦の営みに誘っても「疲れているんだ」と言って全然のってきてくれない夫に不満を持っていた。それがどうしてこのように急に性欲旺盛になったのか、わからなかった。
しかし理由はわからなくても久しぶりに夫に愛撫されて妻は、くすぐったい嬉しさを感じていた。
「ふふふ。あなた。一体どうしたの。こんな子供じみたことをするなんて?」
妻は笑いながら言った。
しかしもちろん夫にはその理由がわかっている。
今日、長い時間、京子さんのワンピース水着姿をじっくり見てしまったことが夫に激しい若返りの回春効果をもたらしていたのである。
「ああ。京子さんのワンピース水着姿は何とセクシーなんだろう」
と夫は悩まされ続けた。しかし夫はスポーツに励む仲間という関係を装い続けて決して、彼女に恋してしまった内心は打ち明けなかった。
また夫は彼女に対し男女間の関係を持つことを自分に厳しく禁じていた。
妻子のある歳のいったオッサンと若い女性の恋など美しくない。
若く美しい女性は彼女にふさわしい若く逞しい男と若く美しい人生を築いて欲しいと思っていたからである。
京子さんの美しいワンピース水着姿の体に触れたいという本能的欲求と触れてはいけないという理性の葛藤に夫は激しく悩まされ、それが夫に強力な性欲亢進をもたらしたのである。
それは京子だけではなく女一般のワンピース水着姿に対しても同様だった。
京子さんのワンピース水着姿に触れることは出来ないが妻に対してなら出来る。
夫は妻の体を京子さんの体だと思い込もうとしていた。
女の体の構造に違いはない。
夫は今、妻を京子さんだと思い込んでいた。
したくても出来なかった欲求不満が解放された時ほど男の性欲が満たされる時はない。
夫は妻の太腿を抱きしめて、尻や、もっこり膨らんでいるヴィーナスの丘や太腿に貪るように、チュッ、チュッと激しくキスをし続けた。
しかし、理想とするものが手に入らない時に似たようなものを代わりにして満足する代償行動をしている夫の心が妻にはわからなかった。
「ふふふ。あなた。一体どうしたの?」
妻には夫の心がわからなかったが久しぶりに熱烈に愛撫されることに妻はくすぐったい喜びを感じていた。
その晩、夫の命令で妻はワンピース水着を着たまま眠らされた。
夫にとっては裸よりそれが一番、興奮する姿だったからである。
夫はワンピース水着を着た妻を抱いた。
・・・・・・・・・・・・・
翌朝。
妻の作った朝食を食べ、「じゃあ出かける」と言って山野は家を出た。
「あなた。いってらっしゃい」
と妻も久々に夫に愛撫されて嬉しそうに夫を見送った。
その日は、山野は今度の日曜日が待ち遠しくて仕方がなかった。
会社でも、京子のワンピース水着姿で頭が一杯だった。
なので仕事も手につかなかった。
会社が終わった。
山野は帰りにNASスポーツクラブに寄った。
佐藤京子が着ていたワンピース水着はNASスポーツクラブで売っているものなので、それと同じ物を買って妻に着せたいと思ったからである。
「あっ。山野さん。佐藤京子さんがついさっき、あなたが来たら渡して欲しいと言って封筒を置いて行きました」
そう言ってNASの受け付け嬢が山野に封筒を渡した。
山野はすぐに封筒を開けて見た。
「山野さん。今週の日曜日には初夏の鎌倉を一緒に歩きませんか。12時に日曜日に鎌倉駅前の喫茶店ルノアールで待っています。佐藤京子」
と書かれてあった。
(ああ。彼女も私に好意を持っていてくれたんだな)と嬉しくはあった。
しかし。山野にはそれを素直に喜べない複雑な感情が起こっていた。
自分には妻も子もいる。彼女には将来がある。彼女には彼女にふさわしい若い男と人生を築いて欲しい。しかし、彼女との縁も切りたくはなかった。どうしたらいいか。迷っている山野にふと息子のことが思い浮かんだ。そうだ。息子は東北大学医学部を来年、卒業する。まず医師国家試験にも通るだろう。息子はオレと同じように真面目な性格だ。オレの代わりに、息子に今度の日曜は喫茶店ルノアールで会ってもらおう。もし彼女と親しくなれたらこれ以上に嬉しいことはない。
そこで山野は息子の修一に電話をかけた。
「おい。修一」
「なんだ。おやじ?」
「国家試験は大丈夫か?」
「ああ。模擬試験でも80点はキープしているよ。まず大丈夫だと思う」
「そうか。ところで今週の日曜なんだが、こっちへ来ないか」
「なんで?」
「会って欲しい人がいるんだ。お前。恋人はいるか?」
「いないよ」
「じゃあ、今週の日曜、鎌倉駅前の喫茶店ルノアールに行ってくれないか。そこに佐藤京子という人がいるから」
「どんな人なの?」
「しとやかで、つつましくて、きれいな人だ。社会人になりたての人だ」
「おやじとどういう関係の人なの?」
「同じ湘南台に住んでいてな。NASスポーツクラブで知り合って親しくなったんだ。お前とは同い年くらいだ。僕は山野哲男の息子です。父が急に用が出来たので父の代わりに来ました、と言えばきっと会ってくれると思う。奇麗で優しい人と二人で鎌倉を散策しないか?」
「その人はおやじにそう誘ったんだろ?」
「ああ」
「じゃあ、どうしておやじが合わないんだ?」
「オレには愛する妻がいる。オレは妻を愛しているし妻もオレを愛している。オレが彼女と親しくなり過ぎると妻を悲しませることになるだろう。それに彼女とは親と子ほど歳も離れている。彼女には若い者どうしで素敵な未来の人生を送って欲しいんだ。お前と彼女が親しくなってくれれば、オレにとってこれに越したことはないんだ。どうだ?」
「わかったよ。見合いだと思って会ってみるよ」
「そうか。じゃあ、オレの代わりに彼女と会ってくれ」
「わかった。そうするよ」
・・・・・・・・・・・・・・・
日曜日になった。
山野はその日、京子さんのいないNASスポーツクラブに行って5時間、泳いだ。
一人きりだが、有酸素運動も一定の時間、泳ぎ続けてるとβエンドルフィンが出て気分がハイになることを前回知ったからだった。
1時に山野は息子にスマートフォンで電話をかけてみた。
「修一。どうだ。佐藤京子さんとは会えたか?」
「ああ。会えたよ。今、鎌倉駅前の喫茶店ルノアールで彼女と色々と話をしている所だよ。これから鶴岡八幡宮に行く所さ」
「そうか。それはよかったな。ところでお前、今日はこっちへ泊っていくか。それとも仙台に帰るか?」
「仙台に帰るよ。明日も臨床実習が9時からあるからね」
「そうか」
そう言って山野は電話を切った。
そして泳ぎ続けた。
・・・・・・・・・・・・
その日の夜遅く。
山野は息子に電話をかけた。
「どうだった。今日は?」
「レンタカーで鶴岡八幡宮や大仏、由比ヶ浜、江ノ島などに行ったよ。僕が山野哲男の息子です、と言ったら、彼女はとても喜んでくれたよ。彼女とは親しくなれそうだ」
「そりゃーよかった。しかしよく初対面のお前に彼女は親しくしてれたな?」
「おやじ。今だから言うけど、彼女とは初対面じゃないんだ」
「ええっ。どういうことだ?」
「実はね。先月、家に帰ってきたことがあったろう。あの時、横浜市営地下鉄ブルーラインに乗ってもうすぐ湘南台だなと思っていた時だったんだ。彼女がしょんぼりして悲しそうな様子だったもので、何かあったんですか、と聞いてみたんだ。その前に彼女が湘南台駅の地下のストリートピアノを弾いていたのを見たことがあって、ちょっと話したこともあったんだ。それで、あっ、ストリートピアノを弾いていた人ですね、と声をかけてみたんだ。彼女も悩み事を誰かに聞いて欲しそうな態度だったんで、湘南台駅を降りたら、少し話しませんかと言って駅前のマクドナルドに一緒に入ったんだ。そして少し話したんだ」
「そうか。そんな事があったのか」
「聞く所によると彼女は大学を卒業して、ある会社に勤めたばかりの頃だったんだが。在日朝鮮人であることがわかってしまってね。その会社は社長が在日朝鮮人を嫌っていてね。彼女は友達も出来ず一人ぼっちでさみしいことを涙ぐみながら話したんだ。可哀想になってね。だから、スマートフォンで父親の写真を見せたんだ。そして、父親は在日朝鮮人を差別するようなことはしない優しい性格ですよ、会社からの帰りは夜10時の横浜市営地下鉄ブルーラインに乗って帰ってきますよ、と言ったんだ。彼女はきっとおやじにも話しかけるんじゃないかと思ってね。案の定、彼女はおやじと親しくなったな。きっとこんなことになるだろうことは、うすうす予想していたよ」
「そうだったのか。そんなこととは知らなかったよ」
「今日は京子さんと鎌倉めぐりが出来て本当に楽しかったよ」
「そりゃーよかったな。ところでお前、卒業したらどうするんだ?当然、東北大学医学部のどこかの医局に入るんだろう」
「それはまだ決めていない」
・・・・・・・・・・・・・・
修一は翌年、無事、東北大学医学部を卒業した。
そして医師国家試験にも通った。
山野は修一に医局は東北大学医学部ではなく横浜市立大学医学部に入るよう勧めた。
修一もそれに納得してくれた。
しかし修一が彼女にそれを伝えた所、彼女はそこまで私の都合を優先させてしまっては申し訳ありません、私が仙台に引っ越します、と言った。
彼女は仙台に引っ越し、仕事も仙台で見つけ、修一の近くにアパートを借りて住んでいる。


2025年3月21日(金)擱筆

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協力出版物語(小説)(上)

2024-09-24 11:05:11 | 小説
「協力出版物語」

という小説を書きました。

ホームページ・浅野浩二のHPの目次その2

にアップしましたのでよろしかったらご覧ください。

協力出版物語

(1)

