『仕事の流儀』の第15章でヒル博士は、他人を喜ばせる人柄の重要性を説いているのだが、これがなかなかおもしろい。本当はまだこの章を全部読んではいないのだが、内容が充実しているので、思わず取り上げたくなってしまった。
ヒル博士は、我々は人生を通じて、自分と他人との間の摩擦を最小限に抑えながら、うまく交渉して自分のやり方を完遂することのできる責任能力が大切であるということを強調している。他人との軋轢なしに交渉する能力はまれであるが、自分のサービスを売り込むためにはぜひとも必要だと。
そこで重要になる資質が、“pleasing personality”、他人に喜びを与える人柄なのだが、ヒル博士はこれを次のように定義している。
A pleasing personality is one that has flexibility and adaptability sufficient to permit an individual to harmonize with any environment, and the necessary magnetism to dominate through attraction.
(“How to sell your way through life”‘15 A Pleasing Personality’)
喜びを与える人柄とは、どんな環境にも調和できる柔軟性と適応力を十分に持ち、人を圧倒して引きつけるのに必要な魅力を持った人柄である。
そしてヒル博士は、この人柄は多くの属性が入り交じって構成されているとして、その1つ1つを腑分けして説明しているのだが、その数なんと21(!)にも及ぶ。博士がどれほど、この資質を重視しているかがわかる。今回は1~11までを紹介。
1.ショーマンシップ
2.自らの内なる調和
3.目的が明確であること
4.服装の適切さ
5.態度や身のこなし
6.声
7.目的が誠実であること
8.言葉の選び方
9.威厳と自信のある態度
10.ユーモアに対する鋭いセンス
11.利己的でないこと
われわれ教員の仕事にも通用することばかりだが、ここでは特に1、4、10が印象に残った。
1.優れた芸人は大衆に娯楽を提供する技術を理解し、応用している。彼らは想像力を働かせて人々にアピールし、その好奇心を刺激して興味を引きつけておく。優れた芸人は人々の偏見や先入観、好き嫌いを瞬時に察し、それを利用することができる。
4.他人に喜ばれる人柄の者は、自分にふさわしいだけでなく、その職業にもふさわしい衣服を身につける。第一印象は、長く続くものである。不適切な服装をしていると、克服することが困難な偏見を生み出してしまう。衣服が人を作るのではないかもしれないが、わきまえのある服装を選んでいれば、有利なスタートを切ることができる。
10.おそらく、ユーモアのセンス以上に重要な資質はない。これがなければ、その人の人生は浮き沈みの連続だ―もっとも、そのほとんどは沈んでばかりだが。
読んで、いちいちうなずけることばかりだ。4.はそのまま、服装がだらしない生徒への説教に使えそうだ(笑)。また、これを読んで、昨年あったある出来事を思い出した。
本校で昨年公開授業があった際、元T大教授という人が呼ばれて授業を見学し、講演もしていったのだが、その人は本校は初めてのはずなのに、普段着のような格好でやって来た。私の授業も見学に来たが、「目つきの悪いおっさんが来たなあ、態度も悪いし」という感じだった。本校の教員が、かしずくように案内していたので、誰かはすぐにわかったが、そのときに受けた名状しがたい不快感の理由が、ヒル博士の指摘でよく理解できた。肩書きは立派でも、人間性は別というよい例なのであろう。
1.や10.は、自分には不足している資質なので、読んで訳しているのがつらい。前にも書いたが、ヒル博士はなぜ、自分で欠落を意識していながら、怠惰ゆえに見過ごしていたい弱点を容赦なく指摘し、かくあるべしと叱咤してくるのであろうか。…ともあれ、まだまだ私には博士の(愛情と厳しさに満ちた)教えが必要なようだ。
ヒル博士は、我々は人生を通じて、自分と他人との間の摩擦を最小限に抑えながら、うまく交渉して自分のやり方を完遂することのできる責任能力が大切であるということを強調している。他人との軋轢なしに交渉する能力はまれであるが、自分のサービスを売り込むためにはぜひとも必要だと。
そこで重要になる資質が、“pleasing personality”、他人に喜びを与える人柄なのだが、ヒル博士はこれを次のように定義している。
A pleasing personality is one that has flexibility and adaptability sufficient to permit an individual to harmonize with any environment, and the necessary magnetism to dominate through attraction.
(“How to sell your way through life”‘15 A Pleasing Personality’)
喜びを与える人柄とは、どんな環境にも調和できる柔軟性と適応力を十分に持ち、人を圧倒して引きつけるのに必要な魅力を持った人柄である。
そしてヒル博士は、この人柄は多くの属性が入り交じって構成されているとして、その1つ1つを腑分けして説明しているのだが、その数なんと21(!)にも及ぶ。博士がどれほど、この資質を重視しているかがわかる。今回は1~11までを紹介。
1.ショーマンシップ
2.自らの内なる調和
3.目的が明確であること
4.服装の適切さ
5.態度や身のこなし
6.声
7.目的が誠実であること
8.言葉の選び方
9.威厳と自信のある態度
10.ユーモアに対する鋭いセンス
11.利己的でないこと
われわれ教員の仕事にも通用することばかりだが、ここでは特に1、4、10が印象に残った。
1.優れた芸人は大衆に娯楽を提供する技術を理解し、応用している。彼らは想像力を働かせて人々にアピールし、その好奇心を刺激して興味を引きつけておく。優れた芸人は人々の偏見や先入観、好き嫌いを瞬時に察し、それを利用することができる。
4.他人に喜ばれる人柄の者は、自分にふさわしいだけでなく、その職業にもふさわしい衣服を身につける。第一印象は、長く続くものである。不適切な服装をしていると、克服することが困難な偏見を生み出してしまう。衣服が人を作るのではないかもしれないが、わきまえのある服装を選んでいれば、有利なスタートを切ることができる。
10.おそらく、ユーモアのセンス以上に重要な資質はない。これがなければ、その人の人生は浮き沈みの連続だ―もっとも、そのほとんどは沈んでばかりだが。
読んで、いちいちうなずけることばかりだ。4.はそのまま、服装がだらしない生徒への説教に使えそうだ(笑)。また、これを読んで、昨年あったある出来事を思い出した。
本校で昨年公開授業があった際、元T大教授という人が呼ばれて授業を見学し、講演もしていったのだが、その人は本校は初めてのはずなのに、普段着のような格好でやって来た。私の授業も見学に来たが、「目つきの悪いおっさんが来たなあ、態度も悪いし」という感じだった。本校の教員が、かしずくように案内していたので、誰かはすぐにわかったが、そのときに受けた名状しがたい不快感の理由が、ヒル博士の指摘でよく理解できた。肩書きは立派でも、人間性は別というよい例なのであろう。
1.や10.は、自分には不足している資質なので、読んで訳しているのがつらい。前にも書いたが、ヒル博士はなぜ、自分で欠落を意識していながら、怠惰ゆえに見過ごしていたい弱点を容赦なく指摘し、かくあるべしと叱咤してくるのであろうか。…ともあれ、まだまだ私には博士の(愛情と厳しさに満ちた)教えが必要なようだ。