夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

N・ヒル『仕事の流儀』(その13)

2012-12-26 23:44:06 | N・ヒル『仕事の流儀』
『仕事の流儀』の第15章でヒル博士は、他人を喜ばせる人柄の重要性を説いているのだが、これがなかなかおもしろい。本当はまだこの章を全部読んではいないのだが、内容が充実しているので、思わず取り上げたくなってしまった。

ヒル博士は、我々は人生を通じて、自分と他人との間の摩擦を最小限に抑えながら、うまく交渉して自分のやり方を完遂することのできる責任能力が大切であるということを強調している。他人との軋轢なしに交渉する能力はまれであるが、自分のサービスを売り込むためにはぜひとも必要だと。

そこで重要になる資質が、“pleasing personality”、他人に喜びを与える人柄なのだが、ヒル博士はこれを次のように定義している。

A pleasing personality is one that has flexibility and adaptability sufficient to permit an individual to harmonize with any environment, and the necessary magnetism to dominate through attraction.
(“How to sell your way through life”‘15 A Pleasing Personality’)

喜びを与える人柄とは、どんな環境にも調和できる柔軟性と適応力を十分に持ち、人を圧倒して引きつけるのに必要な魅力を持った人柄である。

そしてヒル博士は、この人柄は多くの属性が入り交じって構成されているとして、その1つ1つを腑分けして説明しているのだが、その数なんと21(!)にも及ぶ。博士がどれほど、この資質を重視しているかがわかる。今回は1~11までを紹介。

1.ショーマンシップ
2.自らの内なる調和
3.目的が明確であること
4.服装の適切さ
5.態度や身のこなし
6.声
7.目的が誠実であること
8.言葉の選び方
9.威厳と自信のある態度
10.ユーモアに対する鋭いセンス
11.利己的でないこと

われわれ教員の仕事にも通用することばかりだが、ここでは特に1、4、10が印象に残った。

1.優れた芸人は大衆に娯楽を提供する技術を理解し、応用している。彼らは想像力を働かせて人々にアピールし、その好奇心を刺激して興味を引きつけておく。優れた芸人は人々の偏見や先入観、好き嫌いを瞬時に察し、それを利用することができる。

4.他人に喜ばれる人柄の者は、自分にふさわしいだけでなく、その職業にもふさわしい衣服を身につける。第一印象は、長く続くものである。不適切な服装をしていると、克服することが困難な偏見を生み出してしまう。衣服が人を作るのではないかもしれないが、わきまえのある服装を選んでいれば、有利なスタートを切ることができる。

10.おそらく、ユーモアのセンス以上に重要な資質はない。これがなければ、その人の人生は浮き沈みの連続だ―もっとも、そのほとんどは沈んでばかりだが。


読んで、いちいちうなずけることばかりだ。4.はそのまま、服装がだらしない生徒への説教に使えそうだ(笑)。また、これを読んで、昨年あったある出来事を思い出した。
本校で昨年公開授業があった際、元T大教授という人が呼ばれて授業を見学し、講演もしていったのだが、その人は本校は初めてのはずなのに、普段着のような格好でやって来た。私の授業も見学に来たが、「目つきの悪いおっさんが来たなあ、態度も悪いし」という感じだった。本校の教員が、かしずくように案内していたので、誰かはすぐにわかったが、そのときに受けた名状しがたい不快感の理由が、ヒル博士の指摘でよく理解できた。肩書きは立派でも、人間性は別というよい例なのであろう。

1.や10.は、自分には不足している資質なので、読んで訳しているのがつらい。前にも書いたが、ヒル博士はなぜ、自分で欠落を意識していながら、怠惰ゆえに見過ごしていたい弱点を容赦なく指摘し、かくあるべしと叱咤してくるのであろうか。…ともあれ、まだまだ私には博士の(愛情と厳しさに満ちた)教えが必要なようだ。

