LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

L'OURS EN PELUCHE (2)

2007-05-27 | THE 90'S CINEMA
昨日以下のサイトをブックマークに追加しました。
フランス映画全般についての幅広い情報が楽しめるブログです。
Virginie Ledoyen et le cinema francais

-----------------------------------------------------------

アシェット・コレクションズDVDのライナー・ノーツには
この作品の舞台裏がジャック・ドレー監督の手記を下に綴られています。
今回と次回はその中からの抜粋を意訳も含みますがご紹介します。

-----------------------------------------------------------

ジョルジュ・シムノン原作の『テディ・ベア』は1960年に発刊された。
そして1982年に一度テレビ・ドラマ化されている。
ジャック・ドレー監督は当初このプロジェクトに参加していなかったが、
アラン・ドロンが急遽彼を呼び寄せた。

ドレー「もともとこの企画はアラン・ドロンの発案であり、
彼がフランスの製作者アラン・サルドに話を持ちかけ、
さらにイタリアのプロデューサー、Pino Auriemmiが加わった。
当初はピエール・グラニエ・ドフェールが監督をする予定であったが、
彼にはそのときすでに撮影中の映画があり、
どうしても時間の調整が付かないということで、
私が途中から参加することになったのだ。

そもそも私は昔からシムノンの小説の大ファンだったので、
この企画には大いに興味を持った。
主人公の教授の内面に起こる心の葛藤が
映画に大きな可能性をもたらすであろうと信じたのだ。
そして原作のままではやや時代遅れな箇所があるので、
現代の物語に脚色しなおす必要もあった。
私は都会を愛する人間として、シムノンに敬意を表し、
彼の出身国ベルギーの首都ブリュッセルを舞台に選んだのだ。」
(フィガロ誌1994/8/8号より)

一方アラン・ドロンはと言えば
すでにバレリオ・ズルリーニ監督の『高校教師』において
教授役を演じ観客を魅了していた。

ドレー「映画の全ては主人公の心の奥の変遷に基づいて進行する。
彼はいつも“仮面”をかぶっており、真の素顔を見せることはない。
やがて彼は自分に対する脅迫によって自分自身と向き合い、
真の自分を発見することになる。」(フィガロ誌1994/8/8号より)

アラン・ドロンにとってシムノン原作の映画は1971年の
ピエール・グラニエ・ドフェール監督『帰らざる夜明け』以来2度目であり、
またジャック・ドレー監督とのコンビは
この作品が9作目であり最後の顔合わせとなった。

しかしながらこの撮影の準備期間には苦労が絶えることはなかった。
ドレー監督は当初書かれていた脚本の出来が非常に悪いと感じたのだ。

ドレー「当初のシナリオには説得力がなかった。
さらに困ったことに書き直しを依頼した新しい脚本家Jean Curtelinに対して、
たった2ヶ月間の猶予しか与えられなかったのだ。
製作者側にもっと時間を与えてほしいと頼んだが受け入れられなかった。」
("Jacques Deray,J'ai connu une belle epoque"2003より。)

もうひとつの問題は共演女優のFrancesca Delleraの態度だった。
彼女はイタリアの製作者が推薦してきた女優で、
彼女の起用がこの作品への資金提供の条件でもあったのだ。
彼女は1991年マルコ・フェレーリ監督作"La Chair"のヒットにより
当時のイタリア本国でスターとなり、
それにより彼女の気まぐれな性格は増幅していたのだった。

パリのHotel Royal Monceauで彼女とドロン、ドレー監督3人の初めての顔合わせの日、
何と彼女は何時間も遅刻してやってきた。
彼女が到着する前にドロンが怒って帰ってしまったことにも
彼女は驚くばかりだったと言う浅はかさだ。

彼女の疑うような行動に悩まされたばかりでなく、
ドレー監督が後にもう手遅れになってから気づくのだが、
この女優との契約は大きな誤解に基づいてなされていたのだった。
何と彼女は自分が主演女優扱いとしてこの作品に出演するものと考えて
すかさず契約書にサインをしていたのだ。

イタリアの製作者は彼女が単に脇役の一人に過ぎないと言う正確な情報を伝えようとぜす、
そのため脚本家はシナリオにおけるアンバランスさが増すことをわかっていながら
ドロンとの絡みのシーンを過剰に増やす必要性に迫られたのだ。

------------------------------------------------------------

Comments (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする