まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

チームMF、よそ様の会社のキッチンでマフィンを焼く。

2016-09-29 18:58:42 | お菓子作り


うっかり東海道線に座れてしまったのが
間違いだった。
ふ、と意識が遠のき、目が覚めたらそこは
東京駅。
慌てて降りて人ごみの中を移動しながら
路線検索。神田に出てメトロね、なんとか間に合いそう。
ところが神田を降りたところにメトロの入り口がない。
ぐるぐる回ってやっと見つけて電車に飛び乗り
日本橋駅に到着したのが集合の2分前。
待ち合わせの先生にメッセージを送ると
「うきうきと27階まで来ちゃったのでそこで待つ」と。
システマティックな入館、わかるかなあと不安になる。

もともとの待ち合わせ場所の7階受付に上がると
まりあちゃんがニコニコして待ってた。
アムスでの2年の修行を終えて帰国したばかり、
なんだか逞しくなったなあ。
続いて「ちかさんですよね?」とニコニコして
やってきたのはゆっこちゃん。
ほとんど初対面だけど見つけてくれたことに感謝。
そして二人で入館証発行の端末の前に立ちすくみ
まりあちゃんに指示されるとおりに画面にタッチ。
一気に老けたような気がしてきた。これはまずい。

飛行機の搭乗口みたいなエレベータのエントランスを
無事に通り抜け、先生たちの待つ27階へ。
サイボウズのホールに入ってすぐ出迎えてくれるのは
巨大なキリンのぬいぐるみ親子。
キリンの向こうで先生がニコニコしてる。
近づいていって挨拶したら一気に喉が渇いた。
ベンダーが見えたのでお財布持って行こうとしたら
「あ、ここのはね、無料」
なんという福利厚生。でもそれ私が使っちゃまずいんじゃないか?
大丈夫だよーーと言われ恐る恐るボタンを押すと
ガランっと転がってくるお水のボトル。うわほんとにお金入れてないのに。
お水を持って戻ると、あこちゃんが窓際のハンモックに座って
ぐるぐるしてた。なんなんだこの夢と魔法の国みたいな空間は。



ほどなく会場である部屋に通される。
奥の方にあるのは、広々としたキッチン。
カウンターの上に持ってきたものを並べ
ざっくり説明しだす先生。ふんふん、なるほど。
要するにイベントが始まったくらいの時間に
最終の焼成をすればいいのだな。
ふわんと香る焼き菓子のいい匂いで盛り上げるっていう作戦。
作るのはアーモンドのマフィン、40個。
他に、先生が焼いて持ってきた小豆のマフィン20個を並べる。

道具は適当にその辺のを、というので
みんなでザクザクと引き出しを開ける。
お、焼肉プレート?え、蕎麦の木枠?シフォンの型なんかも。
棚にはコーヒーサーバーやシェイカー。なんでもあるんだな。

そしてみんなそれぞれ、作業を始める。




大量の粉をふるうまりあちゃん。
卵を次々割るみなこさん。
お湯を沸かしてバターを溶かすあこちゃん。
マフィンカップを並べるゆっこちゃん。
ローストアーモンドのペーストの瓶を手に取る私。

これが全部だから半分ずつ2ロットで使って、という
ペーストを分けようとするも
底の方がガチガチになってる。
ゴムべらで緩めようとしたが全く歯が立たず。
こんなこともあろうかとマイ木ベラ(大)を取り出す。

持ち物の中には書いてなかったけど
なんとなく紙袋に入れてきた。
全く知らないところで初めましてのオーブンで
お菓子を焼くことに不安がないわけはない。
なのでお守り代わりに、慣れたものたちを持ち込んだのだった。
他に持って行ったのは、その日の朝にちょきちょきしたウエスや
ゴムべら、鍋つかみ、タオル、ハサミ、小さな付箋など。

しかし木ベラでもなかなか歯が立たない。
湯煎にかけてみたり、ボウルに取ってから練ってみたり。
一人だと腕が痛くなるので、あこちゃんとかわりばんこ。
どうにか混ぜ込むのに使えるくらいになってホッとした。
まさかここが今日一番の力技だったとは。



