まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

歯車の話。

2015-09-29 22:12:24 | 日記
「自転車、好きなんですね。」
先日、補修を請け負ってくれた
塗装の神様に言われた時に

そうなんです!
って、なんだか言えなくて

そもそも、なんで、
この子といるんだっけ
と、思い返してみた


去年の夏のはじめに
ムスメがレースに出るって
言い出して度肝抜かれ

しかもそれが
60キロだというから
さらに驚愕し

手持ちのクロスバイクじゃ
どうにもなんないのではないかと
心配して

私がロードを買って、貸してあげる
ことにしようと思い付いたんだった

まったくわからない分野なので
一番わかりやすい「ビジュアル」を
選ぶポイントにして

ハートのロゴが可愛らしい
DE ROSAに狙い定めて
オークションをうろうろ

私の身長に合うような
小さいサイズは
そもそもが出回ってないのだが

偶然見つけたこの子は
現オーナーが室内でしか乗ってない
という美品で
無事落とせた時には狂喜した

真夏に届いた青い自転車は
一ヶ月後には石巻で
ムスメと60キロを走破

その秋には来日したデローザ家の
三男クリスチァーノと
記念写真撮ってもらうチャンスに
恵まれた

私が頻繁に乗るようになったのは
春になってからで

7月に那須、8月に箱根、9月に石巻と
景色や美味しいものや
そこにいる人たちとの関わりを
楽しみながら走ることを覚えた

遠征で傷つけたペイントを
美しく直してもらったあと
近所の自転車屋で
はずしたワイヤをつけてもらった

元実業団で走ってたという店主が
「ゴーマルサンヨンにジュニアスプロケ、
とてもいい組みですね。」
と言った

前半はフロントのギアのことで
インナーが34,アウターが50
数字は歯車の歯の数である
ノーマルサイズに比べて小さいので
コンパクトクランクと呼ばれる

ジュニアスプロケは
成長期の子供が重すぎる負荷で
骨や筋肉を痛めることがないよう
考えられたもの
この子についていたのは14-25
最小14というのは
ジュニアのレース規格なんだそうで

「おそらく、自転車に詳しい親御さんが
レースをするお子さんに作ったものでしょうね。室内のみ使用ということなら、トレーニング用かも。」

そうだったのか
やけにふかふかしてる
材質のバーテープが
巻いてあるのにも合点がゆく

それにしてもリッチな話だ
こどものトレーニング用にこの子とは

外で乗るなら、まさに、
ヒルクライム向きですよと言うが

そんなに坂ばかりが
楽しい人ではないのだ
と、念のため言っておく

バーテープといえば
こちらもかなり痛んでいたので
別の自転車屋で購入、巻き換えてもらった

元のテープをくるくるはがすと
なにやら不思議な形状のハンドルが
チューブの一部が、ぐいっと潰されてるよう

「このハンドルは、かなり変わってますよ。
わざわざ選ばないとつけないです。」と、メカの人
知らなかった

というか、ほんとになんにも知らず
一年以上乗ってるんだな
と思ったら
なんだか不憫に思えてきた
直ったとはいえ大怪我までさせて
可哀想だったな

縁があってここにやってきたのだから
せめて次だれかに聞かれたら
即答できるよう
愛情もって接していこう


好きなんです。









受注ミスキャンパス。

2015-09-29 01:00:23 | 日記
ビジュアルで稼げる今しか
できない仕事をしたいんだ

ってきっぱり言い切る
大学のクラスメート

生まれてはじめて
であう人種だったが
なんとなく一緒にいて
居心地よかった

モデル事務所に籍を置き
レースクイーンやら
イベントコンパニオンやら
派手に活躍する友達

たまに、仕事の面子が
足りないときや
おもしろそうな案件があると
誘ってくれた

パーティの受付をした時には
女の子らを束ねるイベント会社の
いかにもキャリアっぽい女性が
事前ミーティングでありとあらゆる
接客に関する作法やテクを
レクチャーするのを見て
つくづく感心したり
(それらは今も十分に役立つ内容だった)

一緒のブースに立った背の高い女の子に
「どこの事務所?」と聞かれてたじろいだり、
「並んだときあまりにでこぼこだから」と、
ヒールを脱いだりする彼女に
これが競争社会で選ばれるための
頭の使い方なんだなぁと驚いたりした


友達が持ってきた仕事には
「テレビ番組出演」もあった
クイズなんだかバラエティなんだか
大喜利なんだかわかんないやつに
ゲスト三人がおもしろおかしく答え
それを聞いて横でにこにこしてる
ミス・キャンパス三名っていう役だった
三時間の収録で三万円くれるという
当時のいつものバイトの三日分