1991年、日本はバブル経済が崩壊した。地価は下落し株価は暴落した。バブル景気に浮かれて株に投機し土地を買いあさった日本人は未曽有の不況に苦しむことになった。
北海道拓殖銀行が倒産し、ついで日本長期信用銀行、日本債券信用銀行、山一證券が倒産した。日本の土地神話が崩れ、銀行の持つ債権は不良債権となり、銀行は企業に融資しなくなった。日銀はこれを何とかしようと、都市銀行に貸し出す金利を下げ、さらに日銀は金利をゼロにした。しかし不況でモノが売れない以上、企業は事業を拡大することはなく、また企業が融資を求めても銀行も企業の倒産を恐れ貸し渋りするようになった。
多くの企業が倒産し銀行は単に金を預けておくだけの貯金箱に成り下がった。
大量の失業者が出て、フリーターやニートはもはや、その存在が当たり前になった。
この不況は当然、出版業界にも及んだ。
日用品、生活必需品でさえ売れない時代に娯楽本など売れなくなるのは当たり前である。
それと、急速に発達したパソコンによって、人々はわざわざ紙の本を買わなくても、ネットで情報を集められるようになったのが出版不況に拍車をかけた。
大手でない、いくつかの出版社は、この出版不況を逆手にとって悪質商法に走った。
それは、「協力出版」「共同出版」などと名づけて、全国の書店に流通させる出版形態である。
それは、一言でいって、本を売ることによって、出版社が儲けを出す通常の出版形態ではなく、本を出版してみたいと思う人の心をくすぐる詐欺商法だった。
つまり、「作家としてデビューしてみませんか」という宣伝によって、全国から原稿を募集する。そして出版社に投稿してくるアマチュアの原稿に対して、「素晴らしい」「埋もれさせるにはもったいない」などと褒めちぎった感想を返し、投稿者を舞い上がらせる。そして、「我が社も出版費用の幾分かを払いますので商業出版してみませんか」と著者に誘いをかける。そして、版権(本の所有権)は出版社にある本を作る、というものである。しかし、実際は、出版社は本の制作費に金などビタ一文出しはせず、製作費、流通費、倉庫代、など、すべて著者負担の金額であり、さらに、その上に出版社が、100万円から200万円などという法外な金額を著者から、ふんだくって利益を出す、本を作って著者から得た法外な製作費によって利益を上げる詐欺商法だった。
・・・・・・・・・・・・
北海道十勝病院である。
個室の病室には、松田ゆみこの父親の松田白が脳梗塞で入院しており、肺炎を起こしていた。危篤の状態だった。病院からの「お父様は今日が山場かもしれません。ぜひともお越しください」という連絡をうけて、ゆみこは、急いで病院に駆けつけた。
個室には「面会謝絶」のカードがかけられていた。
ゆみこはトントンと病室の戸をノックした。
すると戸が開いて看護婦が出てきた。
「どちら様でしょうか?」
「松田白の娘、松田ゆみこです。父が危篤と聞いてやって来ました」
ゆみこはハアハアと息を切らしながら言った。
「どうぞお入りください」
看護婦に言われてゆみこは病室に入った。
病室には、うかない顔をした主治医とナースが立っていた。
父親の口には酸素マスクが被せてあった。
心電図のモニターには波形は時々、期外収縮の波が出ていた。
血圧は60/30。脈拍は120。SpO2は80%だった。
「松田さま。お父様は危篤状態です。昇圧剤も投与しましたが血圧が上がりません。不整脈も起こってきたのでカルチコールという抗不整脈薬を投与して何とか、持ちこたえていますが、あと1時間もつかどうかでしょう。話したいことがあったら、何なりとお話ください」
そう言って主治医は酸素マスクのキャップを取り外した。
「お、お父さん」
ゆみこは涙をハラハラと流しながらヒッシと父親に抱きついた。
「ゆ、ゆみこ」
父親の閉じていた目がうっすらと開き、かすかに唇が動いた。
「ゆ、ゆみこ。わ、私は死んでいく。しかし悲しむことはない。人はいつかは死ぬのは当然のことだ。私は79歳まで生きて幸せな人生だった。母さんと恋愛結婚し、仕事も成功した。そして、お前のような優しい立派な美しい娘まで生まれて・・・お前に看取られて死んでいくのはこの上ない幸せだ」
それは死んでいく者が最期の力を振り絞って発する言葉だった。
「お父さん」
ゆみこはハラハラと涙を流した。
「ゆ、ゆみこ。死ぬ前に最後のお願いがあるんだ」
「なあに。お父さん」
「わしは、山の挽歌、という随筆を書いた」
「ええ。知っているわよ。私家本として自費出版したわよね。お父さん」
「ゆみこ。あれはわしの拙い随筆だが、わしは自分が生きた証として、あれを出版して世に残しておきたい。どうか、あれを自費出版でかまわないから出版してくれないか」
「わかったわ。お父さん。必ず出版するわ」
「あ、ありがとう。わしの人生は幸せだった。こんな孝行娘に看取られて死んでいくのだから・・・」
そう言うや、父親は静かに目をつぶった。
心電図のモニターに映し出されいるバイタルが急に乱れだした。
血圧がどんどん下がっていくので医師は昇圧剤を静脈注射した。
「いかん。血圧が上がらない。心筋虚血が起こったのだろう」
それでも血圧は上がらず、さらに心電図の波形が出なくなっていき、やがてツーと平坦になり出した。
「私が心臓マッサージをする」
そう言って医師は、エッシ、エッシと胸骨に手を当てて心臓マッサージをした。
心臓マッサージによって、少しは心電図に波が現れ、血圧も少し上がったが、それは死んでいく人間をほんの少しの時間、僅かに延命する効果しかなかった。
数分経った。
医師の心臓マッサージも虚しく、心電図の波形はツーと平坦になった。
医師は心臓マッサージをやめた。
そして主治医は、呼吸と脈拍と対光反射を調べた。
すべての生存反応がなくなり、ペンライトを瞳に当てたが瞳孔は開きっぱなしで収縮することはなかった。
医師はゆみこに顔を向けて、
「ご臨終です」
と一言いった。
ゆみこの目からどっと涙が溢れ出した。
「おとうさーん」
ゆみこは泣きじゃくりながら父親を抱きしめた。
「おとうさん。わかったわ。約束は守るわ。山の挽歌は必ず出版するわ」
ゆみこは、もう息をしていない父親に向かって誓うように言った。
医師が死亡診断書を書いた。
ゆみこは葬儀社に電話して葬式の手続きを迅速にとった。
すぐに霊柩車が来て、ゆみこの父親の遺体は霊柩車で十勝の実家に運ばれた。
翌日の夜、松田白の通夜が行われた。
喪主は当然のごとく、ゆみこが勤めた。
通夜には、松田白の友人、知人、会社の同僚などがたくさん来た。
「いやあ。松田白さんはいい人だった」
「松田白さんは山を愛し、自然をこよなく愛するいい人だった」
「私も職場では白さんに色々と親切にしてもらったよ。本当にいい人だった」
などと、皆、松田白を懐かしむ発言ばかりだった。
その度に黒い喪服に身を包んだ、松田ゆみこは、「有難うございます」と深く頭を下げた。
父はこんなに皆に愛されていたんだ、という実感があらためて湧き上がってきて、ゆみこは、よよと涙を流した。
「しかし白さんも、こんな美しく正義感の強い気丈夫な娘さんを、この世に残してあの世へ行ったんだ。白さんも十分に満足した人生だっただろう」
「ゆみこさんの正義感の強さは父親ゆずりなんだろう」
「白さんは、いつも言っていたよ。親バカと言われるかもしれないが、わしの娘はわしの唯一の自慢なんじゃ、とね」
などと、来客たちは、喪主を務める、ゆみこを讃えた。
それはお世辞ではなかった。
ゆみこは子供の頃から、この世に二人といない絶世の美女として全校生徒の憧れの的だった。
大学は慶応大学の生物学部に進学した、ゆみこだったが、「ゆみこならミス日本に選ばれるわよ」と友達に言われて、本人は気が進まなかったが、ミス日本に応募したら、何と優勝してしまったのである。その美しさは、大学を卒業し結婚し子供を産んだ今でも、色あせることはなかった。
通夜が済み、翌日、葬式が行われ、松田白の骨は松田家の墓に葬られた。
これで父の死は一区切りついて、ゆみこはほっとした。
(さあ。父との約束だわ。父の遺稿集・山の挽歌を出版しなければ)
と、ゆみこは気持ちを切り替えた。
しかし、ゆみこは、本の出版については全く知識がなく父の遺稿をどこの出版社で出版すればいいのか、わからなかった。
そんな、ある日の夕食の時である。
新聞を読んでいたゆみこの娘の繭子が母親に言った。
「お母さん。文興社という出版社が原稿を募集しているわよ。何でも単なる自費出版ではなく、全国の書店に置かれる商業出版だって」
そう言って娘の繭子は母親に北海道新聞を渡した。
どれどれ、とゆみこは娘から北海道新聞を受けとって見てみた。
すると新聞には半面をとった文興社の大きな広告があった。
それには、こんな宣伝が書かれてあった。
「広くアマチュアの人からの原稿を募集します。原稿をお送り下さい。当社で原稿を詳しく読み込ませて頂きます。内容が良くて売れる見込みのある原稿は当社が費用の全額を持つ商業出版とします、内容は良いが売れるかどうかわからない原稿も商業出版としますが著者の方にも多少の費用負担をして頂く協力出版をお勧めします、売れる見込みのないと判断した原稿には自費出版をお勧めいたします」
と書かれてあった。
ゆみこは本の出版に関しては知識がなかったので、
「ふーん、面白そうね」
と興味を持った。
世間的な知名度も名もないアマチュアの書いた原稿など売れるものではない、ということは仄聞で知っていた。
しかし死んでいく父が今際の時に頼んだお願いである。
責任感が強く、父をこよなく愛していた、ゆみこは出来ることなら、父の遺稿集を出来るだけ多くの人に読んでもらいたいと思い、ダメで元々と思いながら勇気を出して文興社に父の原稿、山の挽歌、を送ってみた。
出版社から、どんな返事が返ってくるか、ハラハラドキドキものだった。
しかし驚いたことに、2週間後に、文興社から返事の封書が来た。
それには出版契約書と原稿に対する僅かな評価が書かれてあった。
「松田様がお送り致しました、山の挽歌、を拝読させて頂きました。慎重な出版会議の結果、作品の完成度は高く、ほとんど手直し、編集する必要は無いと決まりました。このような優れた作品はぜひ世に問う価値があると思います。我が社としましても、山の挽歌、を書籍化して全国の書店に配布したいと思っております。おめでとうございます。しかしながら、作者であるお父様は知名度も名声もありません。なので出版にかかる費用は我が社も出させて頂きますが、松田様にも本の制作費の一部として200万円の協力金をお支払い頂けないでしょうか。ぜひとも協力出版をご検討ください」
との返事だった。
ゆみこに瞬時に疑問が起こった。
一番は「作品の完成度は高く、ほとんど手直し、編集する必要は無いと決まりました」と言いながらも、作品のどこがとのように良いのかは一言も触れていないことだ。
本当に出版社は父の原稿を読んだのだろうか?
もしちゃんと読んでいるのなら、山の挽歌、の内容について、具体的にどこがどういう風に良いと一言くらいは出版社は言ってもいいではないか。
それが一言も述べられていないというのはおかしい。
本当に出版社は、父の遺稿・山の挽歌、を読んだのだろうか?
そして、おかしいと思ったことは著者への印税が、たったの2%であるということである。
普通、本を制作すると著者への印税は10%位である。
つまり定価1000円の本が1冊売れたのなら著者は100円、受け取れるのである。
そして、さらにおかしいと思ったことは。
出版契約書では版権(作った本の所有権)が文興社になっていることである。
普通、商売では、買い手が売り手に代金を支払い、そして物を買う。自費出版なら本は著者の所有物であるから、これは問題ない。しかし著者が出版社に金を払って、その上出版社の所有物である本を作るというのはおかしい。これはまるで買い手が金を払って、その上売り手に物を差し上げるようなものである。
ゆみこは、文興社に疑いをもつようになった。
それでネットで色々と文興社についての評判を調べてみた。
すると、文興社に対する悪評がわんさと出てきた。
ゆみこの疑惑は募っていった。
ちょうどその頃、自費出版本の制作を手掛け自費出版本を書店流通させていた渡辺勝二という人を知った。
渡辺勝二氏は日本の自費出版の文化を守りたいと思っている良心的な人だった。
そして、(本の所有権は著者にある)自費出版本を作成し、それを知人に差し上げるだけではなく、内容の良い、売れる見込みのある本であれば、それを書店に置くことをしていた。
ゆみこは渡辺勝二氏に電話をかけてみた。
ゆみこは、文興社が示してきた、山の挽歌、を本にした場合の制作費の概算を渡辺勝二氏に聞いてみた。
すると渡辺勝二氏は鼻息も荒く怒りに満ちた口調で言った。
「松田さん。山の挽歌、を本にした場合、その制作費は200万円などかかりません。1刷は1000部ですね。それなら50万円で作れます。文興社はとんでもない詐欺出版社です。あんな出版社にだまされてはいけない。あなたには200万円と言ってきたようですが、確かに文興社は著者に大体200万円くらい本の制作費の一部と言って請求しています。それだけでもう文興社は150万円以上の利益を得ています。文興社は本を売ることによって利益を出している出版社ではなく、本を作るという口実で著者から、巻き上げる製作費で莫大な利益を出している悪質詐な詐欺的な出版社です」
これを聞いて、ゆみこも文興社にだまされたことを確信した。
「わかりました。教えて下さって有難うございます。あやうく文興社にだまされる所でした。私も何とかして文興社との契約を取り消すよう動いてみます」
「松田さんは、もう文興社と出版契約を結んだのですか?」
「いえ。まだ文興社が一方的に出版契約書を送ってきただけでサインはしていません。仮契約はしてしまいましたが。文興社に出版に関する疑問を色々と電話で聞いているのですが、なかなか答えてくれないのです」
「そうですか。出版契約を結んでいないのなら、まだ本の制作は行われていないでしょう。早く手を打てば契約を反故にして、200万円もの大金を支払わなくて済む可能性はあると思います」
「そうですか。では頑張ってみます」
「文興社は非常に悪質な出版社です。実は私も自費出版業界のモラルの向上を目的として『文興社商法の研究』というわずかな内部資料を30部程度作成したのです。ところが、それが不運にも文興社の手に渡り、私を訴えてきたのです。名誉棄損、営業妨害だから1億円の損害賠償金を支払え、と言ってきたのです。文興社は数えきれない多くの著者から、ふんだくってきた法外な資金源で何人もの弁護士をつけて私を訴えてきたのです。これは名誉棄損ではなく文興社に対する批判封じです。私は堂々と戦う覚悟です。文興社は投稿者から送られてきた原稿を、おだてあげて、著者を舞い上がらせ、製作費の一部と言って法外な金額を著者から、ふんだくって、それで莫大な利益を上げている悪質出版社です。版権(本の所有権)は出版社にありますから、著者と出版契約をして200万円、著者からふんだくった後は本は自分で宣伝して売りな、です。著者はみな泣き寝入りしています。こんな悪質商法が許されていいはずがない」
「そうだったんですか」
「文興社だけじゃない。近代文〇社。新〇舎。碧〇社、なども同様です。協力出版などと銘打って、文興社と同じ手法で悪質出版をしている出版社は多くあります」
「そうなんですか?」
「ええ。そうです」
ゆみこは渡辺勝二からそれ以外でも出版に関する色々なことを教えてもらった。
さて、文興社が渡辺勝二氏を訴えた裁判の第一審では裁判長の判決は次のようなものであった。
「被告、渡辺勝二氏の『文興社商法の研究』は自費出版文化を守りたいという強い気持ちから公益を図る目的で作成されたものと考えられる。しかし『文興社商法の研究』は左側に文興社側の商法の事実が箇条書きで書かれており、その右側に渡辺勝二氏の見解が述べられている。これを読む者は、右側の渡辺勝二氏の見解だけを読む者もいる可能性がある。それによって文興社を批判的に見る者も出る可能性もある。よってその点は名誉棄損と考えられ、被告、渡辺勝二に300万円の支払いを命じる。なお訴訟費用の大部分(20分の19)は文興社の負担とする」
というものだった。
渡辺勝二氏は、このこじつけ判決に納得したわけではないが、これ以上、裁判を続けても意味は無いと考え控訴せず文興社に300万円支払って文興社と和解した。
しかし文興社はテレビ局、新聞社、全てに「全面勝利」とのファックスを送った。
さて。外国と違って日本、日本人のほとんどは裁判を好まない。裁判には弁護士をつけ高額な報酬を支払わねばならず、時間と金を非常に浪費するからだ。しかも判決は裁判長の気まぐれで決められ、裁判を起こしたからといって勝てるものでもない。
裁判長が異なれば判決はコロッと変わる。なので日本人は裁判を好まない。
しかし、ゆみこは違った。ゆみこは、それまで、えりもの森の裁判、サホロ岳ナキウサギの裁判、など不条理と思えることは堂々と裁判で訴えていた。たとえ判決に不服があっても、不条理なことに対しては、時間と金を費やしても戦う覚悟をもった肝の座った女だった。
ゆみこは文興社との仮契約を取り消そうと思った。
しかし相手は悪質な詐欺商法の出版社である。
それで、ゆみこは文興社とのやりとり、は後で裁判になった時の証拠として「メールでのやりとりでお願いします」と言った。
ゆみこの、冷静で堂々とした、物怖じしない態度に文興社も、「これはやっかいな相手だ」と思い、「仮契約は反故にしても構いません。200万円の全額返金にも応じます」との言質を取ることが出来た。
やったー、とゆみこが喜んだのはもちろんだが、ゆみこは、協力出版と銘打って、その実、本を作ることによって利益を出している出版社に対する強い義憤と悪質商法にだまされる被害者をださないようにとの思いは抑えることが出来なかった。
そんなある日の夕食の時である。
「お母さん。社会に対して言いたい事がたくさんあるんでしょ。それならブログをやってみない?」
娘の繭子が言った。
「えっ。ブログってあの何か日記みたいなもの?でもどうやって設定するのかわからないし。私はアナログ人間だから・・・・」
ゆみこは躊躇した。
「そんなに難しくはないわよ。お母さんは社会に対して言いたい事がいっぱいあるんだから、ブログでそれを発言したらいいと思うわ」
繭子は嬉しそうに言った。
・・・・・・・・・・
翌日の昼は日曜だった。
繭子は朝からパソコンをカチカチやっていた。
「繭子ちゃん。何やっているの?」
「へへ。いいこと」
1時間くらい経った。
「出来たわよ」
娘が大きな声で言った。
「どうしたの。何が出来たの?」
昼食の準備をしていた、ゆみこが娘のいじっていたパソコンを覗き込んだ。
「へへへ。お母さん。ブログの設定をしちゃったわよ。お母さんのブログよ」
「まあ、繭子ちゃん。そんな勝手にしないでよ」
「でももう設定しちゃったもん。まだ公開していないからタイトルやカテゴリーやプロフィールはお母さんが決めて」
しょうがないわね、と言いながらも、もう乗りかかった舟である。
ゆみこは、娘に教えてもらいながらブログを始める決意をした。
タイトルは。
エート。
何としようかしら?
ゆみこはストレートの美しい黒髪を掻きむしりながら考えた。
「ヒステリー女のブログ」「ザ・女瞬間湯沸し器」「独蜘蛛おばさんの批判箱」などなど。
いくつか考えたが「独蜘蛛おばさんの批判箱」で決定した。
名前は実名の「松田ゆみこ」にした。
プロフィールは以下のように書いた。
「北海道十勝地方在住。蜘蛛や野鳥、野生動物など自然に広く関心を持ち、自然保護活動に関わっています。寒いのは苦手ですが、北国の雄大な自然が大好きです。十勝自然保護協会会員。日本蜘蛛学会会員」
こうして松田ゆみこのブログ「毒蜘蛛おばさんの批判箱」が出来た。
一旦ブログが出来てしまえば、あとは記事のタイトルを決めて、記事をかけばいいだけだった。
ゆみこは自分が関わった文興社だけではなく共同出版・協力出版・共創出版などと名乗っている出版社すべての動向を調べて記事にしていった。
ネット上でいくつもある掲示板で匿名で文興社の批判を書く人はたくさん居たが、それらはみな感情的な幼稚な悪口ばかりだった。
その中で実名を出して、しっかりと読むに耐える記事を書いているのは、日本で、松田ゆみこ一人だけだった。
ゆみこは文興社にだまされた被害者ではない。
ゆみこが出版の仮契約をしていた、父の遺稿・山の挽歌、は、契約解除することが出来、200万円の全額を文興社に支払うことなく済んだのであるから。
しかし、ゆみこは正義感が強く度胸があったので、自分の恨みを書きなぐるのではなく、冷静に、協力出版の問題点を書いた。
そして、excite blogで、「共同出版・自費出版の被害をなくす会」というブログをも開設した。
ゆみことしては、協力出版をしている出版社を潰そうという意図は全く無く、原稿を投稿しようとする出版に疎い素人を錯誤するようなことは止めて欲しい、という思いだった。
ゆみこは記事に対して誰からでもコメントを受け入れるように、コメントをオープンにした。
しかし、ゆみこの記事に文興社は怒り狂った。
文興社は黙っていなかった。
・・・・・・・・・・・
ある日、日本蜘蛛学会会員からニュースレター「遊絲」が来た。
日本蜘蛛学会は会員220人の小規模学会である。
「この度、札幌市で活動報告を兼ねた懇親会を催したいと思っております。会員の方は奮って御参加ください」
と書かれてあった。
ゆみこは返信用ハガキの「出席」の方に〇をして投函した。
当日。ゆみこは質素倹約をモットーにしているので、白のリネンタッチトップスと青いスカートでANA Crowne Plazaホテル千歳へ行った。
一階の宴会場には、すでに20人ほどの学会員が来ていた。
ゆみこは実名でブログを出している上、元ミス日本で、その美しさは、アラサーになった今でも色あせていないので日本蜘蛛学会では皆の人気者だった。
「やあ。松田さん。お久しぶり」
「ブログ拝見していますよ。えりもの森裁判、サホロ岳ナキウサギ裁判に次ぎ、今度は、共同出版批判ですか。いやあ。松田さんは勇気があるお方だ。文興社から何か嫌がらせをされていませんか?」
「皆様。心配して下さって有難うございます。しかし大丈夫です。日本は言論の自由が保障されています。私は公共の福祉を目的として批判記事を書いています。向こうも言論には言論で対応してくるでしょう」
と堂々と言った。
そのように、ゆみこは悪いことは悪い、と物怖じせず堂々と言う性格だった。
日本蜘蛛学会の会合が終わった帰り。
・・・・・・・・・・・・
ゆみこは路上でタバコを吸ってる、北海道一の札付きの不良高校、北悪道工業高校の生徒10名を見かけ、
「あなた達、高校生でしょ。タバコは止めなさい」
と果敢にも注意したところ、リーゼントにサングラスの不良生徒達は立ち上がって、ゆみこに詰め寄った。
「なんやと。オバハン。われ。ええ度胸しとるやんけ。わしらを誰だちゅう思うとるねん」
と何故か北海道なのに関西弁ですごまれて、腕をつかまれたが、
「離しなさい」
とゆみこは毅然と注意した。それに怒った不良どもはゆみこを取り囲んだ。
「へへ。いいケツしてるやんけ」
一人がゆみこの尻をいやらしい手つきで触った。
「このチンピラ不良どもー」
ゆみこは、天地が裂けんばかりの声で怒鳴って、腕を掴んでいる前の男に思い切り膝で金蹴りを食らわせた。それが見事に命中し、男は、「うぎゃー」と叫び、玉を押えてピョンピョン跳ね回り、地面を這い回って悶え苦しんだ。大切な玉が潰れてしまったかもしれない。ゆみこの怒髪天を突くような声と虎のような眼差しに、不良達は、怖れをなして、スゴスゴと逃げてしまった。ゆみこはパッパッと服を掃って、唖然としている衆人をあとに、その場を去ろうとした。その時、一人の男がゆみこに駆け寄ってきた。
「あなたのド迫力に感服しました。どうか我が全日本女子プロレスに入って頂けないでしょうか」
声を掛けてきたのは、ヒール(悪役)がなく、今一人気がでない全日本女子プロレスのスカウトマンだった。
「いえ。私はか弱い女で、とても運動は出来ません」
と丁重に断わった。その日、ゆみこは家に帰ってから、「高校生の喫煙について」と題してブログ記事を書いて投稿した事は言うまでもない。
ゆみこは文興社に限らず共同出版をしている出版社、すべての動向を注意深く見て記事にしていった。
しかしその中でも文興社が一番、悪質なのがわかってきた。
尾崎浩二氏という無名の自称ジャーナリストが「危ない!共同出版」という本を出版した。
ゆみこは、共同出版を批判する正義感のある人もいるのだな、と感心してその本を買って読んでみた。しかし驚いたことに「危ない!共同出版」では共同出版社すべてを公正・中立な立場から批判しているのではなかった。しかもページ数もごくわずかだった。「危ない!共同出版」ではもっぱら新〇舎だけを批判していて、他の共同出版社の批判は全くなかった。新〇舎は自社ビルを持っておらず、貸しビルにテナント料を払って共同出版をしていた。しかしこの「危ない!共同出版」やネットの掲示板での新〇舎批判によって、新〇舎に原稿を投稿する者の数は激減し、新〇舎は高額なテナント料を支払うことが出来なくなってしまって倒産した。出版社が倒産してしまっては出版社から協力出版で出版している著者たちの本は発売出来なくなってしまう。そこで新〇舎の著者たちの本を発売できるようにと新〇舎は文興社に事業譲渡した。そして尾崎浩二氏はリタイアメント情報センターという協力出版に関する相談をするNPO法人の所長になった。しかしこのリタイアメント情報センターは文興社の傘下の組織であった。文興社は尾崎浩二という者を使い新〇舎を倒産させ、新〇舎の著者たちの本を全部、文興社から出版を継続して出来るようにしようと文興社は最初から計画していたのである。そして、その通りになった。リタイアメント情報センターはうわべは、協力出版・自費出版に関する相談をするという名目だが、実質的には、すべての相談者を文興社から出版することを、言葉巧み勧める組織なのである。つまりこれは文興社にとって協力出版社の競争社である新〇舎を潰し協力出版社は文興社一社にしようという文興社の計画だったのである。それ以外でも文興社の悪質商法は数えきれないほどたくさんあった。

