まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

新型ウイルスの気配に感染する人たち

2020-02-29 10:37:25 | 日記
休みの日の朝、スーパーの入り口脇にある棚は風通しがやけに良い感じ。
「トイレットペーパー」のタグが申し訳なさそうに残されている。
噂には聞いていたけど本当なんだね。紙製品根こそぎ無くなる現象。
デマだからね、どう考えてもマスク作るためにティッシュの材料回すとかないでしょうに。

なんでマスクが足りないかというと、未知のウイルスがじわじわと広がってるから。
でもね、自分が出すウイルスをばら撒かない目的ならいいけど
誰かの咳で飛んできたウイルスをブロックできるかというと怪しい。
けれどいろんなところでマスク推奨されてて、薬局朝一行列しないと入手できなくて
伊勢佐木モールでは列に割り込んだとかで殴り合いの喧嘩になってた。

困ったなあと傍観してるつもりのわたしも実はまんまと引っかかって
「お湯を飲んでればうつりませんよ」っていうチェーンメールを
会社の人に回しちゃった。なんかすごくそれっぽい内容だったんだもん。

そして一昨日ですよ。首相が「小中高はお休みね」って言い出して、
昨日は一日中、先生からの電話が鳴り止まなかった。
「小学校がお休みだから小学生は教えられないけど、園児はいいのよね」などとおっしゃる方もいて
そーじゃないだろー、とつっこむ。
本社での会議から降りてきた内容をわかりやすい文章に作り替えて数回メール配信、ファックス配信(今時)
それを読んでまた先生から問い合わせの電話が。
さらには、こんな状況なんだから締め切り過ぎていようが今月で辞めさせろと半ギレの会員保護者への対応。

横浜に住んでるってだけで、親戚から「大丈夫か」と言われちゃう同僚もいて
それは横浜港に停泊した大型クルーズ船の中で感染が広がり、ニュースになったから。
船の中で潜伏期間の14日を過ごし、ネガティブだった人たちは公共交通機関で帰宅したんだけど
そのあとでポジティブであることがわかったりね。
あの下船初日の夜、地下鉄で乗り合わせたスーツケースの集団にちょっとびびるわたし。
まったく悪くないのにね、その人たちは。そんなふうに見ちゃ失礼だよなと思うんだけどね。

事務所には本社から消毒剤が3本送られてきた。よく見ると「住居用洗剤ボトル」ってのに入ってる。
総務の誰かさんが一生懸命詰め替えしたのかなあ。
3月は先生を集める研修は全て中止。でも営業会議はあり。
外部会場のキャンセルは、日にちがもうあまりないため、事前払込のところはお金が返ってこない。でも当日払いのところは徴収しようがないよね。それはそれで気の毒だとおもう。

車を走らせると、広い公園にこどもたちがたくさん遊んでいるのが見えて、少しホッとした。
お菓子教室に来る子は飄々と、「40歳以下はうつらないんだってさ」などと言ってたらしい。それもデマだからね。けれど、そっち側の作り話はまだなんとなく救われる。

学校はみんな休んでしまえなんてこと、決めてしまう人々はどうかとおもうけど、そういう人々に決定権を与えているのはわたしたち。ちょっと、それでいいの?と考える機会なんじゃないかと尊敬する師匠にいわれて、その通りだと思う。

そうこうしてたら、楽しみにしてた来週のライブ、中止だって連絡が来たよ。あぁ、もう。














special days~atelier 結心の1周年〜

2020-02-03 20:02:26 | 日記


赤子が生まれてから、経過する時間を週で数え、月で数え、とうとう年でカウントできるようになった時に、なんだかものすごく安心した記憶がある。
何しろわたしがうかうかしてたらこいつは死ぬんである。夜中にちゃんと息してるか、ちっちゃい鼻の穴に指をかざすこと、数知れず。
赤子はしあさってで丸1年という日の夜、やおら自力で立ち上がったのだが、世間じゃ1歳って立つわけでしょ?しょうがないからやっとけ。感がものすごくて、呆気にとられた。
そこいくとゆっこちゃんについては、お店をオープンしたその日から、この人は大丈夫って思ってた。そして1年が経って、想定を上回る安定感で彼女は素敵な店を切り盛りしてる。
人生で一番睡眠時間が少ない一年だった、とは言うけど、そりゃまあきっとその通りだろうし、でもここからは身を削りすぎないように気を付けて、ロングランを目指していけば良いわけで、そんなことも別にわたしなんかが言わなくたって、ゆっこちゃんはわかってるんだった。
そもそも、もうすぐ一年になるかって段階で、「お店は閉める時もお金かかるんだから、廃業資金も貯めなきゃ」なんて言うルーキー、他にいる?