指定された日時に
六本木のカフェバーへ
共演?すると聞いていた
俳優Tさんがいたので
よろしくおねがいしますと言うと
「ん?もう僕おわったけど?」

どうやら一回に2週分収録するらしく
ゲストと女の子らの組み合わせが
逆になったようだ
しかしスタッフにしてみれば
どっちにどっちの女の子らが
座ってたってたいして違わないし
順番はどちらにしても
集合時間はおんなじなのだった
実働として支払われる三時間のほかに
待機がおんなじくらいあって
少しうんざりした

スタッフに手渡された
ひよこみたいに黄色い
スウェット地のミニワンピに着替え
顔になんやら粉をはたかれ
セットに座りカンペがでたら笑う
という仕事

知り合いや家族に
オンエア告知はやめよう
と思った

お気楽な感じで
遊んでるようにしか見えない
スタッフに

社会人ってこういうものなのかと
ちょっと考えてしまった

後日、振り込まれたバイト代は
期待してた三万ではなく
げんせんちょーしゅーなるものが
差し引かれた残額で
軽く詐欺なんじゃないかと
気分悪かった

世界が自分を中心に
まわってくれてもいいじゃんと
思ってた時代の記憶

その時の友達は
その後、いわゆる
「華のある職業」に就き
今もって現役であるが
仕事と育児のストレスが
深夜のポテチに向かうらしく
体型にあわせて制服変えるのも
そろそろ怒られるレベルらしい

一緒に出たもうひとりは
テレビ局のアナウンサーになり
こちらもばりばりの現役で
ニュース番組などで見かけるたび
あの時のはじけてたリアクションを
思い出す

そこへいくと
地味な技術職に就いて
結婚して妊娠して辞めて
地味な事務職に再就職した私は
なぜあのとき、あの場に
いたのだろうか

ただ、今になって

こっそり録画もアリだったなー

なんて
少し惜しんだりするのだった












職人の誇り

2015-09-27 19:11:23 | 日記


あんまり驚くと
呼吸とまるんだね

あんなに
がりっがりで
めっためただった
ロゴのペイントが



完璧に治ってる・・・!

どんなに
近づいて目をこらしても
元のままの部分との
境目がわからない

この子こんなに美しかったんだ
ってことを
改めて思い出させてくれた



神業をみせてくれたのは
KEEN EDGE
中山氏

本職はカスタムペイント
撮影用のハーレーや
メーカーや個人のメットなどを
手掛けている

ときおり、私のような
他ではぜったいやってくれないような
困った案件を持ち込むひとが
来るという

高級車などであれば
ボディの色はどこのメーカーの
何番の染料
というデータがあるのだが

自転車で、輸入品で、中古となると
どうやって色をあわせるかは
目と経験値で探り当てるしかない

しかも、やってみないと、
その色に辿り着けるかは
わからないので

正直、こういうの来ると、
ぞっとする
のだとか

このフレームのカラーリングは
青系の地色にパールがかかってるが

よく見ると普通のホワイトパールの
普通の粒子じゃなかったそうで

そうなると、地色の調整も
パールをかけたときにあわせて
やりなおしたりして

何度も何度も試行錯誤を繰り返す

ロゴ部分はPCで作り
地色を吹いた上に手書きする

そうして完成したもの
ただただ、感動しかない

引き取りにいった今日は
日曜日だったが
氏はほとんど無休で
仕事をしてるという

そして何ヵ月かにいちど
すこしゆっくり時間をとって
バイクや車で
自由気ままな旅に出る

好きなのは北海道だそうで
バイク同志すれちがうとき
ピースサインで挨拶する習慣が
いまだ残っているんだとか

それでも、週二日も休む
私たちのようなサラリーマンに
くらべたら
休日は半分くらいしかない

だけど
その腕が広く認められ
信じられないくらいのビッグネームから
ペイント依頼が舞い込んで
「ほんとに俺でいいの?!」と
思いながら作業してる
という話をしている彼は
とても誇らしげで
とても楽しそうで