ある時、ゆみこに柴田晴郎という歴史に詳しい男からメールが届いた。
それには、「あなたの主張に賛同しました。私は本の出版にある程度くわしいので、出版に関してわからないことがあったら何でも聞いて下さい」と言ってきた。ゆみこも初めは柴田晴郎を信じた。しかし柴田晴郎は実は文興社の工作員で、ゆみこの貴重な時間を奪って、ゆみこに多大な労力を払わせて疲労させるのが目的だったのである。

ゆみこは、協力出版の問題を、ブログで、ひるむことなく批判し続けた。
ゆみこは、文興社に「共同出版と銘打って文興社に出版権のある本をつくり、著者から本の制作費の一部と言って法外な金額を取って、本を売ることによってではなく、本を制作する費用によって利益を得て経営している貴社の商法は錯誤的、詐欺的商法であると思います。泣き寝入りしている著者もたくさんいます。それは間違っているのではないでしょうか?」という内容の公開質問状を送った。
しかし文興社は良心のカケラも無い悪質な人間ばかりなので、ゆみこの質問状は無視した。
文興社はゆみこに対し匿名でウイルスメールを送ったり、さらには営業妨害だからブログの文興社批判の記事は削除するように言ってきた。
しかし、ゆみこは気性の強い女だったので、文興社の悪質な要求にひるむことなく、ブログで文興社を批判し続けた。
・・・・・・・・・・・・・
2010年の7月7日のことである。
風呂の蛇口をひねったがお湯が出てこなかった。
ガスはつく。
どうしてだろうと思って、ゆみこは、風呂のお湯の栓を開けたまま、家の外に出て給湯器を見てみた。すると給湯器は動いていなかった。
給湯器は20年前に設置したものなので、もう寿命になったのだろう。
ゆみこは急いで、給湯器交換業者に電話した。
「もしもし。給湯器が故障してしまったのですが、見ていただけないでしょうか?」
「はい。わかりました。今、使っている給湯器はいつ設置したのですか?」
「20年前です」
「音はなりますか?」
「いいえ。全く鳴りません」
「そうですか。給湯器の寿命は10年が目途です。まず寿命で交換時期だと思います。7万円ほどの給湯器がありますから、交換ということでよろしいでしょうか?」
「ええ。よろしくお願い致します」
10分ほどで給湯器交換業者が来た。
修理人は給湯器を開いた。
中は激しく劣化していた。
「やはり、もう寿命ですね。交換しかないですね。新しい給湯器は7万円ほどですが、交換でよろしいでしょうか?」
「ええ。よろしくお願いします」
「では交換にとりかかります。交換には1時間ほどかかりますので、家の中で待っていて下さい」
と修理人は言った。
修理人は給湯器の交換の作業を始めた。
心の優しいゆみこは、
「素早い対応を有難うございます。お茶とお菓子を召し上がって下さい」
と言って、盆の茶と和菓子を載せて、修理人の前に置いた。
すると修理人は、
「これはこれは、どうも有難うございます」
と言って、由美子の差し出した茶を飲んだ。しかし修理人は茶を飲み終わると、人が変わったように素早い手つきで、サッと懐からタオルを取り出して、いきなり由美子の口に当てた。
「な、何をするんですか?」
修理人の、いきなりの訳の分からない行為に、ゆみこは大声を出して抵抗した。
しかしなぜか急激な眠気がゆみこを襲ってきて、ゆみこの意識は薄れていった。

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協力出版物語(小説)(下)

2024-09-24 11:00:16 | 小説
(2)

