最近、フランツ・リストの「巡礼の年」を通して聴いている。中には有名な曲もあるのだが、通して聴くと、その芸術の多様性に驚く。リストというと、とかくその超絶技巧の面だけが強調されるが、それは彼の一面にすぎない。とてもやわらかく、詩的で、ノスタルジアを感じさせる曲や後光がさしてくるような敬虔な雰囲気の曲もある。とはいえ、リストの超絶技巧を軽々と弾きこなせることは、ピアニストの憧れでもある。超絶技巧練習曲、パガニーニ大練習曲、ロ短調ソナタ、「ドンジョバンニの回想」などを弾きこなせるのは、限られたピアニストだけである。自分には一生縁がないだろう。リストというと、思い出すのは大学の後輩F君のことである。水戸出身のF君。在学中から、リストの音楽に狂っていた。珍しい録音を多数持っており、テープにダビングしてもらったりもした。髪形までリスト風であった。一緒に出かけたホロビッツのコンサートでも、超絶技巧がみられるたびに、ふぁーとか、ひゃーとか感嘆の声をあげていたのを思い出す。仲間からの愛称は、テクちゃん。なぜかというと、彼の口癖が、「先輩、あのピアニストのテク(技巧)どうですかね?」だからだ。今や日本のリスト研究・第一人者として活躍しているようだ。
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