マフィンは簡単。順番に混ぜるだけ。
絞り袋に詰めて75グラムずつカップに入れる。
「ねえねえ75ってどんくらい?そんくらいかー」
「150に75足すといくつだっけー」
「2段でも焼けそうだけど焦げるかな」
「1段ずつ4回にしようか」
「焼肉プレートをケーキクーラーの代わりに使おう」
「余りを入れたからこの子だけ量少ないよ」
「これもうローテした?ありがとー」

みんなでワイワイ作るお菓子。
掛け値なしに心から楽しい時間。
そして片付けしながら
「やっぱりウエス使わないとさ、なんか罪悪感なんだよね」
「それわかるわ〜」
っていう、MFのDNA。

イベント無事はじまり、最後の焼成も無事終わり、
休憩時間にカウンターまでいらっしゃるお客様。

「えっ?!2種類あるの?!やだ!迷っちゃうじゃない!」
「どっちの方が美味しいですか?」
「ちょっとでも大きいのをつい選ぶよねー」
「ありがとう、いただきまーす」

マフィンを前にして、仏頂面になる人はいない。
みんな楽しそうに嬉しそうに選んでいく。
お菓子の魔法。


ところで、一体何のイベントか?というと
我らが松本先生の開発した
教室マネージャーアプリ tetocoが
とうとうお披露目なのだった。
なぜサイボウズ社で?といえば
同社の製品kintoneをベースに
開発したからなのだった。



この開発の過程で先生はとても苦しんでたりもしたのだけど
この日の先生は最初から最後までニコニコしてて
お客様も概ねみんなニコニコしてて
私はそれをキッチンの片隅から眺めながら
なんかふんわり幸せだった。
ニコニコのほんの一部の助けになったのなら
こんなに嬉しいことはない。



カメラマンのマッキーが
チームMFマフィン班を記念撮影してくれた。

あ、私達もこんなにもニコニコしてたんだな。


あっ、そうかもしんない!珈琲文明ライブ

2016-09-24 07:17:31 | 日記


コード進行おたくを自称する
われらが珈琲文明マスター
赤澤氏

いつか
斉藤和義本人と
酒飲みながら

ここのコードはさぁ
あれでしょ、
アグネスチャンでしょ?

ってつっこんでみたいんだって

そうしたらたぶん彼は

あっ、そうかもしんない!

って言うんじゃないか

あくまでもイメージです!


ライブ聴いてるとよく出てくる
この台詞

一緒に飲みながら音楽談義したい

とにかく語りたいんだな
言いたいこと山ほどあるんだな
それだけ音楽がだいすきなんだな

だからトーク6歌4の
(ときには7:3の)
ライブなんだな

そんな
赤澤氏のライブを
二度体験した、Sさんが


あのさー赤澤さんてさー
落研かなんかにいたの?

なんであんなおもしろい喋りができんの?
って

うーんあたしはいちお
軽音っていう認識だけどなー
卒アルにも軽音部のところに
写ってるしなー

おもしろいこと言おうだなんて
おそらくまったく考えてなくて

素のまんまでものすごく
おもしろいひとなんだと思う

昨晩も
お友だちふたりが
ライブ初体験

突き刺さるおじゃ丸voiceに
圧倒されてる様子を見るのが
なんか楽しいの


毎回、一人のミュージシャンに
フォーカスする
ピックアップアーティスト年間

あと二人は誰を掘り下げるのか

とても楽しみ




美味しいことは楽しい。イタリア家庭料理教室 タボラータ体験♪

2016-09-22 17:13:01 | 日記

ミサリングファクトリーのフランス菓子コース
第一土曜クラスはなぜか「怖い」っていう風評が立っている。
そう言ったらカオリちゃんが
「だって本当に怖いですよ!」だって。
理由は「歴の長い二人がザクザク進むから」
ってことなんだけど、本当にね、威圧とかしてるつもりないんだけどな。
やっぱりあれだな、フリルとかリボンとかの服を着なきゃ。

そんな第一土曜クラスの4人が揃って
押しかけたタボラータさん。
ご挨拶もそこそこに、「怖い!」を連発する
恵美さん。こんなところにまで悪い評判が?
「だってミサ先生怖いんだもん。」
「怖い!って言うと、『どこが怖いのよ!』ってまた怖いんだもん。」
でもよくよく聞けば
「自分には絶対出来ないことが出来る人だから」
という理由なので、尊敬してるという意味なのだった。
(断っておくが松本先生は決して怖い人ではありません。本当だってば。)

エプロンつけて手を洗う。ここまでならいわゆる料理教室っぽいけど
そのあとが違う。
椅子を持ってきてアイランドキッチンの前に並んで座り
恵美さんの話を聞く。
体験レッスンなので、「もしかしたらこのあと一生会えないかもしれない」
と思う人たちに、「とにかく伝えたいことは全部伝えなきゃ!」という
恵美さんの話しっぷりに圧倒される。
自分のこと。タボラータのこと。食材のこと。調理法のこと。
イタリアの人たちにとっていかに「食べること」が
大切なものか、という話。
「世の中で一番美味しいのは自分のお母さんの手料理」と
イタリアの人は皆そういうのだとか。

素材の旨みをいかに引き出すか。それがベースとなる料理の考え方。
ただ残念なことに、日本で生産されている野菜や肉は
イタリアのものと比べるとはるかに旨みが少ない。
雨がたくさん降る国なので、土壌が常に洗い流されており
薄い味のものになってしまうのだそうだ。
このあたりの嘆きは、亨ちゃんと同じだな。
(亨ちゃん=松本先生のお菓子の師匠、孤高のパティシエ。)

イタリアで知った美味しさを少しでもたくさんの人と共有したい、
そういう恵美さんは可能な限りの食材をイタリア産で用意している。
パルマの生ハム、モティアの天日干しの海塩、パルミジャーノレッジャーノ。
単品だけで、ものすごいご馳走になってしまう。

人参もジャガイモも、ゆっくり時間をかけて火を入れる。
そうすることでおいしくなってゆく。
茹であがったジャガイモはマッシュして
練らないように捏ねないように卵や小麦粉、チーズを混ぜる。
細い棒状に伸ばし、端から短く切って、
ギザギザのついた板の上で親指を使ってひゅるん、と丸める。
「ニョッキ」は「親指」に語源があるんだって。




この作業はみんなでやってみる。
力のいれ方が難しい。内側のくぼみと、外側のギザギザにソースが絡むように。
「ゆっくりやってみせたいけどゆっくりはできないのよね!」と恵美さん。
あっという間にニョッキが転がってゆく。

大鍋にお湯を沸かし、きつめに塩を入れたら
出来たニョッキを茹でる。大小様々な形のニョッキ、小さいものから順に
ぽこっと浮いてくる。全部浮いたら湯を切って作っておいたソースと和える。
とにかく出来立てを食べるのが大事なので、その間にテーブルも準備しておく。



厚手の不織布を敷いて、その上からクロスをかける。皿とカトラリーを置く。
イタリアの人は毎食必ずこの作業をするのだそう。
上にとっちらかってるものをとりあえず脇に寄せて出来た隙間で
ご飯を食べてる私、ちょっと反省。


皿によそったら、自分で好きなだけチーズをかける。
たくさんかけたほうが美味しいらしい。
糸鰹節のようなふわふわした山が出来る。

熱々を食べると、くにゅっと潰れてふわりほろりと崩れる。
なんだろうこの美味しさ。ジャガイモの旨みがたまらない。
セージの香りを移したバターに、丁寧に裏ごししたトマトのソースが
鮮烈な風味でジャガイモを引き立てる。
半分食べてまたチーズを山に盛る。永遠に食べていられる。


ハーブソルトを振ってきちんと背中の脂を焼き切った鶏もも肉、
ゆっくり蒸し煮した人参。
ルッコラと生ハムとパルミジャーノのサラダは
グリーンレモンとオリーブ、胡椒を自分でかけて和える。

生ハムは保存食、ハムは生物(なまもの)、というのにも驚いた。
いつか生徒さんが増えたらイタリアからハム輸入して
みんなで切り分けたい、と恵美さん。その時には是非呼んでほしい。


これが本当の美味しさの生ハム、そしてパルミジャーノ。
毎日これを食べられたらそりゃ言うことはないけど
そんなことはできない庶民としては
「本当の美味しいもの」と「なんちゃってなもの」の
識別をした上で、なんちゃってはなんちゃってとして
食べればいいんだよね、と。
イタリアの人も毎日こんなものを食べてるわけではなくて
ニョッキは休日に親戚やお客が集まる時に作るものなのだとか。