由美子は目を覚ました。
見知らぬ、どこかの部屋の一室だった。
見知らぬ大勢の男たちが、由美子を取り囲んでタバコを吹かしながら、ニヤニヤ由美子に視線を向けていた。
「ここはどこ?あなた達は一体、誰なのですか?」
由美子は回りの男たちを見まわしながら、おびえながら言った。
「何処だと思う?」
一人の男が、薄ら笑いを浮かべながら由美子をからかうように聞いた。
「わ、わかりません。教えて下さい」
由美子は高まってくる心臓の鼓動を感じながら聞いた。
「ふふふ。教えてやろう。ここは東京の文興社の本社の社長室さ」
男はふてぶてしい口調で言った。
「な、なぜ私が東京の文興社の本社に居るのですか?」
由美子の不安は募っていき、得体の知れない恐怖から、その声は震えていた。
由美子には、さっぱり訳が分からなかった。
由美子の記憶にあるのは、北海道の自宅にいた時、給湯器が故障して修理の人が来てくれて給湯器を交換してくれた時のことが、記憶している直近のことだった。
心の優しい由美子は、修理人に、「お疲れでしょう。お茶とお菓子を召し上がって下さい」と言って、盆の茶と和菓子を載せて、修理人の前に置いたのである。
修理人は、「これはこれは、どうも有難うございます」と言って、由美子の差し出した茶を飲んだ。修理人は茶を飲み終わると、素早い手つきで、サッと懐からタオルを取り出して由美子の口に当てた。「な、何をするんですか?」庭師の、いきなりの訳の分からない行為に対して大声を出したのが、由美子が覚えている最後の記憶だった。その後、由美子は気を失ってしまったのである。
それが、どうして今、自分が東京の新宿の文興社の本社に居るのか、由美子には、さっぱりわからなかった。
「ふふふ。教えてやろう。確かにあの給湯器は20年前に設置された物だが、まだ使えたんだ。しかし、わざと故障させて使えなくしたんだよ。そして、あの給湯器の修理人に100万円と引き換えに、ある仕事を頼んだのさ。給湯器の取り付けの、合間に、お前の口をタオルで塞げと。あのタオルにはクロロホルムがたっぷり沁み込んでいたのさ。我が社の社員が3人、車でお前の家の近くに、ひかえていたのさ。眠ってしまったお前を、車に乗せ、北海道から青函トンネルを抜け、東北自動車道を走らせて、お前をここまで連れてきたってわけさ」
男は勝ち誇ったように言った。
「な、何でそんなことをしたのですか。これは犯罪ですよ。私は警察に訴えます」
由美子は男たちをにらみつけて激しい口調で言った。
「何でそんなことをするのですか、だとよ。トロい女だな。そんなこともわからないのか?」
男が言うと、皆が、わっははは、と嘲るように笑った。
「本当にお前を拉致した理由が分からないのか?」
男が念を押して確かめるように聞いた。
「わ、わかりません」
由美子は堂々と言った。
「トロい女だな。じゃあ教えてやるぜ。お前は我が社に何をした?」
男は余裕の口調で、口元を歪めながら言った。
「な、何って何でしょうか、私は何も違法なことはしていません」
由美子はキッパリと言った。
「ふざけるんじゃないよ。お前はブログやJANJAN記事で、さんざん、我が社の信用を落としてきたじゃねえか」
男は怒鳴りつけるように言った。
男は続けて言った。
「お前が2007年にブログを始めて、我が社を批判する記事を書くようになってから、我が社に送られて来る原稿が、それまでの1/3までに減ってしまったんだ。全部お前のせいだ。お前は自分のしたことが、とんでもない営業妨害の名誉棄損だということが、わからないのか?」
男は怒鳴りつけるように言った。
それは違います、と由美子は言った。
「た、確かに私は、2007年にブログを始めて、文興社に対して批判的な記事を書いてきました。しかし私は、事実を調べて事実を書いてきただけです。公共の福祉に反していませんから、私の書いてきた記事は、営業妨害でも名誉棄損でもありません」
由美子はキッパリと言った。
「ふざけんじゃねえ」
窓際に居た別の男が怒鳴りつけた。
「何が営業妨害でも名誉棄損ないだ。これは立派な営業妨害だ」
男は口角泡を飛ばして言った。
「そうだ。そうだ。これは営業妨害、名誉棄損いがいの何物でもないぞ」
男はドスの効いた声で恫喝的に言った。
その場に居合わせた、みな、男と同じことを唱和した。
由美子は文興社の無法な態度に驚いた。
「と、ところで、なぜ私にクロロホルムを嗅がせたり、意識のない私を車で輸送したりしたのですか。これこそ完全な犯罪ですよ」
由美子は理路整然とした態度で言った。
「その理由がわからねーか?」
男が由美子を小ばかにするような口調で言った。
「わかりません」
由美子はキッパリと言った。
「やれやれ。トロい女だな。わからねーなら教えてやるよ。我が社に対する、お前の営業妨害、名誉棄損のオトシマエをつけさせるためさ。俺たちに詫びを入れさせるためさ」
ここに至って、由美子は文興社のアクドサに気づいた。
「あなた達は卑劣です。あなた達のしていることは犯罪です」
由美子はキッパリと言った。
「わかってねーな。俺たちは法を守ろう、なんて気持ちはカケラも持ち合わせていないんだぜ」
男は堂々と言った。
「卑劣です。あなた達は卑劣です」
由美子は腹から声を振り絞って立て続けに叫んだ。
しかし、文興社の社員たちは、由美子の訴えなど、どこ吹く風といった様子だった。
「おい。この女の詫び、まず何からする?」
男が皆を見回して言った。
「決まってんだろ。今まで散々、煮え湯を飲まされてきたんだ。まず素っ裸になって、オレ達の前で裸踊りをしてもらおうじゃねえか」
一人の男が言うと他の男たちも、おう、そうだそうだ、と言い囃した。
裸踊りと聞いて、咄嗟にそのイメージが由美子の頭に映って、由美子はぞっとして全身に鳥肌が立った。
「おう。由美子。まず着ている服を全部、脱いで、素っ裸になりな」
男が恫喝的な口調で言った。
「ほら。早く脱げ」
皆が囃し立てた。
「嫌です。そんなこと。あなた達は人間としての良心というものは無いのですか」
由美子は目を吊り上げて言った。
「強情な女だ。自分で脱ぐのが嫌というのならオレ達が脱がすまでだぞ」
一人の男が言った。
「それが嫌ならオレ達でお前を素っ裸にして浣腸するぞ」
別の男が言った。
一人の男が大きな、1000mlのガラス製浣腸器と、ぬるま湯で満たされた大きな洗面器を由美子の前に置いた。
「ふふふ。この洗面器には1リットルのグリセリンが入っているぜ。お前が自分で服を脱がない、というのなら、お前を俺たちが脱がせ、後ろ手に縛り、四つん這いのポーズにして、こいつを全部、お前の尻の穴に注ぎ込んでやる」
「ふふふ。1リットル全部、注ぎ込んでやる。そしてトイレには行かせないぜ。お前は便を排泄したい苦しい欲求に耐えるか、オレ達の前で、クソを大量にぶちまける、かのどっちかだ。お前が苦しみ、のたうち回る姿、そしてクソをぶちまける姿、をしっかりビデオに撮ってやる」
男たちが由美子に、そんな脅しをした。
由美子は、なかなか決断がつかなかった。
悪魔たちは実際、それをやるだろう。
由美子は、ぞっとしてすくんでしまった。
由美子は眉を寄せて、渋面で悩んでいた。
由美子は今まで、夫いがいの男に体を見られたことは一度もない。
その由美子が迷う姿を見るのも、悪魔たちにとっては、この上ない楽しみだった。
健全で自然や動物を愛する由美子にとってSМプレイなどというものは、訳の分からない、頭のおかしな人間のする行為としか思えなかった。
由美子も子供の頃、便秘になったことがあり、自分で浣腸した経験はあった。
誰に見られているわけでもなく、イチジク浣腸、1本だったが、尻の穴に、プスッとイチジク浣腸の茎を差し込む恥ずかしさ、そして液体を注ぎ込む恥ずかしさ、そして苦しい便意が起こってきた経験はしているので、浣腸の苦しさは知っている。衆人環視の中、四つん這いにされ、大きな浣腸器で浣腸され、悶え苦しんだ挙句、一気に便を排泄するのを見られ、さらに、それをビデオで撮影される恥ずかしさには、とても耐えられなかった。
しかも文興社の悪質商法をブログ記事で批判してきた、その社員たちの前で裸になることなど屈辱の極みだった。
「ふふふ。脱がないというのなら浣腸だな」
そう言って、決断できず迷っている由美子に男たちが近づいてきた。
「ま、待って」
由美子が制した。
男たちの足がピタリと止まった。
「どうした?」
男たちは、せせら笑って立ち止まった。
「ぬ、脱ぎます」
由美子は、とうとう観念して、顔を真っ赤にして、小さな声で言った。
由美子は今まで手厳しく文興社批判のブログ記事を書いてきた。
社長の瓜谷綱延にまで公開質問状を送りもした。
当然、由美子は、文興社は自分のことを快く思っていなく、目障り極まりない存在と思っていることは容易に推測できた。文興社と由美子は敵対関係だった。
由美子は、文興社に騙されて、法外な金を払って、文興社から著者として本を出版した被害者ではない。なので文興社に恨みはない。協力出版と銘打って、著者を心地の良い言葉でおだて、本の制作費用といって儲けるアクドイ商法の犠牲者を無くしたいという、正義感から文興社批判の記事を書いてきたのである。版権が文興社にあるから、契約を交わして金を受けとったら、もう文興社は、著者の本を裁断処分しようが、どうしようが一向に構わないのである。
むしろ、文興社は月に500冊も協力出版本を出版するので、倉庫代がかさみ、そしてそもそもプロ作家でない無名の一般人の本など、売れないのである。なので、宣伝など全くせず、宣伝は自分でやれ、それで、友人、親戚、知人なと数人は買うだろう。あとは、倉庫代がかさむから、裁断処分にする、というのが、文興社商法なのである。由美子は文興社に騙されそうになった時、真っ先に考えたのは、この悪質商法での被害者を無くさなくては、という強い正義感であり、悪質商法に騙されて泣いている著者たちに対する憐憫、慈愛の念であり、これ以上、文興社の悪質商法に騙される被害者を出してはならない、という強い正義感だった。
しかし由美子は、天使のように心が優しいので、悪を憎んで人を憎まず、であり、文興社を憎んではいなかった。しかし文興社の社員たちは、良心のカケラも持ち合わせていない外道の集まりだったのである。そのため、由美子のブログには、文興社からの嫌がらせのコメントが、多く書き込まれた。さらに柴田晴郎などという、実名の人間を使って由美子に、散々な嫌がらせ、をしたのである。
由美子は膨大な時間と手間をかけて、それらの嫌がらせに対応した。
そういう辛抱強さも由美子は持っていた。
しかし由美子は人間を信じていた。
どんなに文興社が自分を嫌っていても、文興社も言論には言論で対応してくるだろうと確信していたのである。
しかし現実は違った。ことを由美子は今、思い知らされた。
文興社は犯罪をも何とも思わない、無法者の集団だったのである。
「ほら。由美子。脱ぐ、と言っただろう。早くとっとと服を脱げ」
男が吐き捨てるように言った。
「ほら。早く脱ぎな。脱がないと、オレ達が強引に脱がして、浣腸するぞ」
グリセリン液のたっぷり入った浣腸器を持っていた男が、立ち上がって由美子に近づいてきた。
「わ、わかりました。ぬ、脱ぎます」
由美子は声を震わせながら言った。
由美子は横座りしたまま、着ていたジャケットを、手をブルブル震わせながら、取った。
これで由美子は、ロングスカートに、白いシャツという姿となった。
シャツの下には、豊満な乳房を納めたブラジャーの輪郭が、クッキリと見えた。
二つの大きな果実を納めたブラジャーは内側から白いシャツを力強く押し上げて、シャツに二つの仲良く並んだ、こんもりとした盛り上がりを形作っていた。
「おおー。すげー、おっぱいじゃねえか」
男たちは、思わずゴクリと唾を呑み込んだ。
中には、もうすでに、股間がテントを張っている者もいた。
「おい。シャツも脱いで、スカートも脱ぐんだ」
男が言った。
由美子は、ワナワナと手を震わせながら、シャツのボタンを上から外していった。
シャツの内側からは、胸の上に仲良く並んで、張りついている二つの乳房を、窮屈そうに納めて、形よく盛り上がっている、白いブラジャーの二つの膨らみが、顕わになった。
「おい。由美子。シャツをとれ。そしてスカートも降ろせ」
男が言った。
由美子は今にも泣き出しそうな、哀愁のある憂いの表情で、シャツを腕から抜きとって外した。そして、中腰になり、スカートのホックを外し、スカート下げて、足から抜きとった。
悪魔どもの命令には逆らえないと覚悟が出来ていたのである。
スカートを降ろしたことによって、ムッチリとした、大きな尻の肉を納めて、股間に貼りついている、由美子の白いパンティーが露わになった。
由美子はスカートを抜きとると、必死で両手で胸の膨らみを押さえながら、ペタンと座り込んでしまった。
由美子は今にも泣き出しそうな感じだった。
無理もない。
今まで、散々、強気にブログ記事で批判してきた文興社の男たちに、乳房と尻の肉を覆い隠すだけの下着姿で取り囲まれているのである。
どうして、こんな屈辱にか弱い女の精神が耐えられよう。
しかし、男たちは、そんな由美子の心を見透かしているかの如く、ことさら意地悪く、ニヤニヤと、ピッチリと閉じ合わせた由美子の体に、いやらしい視線を向けている。
「ふふふ。どうだ。由美子。今の気持ちは?」
ポタリ。
由美子の目から、キラリと光る一筋の涙が頬を伝わって流れた。
「おい。由美子。こんなことで泣くくらいなら、女の分際で、オレ達に戦いを挑もうなんて考えるんじゃねーよ」
「お前もバカなヤツだぜ。女のクセにオレ達をコケにしよう、なんて大それた事をするから、こんなザマになるんだぜ」
悪魔たちは、由美子を徹底的に貶めるような言葉を吐きかけた。
由美子は、太腿をピッチリと閉じ、両手で胸の膨らみをヒシッと覆うことによって、狂せんばかりの屈辱に耐えた。
普通の女なら、とっくに泣き崩れていただろう。
人並みはずれた強靭な精神の由美子だから、こんな屈辱にも、かろうじて耐えれたのである。
しばしの時間が流れた。
由美子は、この屈辱的な姿を見られることで、悪魔たちの、復讐の炎が消え、彼らの溜飲が下がることを、祈るように期待した。
しかし事態はそうは動かなかった。
「おい。由美子。座ってじっとしていないで、立ち上がれ。お前の下着の立ち姿を見せろ」
男の一人が言った。
「由美子。さあ。立ちな。下着を着ているから恥ずかしくはないだろう」
「お前の立ち姿を見たら、予定していた、裸踊りは勘弁してやるぜ」
最後の発言が由美子の心を動かした。
下着姿を見ることで、彼らの溜飲が下がるのなら・・・
自分の下着姿を見ることで彼らが満足するのなら・・・
そう思って、由美子は、横座りから、ゆっくりと立ち上がった。
ヒシッと胸の二つの膨らみを覆っている白いブラジャーを覆い隠していた両手の一方を、パンティーの谷間に当てた。
それでも恥肉を納めて盛り上がっている女の部分であるビーナスの丘は隠しきれなかったが。
由美子は片手で胸の膨らみを覆い、片手で恥部を覆った。
それは、ボッティチェリのビーナスの誕生の図だった。
由美子の白いパンティーと白いブラジャーだけの下着姿は美しかった。
華奢な肩、細い腕、見事にくびれた腰。その割には、豊満な胸の膨らみと、大きな尻、それに続く大きな太腿。まさに理想のプロポーションであり、グラビアアイドルとして、週刊誌の表紙を飾っても何ら不思議ではなかった。
下着姿を見られることは恥ずかしかったが、下着姿はビキニと同じように、女の恥ずかしい所を隠している。
由美子は、彼らが自分の下着姿を見ることで、彼らの溜飲が下がって、解放されるのなら、それに甘んじよう、と思った。
彼らの視線は女の恥肉を納めて、こんもりと盛り上がっている、ビーナスの丘に集中していた。
「おお。何て美しい体つきだ」
「何て大きな尻なんだ」
「何て大きな太腿なんだ。しがみついて頬ずりしたいな」
男たちの発言は、由美子をおとしめ、嘲笑するものから、由美子の肉体美を賛美するものに変わっていた。
無理もない。
由美子は大学1年の夏、友達に誘われて、海水浴場に行ったことがあるが、その時、由美子は友達が選んでくれた、ビキニを着て、浜辺の出た経験があるのだが、由美子は海水浴場にいる男たち全員の激しい、食い入るように向けられた視線を痛いほど感じたのである。
「おー。ハクイ女」
「女優かグラビアアイドルじゃねーか」
という声も聞こえてきた。
由美子は恥ずかしくなって、友人の手をヒシッと掴んで、友人に頼んで、ビーチの端の方の、人があまりいない所にビニールシートを敷いてもらって、日光浴をした経験があるのだが、海水浴場の男たち全員の視線は由美子に集まっていた。
由美子がビキニを着て、衆人の前に、ビキニに覆われているとはいえ裸同然の体を晒すのは、恥ずかしいくはあったが、自分の肉体が、海水浴場の男たちを惹きつけていることに、ほの甘い、心地よい快感が起こっていたことも事実だった。
今、由美子はそれと同じ気分だった。
男たちに取り囲まれて、下着姿をまじまじと見られているのは屈辱とはいえ、それで彼らが満足して、それで放免されるのなら、それもよかろう、という気持ちに由美子は変わっていたのである。
しばしの沈黙の時間が経った。
(さあ。私の下着姿を見ることで満足できるのなら、見るがいいわ)
由美子は、そんな優越感に浸っていた。
しかし、この後のストーリーは、由美子の予想していた展開にはならなかった。
由美子の背後にいた文興社の社員が二人、由美子に気づかれないよう、抜き足差し足で由美子に近づいてきたのである。
由美子はそれに気づいていない。
男の一人が、素早く由美子のブラジャーのホックをプチンと外してしまったのである。
豊満な由美子の乳房を包んでいた、ブラジャーがその弾力を失って、一気に収縮した。
そして男はブラジャーの肩紐を肩から外してしまった。
肩紐はブラジャーを由美子の体に取りつけている機能を失って、肘の辺りに、だらしなく、引っ掛かっているだけの状態になった。
「ああっ。な、何をするの?」
由美子は思わず、大声で叫んだ。
由美子は、何とかブラジャーが落ちてしまわないように、必死で両手でブラジャーを押さえた。
と、その時。
由美子の背後に居た、もう一人の男が、素早く、由美子のパンティーを掴んで、一気に、サーと引き下げてしまったのである。
「ああっ」
由美子は、こういう時には女は誰でもするように、反射的に両手でアソコを隠した。
男の一人は、由美子の肘が伸びたのをいいことに、由美子のブラジャーの肩紐を由美子の腕から抜きとってしまった。
もう一人の男は、由美子のパンティーを足首まで引き下げ、足首を持ち上げて、足から抜きとってしまった。
一瞬のことだった。
これで由美子はブラジャーもパンティーもむしり取られて、一糸まとわぬ丸裸になってしまった。
由美子は乳房とアソコを手で隠しながら、クナクナと座り込んでしまった。
「あっははは」
部屋にいる男たち全員が嘲笑した。
「卑劣だわ。あなた達は卑劣だわ」
由美子は涙まじりに言った。
「ふふふ。由美子。セクシーな下着姿をオレ達に見せつけて、いい気になっていたようだが、残念だったな」
男が言った。
「ふふふ。由美子。たかが下着の立ち姿を見ただけで、お前のしてきた営業妨害をチャラにしてやろう、なんてオレ達が思うわけがねえんだよ」
「ふふふ。最初っから、こういうふうに、お前に期待をもたせて、いい気持ちにさせておいて、そして、貶めてやろう、という計画を立てていたのさ」
悪魔たちは、そう言って、あっははは、と哄笑した。
由美子は文興社の社員たちの、卑劣さを、あらためて実感した。
もう由美子は文興社の社員たちの言う事を絶対、信じない確信をもった。
由美子からブラジャーとパンティーをとった男は、由美子のパンティーを調べ出した。
パンティーを裏返して、体に触れている面を出した。
パンティーのクロッチ部分には、うっすらと黄色がかった一条の線の跡が見えた。
男は由美子のパンティーを、突きつけるように差し出して、
「おい。由美子。この染みは何だ?」
と聞いた。
由美子は、それを見ると真っ赤になった。
「おい。由美子。この染みは何だ、と聞いているんだ」
由美子が答えないので男は再度、恫喝的な口調で聞いた。
しかし由美子は答えられない。当然である。花も恥じらう乙女の由美子に、そんなことを答えられるはずがない。答えられないことを知った上で、悪魔どもは由美子に意地の悪い質問をしているのである。
由美子は顔を真っ赤にして俯いている。
「やれやれ。オレ達に戦いを挑もうという、のなら、パンティーにオシッコの跡なんて、つけちゃいけねーぜ。子供じゃねーんだから」
男はそんな揶揄をした。
由美子は真っ赤になった。
「どれ、匂いを嗅いでみるか。勇ましい女戦士のパンティーの匂いを」
そう言って男は由美子のパンティーの染みのついたクロッチ部分に鼻先を近づけた。
「や、やめてー」
黙っていた由美子が、羞恥心に耐えきれず、叫んだ。
しかし悪魔たちは、由美子の叫びなど、どこ吹く風と聞く耳など持たない。
悪魔たちは、ニヤニヤ笑いながら、裏返した由美子のパンティーの染みのついたクロッチ部分に鼻先を当てた。
そしてクンクンと鼻をヒクつかせた。
「おおー。スルメに酢を混ぜたようなニオイがするぜ」
男はことさら由美子を貶めるように、大きな声で言った。
「女はマンコの中までは洗わないんだよ。何故だか知っているか?」
隣にいた文興社の社員が聞いた。
「知らなかった。なぜ洗わないんだ?」
悪魔男が聞き返した。
「女の膣内にはデーデルライン桿菌という菌があってな。それがグリコーゲンから乳酸を作っているんだよ。そのため膣内がpHが5.0くらいに保たれていて、それが雑菌の侵入を防いでいるんだよ。それが膣や子宮を雑菌から守っているんだよ。だから女は膣の中までは決して洗わないんだよ」
男が説明した。
「ふーん。そうだったのか。知らなかったぜ。男は、毎日、包皮を剝いて亀頭についた恥垢をちゃんと洗って清潔にしているというのにな。女って不潔なんだな」
悪魔たちは感心したように言った。
そして、なぜ由美子がパンティーを嗅がれそうになった時、声に出して嫌がったかを理解した。
「おい。オレにもパンティーの匂いを嗅がせてくれよ」
「オレにも」
「オレにも」
男たちが騒めき始めた。
「おい。由美子。パンティーを返してほしいか?」
男が聞いた。
「か、返して下さい」
由美子は泣きじゃくりながら言った。
「だったら、ここまで取りに来な」
そう言って男は由美子のパンティーをつまんだ手を由美子の方に伸ばした。
パンティーは男の手から、物憂げにダランと垂れていた。
由美子は、乳房とアソコを手で隠しながら、ゆっくりと立ち上がり、ヨロヨロと覚束ない足取りで、男の方に歩み寄った。
その時、反対側にいた男が、「おい。オレにも由美子のパンティーの匂いを嗅がせてくれよ」と言った。
由美子は男の持っている自分のパンティーをとろうと手を伸ばした。
すると男はサッと手を引っ込めた。
「ああっ」
由美子はパンティーを取れず困惑した。
「ふふふ。あいつがお前のパンティーの匂いを嗅ぎたいと言っているんだ。残念だったな」
と男はふてぶてしい口調で言った。
男は由美子のパンティーをクシャクシャと丸め、ほーらよ、と言って、反対側の男に投げた。
小さく丸まった由美子のパンティーは部屋の中の宙を飛び、反対側の男の手にキャッチされた。
パンティーを受けとった男は、由美子のパンティーの染みのついたクロッチ部分に鼻先を当てた。
そしてクンクンと鼻をヒクつかせた。
「おおー。本当だ。スルメに酢を混ぜたようなニオイがするぜ」
男はことさら由美子を貶めるように、大きな声で言った。
そしてパンティーを投げた男と同様に、
「おい。由美子。パンティーを返してやるぜ。オレはウソは言わない。だから、ここまで取りに来な」
そう言って、男は由美子のパンティーをつまんだ手を由美子の方に伸ばした。
由美子は頭の中がグチャグチャになってしまっていて、もう正常な判断力が無くなっていた。
