LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

JEFF (2)

2006-07-05 | THE 60'S CINEMA
この作品でのアラン・ドロンの役どころは、
彼が得意とするいつもの「表と裏の二つの顔を持つ男」で、かつ「いつも忙しく動き回る男」ですが、
『冒険者たち』や『さらば友よ』『仁義』などでの義理人情や友情を重んじる主人公とは大いに異なり、
冷徹で、孤独で、かつ貪欲な男として描かれています。

これはあの金持ちの友人フィリップから財産の全てと恋人のマルジュを奪い取ろうとした
『太陽がいっぱい』のトム・リプレイを髣髴とさせる人物であり、
ある意味ドロンの原点とも言える役柄です。

『ジェフ』においてドロン扮する主人公ロランは、
ミレイユ・ダルク扮するヒロインのエヴァを愛してしまったがために
彼女の恋人であるジェフを殺害し、強奪した金と共にエヴァを連れて逃げようとします。
しかしその企みが皮肉にもエヴァの決意により打ち砕かれるラストは、
冬のアントワープの海岸を遠景で捕らえた映像と相俟って、
誠に切ない余韻を残します。

この映画で、ドロンは相手役にミレイユを自ら指名し、
この共演をきっかけとして二人の15年間に渡る共同生活が始まるわけですが、
この作品でのミレイユは、外見はボーイッシュでありながら、
内面は情熱的で知的かつ誠実なヒロイン像を作り上げており、
ドロンとの他の共演作品(『栗色のマッドレー』は未見ですので、除外します。)の中でも
最も魅力的に私は感じます。

映画の撮影はちょうどドロンがマルコヴィッチ事件の疑惑の渦中に行われており、
この人生最大の危機であった時期にこの作品でミレイユ・ダルクと共演し、
公私にわたって信頼関係を築けた事は
ドロンにとって幸運であったに違いありません。

マルコヴィッチ事件について書かれたいろいろな文献を読みますと
当時のドロンの交友関係のグレーさは否定のしようがありませんが、
そのような中でもミレイユがドロンを信じて影でしっかりと支え続けていたという事実こそが、
ドロンが潔白であることを客観的に証明する最大のものであると私は思っています。
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