LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

THE MAKING OF “D'URBAN CM 1975” (3)

2010-12-18 | BEHIND THE SCENES
1975年のダーバンCM撮影レポの第3回目です。

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前回の老ドライバーと出会うスナックの中のシーンをその日のラストカットにして
ドロンさんは夜9時半発マルセイユ行きの飛行機に乗る為に急ぎ空港まで走りました。
こうして撮影の最終の日を南仏エキサンプロバンスに移すことになったスタッフ一同は、
もはや飛行機の便の無くなった深夜、自動車を連ねて南仏までの300キロの道を突っ走りました。

3本目のタイトルは「昼下がり」。
大人のあるひとときを射的場を舞台に設定して、ドロンさんのドライな面を強調した作品となっています。
前年までの作品のようにドロンさんの映画的な世界からはできる限り離れて
今年度は「人間アラン・ドロン」に焦点を絞りました。

射的場を舞台に単にアラン・ドロンが登場する、というだけでは
映画スター、アラン・ドロンの人気におぶさっているだけでマンネリズムに陥ってしまいます。
したがってこの「昼下がり」では射的場の標的と、ドロンさんの顔だけで処理するという狙いがありました。

撮影場所は、射的場のシーンがフランス映画発祥の地といわれるマルセイユ近郊のシオタ、
そしてワインのシーンがエクサンプロバンス、
シャワーのシーンがグルノーブルのスポーツセンターのシャワー場を使用しました。
ドロンさんは海水パンツを忘れてきましたが、気にせず裸のままプロとして撮影に臨みました。

2度のロケハンの時は全て南仏の溢れる陽の光があったのに、
ロケ現場に到着すると空一面の雲、さらにポツリポツリと雨が降り出しました。
そしてスタッフが思案しているその時にドロンさんからの電話が入ります。

「せっかく夏の日のテーマを南仏まで撮りに来たのにこの天気では当初の目的の画が撮れないだろうから、
パリに戻ってくれれば五日後から天気になり次第いつでも撮影の為に時間を作るよ。」

ドロンさんは次の日からパリで「フリック・ストーリー」の仕上げの仕事に入っていかなければならず、
スタッフたちの心中を察して親切に提案してくれたのでした。

「・・・しかし次の仕事(「ル・ジタン」)の為に多少ヒゲを伸ばさなければならないが、
カジュアル・ウェアーに僕のヒゲもまんざらではないと思うけど・・・」

そんなやり取りをしているうちに非常に不思議なことに一面の雲の一か所からぽっかり青空がのぞき、
見る見るうちにそれが広がってきました。

「晴れてきました・・・」
「よしそれならやろう。すぐ行くよ。」
ドロンさんが撮影現場に現れたのはそれからほんのわずかの時間でした。

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私はこの作品はリアルタイムで観た記憶がなく、
今回初めてユーチューブ映像で観たわけですが、その完成度の高さには本当に驚かされました。
映画でのドロンさんから離れる、というスタッフの言葉がありましたが、
映画以上に映画的なドロンさんの姿がわずか1分そこそこの時間の中に凝縮されています。

ドロンさんが提案してきたように『ル・ジタン』のヒゲ姿でこの作品が撮影されていれば、
また違った雰囲気になっていたことでしょう。
そうならなくて本当によかったと思うのは私だけでしょうか・・・。
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