そのため、「返して下さい」と言ってヨロヨロと覚束ない足取りで、男の方に歩み寄った。
その時、別の所にいた男が、「おい。オレにも由美子のパンティーの匂いを嗅がせてくれよ」と言った。
男は由美子のパンティーをクシャクシャと丸め、ほーらよ、と言って、反対側の男に投げた。
小さく丸まった由美子のパンティーは部屋の中の宙を飛び、反対側の男の手にキャッチされた。
パンティーを受けとった男は、由美子のパンティーの染みのついたクロッチ部分に鼻先を当てた。
ここに至って由美子は悪魔たちは、パンティーを返す気などないのだ、ということを100%確信した。
「うわーん」
由美子は泣きながら、床の上に座り込んでしまった。
由美子のパンティーのパス回しが部屋にいる文興社の社員たち全員に行われた。
男たちは、パンティーを受けとると、
「うわー。本当だ。オシッコの跡がついているよ」
と言ったり、クロッチ部分に鼻を当てて、パンティーの匂いを嗅いで、
「うわー。本当だ。スルメに酢を混ぜたようなニオイがするぜ」
と言ったりした。
由美子にとってこれ以上の屈辱はなかった。
毅然とした態度で堂々と文興社を批判するブログ記事を書いてきた由美子。
文興社の反論や嫌がらせは覚悟していた、由美子だっだが、まさか、こんな非道な犯罪までするとは思っていなかったのである。
しかし悪魔どもは人間なら必ず持っているはずの良心というものを、完全に捨て去っていたのである。
「おい。由美子。お前は、こんな臭いパンティーを履きながら、オレたちを批難していたのか。恥ずかしくないのか」
などと、由美子を揶揄した。
「ふふふ。裸になったくらいで、オトシマエがついたなどと、甘ったれたことを思うなよ。お前の記事のおかげで、投稿者が1/3に減ってしまったんだ。年間の損失額は低く見積もってみても、10億だ」
「おい。由美子。オレ達をコケにした詫びを言え」
男たちは恫喝的な口調で言った。
しかし由美子に答えられるはずがない。
由美子は正当な批判記事を書いてきただけであって、悪いのは詐欺的商法をしている文興社の方なのだから。
しかし無法者どもに、そんなことは通用しない。
黙っている由美子に、男の一人が一枚の紙を放り投げた。
「おい。由美子。どうしても詫びを言わないというのなら、ここに書いてある文を読め。土下座してな」
男は恫喝的な口調で言った。
由美子はおそるおそる、その紙を開いてみた。
それは全身の毛穴から血が噴き出るかと思うほど、の屈辱的な文章だったからだ。
・・・・・・・・・・・・・
それには、こう書かれてあった。
「私、松田ゆみこは女の分際で違法なことは全くしていない文興社様をさんざん、誹謗中傷、営業妨害してきました。しかし、それが全くの誤りだと気づきました。私は自分の浅はかなワガママから文興社様に10億円の損害を出してしまいました。これは死んでも許されることではありません。私はこれから文興社様の奴隷として、文興社様の命じることには全て従います。まずは文興社の方々に私の裸踊りを見せることで、私の償いの始まりにしたいと思います。どうぞ、たっぷり私の裸踊りをご覧ください」
紙には、こう書かれてあった。
何という強悪な人間たちだろうと由美子は思った。
文興社の悪魔たちはクロロホルムを嗅がせて、車に乗せて拉致して文興社本社に連れ込み、その上、由美子を一糸まとわぬ丸裸にして、その姿で、屈辱的な詫びを言わせようというのだ。
由美子は一瞬、舌を噛んで死のうかと思った。
その思いは、どんとん募っていき、由美子は舌を歯で挟んで死ぬ用意をした。
もう由美子には死ぬ覚悟が出来ていた。
しかし人間が死ぬ間際には、これまで生きてきた中の様々なことが、一瞬の内に頭に浮かんでくるものである。
死を覚悟した由美子にも、それが起こっていた。
学生時代の楽しかった思い出。
文興社に父の原稿を送って騙されたこと。
ブログを始め、文興社と戦おうと思い決めて、文興社批判の記事を書き出した時のこと。
それらが走馬灯のように、由美子の頭をよぎっていった。
それらの思い出の中で、由美子の父親の姿が一際、明瞭に浮かび上がった。
由美子が物心がついた時から優しく、時には、厳しく、由美子を可愛がり、色々なことを教えてくれた父。由美子の苦手な数学を何時間もかけて教えてくれた父。
自然の美しさ、そして人の命の尊さを教えてくれた父。
由美子は父を世界一尊敬していた。
その父が末期ガンになって入院し死ぬ間際に言った言葉が明瞭に思い出されてきたのである。
余命、一カ月と告げられて以来、由美子は病院に泊まり込みで父を看病した。
「お父さん。死なないで」
病院のベッドに酸素マスクと点滴をつけられ、血圧が低下してきた父は、遺言として、由美子にこう言ったのである。
「ゆ、由美子。世の中で一番、大切なものが二つある。それが何だかわかるか?」
由美子は即座には答えられなかった。
なので父親がすぐに、その答えを言った。
「由美子。それは人の命だ。そして正義だ。この二つが人間にとって一番、大切なものだ。この二つは決して捨ててはならない。由美子。お前はこの二つを決して捨ててはならない。他人の命を大切にし、そして自分の命も大切にしろ。たとえ、どんなに苦しい過酷な目にあっても、決して死んではならない。わかったな」
「わかったわ。お父さん」
その言葉を最期に父は死んだのである。
由美子は、うわーん、と洪水のように溢れ出る涙を流して泣きながら、いつまでも死んだ父にすがりついて泣いた。
その言葉が明瞭に浮かんできたのである。
そして由美子は、今、その意味に隠された真意を理解させられた思いがした。
正義感の強い、由美子の父は、由美子がブログで文興社を批判する記事を書き出したのを止めなかった。由美子の正義感の強さも父親ゆずりなのである。
由美子は今、はっきりと悟った。
世間そして人間というものを知っていた父。
人間の善も悪も知っていた父。
一人の人間が巨大な悪の組織に戦いを挑めば、こういう事になることを父は予見していたのだ。
由美子は文興社批判の記事を書いている由美子を黙って、止めなかった父の言葉の真意を理解した。
由美子に父と交わした約束を守らねば、という思いが込み上げてきた。
死を覚悟したことで、かえって、生きることへの、ゆるぎない決意が由美子に起こった。
どんな生き恥を晒しても生きねば。
どんな屈辱にも耐えなくては。
(お父さん。私、負けないわ)
由美子は心の中で、そう呟いた。
由美子は四つん這いになった。
そして、頭を床につけて土下座した。
そして紙に書いてある文を読んだ。
「私、松田ゆみこは女の分際で違法なことは全くしていない文興社様をさんざん、誹謗中傷、営業妨害してきました。しかし、それが全くの誤りだと気づきました。私は自分の浅はかなワガママから文興社様に10億円の損害を出してしまいました。これは死んでも許されることではありません。私はこれから文興社様の奴隷として、文興社様の命じることには全て従います。まずは文興社の方々に私の裸踊りを見せることで、私の償いの始まりにしたいと思います。どうぞ、たっぷり私の裸踊りをご覧ください」
あっははは、と文興社の悪魔たちは哄笑した。
何という人間たちなのだろう。
自分は文興社に騙された被害者ではないのに、文興社の詐欺商法を知ったことで、これ以上、文興社に騙される被害者をなくそう、という正義感からブログ記事で実名で文興社を批判する記事を書いてきた由美子。その由美子にクロロホルムを嗅がせて、眠らせ、車に乗せて、北海道から文興社本部に連れ込んで、丸裸にして、その上、社員みなの前で、土下座させて、詫びを言わせるとは。
しかし良心を持ち合わせていない悪魔たちには、それは通用しないことだった。
「おい。由美子。裸踊りをすると言ったんだ。立って裸踊りをしろ」
男が言った。
由美子は立ち上がった。
そしてフラダンスを踊り始めた。
由美子の関心は、自然や生物、蜘蛛、社会問題などであって、おおよそ由美子は子供の頃から運動やスポーツは苦手で興味なかった。
しかし由美子は、日本蜘蛛学会の会員であり、そこで吉田順子という会員と親しくなった。
吉田順子はフラダンスをしていて、由美子にフラダンスをやってみない、と誘ったのである。
運動神経のニブい由美子にフラダンスなど興味なかったが、友達のよしみで一度、フラダンス教室に出てみたのである。
吉田順子に勧められてフラダンスを踊ってみると、これが結構、腰を使った全身運動になることがわかって、健康にも良く、由美子はフラダンス教室に通い続けることになったのである。運動神経はニブいが何事にも熱心な由美子の性格のため、由美子はフラダンスの基本をマスターしてしまった。
フラダンスは、ハワイの伝統的な歌舞音曲で、最初は男が踊っていたのだが、いつの間にか女の踊りとなった。ゆったりとした足の運び、繊細な手の動き、腰を振る踊りであり、ラフィアスカートを履いていても、腰の動きが男を悩殺するほど、美しく、男を魅惑する踊りだった。
もちろんフラダンスはブラジャーとラフィアスカートを履いて踊るものだが、今の由美子は、一糸まとわぬ丸裸である。
顕わになった豊満な由美子の乳房が揺れ、腰のくねりが悪魔たちを悩殺した。
悪魔たちは、
「ははは。どうだ。由美子。オレ達に逆らうヤツはこういう羽目になるのさ」
「もっと色っぽく腰を振れ」
などと由美子をおとしめる揶揄の言葉を吐いた。
(お父さん。私、負けないわ)
由美子は、どんなに苦しい逆境におちいっても生き抜くと、父の今際の時に誓った約束を心の中で唱えながら、一心にフラダンスを踊った。
約1時間くらい踊り続けた。
由美子は、汗だくになって、息もハアハアと荒くなって、とうとう倒れ伏してしまった。
「おい。由美子。これで放免と思ったら大間違いだからな」
悪魔たちは、そう言って、由美子の前にノートパソコンを置いた。
「おい。由美子。さぽろぐのブログと、ここログのブログに出している、148の文興社批判のブログ記事を全部、削除しろ。それと24のJANJAN記事もだ。それと、excieブログに作った共同出版・自費出版の被害をなくす会もだ」
ああ。何ということをする人間たちなのだろう。
文興社に騙されてはおらず金銭的被害は受けてはいないのに、文興社の悪質な詐欺まがいの商法を知り、これ以上、泣き寝入りする著者が出ないよう、そして文興社と著者との間でトラブルが起こらないようにと、貴重な時間を割いて、ブログ記事によって世間に文興社の行っている商法を正確に述べているだけだというのに。
悪魔どもは、それらのブログ記事を全部、消せ、というのだ。
ブログのログインパスワードは由美子しか知らないから、これは由美子にしか出来ない。
由美子はノートパソコンの電源を入れ、ログインIDとログインパスワードでさぽろぐブログにログインした。
そして、涙をハラハラと流しながら、今まで書いてきた、148もの文興社批判のブログ記事を削除していった。
由美子にとっては耐えがたいことだっだが「嫌です」と言っても、悪魔たちは暴力を振るって由美子を拷問にかけ、パスワードを聞き出すことは明白だったからだ。
さぽろぐの148の文興社批判の記事を全部、削除すると、次は、ここログの148の文興社批判のブログ記事を削除した。そして次は、JANJAN記事を削除し、次に、excieブログの「共同出版・自費出版の被害をなくす会」のブログも消した。
これによって、由美子が書いてきた、文興社批判の記事は完全に無くなってしまった。
由美子の目からは涙がとめどなく流れ続けた。
しかし悪魔たちは、もっと酷いことしか考えていなかった。
「おい。由美子。ブログに新しい記事を書け。記事のタイトルと文はここに書いてある」
そう言って文興社の悪魔たちは、由美子に紙切れを渡した。
タイトルは「文興社に対するお詫び」だった。
それにはこう書かれてあった。
「私、松田由美子は浅はかな勘違いから、見当違いの文興社批判の記事を148も書いてきました。しかし文興社は違法なことはしていません。企業が利益を追求することは当たり前のことです。私は、今まで、そんなことも分からないで文興社を批判してきました。私は今、心より自分のしてきた間違った、文興社に対する名誉棄損、営業妨害を後悔しています。私は今後、一切、文興社に対する記事は書きません」
ああ。何ということだろう。
文興社の悪魔たちは、由美子の文興社批判の記事を削除させるだけではなく、詫びの文章まで書かせようというのだ。
由美子は切れ長の美しい目から、ハラハラと涙を流しながら、渡されたメモに書いてある文章を入力していった。
「文興社に対するお詫び」というタイトルで。
「私、松田由美子は浅はかな勘違いから、見当違いの文興社批判の記事を148も書いてきました。しかし文興社は違法なことはしていません。企業が利益を追求することは当たり前のことです。私は、今まで、そんなことも分からないで文興社を批判してきました。私は今、心より自分のしてきた間違った、文興社に対する名誉棄損、営業妨害を後悔しています。私は今後、一切、文興社に対する記事は書きません」
と書いた。
「ふふふ。ざまあみろ。これで我が社は安全だ。お前のように我が社を本気で批判してくるヤツはもういないだろう。これで我が社は永遠に安全だ」
あっははは、と悪魔たちは笑った。
「ふふふ。由美子。これで済んだと思うなよ。お前のおかげで、我が社は10億の損失をこうむったんだ。それに、記事を削除したとはいえ、多くの人がお前の記事を読んで、我が社を疑うようになったからな。お前の我が社に対する批判記事をワードにコピペして保存しているヤツもいるだろう。それに、ネットで我が社を批判するヤツを説得する役の柴田晴郎も使えなくなってしまったからな」
「おい。由美子。お前はさっき(私はこれから文興社様の奴隷として、文興社様の命じることには全て従います。まずは文興社の方々に私の裸踊りを見せることで、私の償いの始まりにしたいと思います。どうぞ、たっぷり私の裸踊りをご覧ください)と言ったな。じゃあ、さっそくもう一度、裸踊りをしろ」
男が恫喝的な口調で言った。
何という極悪非道の集団なのだろう。
卑劣にも、自分を拉致監禁して、北海道の家から東京の文興社の本部に連れてきて、丸裸にして、詫びを言わせ、148の文興社批判のブログ記事、および、JANJAN記事を削除させ、(私が間違っていました)という文興社に対する謝罪記事をブログに書かせた、憎みても余りある文興社。
それでも、まだ気が済まず、由美子をとことん嬲ろうというのだ。
通常の人間なら精神がおかしくなってしまうだろう。
しかし、由美子の強靭な精神力が、由美子を発狂から守っていた。
しかし、由美子はどうしても裸踊りをする気にはなれなかった。
なので、乳房とアソコをヒッシと手で隠して、微動だにせず、じっとしていた。
由美子の気持ちを察してか、男が由美子に、ある発言をした。
「おい。由美子。お前も一糸まとわぬ丸裸の裸踊りはつらいだろう。オレ達にも人の情けはある。パンティーとブラジャーは返してやるから、それを身につけて、さっきのようにフラダンスをしろ」
そう言って男が由美子の前に、純白のブラジャーとパンティーを放り投げた。
由美子は堅苦しいほど誠実な性格なので、たとえ相手に力づくで言わされたとはいえ、相手の暴力に屈してしまったのは、自分の意志であり、自分の意志で言った以上、約束は守らなければいけない、という健気な信念も由美子の心の中にはあった。
(パンティーとブラジャーを着けていれば地獄の屈辱にも何とか耐えられるわ)
由美子は急いで立ち上がり、まずは右足にパンティーを通し、そして次に左足にパンティーを通した。そしてスルスルとパンティーを腰の位置まで引き上げていきパンティーを完全に履いた。
これでアソコと尻は隠された。
次に由美子はブラジャーに両腕を通して、手を背中に回して背中のホックをした。
これで二つの乳房はブラジャーの中に納まった。
その滑稽な仕草に、男たちは、あっはは、と腹をかかえて笑った。
由美子は、たとえ力づくでも、自分が約束したことは守らねば、という健気な信念から、立ち上がった。
「おい。由美子。情けで下着を身につけることを許してやったんだ。これで恥ずかしくないだろう。さあ。とっとと色っぽく腰を振って踊れ」
口惜しいが確かに彼らの言う通り、一糸まとわぬ丸裸での裸踊りは屈辱だったが、女の恥ずかしい所をしっかり隠している下着を身につけているのなら、まだ何とか耐えられた。
由美子は、またフラダンスを踊り出した。
由美子は腰をくねらせ、全身をゆったりとくねらせながら、フラダンスを踊った。
その、ゆったりとした動きは、この世のものとは思えないほど美しかった。
(パンティーとブラジャーがしっかりと私の体を覆い隠してくれている)
さっきの一糸まとわぬ丸裸の屈辱の裸踊りに比べれば、そして、その屈辱的な裸踊りをしてしまった後では、パンティーとブラジャーをしっかりと身につけて踊るフラダンスでは、屈辱感は軽減されていた。
由美子は精一杯のサービス精神をもって、一心不乱にフラダンスを踊った。
もう由美子は観客を楽しませることだけを考えているフラダンサーになりきっていた。
こうやって彼らを満足させてやれば、彼らも情にほだされて、拉致監禁したことを反省して、自分を文興社本部の部屋から解放してくれることを期待した。
そうすれば北海道の自宅へ戻れる。
(さあ。私のフラダンスをうんと鑑賞するがいいわ)
由美子はそう思いながら一心不乱にフラダンスを踊った。
文興社の社員たちも、みな黙って、誰も、由美子をおとしめる発言をする者はなく、由美子のフラダンスを心地よく鑑賞しているように、由美子には思われた。
実際、文興社の社員たちは、由美子のフラダンスに、ただただ酔い痴れているような態度だった。
由美子の念頭には文興社が自社の悪質商法を反省し、拉致監禁したことを反省し、(由美子さん。すまなかった。私たちが悪かった)と言って、全員が由美子の前に身を投げたしてくることを期待をした。
しばしの時間が経った。
由美子もフラダンスを踊り続けることに酩酊していた。
その一瞬の隙である。
文興社の社員が、一人、優雅にフラダンスを踊っている由美子に、そっと背後から忍び寄った。
彼は優雅に踊っている由美子に気づかれないよう、ハサミで由美子のパンティーの両サイドをプチン、プチンと切ってしまった。
パンティーは、由美子の腰に貼りついている機能を失って、前も後ろもダランとめくれ、そのまま床に落ちてしまった。
そして彼は、間髪を入れず、由美子のブラジャーの背中のホックの所と、両方の肩紐の所も、ハサミで、プチン、プチンと切ってしまった。
ブラジャーも由美子の胸に貼りついている機能を失って、スルリと床に落ちてしまった。
「いや―」
不意のことに、由美子はアソコを両手で隠し、ペタンと座り込んでしまった。
「あっははは」
男たちは、ここぞとばかりに腹をかかえて笑った。
「おい。由美子。お前はオレ達がお前に見とれていて、お前の健気な心情に同情して、踊りが終わったら、お前に謝罪するとでも思っていたのだろう。バカなヤツだ。お前に見とれていた態度は、あらかじめ計画しておいたお芝居だ。お前に少し希望の光を与えておいて、そして、お前を地獄に突き落とすのが最初からの狙いだったのさ」
男の一人がタバコをくゆらせて、せせら笑いながら言った。
由美子の前にある純白のパンティーとブラジャー。
それは、もう体に貼りついておく機能を失って、何の役にも立たない物でしかなくなっていた。
「おい。由美子。踊りを続けろ。もう、踊りは終わりにしてやる、とは言ってないぜ」
悪魔の一人が吐き捨てるように言った。
しかし由美子は立てなかった。
極度の絶望感と、今度は丸裸を晒して、悪魔どもの前で踊らなくてはならないかと思うと、どうしても立てなかった。
「おい。由美子。立て。裸が恥ずかしいというのなら、恥ずかしい所を隠す物をやるぜ」
そう言ってポイ、ポイ、と小さい物を由美子の前に放り投げた。
由美子は、それを見て真っ赤になった。
それはピンク色の小さな♡型のニプレスだった。
3つある。
「おい。由美子。そのニプレスを恥ずかしい所に着けな。そうすれば恥ずかしい所は隠せるぜ」
「おい。由美子。ニプレスの裏にシールが貼ってあるだろう。それを剥がしな。そこには接着剤がついているから、体に貼れば、外れることはないぜ。恥ずかしい所は隠せるぜ」
男たちは吐き捨てるように言った。
そう言われても由美子は、すぐに彼らの言うことを聞くことは出来なかった。
ニプレスは確かに乳首やアソコに貼って、女の恥ずかしい所を隠すものではあるが、それはストリップショーで着けて、女の方から男たちに、挑発的なセックスアピールをするための物である。
小さな、申し訳程度のニプレスをつけたところで、体全体として見れば、裸とほとんど変わりはない。むしろ全裸よりも、男たちの性欲を掻き立てる効果もある。
見れそうだけれど、見れないことがエロティシズムなのである。
そんな恥ずかしい物をつけさせて踊らせようとは。
由美子は悪魔たちの、執拗な嫌がらせに辟易していた。
「おい。由美子。ニプレスをつけるのか、つけないのか、どっちだ?」
男が恫喝的な口調で怒鳴りつけた。
「ニプレスをつけたくないなら、つけなくてもいいぜ。それなら全裸で踊りな」
別の男が吐き捨てるように言った。
そう言われても由美子は、どうしてもニプレスをつける気にはならなかった。
一人の男が、ツカツカと躊躇している由美子の前に歩み寄ってきた。
「そうか。ニプレスはつけたくない、というんだな」
そう言って男は、由美子の前にある、3つのニプレスを取り上げようと手を伸ばした。
その時である。
「ま、待って」
由美子は男にニプレスを取られる前に、3つのニプレスに手を伸ばして、ひったくるように掴みとった。
確かに、ニプレスはストリップショーで女の方から男たちに、挑発的なセックスアピールをするための物である。
しかし女の恥ずかしい所をギリギリに隠せる物でもあるのだ。
「そうか。ニプレスをつけるというんだな。なら早くつけろ」
男が言った。
悪魔たちは、ニプレスをつけるかどうかを由美子の判断に任せて、その決断を由美子にさせることで、由美子の狼狽する様子を楽しもうというのだ。
ここに至って由美子は、悪魔たちのヘビのような執拗さに気づかされた。
しばし迷ったが由美子は決断した。
相手は人間の良心というものを持たない悪魔たちである。
いうことを聞かなければ間違いなく、もっと酷い仕打ちをするだろう。
由美子は小さな♡型のニプレスをアソコと乳首につけた。
確かに、ニプレスの裏のシールを外すと、そこには、ネバネバした接着剤がついていて、両乳首とアソコにつけると、ニプレスは由美子の体にピタリと貼りついた。
由美子は立ち上がって、さっきと同じようにフラダンスを踊った。
両乳首とアソコをギリギリにかろうじて隠しているだけの小さな♡型のニプレスをつけている姿は全裸と変わりなく、いや全裸以上にエロチックだった。
それは悪魔たちの性欲を激しく刺激した。
悪魔たちは、激しい興奮のあまり、ハアハアと息を荒くしながら、勃起した股間をズボンを上からさすって由美子の踊りを見た。
30分くらいした。
もう日が沈んで夜中になっていた。
「よし。今日はこのくらいにしておこう。明日からも、うんと楽しめるからな」
悪魔たちの一人が言った。
「そうだな」
皆が賛同した。
「よし。じゃあ、こいつを地下室に連れていけ」
由美子は文興社の社員二人に腕をつかまれて、エレベーターで文興社のビルの地下室に連れて行かれた。
地下室にはゴリラが飼えるほどの大きな檻があった。
「さあ。入りな」
と言われて由美子は檻の中に入った。
「ふふふ。これはお前を飼うために買った檻さ。お前は死ぬまでこの檻の中で暮らすんだ」
そう言って二人の男は去って行った。
由美子は途方にくれた。
自分は一体どうなってしまうのか?
このまま悪魔たちに弄ばれて殺されてしまうのだろうか?
発狂しそうなほどの激しい不安が由美子に襲いかかった。

(3)

「うわー」
由美子は目を覚ました。
全身が汗びっしょりだった。
呼吸もハアハアと荒かった。
「松田さん。どうしたんですか。給湯器の交換は終わりましたよ。何だかひどくうなされていたようですけれど悪い夢でも見ていたんですか?」
修理人がニコニコ笑いながら聞いた。
由美子は咄嗟にスマートフォンを見た。
2010年7月7日の午後5時だった。
(はあ。夢だったのか。私は恐ろしい夢を見ていたのね。夢でよかったわ)
由美子はほっと一安心した。
「給湯器の交換をして下さって有難うございました」
由美子は修理人に礼を言って代金を払った。
・・・・・・・・・・・・
それからも由美子はブログで文興社の批判記事を書き続けた。
しかし柴田晴郎が文興社の関係者であることがわかり、文興社から柴田晴郎に関する記事を削除するように、さぽろぐが言ってきた。
削除しなければ、さぽろぐでの記事の投稿は禁止する、と言ってきたのである。
文興社が強権的にさぽろぐに圧力をかけてきたのである。
由美子はやむなくこの条件を受け入れた。
由美子にとって文興社だけではなくブログでの世の中の不正批判はもう生きていくうえで欠かせないものになっていたからである。
それで予備のため、@niftyココログにもブログを開設した。
その翌年の2011年に東日本大震災が起こり、その翌年の2012年には第二次安倍政権が発足した。
由美子は文興社批判を続けながらも、由美子は東日本大震災の東電と政府の対応を批判する記事を書き、そして安倍政権の悪政を批判する記事を書いた。
平和を愛する由美子にとって集団的自衛権を認める安保法制は我慢が出来なかったのである。
文興社は相変わらず、版権が文興社にある、著者から受けとる製作費で儲ける悪質商法を続けていたが、由美子の文興社批判のおかげで、文興社が悪質商法で儲けているということが、世間に認知され、文興社も「協力出版」の名前を使わなくなった。
由美子は2011年から、ツイッターを始めた。
2020年から起こったコロナ禍およびコロナワクチンの危険性についての記事を連日書くようになった。
文興社批判どころではない政府がワクチンと称して毒を日本全国民に打つ大変な時代になった。これから世界はどうなるのかと由美子は驚愕した。
2024年の現在でも由美子は実名の松田ゆみこの名前で、ツイッターおよび、さぽろぐ、および@niftyココログで、世の不正を糾弾する記事を書き続けている。


2024年9月16日(月)擱筆


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小説教室・ごはん学校(小説)

