6時半は日の出からだいぶ経っていて、早朝という空気でもないけれど
桜の並ぶ緩やかな登り坂をオレンジや黄色に色づいた葉を踏みつつ歩くと、湿った土の匂いとひんやりした風が心地よく肺に満ちていく
先日ある程度目星をつけていたので早足になりながら土の斜面を登り、まずは直径10センチはあろうかという枯れ木を一本抱えて戻る途中、坂道を猛スピードで降りる自転車に引っ掛けそうになって飛び退く
向こうもまさかいつもの通学路に拾った木を抱いて横断しようとする中年女性がいるだなんて想像もしてないだろう
ガレージに木を立てかけて再度坂を登り、今度は中位の枝を適当に折りつつガーメントに挟んでいく
薪を運ぶための幌布で出来たかっこいい鞄も世の中にはあるが、高くてどうしようかなと思っていた時に夫が思いついた素晴らしいアイディア
スーツなどを購入した時のぺらっとしたガーメントを2つに折って間に枝を挟んで持つとちょうどいい
破れてもたくさんあるので問題なし
いっぱいになったのでまた戻り、ガレージの後ろにバラバラ置いてとりあえずリビングへ上がると、朝風呂から出た夫が身支度を済ませて待っている
コーヒーを飲んでから今度は二人で外に出て、まずは車道沿いの松の木の下に転がる松ぼっくりを拾い、それからまた桜の坂を登る
初めてくる夫は入り口近くに落ちている細めの枝から拾おうとするので、そんな小物は捨て置いて良しと笑う
斜面の上には最後の大物が残っているので、二人がかりでまずは枝を折って持てるサイズにする
乾いたいい音がするね、と夫が言う
桜の枝は枯れてもなお気品ある芳香が漂うようだ
ガーメントがまたいっぱいになったので帰宅し、ガレージにまたバラバラと撒いてリビングに上がる
なんかお腹減ったね、と、何年ぶりかの白飯お味噌汁の朝ごはんを二人で食べる
新婚の頃はこれに鮭まで焼いて供していたのになあ
それから夫は在宅勤務の準備を始め、わたしは行水のようにシャワーを浴びて出社する
今日の1日はとても長そうだ
「おじいさんは山へ薪拾いに」と昨日の画伯(小5)のセリフが蘇る
おばあさんもだけどな
って、誰が年寄りやねん
前回、河原に持っていったガーメント一個分はおよそ4時間で燃やし尽くした
白飯を炊いて、肉を焼いて、ホーメルのチリビーンズをあっためて、珈琲3回淹れた
週末の海ではたっぷり燃やせるぞ
南米の人が数日間のカーニバルのためだけにそれ以外の日を働いて準備して過ごすと聞いたことがあるけど
わたしたちの最近の日々は焚き火照準になってて、ちょっと面白い
なにしろどっか歩くときに、目が勝手に針葉樹のシルエットを探す始末で
このあとはいったいどうなるんだろうか
夫が山林物件をリサーチしはじめたらちょっと正気に戻してあげなきゃなと思っている