JOY TO THE WORLD

2012-12-25 18:14:58 | 日記



補習授業は明後日まで続く。この期間は学校の購買部と食堂が開いていないので、昼食を持参していない生徒のために、弁当の買い出しに行くのが私の日課になっている。ほか弁のチェーン店によっては、宅配サービスをしてくれるところもあるのだが(○○亭)、私としては味も内容もあまり評価していないので、やや遠くになるが某HMに注文して取りに行くことにしている。ほか弁くらい、たいして違いはないと言われそうだが、経験上、こちらのチェーンのほうが良心的に思えるのだ。

行く途中、カーラジオを流していたら、次々にクリスマスソングが流れてくる。ワム!の「ラスト・クリスマス」、ジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス」、そして「ジョイ・トゥ・ザ・ワールド」。

特に、最後の曲(日本では「諸人(もろびと)こぞりて」で知られている)を聞くと、ああ、クリスマスだなあと思う。

後で、英語の歌詞を確認すると、日本語の賛美歌のものとは、同じ内容を歌っているようでも、だいぶ印象が違う。英語の方は、主の降誕を天も自然も喜び、主を迎えたからには地上から罪も不幸も災いも、悪がはびこることもなくなり、主は真実と愛と恵みを人々にあまねく与え、栄光に輝きながらこの世を治める、といったことが書いてあるようだ。

日本語の賛美歌の方では、「この世の闇路を照らし給う 妙なる光の主は来ませり」とか、「しぼめる心の花を咲かせ 恵みの露おく主は来ませり」などとあって、ここだけ読んでいるとなんだか、仏教の和讃のようだ。

ただ、いずれにしても、世界の人々がみな、このような心でいれば、どんなに争いごともなく平和な世の中であろうにと思う。せめて今夜くらいは、人々が主の教えを思い、愛し許し合う時であってほしいと願う。

  諸人よともに歌へよ あまねくも恵みを垂れに主は来ませると
  諸人の今宵ばかりは争はず罪も嘆きもなからましかば


写真は、以前サッポロ・ファクトリーで撮ったもの。
それではみなさん、よいクリスマスを。


JAPAN HEARTBREAKER

2012-12-24 22:34:37 | JAPANの思い出・洋楽



先日、西新宿の「STRANGE LOVE RECORDS」で見つけた。

「日本では元祖ヴィジュアル系バンドとして絶大な人気を誇ったデヴィッド・シルヴィアン率いるJAPAN!
本国ロンドンでは彼らの人気にまだ火がついていない78年7月に行われたカムデン・ミュージック・マシーンでの公演が登場!
当時のオーディエンス録音ながら妖艶な初期ライブを捉えた貴重な音源です。

さらにメジャー・デビュー以前の77年スタジオ・デモ音源も収録。
パンクとグラム・ロックにファンキーな要素を孕んだオリジナリティの片鱗が伺えるファン必聴のレア音源です!初期JAPANの鮮烈なライブ&デモの二枚組!!」

ということが書いてあったので、買ってしまった。

収録曲は以下の通り。

DISK ONE
1.Introduction
2.Love is Infectious
3.Obscure Alternatives
4.Communist China
5.Heartbreaker
6.Suburban Love
7.Suburban Berlin
8.Sometimes I Feel So Low
9.Adolescent Sex
10.The Unconventional
11.Don't Rain On My Parade

(実際には3.と4.の演奏順が入れ替わっていた)

DISK TWO
1.Suburban Love
2.Momentoes Of Love
3.Diamonds Make You Feel Like a Woman
4.Lovers On Main St
5.Body Rhythm
6.Keep On Up
7.Going Round
8.Stateline
9.Stepping Out
10.The Unconventional
11.Wish You Were Black
12.Adolescent Sex

初期のJAPANについては、ファンの間でも好きでないという人が結構いるし、デヴィッド・シルヴィアンも1stアルバムは「今じゃあんなもの、聴く気にもなれないね」と切り捨て、「僕は後期のアルバムを聴いてほしいな」と言っている。