そういうお仕事って
本当に素晴らしい
すごく羨ましい
と思った

大変な思いをして
心こめて治していただいたのだから
大切に乗らないと



中山さん、本当に
ありがとうございました。















数字の話。

2015-09-24 20:41:08 | 日記
会社なんだから
利益あげなきゃ

そのために
現状を分析し
少し先を予測し
取るべき行動を
選んでいく

そのことが
当たり前だと
思って働いてきた

うちの事務所が
三年の間
ボスを筆頭に
部員みんなで
もがきあがいた結果
やっと業績を
回復できて

ほっとしたのも
つかの間
うちのボスに
隣接エリアを管轄する
事務所の牽引をも
するようにという
辞令が唐突に降りて

そちらの事務所の
内情を知れば知るほど
問題の根が深いことに
驚くボスと

それをきいて
笑い話じゃないんだけど
笑っちゃうしかない私たち

今日は、事務担当として
むこうの事務所に同行し
むこうのボスと、事務担当と
四人で話し合い

ふだん、事務担当どうしは
電話やメールしたり
たまにごはんに行ったりで
コミュニケーションは
取れてるから
なんの問題もないけれど

むこうのボスが
あんまりにも
何も考えず
何もせず
ただ20年近くを
惰性でやってきてるのを
目の当たりにして
だんだん
むかむかしてきた

美人で優しく人当たりよく
にこにこしてて飲むとおもしろい
悪い人じゃないっていわれる
そんなひとではあるけど

するべき仕事をしないっていうのは
やはり
悪い人だとおもう

そしてその状況を
何年も野放しにしてたくせに
いきなりうちのボスに
ケツ持ってくるという大ボスにも
頭にきた

細かい作業について
比較していくうちに

一番大事な
翌月の会員数予測を
算出する方法について

むこうの事務所が
あまりにもざっくり
ゆるゆるにやってることが
判明し
驚いたのだが

それよりも

近隣6事務所を
束ねる支社が
その数字を算出する方法について
ぜんぶそれぞれの事務所まかせで
統一してもないし
支社は支社で勝手に
夢みてんのか、っていう
予測を立てて
本社に持っていっている
ということを知り

心のそこから
がっかりした

だけど
これまで地道に
誠実にやってきたことが
業績回復に
つながってることは
間違いがないので

ブレずに
やっていくよ

最後に頼れる男。

2015-09-23 17:53:13 | 日記


港北インターを越え
バス通りを左へ折れると
唐突に広がる畑と
細くじゃりじゃりの
上り坂

地図をよく見てきたつもりだが
お地蔵様の角でギブアップ
携帯を取り出す

はじめまして、の挨拶
優しそうな声
少しほっとする

考えてみれば
こんなふうに突然
面倒くさい作業を
お願いするのに
これまでメールだけで
やりとりしてたのも
失礼だったか

ただ
一番最初に
状況を説明したメールを
送ったあとに
いただいたお返事に

それは悲しいですね
気持ちわかります

って書いてあり

なんだかとても
ありがたく

連休中ということもあり
先方の予定も読めないので
都合よいときにお返事を
いただければよいかな、と

そのまま今日になってしまった

教えてもらったとおり
お地蔵様を背に坂を降りて
右手に折れたところの
奥に男の人が立っていた

自転車で来たんですか?
帰りどうします?

歩きます、と笑った

広々とした敷地の
葡萄棚を横目に
進んでいくと
プレハブが建っていて
それが工房だった

見慣れないものが
たくさんあるのに
雑然としてるわけではなく
すっきりと片付いてる仕事場

ご紹介くださった
F氏が
腕にまちがいはないから
といってたが
そのことが一目でわかった

お店の名前はKEEN EDGE
店主は中山氏
塗装業を営んでいる

先日の石巻行で
傷つけてしまった
自転車を直してもらおうと
持ち込んだ

予め写真は送っていたが
現物を確認し
どのように修復できるか
費用がいくらかかるか
相談させてもらうのが目的

フレームが変形してないので
傷の入った部分のみ
補修することを提案された

以前手掛けた自転車の補修の
写真を見せてもらった
よくよく見ればうっすらと
後からペイントした部分の
もとの色との境界があるが
ほぼわからない

もし、完璧に直すなら
フレームぜんぶ塗り直し
ロゴを手描きするんだけど
それだと10万以上するし
普通はそれでも
もとどおりにはならない、と

まあ、うちなら
もとどおりですけど
と、中山氏はにっこりした

私は
可哀想じゃない程度に
目立たなくなってくれたら
それでいい
10万以上は、払えないし
来月には乗りたい
と伝えた

順当に行けば間に合いますと
請け負ってくれた

他に何か、聞きたいことは?
と、中山氏

とにかく、まったく、ド素人で
なんにもわかりません
と、私

みんなそうですよ
店主は笑っていった

だいたいは、他にどうにもならず
困り果てた末に
ここを訪れるのだそうだ


ここ10日間の憂鬱が
ふきとばされてゆく

あとは
F氏とは写真をきっかけに
仲良くしていただいてることや
カメラの話などを少しして

よろしくおねがいします、と
工房をあとにした

帰り道
見上げる空は青く
オレンジ色のコスモスが揺れ
畑がいくつもあらわれ

・・・
あれ?

ここ、どこだ?