夢かよふ

古典文学大好きな国語教師が、日々の悪戦苦闘ぶりと雑感を紹介しています。

SKT38 (その1)

2013-07-05 23:07:12 | 教育
『枕草子』に、好きな人に思われないのはつらいものだ、ということが書いてあるが、同様に、自分の好きなものが人にそう思ってもらえないのも、つらいものがある。

私は現在、複数の学年・クラスで現代文・古文・漢文すべてを教えているのだが、やはり、自分の好きな古文を教えているときが一番楽しい。しかし、国語の中では古文が一番嫌いな生徒が多いのも、厳然たる事実である。

感覚的に嫌だとか、生理的に受けつけないというのは別にして、生徒が嫌いな理由は幾つかの要素の複合体なので、その一つ一つを洗い出し、それぞれ対策を立てる必要がある。以下、ランダムに挙げると、
(1)英語と違って、社会に出てから使わない科目なのに、古文単語を覚えるのが面倒。
(2)ひらがなが何文字も連続して、視覚的に意味がとりづらい。
(3)主語や目的語が省略されていて、ぱっと読んで、誰が何をしているのかわからない。
(4)接続助詞「を、に、ば、ど(ども)、が、」などを介して、文がずるずる続き、読んでいるうちに、わけがわからなくなる。
(5)敬語や助動詞が複雑で種類が多く、意味や用法などを覚えきれない。
(6)平安貴族の文化や生活が、現代の自分たちとは外国人並に違うし、興味もわかない。
といったところか。
特に、(5)に関連して、文法嫌い、文法アレルギーが古文嫌いの最大の理由になっているように思われる。

これは人により異論もあろうが、私は高校での古文の学習を、興味・関心で引っ張るのには限界があり、文章を読ませるのと並行して、古典文法を体系的に身につけさせることが、結局は上達への早道になるということを経験から感じている。また、教科として教える以上、何らかの形で、生徒の学力向上につながるものがなければ、それは授業ではないと思う。

そのままでは無味乾燥なルールや基礎知識の習得を、なんとか興味をもってやってもらえないかと思っていたところ、先日、『3月のライオン』というマンガを読んでいたときに、はっとする場面があった。
二階堂という天才少年棋士が、将棋の普及のために、得意の絵の才能を活かし、ルールをわかりやすく説明した絵本を作ってしまう。その中では、将棋をネコの世界の陣取り合戦に置き換え、ネコの王とその家来たちが自分たちの国を守り、敵国に攻め入るゲームとして描いている。特に、将棋のコマを擬人(ネコ)化し、コマの働きをそのネコの個性として説明しているので、幼稚園児にも興味が湧き、スムーズに理解できるようになっていたのが印象的だった。

私には絵の才能がなく(授業で説明のために黒板に絵を描くと、生徒が笑い出す)、絵本を作る財力もないが、なんとか古典文法を、生徒に興味をもって理解してもらう手立てはないかと思っていた…。