私も高校生の頃は、初期のJAPANが好きではなかった。デヴィッドのソロ『ブリリアント・ツリーズ』(1984)から、『錻力の太鼓』(1981)→『孤独な影』(1980)→『クワイエット・ライフ』(1979)とJAPAN後期の作品を遡る形で聴き進んできたので、古レコード市で『苦悩の旋律』(1978)を見つけ、喜んで買って帰ってきて、早速聴いた時の驚きは忘れられない。

デヴィッドの歌唱法がまるで別人だし、音楽性も(当時はそんな言葉の区分はわからなかったが)ハードロックなのかパンクなのか、グラム・ロック、ファンクともつかない異様なサウンドに思われ、タイトル曲を除いてこのアルバムをあまり好きになれなかった。

だが、今回、DISK ONEのライブを聴いて、見方が変わった。

確かに、この彼らのライブは、素人の私が聴いても演奏が上手いとはお世辞にも言えない。曲想も未消化だし、当時、ハードロックと黒人音楽とシンセサイザーの迫力を欠く融合と酷評されたのもうなずける。同じフレーズを繰り返すだけのインスト部分が多いのも気になるし、デヴィッドのボーカルもただ叫んでいるだけに聞こえる曲もある。(3.Obscure Alternativesの「Waaaaaah!!」というシャウトはかなり痛い)。

この音楽性で、ビジュアルばかりがもてはやされたら、キワモノ扱いされるのもよくわかる。そもそも、どういう音楽性を志向するグループなのかがわかりにくいが、けっこうライブ会場での聴衆は盛り上がっているように聞こえた。

ただ、4.Communist Chinaや、5.Heartbreakerは今聴いてもいい曲だし、3.Obscure Alternativesや7.Suburban Berlinのように、後のバンドの方向性を感じさせるような曲もある。そして、どの曲を通してもミックのベースの存在感を強く感じるし、スティーブのドラムとのコンビネーションも完成されてきているように思う。ここから、ギターとボーカルを抑制し、より大胆にシンセサイザーを導入すれば、翌年の『クワイエット・ライフ』まではあと少しだ。きっと、当時はメンバーたちも、自分たちのサウンドを暗中模索していたのだろう。この時期があったからこそ、後のジャパンにつながったことがわかる。

DISK TWOのデモ音源も、その後正式にレコーディングされた曲とはかなり違ったものが多い。改めて、彼らがその初期から、試行錯誤を重ねて音作りする職人肌のバンドであったことを痛感する。

N・ヒル『仕事の流儀』(その12)

2012-12-23 23:41:55 | N・ヒル『仕事の流儀』
第14章でヒル博士は、自分が報酬を受けている以上のサービスを行う習慣の重要性について述べている。その理由については8項目が挙げられているが、要約して紹介すると、

1.この習慣を養っている人は、好意的な注目を浴びるようになる。
2.大多数の人は、自分のできるよりも少ないサービスを行う習慣を形成し、実行しているので、「対照の法則」による利益を得ることができる。
3.この習慣により「報酬が増大する法則」の利益が得られる一方、「報酬が減少する法則」の損失から免れることができる。
4.この習慣を守り実行する者は、優先的に雇用され、給与面でも優遇されるし、いつまでも雇用してもらえる。もし会社の景気が悪くなっても、解雇されるのは最後になるし、景気が回復すれば真っ先に呼び戻される。
5.この習慣により、卓越した技能や効率性、より多く稼ぐ能力が得られ、他人よりも優先されるようになる。
6.この習慣は、大多数の人間には見られないものなので、雇用者は、この習慣を守り実行する人物は絶対必要だと思い、彼に大きな責任を委ねることになり、高い金銭上の報酬がもたらされる。
7.この習慣を守り実行する人は、その反対の習慣に従っている人にはない、管理・指導能力があることを示しているので、昇進へと導かれる。
8.この習慣を持つ人は、自分で自分の給与の額が決められるようになる。もしそれが今の雇用者から獲得できなくても、ライバル企業から獲得できるだろう。

ヒル博士は、自分が要求され、行うことに合意した以上に多くの、よりよいサービスを行う習慣は、企業が大きく成長し、ビジネスマンが大きく運を積み上げる、最も重要な原則の1つであるという。また、