自家製ミルクジェラートはさっぱりしていて香りがよく
舌触りなめらかに、すぅっと溶けていくので
「待って待ってまだ消えないで!」と思わず引き留めたくなる美味しさ。
カプチーノのフォームドミルクは甘さの消えない60度設定、
初めてフォームドミルクを美味しいと思った。
豆はエスプレッソ用のペリーニの焙煎。
酸味苦味がきついのは苦手、という
恵美さんの好きなブレンドなのだそう。

タボラータ、は、「大きなテーブル」という意味。
巨大な、というよりは、長い机を横にずらっと並べて
クロスかけてみんな並んで座って食べる会食のときのテーブル。
外国の映画で、結婚パーティのシーンでよく見かけるやつね。
家具としてのテーブルを指す名称でもあり
会食そのものを指す言葉でもある。
「いいタボラータだったね」なんて言いながら
お客さんが帰路に着いたり。

楽しいことが一番、と言う恵美さん。
日は違っても同じレッスンに参加する人たちみんなが
大きなテーブルを囲んで美味しいものを食べ、笑顔で過ごす
そんな素敵なお教室。

恵美さん、
ご一緒した皆さん、
ありがとうございました。
また行きます。絶対。





応援してたら、応援されてた。ツールド東北2016*アイちゃんと走管さん

2016-09-20 18:56:00 | 日記


そもそも、何だって石巻まで行って
チャリ乗ってるのかといえば
話は数年遡る。

ムスメ、中学時代。
「土日練習なし」「怖い先輩なし」という消去法で
所属を決めた卓球部だったが
一緒に入った友達とはいたく気が合ったようで
付き合いは大学生になっても続いており
長期休暇ともなると仲間全員で、もしくは、そのうちの数人で
頻繁に国内旅行を繰り返している。

その中に、アイビーがいる。
本名はヒナコちゃんというのだが
照れくさいのか何なのか、「私のことはアイビーと呼んで」と言う。
そうはいってもアイビーというのは彼女の家で飼う
真っ黒いラプラドールの名前なのである。
大きな体で甘えん坊、ムスメが遊びに行くと
飛びついて来て顔をペロペロする。
あ、こっちは犬のアイビーの話。
そしてムスメが「ねーねーアイちゃん」と友達を呼ぶと
決まって犬も「ん?なあに?」とこっちを向く。
大変に紛らわしい。あーごめんねアイビー。え?何が?そっちじゃないってば。

大学に通い始めるのとほぼ同時に
ムスメの父親が自転車を始めた。
父親の面白いところは、自分の趣味にムスメを勧誘するところ。
そしてムスメはクロスバイクを買ってもらい
大学までの4キロをそいつで走っていくようになる。
あんな細いタイヤで、ヘルメットもなしで
大丈夫なんだろうかと過剰に心配する母親の私に
ムスメは例えば校内で転倒してちょっと怪我したなどと
いう話を隠そうとしなければならないほどだった。

そうこうしてるうちに、アイビーのパパが
筋金入りのチャリダーで
アイビーも当然のように自転車に乗っているということがわかる。
しかもアイビーパパはものすごいスパルタで
車に乗せて10キロ以上先の馴染みの自転車屋に
娘を連れて行くと、仕上がってる彼女用の自転車を
ほらっとあてがい、ざっくりビンディングの扱いを教え、
そのまま自分だけ車で帰宅。
アイビーは初めてのビンディングで
車の多い市街の道を必死で10キロ漕いで帰った。
「何があっても車道側には倒れない!」と
それだけを念じて走ったという。

アイビーママもアスリートだが
専門はテニスで自転車はお付き合い程度。
ママのご実家は宮城 女川。
お家はかの災害時に海へと流されてしまった。
仮設住宅に暮らすお母様を訪ねるついでに
家族で参加してるのが「ツールド東北」なのだ。