何かにつけ「なんか手伝うことない?」と店に行くのは、そこで必ず面白いことが起きるから。って本音を言ったら次から呼んでもらえないかな。もちろん全力で応援してるのは嘘じゃないけど、労働しに行ってる気は全くなくて、そう、モノミユサン。
そんで今回ももちろん面白いことがあった。いっぱいあった。忘れないうちに書いておく。来年読み返してまた面白がるために。

朝9時、今日もよろしくメッセを送ったらすぐさま返信が来た。いちご足りなくなっちゃったから買ってきてくれますか。ゆめのか、もしくはとちおとめ。
スーパーで物色。今年、わたしはいちご運が良くない。大体一年おきに良い年と悪い年があって、今年は後者なので、ちょっと心配になる。ゆめのかは形が美しいけど、何しろでかいのしかない。とちおとめは形もサイズもバラバラ。どっちがいい?と写真を送ってみる。忙しい店主から返事が来たときにはすでにお買い上げ済みだったけど。よかったよ選択間違ってなくて。
お店の前の大きな通りは駅から丹沢山系に伸びている。いやホントはそのまま山に直結じゃないだろうけど、どうやってもそう見える。今朝の山は青くてうっすら雪化粧してる。美しい眺め。気分が上がる。好きな曲を聴きながらサクサク歩く。お店のシャッターは下の方が少し空いてるので、そのままえいやと持ち上げる。ゆっこちゃんがニコニコ出てきてくれて、ドアを開錠してくれる。お客さんの中には、シャッターが閉まってるのにドンドン叩いたり、まだ準備中なのにドアを開けようとしたりするのがいるらしい。


ゆっこちゃんの品出しも無事終わり、わたしの雑なお掃除も終わって開店まであと5分ってところで、ドアの外に人影が。またもやどこぞのせっかちさんが、と思ったら、たまちゃんだった。口開けに友達が来てくれるのは幸先良くて嬉しい。記念にパシャリ。

そこからほんの少しのインターバルでお客様が次々いらっしゃる。ゆっこちゃんは合間を縫って予約のモンブラン を作ろうとするんだけど、生クリームの土台ができたと思ったら中断、マロンクリームを一つの方向に絞ったと思ったら中断で、数個のモンブランが完成するまで恐ろしい時間がかかる。オーブンの入ったスタジオで長時間放置もできず、途中段階でバットに並べては冷蔵庫にしまい、また出す。普段は完全に一人での作業のため、しまうこともままならず、結果商品価値がなくなってしまうこともあるんだそう。


何組目かで、ふじえさんがいらっしゃる。アトリエゆっこのロゴをデザインしたイカした男(イカれたではない。)元気なビタミンカラーのガーベラを一輪お土産にくれたので、ゆっこちゃんのお菓子によく登場する美味しいラム酒の瓶に飾る。ラム酒は入荷してくるときに洒落た革製のポーチに入ってくるそうで、ゆっこちゃんが「捨てるのもったいないから誰か欲しい?」と呼びかけたら応募したのがふじえさんだった。無事にお渡しできたので、嬉しそう。花と革の交換ね。こちらも記念にパシャリ。もちろんお菓子もお買い上げくださった。

特別なことはあんまりやらない、でもくじ引きとか楽しそうじゃない?って言ってたゆっこちゃん、確かに楽しかったけどそれはそれで大変であった模様。前の晩に、「ひゃー」って言いながら準備してる様子がsnsに上がってた。ふじえさんのすぐ後にいらした女性が8千円のお買い上げで8枚引くのに、じゃあ子供呼んできますね、っていって戻ってきたときに3人もなだれ込んできて、一番上のお姉ちゃんが見事1等を当てて、大盛り上がり。