Men become harmonious,loyal,and cooperative in their efforts because of motive. Men who achieve outstanding success, whether as individuals or as the heads of buisiness enterprises, understand how to attract the qualities of harmony, loyalty, and cooperation through appropriate motive.
Every individual who works for a salary naturally wants more money and a better position. Not every such individual, however, understands that better positions and greater pay come as the result of motive and that the greatest of all motives with which these desirable benefits may be attracted is that of rendering more service and better service than one is paid to render.
(“How to sell your way through life”‘14 The Habit of Doing More than Paid for’)

人々は動機のために、和を保ち、誠実に、協調して働くよう努力する。めざましい成功を収める人々は、個人であれ企業のリーダーであれ、適切な動機を通して和や忠誠や協力といった資質を引き寄せる方法を理解している。
給料のために働く人がみな、もっと多くの金とよりよい地位を求めるのは自然である。しかしながら、そうした人がみな理解していないのは、よりより地位ともっと多くの賃金は動機の結果として生じ、そして望ましい利益を引き寄せるすべての動機の中でもっとも大きいのは、自分が報酬を受けている以上に多くの、よりよいサービスを行う動機だということである。


ヒル博士の言っていることは、自分の職場のことを思い出してみてもよくわかる。自分の使命を自覚し、「適切な」動機を実現するために献身的に働き、周囲の協力を取り付け、大きな仕事を成し遂げる人というのは、数は少ないが確かにいる。そうした人は、職業人としての能力が高く、仕事を効率的にこなし、質量ともに報酬以上の仕事を行う習慣ができている。

この章を読んで、私も給与以上の仕事をすることを心がけていたはずなのに、その意識が最近薄れていたことに気づいた。また、今の学校に採用された当時は、「給与の3倍以上の働きをしよう、そしてこの学校にいい買い物をしたと思ってもらえるようにしよう」と励んでいたことを思い出した。生徒が充実した高校生活を過ごし、よりよい進路を実現する手助けができるように、常に報酬以上のサービスを心がけていく。

真夜中の料理教室(2)

2012-12-22 23:05:13 | 日記



最近、寒いのと、手軽に作れて便利なのとで、インスタントのスープをちょくちょく利用している。

先日、『週刊文春』誌上で、インスタントスープのおすすめランキングが載っており、それに影響を受けたというわけではないのだが、期末テストの作成・採点で忙しかった折につい手が出てしまい、昔、私が学生だった頃に食べたのとは違い、格段に進歩していることに驚いた。

パン食の時は「じっくりコトコト クラムチャウダー」がお気に入りなのだが(ファミマのカップスープシリーズもいける)、ご飯のお供にはこの「韓湯美味(カンタンビミ)ユッケジャンスープ」がおすすめである。

きっと、コンビニおにぎりと一緒に食べる人が多いのだろうが、私としてはご飯を入れてクッパにするのが○だと思う。大きめの器にスープの素を入れて熱湯を注ぎ、例の玄米小豆ご飯をぶち込んで食べるとなかなかおいしい。ただし、辛みがけっこうきついので、女性の評価は分かれるかもしれない。

私は韓国料理ではクッパがいちばん好きなのだが(もちろん、プルコギもナムルもキムチもスンドゥブもチジミetc…も、そのおいしさを否定するものではない)、以前よく食べに行った、家庭料理的においしいクッパを作ってくれた岡山駅前の「きらく」が無くなったのが返す返すも惜しまれる。本当は焼き肉屋なのだが、クッパだけ食べに行っても、嫌な顔ひとつもせず作ってくれた。絶妙のダシ加減で、タマネギや野菜たっぷりで溶き卵がふわふわになっていて、全然愛想のないどんぶりによそわれているのさえ好感が持てた。

店を閉めると分かっていれば、もう一度食べに行っていたのに。焼き肉もキムチもナムルもテールスープもおいしかったので、この店のことはいまだによく思い出す。