2024-09-09 08:31:30 | 小説
小説教室・ごはん学校

という小説を書きました。

ホームページ、浅野浩二のHPの目次その2

にアップしましたのでよろしかったらご覧ください。

小説教室・ごはん学校

ある小説教室である。
ここは西暦2000年以前から始まって今日(2024年)まで続いている。
主催者はバクチが好きで、先物取引に手を出してしまって1億円を超す借金をつくってしまったので、その借金の返済のために小説教室を開いて儲けようと思ったのである。
コンセプトは「将来のプロ作家を目指すための小説教室」とした。
宣伝には、「必ずプロ作家としてデビューさせます」と書いた。
小説教室の名前は、将来プロ作家になり筆一本で食べていける人を育てる、という意図から、ごはん学校、と名づけられた。
立地場所も新宿の一等地にした。
入会費は10万円で月会費は月5万円に設定した。
入会金と月会費はかなり高く、入会者は少ししかいなかったが、「必ずプロ作家としてデビューさせます」の宣伝が効いて、だんだん入会者が増えてきた。
入会者はみな才能がないくせに、自分には才能があるから、この小説教室に入れば、プロ作家になれるという、自惚れだけが強いバカが集まってきたのである。
主催者はしめしめと喜んだ。
しかしこの小説教室には生徒の書いた小説を添削する教師がいなかった。
指導する教師を採用する費用がなかったからである。
そこで主催者は、
「君たちは才能があるから教師は不要だ。作家は作品を書くだけが仕事ではなく、他人の作品の評論文を書くことも作家の仕事だ。その訓練のためにも、お互いに自由に他人の作品を批評し合って文芸評論の腕を磨くのが一番いいと思う」
ともっともらしいことを言った。
ごはん学校の生徒たちはプライドだけあって才能のないバカばかりなので、主催者の言うことを信じた。
それで、ごはん学校の生徒たちは、作品を書き、お互いにそれを評価しあった。
しかし、生徒たちは所詮、才能のないバカばかりである。
なので、この小説教室は、生徒たちが好き勝手な稚拙な小説を書いて、それを生徒同士が好き勝手に品評をするという、荒れた小説教室になってしまった。
みな、自分の駄作には自信を持っていても、他人の作品はボロクソにけなした。
そのため、生徒たちは次々とごはん学校をやめていった。
経営は赤字である。
このままでは、ごはん学校は廃校にするしかないという状況になった。
廃校にするか継続するかで主催者は悩んだ。
しかし、ある時ラッキーなことが起こった。
それは伊藤夜雨という文学好きの絶世の美女が、小説教室ごはん学校に入学してきたことである。
伊藤夜雨は文学、小説をよく読んでいて色々と知っていた。
彼女は小説を書く目的で、ごはん学校に入ってきたのではなく、プロの文芸評論家になるために、ごはん学校に入ってきたのである。
そこで主催者は伊藤夜雨に相談をもちかけた。
「伊藤夜雨さん。小説教室ごはん学校は経営的に厳しいです。それは、小説の執筆を指導してくれる先生がいないからです。先生を雇う経済的なゆとりもありません。なので、生徒たちのレベルが低くなって、書きかけの小説や、駄作、軽い気持ちで書いた思いつきの文章ばかりを書くようになってしまっています。そして、生徒たちが書いた小説を、けなしまくる状態になってしまっています。それで辞める生徒が増えています」
「そうですか。それは私も生徒さん達の書く文章を見ていても感じています」
と伊藤夜雨は言った。
「そこで、あなたにお願いがあるのです」
「はい。何でしょうか?」
「あなたは小説、文学に精通しています。そして、あなたには人を褒める才能がある。ですから、あなたに、生徒たちの書く駄文を褒めちぎる文芸評論家先生になって欲しいのです。生徒さん達の書いた駄文に対する、あなたの批評文を見て、あなたになら、それが出来ると私は確信しました。その方法だけが、小説教室ごはん学校を存続させていく唯一の手段だと思っています」
「そうですか。そう言われましても私も興味本位で、小説教室ごはん学校に入ってみましたが、生徒さん達の書く駄文に、嫌気がさして、ちょうど辞めようと思っていた所なのです。失礼ですが生徒さん達の書く文章は、読む価値の全くない駄文ばかりです」
「そこを何とかお願いしたいのです。どうか生徒さん達の書く文章、すべてに目を通して、褒めちぎった批評を書いてほしいのです。はっきり言って生徒たちはバカばかりですから、誉められれば、うかれて、ごはん学校に通い続けてくれると思うのです。お礼は払います。月に100万円、あなたに支払います。どうでしょうか?」
月100万円という言葉が効いた。
伊藤夜雨は金の亡者だったのである。
「わかりました。私は、ごはん学校の生徒さん達の書く文章すべてに目を通して、褒めちぎった批評文を書きます。その代わり、月100万円は必ず、私の銀行口座に振り込んで下さいね」
「ええ。それは間違いなくします」
こうして、伊藤夜雨はごはん学校の指導者、添削者になった。
伊藤夜雨はごはん学校の生徒の書く文章すべてに、目を通し、作者をおだてる批評を書き続けた。
クズ文にも「お作はとてもいい作品です」と書いた。
具体的にどこがどういいか、ということも作者におだてとわからないように、しっかりと書いた。
そして最後に「執筆おつかれさまでした」と書いた。
ごはん学校の生徒たちはバカばかりなので、伊藤夜雨に褒めちぎられて、うかれて、辞退者は少なくなっていった。
それどころか、ごはん学校には、素晴らしい文芸評論家の先生が来たそうだぞ、という噂が世間に広まった。そのため、ごはん学校に入学してくる生徒はうなぎ登りに増えていった。
こうして、ごはん学校は大盛況になった。
しかも伊藤夜雨は25歳でグラビアアイドル顔負けの絶世の美女である。
伊藤夜雨がセクシーな上下揃いのスーツ姿で教室を歩く姿に、ごはん学校の生徒たちは、ただただ茫然とした。
伊藤夜雨は絶世の美女だった。橋本環奈に勝るとも劣らぬ容貌。85、60、85の理想的なスリーサイズ。腰にピッタリとフィットしている膝上までのスカート。夜雨が教室の中を歩く度にムッチリとした腰が悩ましげに左右に揺れた。生徒たちは、その悩ましい美しさに酩酊するのだった。
美しい優秀な小説指導教師が、ごはん学校に来た、という噂は瞬く間に世間に広がった。
小説には興味ないが、伊藤夜雨みたさに、ごはん学校に入学してくる者もうなぎ上りに増えていった。
こうして、ごはん学校は大盛況になった。
ある時、主催者と伊藤夜雨が校長室で話し合っていた。
「いやー。伊藤夜雨さん。あなたのおかげで、ごはん学校は大盛況だ。月の収入は500万円を越している。やはり私の目に狂いはなかった。あなたは天才的な、おだて上手だ。あなたには感謝してもしきれない」
校長は恵比須顔だった。
さあ今月の給料100万円をお受け取りください、と言って、ごはん学校の社長は伊藤夜雨の前のテーブルに100万円の札束をポンと置いた。
伊藤夜雨はニヤリと笑って当然の如くそれを受けとった。
「ささ。伊藤夜雨さん。舶来の高級タバコです」
社長は巻きタバコを伊藤夜雨に差し出した。
伊藤夜雨がそれを口に咥えると、社長はライターで葉巻に火をつけた。
伊藤夜雨は、ふーと一服した。
「社長。100万は確かに頂きました。しかしお礼は言いませんよ。だって内容も何にもない駄文を読むことは凄く苦痛を通りこして不快ですし、作者に気づかれないような、おだての批評文を書くのも物凄く疲れるんですもの。バカ共をおだてるのって胸くそ悪くなるんです。飼い猫とか上松とか、他のヤツラでも、同じ作品を何度も何度も、こうした方がもっと良くなりますよ、とおだててやると、それを真に受けて本当に、書き直してきます。それも一度や二度ではなく、10回以上もですよ。やっぱり才能のないバカ共は、あらゆる面で頭が悪いので、心にも無いおだてを本当に真に受けてしまうんですね」
そう言って伊藤夜雨はふーとタバコの煙を吐いた。
その時である。
校長室の戸が開いた。
ごはん学校の生徒たちがズラリと並んでいた。
生徒たちは刺すような鋭い憎しみに満ちた視線を伊藤夜雨に向けていた。
「おい。伊藤夜雨。聞いたぞ。そういうことだったのか。お前は、誉める批評しかしないから、だんだん、あやしくなっていったんだ。それで、お前の本心を聞こうと思って、こうやって張り込んでいたんだ。オレ達に才能がないなら、ないとはっきり言ってほしかったな。お前のせいで、どれだけ人生の時間と金を浪費したことか」
伊藤夜雨は真っ青な顔になっていた。
「い、いえ。違います。わ、私の本心は皆さんに自信を持ってもらおうと思っていたんです。自分に自信を持った人は必ず人間として成長しますから・・・」
伊藤夜雨は苦し気な言い訳をした。
「ふふふ。伊藤夜雨。もうオレ達は天才的な詭弁のお前の言うことなんか信じてないぜ」
「おう。そうだ。そうだ」
皆、怒りに狂っていた。
証拠にお前が今、言ったことを録音しておいたぜ。
そう言って、生徒の一人がカセットテープの再生ボタンを押した。
すると伊藤夜雨の声がボリュームいっぱいの大きさで再生された。
「社長。100万は確かに頂きました。しかしお礼は言いませんよ。だって内容も何にもない駄文を読むことは凄く苦痛を通りこして不快ですし、作者に気づかれないような、おだての批評文を書くのも物凄く疲れるんですもの。バカ共をおだてるのって胸くそ悪くなるんです。飼い猫とか上松とか、他のヤツラでも、同じ作品を何度も何度も、こうした方がもっと良くなりますよ、とおだててやると、それを真に受けて本当に、書き直してきます。それも一度や二度ではなく、10回以上もですよ。やっぱり才能のないバカ共は、あらゆる面で頭が悪いので、心にも無いおだてを本当に真に受けてしまうんですね」
伊藤夜雨の顔は真っ青になった。
「どうだ。夜雨。何とか言ってみろ」
夜雨は決定的な証拠を握られて返す言葉がなかった。
眉を寄せ苦しそうに唇を噛んだ。
「この落とし前はつけてもらうぜ」
そう言って、ごはん学校の生徒たちは伊藤夜雨を取り囲んだ。
「さあ。立ちな」
「わ、私をどうしようっていうの?」
ここに至って夜雨に恐怖心が起こり出した。
「オレ達をだまして、人生の貴重な時間と金と労力を無駄にさせた、お前を罰するのさ」
そう言って、ごはん学校の生徒の一人が夜雨の腕をつかんで立たせた。
そして彼らは夜雨を、ごはん学校の外に追い出した。
ごはん学校の裏手には荒れた廃屋があった。
夜雨はその廃屋の中に入れられた。
ごはん学校の生徒たちは夜雨に対する復讐に燃えていた。
伊藤夜雨をどうするかで、ごはん学校の生徒たちは、しばしボソボソと話し合った。
「おい。みんな。夜雨の仕置きはオレ達二人にまかせてくれないか?」
生徒Aと生徒Bの二人が言った。
二人は小説創作には興味はなく、伊藤夜雨、見たさにごはん学校に入ってきた生徒である。
「おお。たのむぜ。たっぷりと仕置きしてくれ。オレ達はそれをしっかりと見物させてもらうぜ」
ごはん学校の生徒たちが皆、異口同音に言った。
生徒Aと生徒Bがツカツカと笑いながら伊藤夜雨に近づいてきた。
「あなた達。私に何をしようというの?」
夜雨は恐怖心から声を震わせて聞いた。
「ふふふ。何をすると思う?」
Aはふてぶしい口調で言った。
「わ、わからないわ」
「ふふふ。教えてやろう。あんたにここでストリップショーをしてもらうのさ。そしてそれを撮影するのさ。そしてそれをエロ動画投稿サイトに投稿するのさ。佐藤夜雨のストリップショーがネットで全国に知れ渡るというわけさ」
そう言ってAはデジカメを三角脚立の上に固定した。
「卑劣だわ。あなた達が才能のない怠け者だとはわかっていたけれどそんな犯罪までするとは思わなかったわ」
Bが横座りしている夜雨の隣に座った。
Bは夜雨の頬をナイフでピチャピャ叩きながら夜雨の美しいストレートの黒髪をつかんだ。
「ふふふ。夜雨さん。さあ。立ってちゃんと自分の手で色っぽく服を脱いでいきな」
Bは夜雨の髪の毛を弄びながら言った。
「い、嫌です。そんなこと」
夜雨は体を震わせながら言った。
女なら当然言う言葉を夜雨も反射的に言った。
「手間をとらせるな。強情を張るなら強引に脱がしてもっと恥ずかしいことをさせるぞ」
そう言ってBはハサミを取り出して夜雨のロングヘアーを少しジョキンと切った。
切り取られた夜雨の美しい髪の毛が少しパサリと床に落ちた。
「ああー。やめてー」
「ふふふ。これでオレ達が本気だということがわかっただろう。嫌というのならきれいな髪の毛を全部切ってバリカンで丸坊主にしてしまうぞ」
夜雨は渋面で唇を噛んで悩んでいたが抵抗しても無駄で時間の問題で抵抗するともっと酷いことをされると悟ったのだろう。
「わ、わかりました。服を脱ぎます。だからもう髪を切るのはやめて下さい」
と言った。
「わかりゃいいんだよ。立ってちゃんとストリップショーをするんだぞ」
そう言われても夜雨は立てなかった。
女の恥じらいから夜雨はそっと両手を胸に当ていた。
「ほら。さっさと立ってストリップショーをしな」
Bが言った。
しかし夜雨はためらっている。
「ふふふ。別にすぐ脱がなくてもいいぜ。女が恥ずかしいことが出来なくてためらっている姿はサディストの男を興奮させるからな」
Aのこの言葉が効いたのだろう。
「わ、わかりました。脱ぎます」
と言って夜雨は立ち上がった。
「わかりゃいいんだよ。さあとっとと服を脱ぎな」
夜雨は、恐る恐る立ち上がり、ワナワナと手を震わせてワイシャツのボタンを外していった。
AとBとごはん学校の生徒たちは食い入るように夜雨を見ている。
今まで才色兼備の、ごはん学校の憧れの女神と崇められていた夜雨にとって、ごはん学校の生徒たちの前で服を脱ぐのを見られるのは耐え難い屈辱だった。
しかし女のか弱い力では屈強な男二人に抵抗しても無駄ということはわかっているので夜雨は諦めていた。
ワイシャツのボタンを全部外すとAとBの二人は、
「さあ。ワイシャツを取り去りな」
と命じた。
夜雨はワナワナとワイシャツの袖から手を抜きとった。
パサリと夜雨のワイシャツが床に落ちた。
夜雨の豊満な乳房を納めている白いブラジャーが露わになった。
ブラジャーは夜雨の豊満な乳房を窮屈そうに納めてムッチリと膨らんでいた。
「おー。すげー。凄いセクシーなおっぱいだな」
「オレ。いつも夜雨のブラウスの胸のふくらみに悩まされてオナニーしていたんだ。それを拝めるなんて夢のようだぜ」
AとBの二人はそんな揶揄の言葉を言った。
夜雨は顔を真っ赤にして思わず両手を胸に当てた。
AとBの二人はそれを止めなかった。
「ふふふ。別に隠してもいいぜ。そうやって恥ずかしがる女の姿が男を興奮させるんだからな」
しばし、ごはん学校の生徒たちは恥じらっている夜雨の姿をデジカメで撮影した。
「さあ。次はスカートを脱ぎな」
Aが言った。
命じられて夜雨はワナワナとスカートのチャックを外してスカートを降ろしていき足から抜き取った。
これで夜雨はブラジャーとパンティーという下着だけの姿になった。
夜雨の腰部にピッタリと貼りついている純白のパンティーは夜雨の股間の輪郭を包み隠さず露わにしているのでパンティーを履いていても夜雨はもう裸同然に近かった。
むしろパンティーの弾力のためパンティーの中に収まっている恥肉がモッコリとパンティーを盛り上げていた。
「うわー。すげー。凄いセクシーだ」
「まさか夜雨のパンティーを拝めるとはな。オレ興奮して心臓がドキドキしているぜ」
AとBの二人はそんな揶揄の言葉を言った。
夜雨は羞恥心から顔を真っ赤にして思わず両手をパンティーに当てた。
AとBの二人はそれを止めなかった。
「ふふふ。別に隠してもいいぜ。そうやって恥ずかしがる女の姿が男を興奮させるんだからな」
しばしごはん学校の生徒たちは恥じらっている夜雨の姿をデジカメで撮影した。
しはしして。
「さあ。次はブラジャーとパンティーを脱いで素っ裸になりな」
Aが言った。
「お願い。Aくん。Bくん。これ以上は許して」
夜雨は純白のブラジャーとパンティーを必死で手で覆いながら言った。
「ふふふ。だいぶ風向きが変わってきたな。しかし今さらくん付けにしたって遅いぜ。オレ達の怒りはトサカにきているんだから。脱がないというのならオレ達が強引に脱がすだけだぜ」
そう言ってBはカバンから大きな浣腸器を取り出した。
「おい。夜雨。とっととブラジャーとパンティーを脱いで素っ裸になれ。強情を張っているとオレ達が丸裸にひん剥いて後ろ手に縛って1リットルのグリセリン液の浣腸をするぞ」
Aが大きな浣腸器を手にしながら言った。
夜雨は恐怖心で顔が真っ青になった。
「わ、わかりました」
逆らっても無駄だと悟ったのだろう。
夜雨はブラジャーのホックを外した。
プルンと夜雨の大きな乳房が弾け出て露わになった。
「うわー。すげー。夢にまで見た夜雨のおっぱいを見れるとは。オレ。興奮しておちんちんが勃起しっぱなしだぜ」
そう言ってBはズボンの上からテントを張った股間をさすった。
「オレもだぜ」
Aもビンビンに勃起してテントを張っているズボンの股間をさすった。
夜雨は思わず両手で露わになったおっぱいを隠した。
「ふふふ。いいポーズだぜ」
Bは純白のパンティー一枚だけ履いて両手でおっぱいを隠している夜雨の姿を撮影した。
夜雨の姿はあたかも胸の前で収穫した二つの大きな桃が落ちないように大事にかかえている女のように見えた。
両手で胸を隠しているので夜雨の純白のパンティーは丸見えである。
夜雨の恥肉を収めたパンティーはその弾力によって恥部をモッコリとふくらませ女の恥部の輪郭をクッキリとあらわしていた。
パンティーは女の股間を引き締めて整える効果があるのでそれは全裸以上にエロチックでもあった。男はパンティーやビキニに包まれた女の股間のモッコリに興奮するのである。
「ふふふ。夜雨。股間のモッコリが丸見えだぜ」
Bが言った。
「股間のモッコリは隠さなくてもいいのか?」
Aが言った。
言われて夜雨は股間の防備を忘れていたことに気づき、おっぱいを隠していた両手のうち左手で股間を覆った。
それはボッティチェリのビーナスの誕生の図だった。
「ふふふ。その格好も色っぽいぜ」
そう言ってBは恥じらっている夜雨の姿を撮影した。
「さあ。夜雨。最後の一枚のパンティーも脱ぎな」
Aが言った。
「胸とアソコを隠すポーズならパンティーを履いているより全裸の方が芸術的だせ」
「もうブラジャーは脱いじゃっているんだからパンティーも脱いだ方がスッキリするぜ」
「手でアソコを隠しながら素早くパンティーを脱げばいいじゃないか」
AとBの二人はそんな揶揄の言葉を投げかけた。
しかし夜雨にしてみればパンティーは女の最後の砦だった。
AとBが夜雨にパンティーを脱ぐように命じても夜雨は女の最後の砦はどうしても守りたかった。
「ええい。じれってえ」
夜雨がどうしてもパンティーを脱ごうとしないのでBが夜雨の所に行った。
Bはニヤニヤ笑っている。
「ふふふ。そんなに脱ぎたくないなら脱がないでいいぜ。それよりももっと面白いことを思いついたからな」
Bは夜雨の隣に腰を下ろして意味深なことを言った。
「な、何をするの?Bくん」
夜雨は脅えながら必死に胸とアソコを手で隠している。
Bはポケットからハサミを取り出すとサッと素早く夜雨のパンティーの右側のサイドをプチンと切ってしまった。
片方のサイドを切られたパンティーはもう腰に貼りつく役割りを果たせない。
パンティーの弾力によってパンティーは一気に収縮してしまった。
「いやー」
夜雨はあわててパンティーがずり落ちないように太腿をピッチリと閉じてパンティーを太腿で挟みつけパンティーが落ちないようにした。
そして両手で切れた右側のサイドの端をつかんで縮もうとするパンティーを何とか引っ張って留めようとした。
夜雨は右手でパンティーの右側の切れたサイドの後ろの方の端を必死でつかんで引っ張り、お尻を見られないようにし、左手でパンティーの右側の切れたサイドの前の方の端をつかんで引っ張って、必死で何とか女の恥部を見られないようにした。
必死で片方のサイドが切れたパンティーをそれでも身につけていようとするのは女にとっては最後まで恥ずかしい所を隠そうとする健気な努力なのだが男は皆スケベでサディストなので困っている女の姿は男を最高に興奮させるのである。
両手で切れた右側のサイドの端をつかんでいるので夜雨のおっぱいは丸見えである。
「あっははは。夜雨。サイドが切れたパンティーなんてもう使い物にならないぜ」
「もうそのパンティーは使い物にならないんだから無駄な頑張りはやめてパンティーは脱いじゃいな」
「でもお前が困っている姿は最高にセクシーでエロチックで男を興奮させるぜ。だからお前がそうしたいのならいつまでもその格好で無駄な頑張りを続けてもいいぜ」
AとBの二人はデジカメで惨めな夜雨の姿を撮影しながら夜雨にそんな揶揄の言葉を投げつけた。
そう言われても夜雨は体を覆う最後の一枚を何とか死守しようとした。
「ふふふ。パンティーは絶対脱がないという決死の覚悟なんだな」
Aはそう言うや再び夜雨の所に行った。
そしてハサミを取り出してサッと夜雨のパンティーの切れてない方の左側のサイドをプチンと切ってしまった。
夜雨はパンティーの右側のサイドを両手で引っ張っていたので、そして引っ張らなくてはならないので切れていない反対側の左側のサイドはガラ空きだった。
なのでAは余裕で夜雨のパンティーの左側のサイドを切ることが出来た。
「ああー。いやー」
両サイドを切られたパンティーはもう腰に貼りついておく機能を完全に失った。
両サイドが切れたパンティーは一気に収縮した。
それでも夜雨はアソコを両手で隠した。
しかしパンティーは両サイドが切られているので後ろがペロンと剥げ落ち大きな尻と尻の割れ目が露わになった。
Aはパンティーの切れ端をつかんで引っ張った。
たいした力も要らずパンティーは夜雨の股間からスルリと抜きとられた。
これで夜雨は一糸まとわぬ丸裸になった。
全裸の女が男の視線から身を守ろうと片手で胸を片手でアソコを隠している姿は女の羞恥心の現れの芸術的な基本形である。
「どうだ。夜雨。スッポンポンになってスッキリしただろう」
「いくら頭が良くても女を屈服させるのは簡単さ。裸にさせればいいだけのことさ」
「ふふふ。今まで散々コケにしてきたオレ達の前でスッポンポンの裸を晒す気分はどうだ?」
AとBの二人は全裸で女の恥ずかしい所を隠している夜雨にそんな揶揄を言った。
「さあ。夜雨さんの尻もしっかり録画しておかないとな」
そう言ってBは夜雨の後ろに回ってスマートフォンで夜雨の後ろ姿を撮影した。
女にはアソコと乳房と尻という三カ所の恥ずかしい所がある。
しかし手は二本しかない。
なのでアソコと乳房を隠すためにはどうしても二本の手を使わねばならず尻までは隠せない。
「ふふふ。夜雨。大きな尻とピッチリ閉じ合わさった尻の割れ目が丸見えだぜ」
Bがスマートフォンで夜雨の後ろ姿を撮影しながら言った。
そういう卑猥な言葉を投げかけられることによって夜雨の意識が無防備に丸見えになっている尻に行き尻の割れ目がキュッと反射的に閉まった。
「いやー。やめてー。Bくん」
夜雨は思わず乳房を隠していた左手を外し左手で尻の割れ目を隠した。
夜雨はアソコを右手で隠し尻の割れ目を左手で隠しているという姿である。
乳房を隠していた手が外されたので夜雨のおっぱいが丸見えになった。
それは滑稽な姿だった。
「ふふふ。夜雨さん。おっぱいが丸見えだぜ」
Aが言った。
あっはははとAとBの二人は笑った。
自分が滑稽な姿であるということは夜雨もわかっているので夜雨はやむなく尻の割れ目を隠していた左手を胸に持って行きおっぱいを隠した。
そのため尻の割れ目は丸見えになった。
尻の割れ目を撮影されることはやむなくあきらめるしかなかった。
このように女を困らせることがスケベな男達のサディズムをそそるのである。
夜雨はアソコを右手で隠し胸を左手で隠すという基本形にもどった。
10分くらい二人は夜雨が困る姿をスマートフォンで撮影しながら鑑賞した。
「Aくん。Bくん。お願い。もうやめて。許して」
夜雨は耐えきれなくなって丸裸の体のアソコとおっぱいを隠しながらAとBの二人に哀願した。
「ふふふ。ダメだぜ。夜雨さん。こういう事になった原因はあんたが性悪でオレ達をだましたからじゃないか。自業自得ってやつさ。あんたの性悪な性格を徹底的に叩き直してやるよ。あんたをしとやかでつつましい女に調教してやるぜ」
Aが言った。
「よし。じゃあ次の責めといくか」
Bが言った。
「な、何をするの?」
夜雨は脅えながら聞いた。
AとBの二人は立ち上がって夜雨に近づいてきた。
「さあ。夜雨さん。両手を前に出しな」
Aが言った。
「い、いや。こわいわ。何をするの?」
夜雨は何をされるのかわからない恐怖からAに言われても両手でヒッシと女の恥部を押さえているだけだった。
それが夜雨のせめてもの抵抗だった。
「ええい。じれってえ」
AとBの二人は強引に夜雨の手をつかんで胸の前に出させた。
やめてーと言って夜雨も抵抗したが女のか弱い力では屈強な男二人の膂力の前には全く無力だった。
二人は夜雨の両手を体の前に出させ夜雨の手首に手錠をかけた。
「ふふふ。これで、あんたを天井から吊るしてやるぜ」
Aがせせら笑いながら言った。
「おい。B。天井にフックを取りつけろ」
AがBに命じた。
「オッケー」
Bはホクホクしながら椅子を持ってきてその上に立った。
Bは登山用のカラビナが固定されている正方形の板を持っていた。
Bはそれを持って椅子の上に立つと板の裏に瞬間協力接着剤アロンアルファをたっぷりつけた。
そしてその板を天井に貼り付けた。
Bはカラビナを思いきり引っ張ってみたが板が天井にしっかりくっついていて剥がれることはなかった。
「よし。大丈夫だ」
Bが言った。
一方、Aは夜雨の手錠に縄を結び付けた。
そしてその縄尻を椅子の上に立っているBに渡した。
Bはカラビナの輪の中に縄尻を通した。
「ふふふ。さあ。お前を吊るしてやるぜ」
Aがふてぶてしい口調で言った。
「い、嫌。こわいわ。やめて。お願い。そんなこと。Aくん。Bくん」
夜雨の訴えを無視してAはBがカラビナに通した夜雨の縄尻をつかんでグイグイと引っ張っていった。
「ああー。やめてー」
夜雨が叫んだがAとBの二人は聞く耳を持たない。
滑車の原理で二人が縄を引っ張ることによって夜雨の手首はグイグイと天井に向かって引っ張られていった。
夜雨はバンザイさせられた格好になった。
さらに二人は縄をグイグイと引っ張っていき夜雨の手は頭上でピンと伸び夜雨は天井から吊るされる格好になった。
「ふふふ。つま先立ちになるまで引っ張ってやる」
Bが言った。
しかし。
「まて。つま先立ちになるまでは引っ張るな。足の裏は床につける程度にしておけ」
とAが言った。
どうしてだ?とBが聞くとAは、
「まあ。いいじゃないか」
と意味深に笑った。
「よし。わかった」
そう言ってBは夜雨がつま先立ちになるまでは引っ張らず、手は頭の上で肘が少し曲がる程度の所で縄尻をカラビナに結びつけた。
夜雨の手は頭の上にあるので夜雨はもう女の恥ずかしい所を隠すことが出来ない。
乳房もアソコも丸見えである。
もちろん大きな尻も尻の割れ目も。
夜雨の体は美しかった。
スラリと伸びたしなやかな脚。細い華奢なつくりの腕と肩。細くくびれたウェスト。それとは対照的に太腿から尻には余剰と思われるほどたっぷりついている弾力のある柔らかい肉。それらが全体として美しい女の肉体の稜線を形づくっていた。
「ふふふ。夜雨さん。残念だな。もう手で体を隠すことは出来なくなったな」
「ふふふ。いつもは大きなおっぱいでワイシャツに膨らみを作って男を挑発しているんだろうけれど剝き出しになったおっぱいは惨めなもんだな」
「胸にこんな大きな肉の塊を二つもだらしなくぶら下げて恥ずかしくないのか。ちゃんとブラジャーに収めておかなきゃいけねーぜ」
「それにしても大きい乳首だな。頭脳明晰なエリートの才女はこんな大きな乳首をしていちゃいけねーぜ」
AとBの二人は露わになった夜雨の胸をまじまじと見ながらそんな揶揄をした。
夜雨は恥ずかしさで顔が真っ赤になった。
しかし縄で手を吊られている以上どうすることも出来ない。
しかしAとBとごはん学校の生徒たちに乳房と乳首をまじまじと見られていることを思うと夜雨の乳首は大きくなり出した。
それをAとBは見逃さなかった。
「おおっ。夜雨の乳首が勃起し出したぜ」
「嫌がっていてもこうやって見られることに興奮しているんだな」
AとBの二人はそんな揶揄の言葉を吐いた。
夜雨は乳首が勃起してしまったことを死にたいほど恥ずかしく思った。
いっそ荒々しく乳房を揉まれる方がまだマシだと夜雨は思った。
丸裸にされてこんなにネチネチと鑑賞され品評されることの方がはるかに屈辱だった。
二人の男の視線は下に降りた。
夜雨は太腿を寄り合わせて何とかアソコを隠そうとモジモジしていた。
「ふふふ。夜雨さんが太腿をモジモジさせているぜ」
「何としてもアソコは隠したいんだな。いじらしいな」
「B。これでわかっただろう。夜雨を吊るす縄を緩めにしておいたのはこのモジモジを見たかったからさ。女は両手を使わなくても太腿を寄り合わすことで何とかアソコの割れ目は隠せるんだ。このいじらしいモジモジをさせるために縄を緩めにしておいたんだ」
「なるほどな。確かにこの方が面白いな」
Bは納得したようにニヤニヤ笑って言った。
二人の男にそんな揶揄をされても女の哀しい性で夜雨は太腿のモジモジをやめることは出来なかった。
「じゃあこのいじらしいモジモジを撮影するとするか」
そう言ってAとBは夜雨から離れて座って太腿をモジモジさせている夜雨をスマートフォンで撮影した。
二人の男はいつ夜雨の太腿の寄り合わせが緩んでアソコの割れ目が見えるかを気長に待つ方針のようだった。
20分くらい経った。
夜雨は太腿を寄り合せての立ち続けの疲れからハアハアと息が荒くなっていきそして太腿の疲れから太腿の寄り合わせが緩んできた。
それを二人の男は見逃さなかった。
「おっ。夜雨のアソコの割れ目が見え出したぜ」
Aは待ってましたとばかりにスマートフォンのカメラのズームをアップしてカメラの焦点を夜雨のアソコに当てた。
夜雨のアソコは無毛だった。
それは最初からわかっていたことだが。
「どうしてアソコの毛を剃っているんだろう」
「さあな。きれい好きだからじゃないか」
「しかし裸の女の立ち姿のアソコは理想的だな。モッコリ盛り上がった恥肉の下の方にアソコの割れ目がほんの少しだけちょっと顔をのぞかせているなんて。憎いまでに男の性欲を刺激させるぜ」
AとBの二人はそんな揶揄の言葉を夜雨に吐いた。
「お願い。Aくん。Bくん。もう許して。もう意地悪しないで。お願い。虐めないで」
夜雨は耐えられなくなって徹底的に自分を辱しめようとしている二人に哀願した。
夜雨は泣きながらまた太腿を寄り合わせてアソコの割れ目を隠そうとした。
「おい。夜雨。裸は恥ずかしいか?」
「はい。恥ずかしいです」
「じゃあパンティーとブラジャーを身につけたいか?」
「は、はい」
「よし。じゃあ下着を履かせてやるよ。ただしビキニだけどな。オレ達はあんたのビキニ姿を一度見たいと思っていたんだ」
そう言ってAとBの二人は立ち上がって夜雨に近づいてきた。
「ほら。これでおっぱいを隠してやるよ」
そう言ってBがピンク色のストラップレスブラで夜雨のおっぱいを含んで背中で蝶結びにした。これで夜雨のおっぱいはブラの中に収まり乳房は隠された。
「じゃあ下の恥ずかしい所も隠してやるよ。ほら。アンヨを広げな」
そう言ってAは夜雨の太腿をピシャピシャ叩いた。
Aが持っていたのは両サイドを紐で結ぶ紐ビキニだった。
夜雨はアソコを見られるのは一瞬のことだと思って少し足を開いた。
Aは紐ビキニの底を夜雨の股間にピッタリと当てた。
そして両サイドを紐ビキニの紐で蝶結びにした。
これで夜雨は女の恥ずかしいアソコとおっぱいと尻を隠すことが出来た。
ビキニは上も下も際どいハイレグカットではなく十分な面積があり尻はフルバックだった。
夜雨はどうして意地悪な彼らが乳首だけ隠すブラやTフロントやTバックのビキニではなく十分な面積のビキニを履かせてくれたのかわからなかったがともかく普通のビキニを身につけられてほっとした。
「おい。夜雨。ビキニを履かせてやったんだ。お礼くらい言ったらどうだ」
Aが怒鳴りつけた。
「あ、有難うございます」
お礼を言ったものの夜雨はなぜ彼らがビキニを履かせてくれたのかはどうしてもわからなかった。
今までの丸裸に比べたら吊るされているとはいえビキニ姿を彼らに見られることは相当な救いだった。
ビキニを履いたことによりアソコの肉がビキニの弾力によって形よく整えられてビキニの中に窮屈そうに収まりモッコリとした小高い盛り上がりを作っているためそれは全裸よりもエロチックに見える。
胸も同様である。
剝き出しのおっぱいは胸板に貼りついてだらしなくぶら下がっている二つの大きな肉塊であり、それを見られるのが女の恥ずかしさであるがブラジャーはそのカップの中にその肉塊をきれいに収めて、そしてブラジャーの弾力によって女の乳房をせり上げてほどよい弾力のある蠱惑的な小高い盛り上がりを作っている。
「ふふふ。夜雨さん。綺麗だねー。アソコがモッコリしていて」
「オレ一度、夜雨さんのビキニ姿を見てみたかったんだ。上下揃いのスーツをいつも見せつけられてその姿にも興奮させられて毎日オナニーしていたけれど夜雨さんのビキニのモッコリも一度見てみたいと思っていたんだ。まさに夢かなったりだ」
「お臍もかわいいな」
「太腿もビキニの縁からニュッと出ていて物凄くセクシーだな」
「ビキニは女が自分の体を男たちに見せつけるものだからな」
「真面目な夜雨さんも夏は海水浴場に行ってビキニで男たちを挑発するんだろうか?」
「さあな。だがまあいいじゃないか。今こうして目の前で夜雨さんのビキニ姿を見ているんだから」
AとBの二人は心地よさそうにビキニ姿の夜雨を鑑賞している。
夜雨はそれを彼らはもう嬲るのは終わりにしようとしていることだと解釈した。
夜雨は言葉には出さないが(いいわよ。私のビキニ姿を鑑賞したいというのなら)と言いたい気分だった。
しばし二人はスマートフォンで夜雨のビキニ姿を撮影しながら夜雨のビキニ姿を鑑賞していた。
「じゃあオレ。ちょっと後ろ姿も撮影するぜ」
そう言ってBは夜雨の背後に回った。
「うわっ。ヒップも大きくて物凄くセクシーだぜ」
「フルバックのビキニからニュッと出ている太腿も素晴らしいぜ」
Bはことさら驚いたように大声で言った。
夜雨はビキニ姿の前をAに見られスマートフォンで撮影され後ろ姿をBに見られ撮影されているという立ち姿である。
後ろのBは見えないが夜雨は(いいわよ。ビキニ姿を撮影するのなら)と言いたい思いだった。
夜雨はひそかに自分のプロポーションに自信をもっていた。
何だか自分がグラビアアイドルになって撮影されているような心地よさに浸っていた。
「夜雨さん。自慢のヒップを近くで撮影させてもらうぜ。いいだろ?」
Bが背後から声をかけた。
「い、いいわよ」
夜雨は自分がグラビアアイドルになったような酩酊からBの申し出を受け入れた。
返事をするのはちょっと恥ずかしかったが。
しかしそれが油断だった。
Bは夜雨の傍らに来ると夜雨のビキニのサイドを結んでいる紐の両方をスーと引っ張った。
サイドの紐は蝶結びで結ばれているだけなので軽く引くだけで蝶結びは解けてしまった。
「ああっ」
夜雨は思わず悲鳴を上げた。
紐ビキニの両方の紐が解けてしまったビキニは腰に貼りついている機能を失ってビキニはハラリと床に落ちてしまった。
Bはニヤリと笑って立ち上がりストラップレスブラの背中の蝶結びも解いた。
ストラップレスブラは肩紐が無く背中の蝶結びだけが胸に張りついておく機能なのでそれを解かれると、もはやブラは胸に張りついておくことが出来ずスーと床に落ちてしまった。
Bは床に落ちたビキニの上下を取るとそそくさと夜雨の前に行った。
夜雨はまた覆う物何一つない丸裸になってしまった。
「あっははは。夜雨。残念だったな。せっかくオレ達にセクシーなビキニ姿を見せつけていい気分になっていたのに」
「しかしお前のビキニ姿は本当に美しかったぜ」
AとBの二人は笑いながらそんな揶揄の言葉を夜雨に吐いた。
ここに至って夜雨はやっと彼らの念の入った意地悪を理解した。
彼らはビキニ姿を見たいなどとおだてておいて夜雨にビキニを履かせ散々褒めちぎって夜雨をいい気分にさせておいてそれでビキニの紐を解いていい気分に浸っていた自分を元の地獄に落とすのが彼らの計画だったのだと気づいた。
夜雨は彼らの計画に気づかずまんまと彼らの罠にはまってしまった人の良さを後悔した。
夜雨はまた太腿を寄り合わせてアソコを隠そうとした。
しかし胸は手をバンザイさせられているので隠しようがなく二つの乳房がもろに露わになり乳房の真ん中にチョコンと乗っている女の大きな乳首がもろに露わになった。
女の大きな乳首を見られることが恥ずかしいのだと夜雨はあらためて知った。
「お願い。Aくん。Bくん。もう意地悪しないで」
夜雨は泣きながら訴えた。
しかしAとBの二人は夜雨の哀願などどこ吹く風といった様子でニヤニヤと裸の夜雨がモジモジ困惑する姿を眺めている。
「よし。もうたっぷり嬲ったからな。じゃあオレ達は帰るぜ」
「達者でな。夜雨」
そう言ってAとBの二人は踵を返して小屋の戸に向かって歩き出した。
見物していた、ごはん学校の生徒たちも小屋の戸に向かって歩き出した。
「待って」
夜雨が声をかけた。
「何だよ?」
AとBの二人は五月蠅そうに振り向いた。
「あ、あの。いつ縄を解いてくれるの?」
夜雨は小声で恐る恐る聞いた。
「もうオレ達は来ないぜ」
「大声で助けを求める叫び声を出しな。そうすりゃ、いつか運よく通行人が来て、お前がいることに気づいて助けてくれるかもしれないぜ」
AとBの二人は、そう言って、せせら笑った。
夜雨は背筋が凍る思いでゾッとした。
ここは滅多に人など来ない。
夜おそくになれば-10度になる。凍死してしまう。
「お願い。縄を解いて。私、凍死してしまうわ」
夜雨はポロポロと涙を流しながら訴えた。
それを見て二人の心にもっと残忍な気持ちが芽生えた。
AとBの二人は顔を見合わせてニヤリと笑った。
「おっと。そうだったな。夜雨。やっておくべ事があったな」
そう言ってAとBの二人は踵を返して夜雨の方にもどって来た。
夜雨はそれを縄を解いてくれることだと思って二人に感謝した。
(やっぱりいい人なんだわ)
と夜雨は思った。
「有難う。Aくん。Bくん」
夜雨の涙は悲し涙から嬉し涙に変わった。
しかし二人の様子が変であることに夜雨は気づいた。
「ほら。夜雨。アーンと口を大きく開けな」
そう言ってAが夜雨の顎をつかんで大きく口を開いた。
「な、何をするの?」
夜雨が聞いた。
「お前が大声で助けを求めて叫んだら、もしかしたら、助け人が気づいてしまうじゃないか」
「だからこうやって、お前が声を出せないようにするのさ」
そう言ってAはハンカチとボールギャグ(口枷)を取り出した。
「ひ、ひどいわ」
夜雨はポロポロ涙を流したがAとBの二人は容赦しなかった。
Aは夜雨の顎をつかんで大きく口を開き、夜雨の口の中にハンカチを詰め込んだ。
そして、その口にボールギャグ(口枷)を咥えさせた。
「ふふふ。これなら声が出せないからな。助けを求められないぜ」
夜雨は真っ青になって、やめて、こんなこと、と叫ぼうとしたが、それは、アグ、アグ、という唸りにしかならなかった。
「ふふふ。それじゃあな。夜雨。達者でな」
「あばよ」
そう言い捨ててAとBの二人は小屋を出て行った。
ニヤニヤ見ていた、ごはん学校の生徒たちも小屋を出て行った。
あとには裸で吊るされてボールギャグを口に咥えさせられて項垂れている夜雨が一人、小屋の中に取り残された。
夜雨の目からはポロポロと涙がとめどなく流れ続けた。
それには自分のしてきた悪業に対する罪責の念からであった。
日が暮れてきた。
(ああ。夜になったら寒くなるわ。私、凍死してしまうわ)
その恐怖が実感として夜雨に襲いかかった。
その時である。
ギイーと小屋の戸が開いた。
一人のイケメン男が入って来た。
それは何と浅野浩二だった。
しかし夜雨は喜んでいいのか悲しむべきなのか判断に迷った。
それは浅野浩二が救助者なのか、それともAやBのように自分を嬲り者にする方の人間なのか、わからなかったからである。
しかし、あえて言えば、自分を嬲りに来た者だと夜雨は思った。
なぜなら夜雨は以前、浅野浩二の人の良さにつけ込んで、浅野浩二が書いた「太陽の季節」という小説を「あちゃーな小説」と言ってボロクソにけなしたことがあるからである。
(浅野浩二さんは、きっとAとBの二人がいなくなってから一人だけで、たっぷりと思う存分、私を嬲りに来たんだわ)
と夜雨は覚悟した。
しかし浅野浩二は夜雨を嬲ろうとはしなかった。
「夜雨さん。つらかったでしょう。すぐ助けます」
そう言って浅野浩二は慈悲に溢れた目で夜雨のボールギャグを外し、口の中に詰め込まれたハンカチを取り出した。
これで夜雨は喋れるようになった。
「ああ。浅野くん。助けに来てくれたのね。有難う」
夜雨は感動で泣いていた。
「今、吊り縄も解きます」
そう言って浅野浩二は椅子の上に昇った。
そして夜雨を吊っている縄を天井から解いた。
これで夜雨は爪先立ちから解放された。
「夜雨さん。すまなかった。もっと早く助けてあげたかったんだがけどね。そうすると、ごはん学校の生徒たちが不愉快になってしまうからね」
そう言って浅野浩二は夜雨の手錠もはずした。
そして浅野浩二は裸の夜雨にコートを掛けてやった。
「ああ。浅野くん。有難う。前に浅野くんの小説を、あちゃーな小説などと言ってごめんなさい。浅野くんて凄く優しくて寛大な人なのね。エロチックな小説も文学であるということがどうしても分からなかった私の頭の方が、あちゃーでした」
夜雨は感動でポロポロと涙を流していた。
「いやー。いいんですよ。僕は気にしていませんでしたから」
と浅野浩二は言った。
「夜雨さん。さあ。逃げなさい。ごはん学校の生徒たちに捕まえられる前に」
浅野浩二は優しく言った。
「有難うございます。浅野浩二さま。ご恩は一生、忘れません」
こうして夜雨は、ごはん学校の生徒たちに殺されることなく逃げおおせた。
・・・・・・・・・・・・・
翌日。
AとBの二人が夜雨がどうなっているか調べに来た。
夜雨がいなく、もぬけの殻で、吊り縄に手錠が無いのを見ると二人は狐につつまれたような顔になった。
「一体、何が起こったんだろう?」
「夜雨のヤツ。逃げやがったんだ」
「しかし、あいつ一人で手錠から抜け出せるか?」
「誰かが来て夜雨を逃がしたんだろう」
「誰だろう。そいつは?」
あいつか、あいつか、と二人は、ごはん学校の生徒で夜雨を逃がしそうな者を推測してみたが、どうしても分からなかった。
なのでAとBの二人は、ごはん学校にもどって、夜雨に逃げられたことを正直に報告した。
夜雨はカナダに逃亡した。
美人教師・夜雨がいなくなってしまったので、小説教室ごはん学校は人気がなくなって廃校になってしまった。
しかし、その代わりに、ネット上で「作家でごはん」という2週間に一作、小説を投稿できるサイトが出来た。
小説教室、ごはん学校に通っていた生徒たちのメンバーのほとんどが懲りずに、この小説投稿サイトに2週間に一作、小説を投稿している。
夜雨にとって文芸評論は生きがいだったので、カナダから、投稿された小説のほとんどに、相も変わらず、愚にもつかない評論文を書いている。
居住地がもう日本ではなく、カナダなので捕まえられる心配もなくなった。
めでたし。めでたし。


2024年9月8日(日)擱筆





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