3年前、アイビー一家に誘われて
ムスメがこのイベントに参加すると決まった時
心配性の私は「果たしてあんな自転車で60キロも走れるのか」
とあれこれ考えた。
そして自分用ということでロードバイクを買い
それにムスメが乗って走ればいい、と思いついた。
自分の持ち物としてのロード。でも全くピンとこない。
何を基準に選べばいいかな。
散々迷って、結果、「ジャケ買い」にした。
ロゴが一番美しいと思う、DE ROSA。
オークションで探し始めると、条件にぴったりの1台が見つかった。
そしてムスメは無事に60キロを完走したのだった。
ムスメに少し遅れ、アイビーも無事完走。
途中体調崩したらしく、かなり辛そうなゴールだった。

応援に行った私が見たムスメは
私の知ってるムスメとは少し違った。
沿道で手を振る人やボランティアの人に
大きな声で挨拶と感謝の表示をする。
ライダーの人たちとはにこやかに話をしている。
アイビーのおばあちゃまのお家の様子に
心を痛め、振舞ってくれたずんだ餅の美味しさに感動する。
どちからといえば他人と関わるのが煩雑、と
いうムスメをこんな風に変えてくれる何かが
ここにはあるのだ。

翌年からは家族で参戦している私たち。
距離は一番短い60キロ。
アイビーパパは去年は最長の215キロ、
今年は走行管理ライダーという、ボランティア参加。
(人気のイベントなのでなかなか抽選に通らないため
来年の出場が保証されるボランティアと1年交代という人が多い。)
そしてアイビーはたった一人で100キロのコース。
アイビーママと妹ちゃんはお留守番。

イベント翌日、美味しい寿司屋に連れてってもらいながら
アイビー父娘と昨日の話で盛り上がる。

アイビーはスタートラインに並んだ時から
すでに心がポッキリ折れてたんだそう。
一人だし。雨だし。寒いし。
なので途中の岐路でちゃっかり60キロコースの
ショートカットをするつもりだった。
ところがそんなアイビーにぴったり張り付いたのが
走行管理(走管)のボランティアスタッフ。
登り坂ではすぐ後ろから
「はい、ここはギアを軽くしてゆっくり行きましょう!
フロントはインナーに!はい、ここからは一番軽いのにしますよ!
いっち、にー、いっち、にー、そうそうその調子!」
と、とにかくずーーーーーっと喋ってる。
エイドにたどり着くと、食欲なんてまるでなく
げんなりしてるアイビーに
「ちょっとだけでも食べましょう、カレーのご飯だけでも
全部食べてください、でないと回復しませんよ!」
仕方なく無理やり食べ、また走り始めると
ちゃんと力が戻ってくる。
調子を取り戻して走っていくと
走管さんは次のターゲットに移っていった。
遠くの方で「いっち、にー、」が聞こえて
アイビーはちょっと解放された気持ちになったそう。

でも、あの人がいなかったら
絶対ゴールできなかったよ、私。
ニコニコしてるアイビーを見てたら
きっとこの笑顔を見たら感動して泣いちゃうんじゃないかな、
走管さん、と思った。
そして別のコースの走管さんだったアイビーパパは
ええっ、そんなことまで言うのか、俺なんにも言わなかったなー
と驚いている。

熱血走管さん、来年はライダーとして
思い切り楽しんで走ってくれたらいいな。
そして再来年はまた心折れた誰かを
引きずってゴールまで連れて行ってくれるんだろうな。

目の前に辛そうな人がいたら、手を貸す。
それは実際にはそんなにたやすいことではなくて
貸せるだけの余力がなきゃいけないし
相手に必要なものを見極める目も大事だ。
ただ、この子を俺はゴールまで連れて行くぞ
っていう強固な意志が
もういいや、って思ってたアイビーの気持ちを
やっぱり頑張ってみよう、という方向に
向けさせたのだと思う。
彼だけじゃない、とてもたくさんの人の
強い意志の力をここでは感じる。
だからこんなに私も心惹かれるんだろう。

来年は来られるかなあ、とアイビーとムスメ。
4回生、就活もどうなっていることやら。
こっちの方は張り付いて激励してくれる
走管さんの存在は期待できない。
その代わり自分でしっかり漕がなきゃ。
でも大丈夫、あんな大変なコースを
走り切ったのだ。
今度も行けるよ。







