LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

JEFF (1)

2006-07-02 | THE 60'S CINEMA
アラン・ドロンの隠れた一品、1968年作品の『ジェフ』をご紹介します。

この作品はこれまでビデオ化もDVD化もされておらず、
『栗色のマッドレー』同様、現時点では幻の作品となっています。
『さすらいの狼』に続いてドロンのセルフプロデュース作品の2本目となる本作ですが、
残念ながら公開当時、批評家や観客からほとんど評価を得られなかった作品のようです。

私自身正直言ってあまりこれまで注目したことがなく、記憶に残っていない作品でした。
ところが先日ビデオの棚からふと何気なく取り出して、よく観てみたところ、
80年代以降のドロンのあまり出来のよくない作品群と比べると、
ひとつひとつのシーンがしっかりと作りこまれており、
水準以上に楽しめる娯楽作品であったことを改めて確認することができました。

監督は『さらば友よ』のジャン・エルマン、
脚本は『ボルサリーノ』も手がけたジャン・コー、
撮影は『さらば友よ』のジャン・ジャック・タルベ、
音楽はもちろんフランソワ・ド・ルーベ、
という当時のドロンが信頼するスタッフが集められています。

物語はドロン扮する主人公ロランが父親のように付き従うジェフがリーダーとなり、
仲間を集めて宝石店強盗を巧みに成功させるシーンからいきなり始まります。
ところが数日後、盗んだ宝石を現金化して仲間たちに報酬を渡す段になって
ジェフがその場に現れなかったことから、
ジェフを信頼するロランと、他の仲間たちとの対立が発生します。
そしてジェフの愛人であったエヴァ(演じるのはミレーユ・ダルク)を連れて
再びジェフを探し出すまでが、ロランと仲間たちとの銃撃戦を交えながら
ロードームービー的に描かれていきます。

ジャン・エルマン監督の演出は『さらば友よ』の時もそうでしたが、
フランス映画というよりむしろアメリカン・ハードボイルド・タッチを目指したような
思わずはっとするようなアングルや画面のつなぎが観られ、
また随所に挿入されるベルギーの港町アントワープの街の佇まいの美しさにも息を呑みます。

特に印象に残るのは、物語前半、ボクシング・ジムで行われる仲間の一人とロランとの格闘シーンです。
拳銃を使わず、いろいろな小道具を武器にお互いが死闘を尽くすこのアクション場面は、
ドロンのフィルモ・グラフィーの中でも屈指の出来栄えであると言えます。

さらにジェフの旧友が営んでいる蜂蜜農場でのロランと敵との銃撃戦も、
その舞台設定の旨さや、撃たれた旧友が「籠を撃て」とつぶやく顔のクローズ・アップ、
敵が蜂の大群に襲われる残酷な描写などなど見ごたえ十分なシーンです。
Comments (11)
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