お客様の選んだ商品を梱包し、会計し、ポイントを押し、くじ引きを促し、試食を勧め、談笑する。結構な時間がかかるわけだが、次に並んでいる人は忍耐強く待っている。初めていらした高齢の女性は、目がとても悪いそうで、「ぷりんはどんな大きさですか?」と質問する。ゆっこちゃんは空の容器を持ってきて手渡し、「これが入れ物です」と説明する。ころんと丸いそれを両手で包むように持って、「かわいいわね」と笑う女性。ご近所に住んでいて、知り合いにゆっこちゃんの「ふんわりぶっせ」をいただき、とても美味しかったから来店されたと言う。ぷりんの他にも生ケーキを数点お買い上げで、ゆっこちゃんが「かなり重たくなりますけれど大丈夫ですか」と心配するほど。くじ引きするときに少し手伝ったのだが、爪を綺麗に塗っていたのにちょっと感動した。よく見ればお化粧も綺麗にしてるし、服もお洒落。こんな方がゆっこちゃんのお菓子のファンになってくれて本当に嬉しい。そしてこの応対が終わるまでずっと待っていてくれた次のお客様にも心から感謝。



昼少し前に焼いたほろほろが冷めるのを待って、粉糖をたっぷりまぶしつけ、個数を間違えないように容器に入れてラッピング。袋の口をなるべく汚さないで入れるのは難しい。紙製のバッグに収めて動かないようにマステで止め、上にリボンを結ぶ。お菓子屋はお菓子作ってるだけじゃなくて、こんな細かい作業が夥しい項目積み上がってる。寝られない訳だ。そうして品出ししたほろほろが、瞬時にお客様の手元に渡る。嬉しい。けど、複雑。そうそう、あんな感じ、同僚が年末に夫の実家で奉公する時に大量の唐揚げを揚げるそばから男衆がつまみ食いするんで、永遠にお皿に積み上がらない、って言うあれね。でも、もちろん、売れることはありがたい。嬉しい。でもそれ今置いたばっかりなの。

ところで今日なんだか落ち着かないゆっこちゃんの訳は、常連さんの受験。中学受験は午前にテストしたら午後には結果発表という瞬間技。というより、公立高校が受験から発表まで一週間もあるのがおかしいから。まあとにかく、無事に合格したらゆっこちゃんのフルーツタルトをオーダーするんだ、と言ってるらしい。午後もだいぶ過ぎ、そろそろ吉報がくるんじゃないかと思ってるところに、彼女のおじいちゃま(こちらも常連)登場。しかしお孫さんの話には一切触れず、ただただお菓子を買ってお帰りになった。なんだよぉ、と思っていたらほどなくご本人登場。同伴のお母様に促され、「受かりました」と言うのを聞いて、ゆっこちゃんは大笑いしながら涙を流してた。すごく嬉しいことがあるとゆっこちゃんは体を大きく傾げながら大爆笑してるのに泣いてるんだけど、久しぶりにいいもん見たなあと思う。

生ケーキも残りわずかなタイミングで、河野ご夫妻登場。残ってて良かった、とお買い上げ。ホワイトカレーの話で盛り上がる。パワフル過ぎてわたしの撮影タイミングが狂ってしまったため、記念写真はボツです。ごめんね。

今からショートケーキを組もうかなあ、どうしようかなあ、とゆっこちゃん。残りの営業時間を考えて、やっぱり作ろう、と。半円だけにしたら?と言ったら笑ってた。スクエアだとそういう技も使えるんだそうで、なるほど、世の中にスクエアなショートがよくある理由がわかった。そして案の定、接客の合間に作業をするのでなかなか仕上がらないケーキ。集中すれば瞬殺なのに、と、クリスマスに見た光景を思い出す。組み上がったばかりのケーキはふんわりしてて、カットも難しいんだって。でも食べたら最高だろうなあ。

次の予定があるため、最後に50枚ほど真っ白な紙袋にロゴのハンコを押して、わたしのモノミユサンはおしまい。明日はお店は休みだけど、今度はバレンタインに向けて仕込みに忙しいゆっこちゃん。それが終わったら束の間の休暇、スノボしに行くんだって。「怪我したらどうするの?」と心配してくれる友達もいるけど、そういうのを気にしていたら何にもできなくて、何のために生きてるかよくわかんなくなるからいいの、と。そりゃそうだ。ショートケーキ の先にはゲレンデがある。ちっちゃな体に不釣り合いなでかいホイッパーをガシャガシャ言わせて生クリームを立てたり、まんまるいクッキーに粉糖をたっぷりまぶしたりしながら、見えてるのは雪景色なのかもしれない。まあ、万が一骨折でもしたら、また来るよ。今度はもうちょっと働くモードで。