応援してたら、応援されてた。ツールド東北2016*雄勝~河北エイド、そしてゴール

2016-09-19 22:43:47 | 日記



女川エイドを出発するや否や
震える間もないほど速攻で
登り坂が始まる。
トンネルを2本、巨大なトラックと並走する泥だらけの細っこい自転車。
多分彼女はかんかんに怒ってるにちがいない。
前のオーナーは室内でしか乗ってなかったわけだし
なんだって狭い箱に押し込められて
こんな遠い地に送られたあげく
泥水のなかを走らされてるんだろう。
トラックに煽られながら。

ごめんね、でも、
わたしだってこれが
他のイベントごとならば
さっさとキャンセルして
少しついた水滴を拭き取って
チェーンをクリーニングして
オイル差してガレージにいれとくけど
今回はがまんしてほしい。
終わったらちゃんとするから。

三年前、この日をムスメが無事に
完走できるように、と
探して見つかって来てくれたのが
他でもないあなたで
そのおかげで去年も今年も
わたしたちはここにいるのだし。

いつのまにか前も後ろも
だれもいなくなる林の中。
道は一本なので迷いようもないが
ほんの少しの不安と
なぜか解放感に浸りながら
鼻唄うたって最弱ペダルで
くるくる登っていく。

港の景色は相変わらず
木々の間に途切れ途切れに現れる。
漁をする船、養殖の棚。
まだコンクリの色の新しい倉庫。

二番目のエイドは雄勝
ほたての網焼きがふるまわれる。
肉厚の甘い貝柱。
火のそばにおいで、あったまっていきな。
ボランティアさんに言われるまま
貝にジャージが触れそうなくらい
近づいて暖をとる。
そんなわたしたちに女性タレントの
顔パネルを突きだしながら
「この人知りませんか?!」
と、かさかさした声で話しかける
柳沢慎吾さん。なんの収録だ?
えっ、知りませんけど、と言うと
さらっとスルーして去っていく。

いまの、あれだよね、ほら。
と、年配のボランティアさんが
笑ってる。
あの人も自転車で来たの?
いやいや、もしそんなことしたら
あの白地のシャツは今ごろ
真っ黒になってることだろう。

ボランティアさんはついさっき
ダウンヒルでスリップしたライダーを
二人ばかり車で拾って
会場まで送ったという。
雨だからうんと気を付けて、
あのトンネルの先は特に
長い下り坂だよ、と教えてくれる。
それでも去年の好天時より
今日のほうが事故が少ないのだとか。
意識の違いなのだろう。

雄勝を出るとほどなく
このコース中の最も難所に
差し掛かる。
なかなか終わらない登り坂。
そして今度は長くて曲がりくねった
下り坂。
何がこわいって、無言で右側を
すりぬけてぶっとんでゆく
他のライダーたち。

アップダウンがひと段落すると
田園と北上川沿いの平坦コース。
民家がぽつぼつ現れる。
ひさしぶりに、がんばって!の声を聞く。
不思議なもので、それを聞くとほんとうに力が沸いてくる。
手を振る。
カメラ構えてるひとにはピース。
そうこうしてる間に最後のエイド、
河北へ。


去年そのおいしさに心から感動した
平椀。くるみどうふのあんかけ。
そしてふだんはさんざん文句いってるバナナにも手を出す。とにかく体が冷えてて燃料が要る。
なんだよ、おいしいじゃん、バナナのくせに。ってなぜ上からなんだ。
ありがとう、いままでごめん、
来年もここでよろしくね。

あとはゴールまで13キロ、
ひた走る。
全体のペースが恐ろしくあがる。
大学が見えてくる。
急に、さびしくなった。
もうすぐ終わっちゃうのか。

ムスメと並んで、手をあげてゴール。
拍手と旗と傘の波の中を進む。

おつかれさま!ありがとう!

このひとたちは、いったい
何時間ここに並んでてくれてるんだろう。

こちらこそほんとにありがとう。

ゴールは15時少し前、
恐らくスタートから5時間ちょっと。
去年のタイムよりずっと早い。

こんな運動だめだめなわたしでも
ちょっぴり進化できるのだから
と思うと

この町が、壊されてしまった
以前よりもっと進化する
そのことに期待を持っても
いいんだ、と確信できる。

なによりもそれが嬉しい。