LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を探ります。

CINEMA (2)

2006-06-20 | THE 80'S CINEMA
第2話『ヴァレンヌ街』

この回は映画リメイクに向けて主人公マンダ(フランス語ではモンダと聴こえます。)
の悪戦苦闘ぶりが坦々と描かれていきます。

その苦悩するマンダを支えているのが恋人カロリーヌですが、
彼女はマンダ親子を陥れた張本人である映画『ベルリンのピアノ』製作者の娘であるという、
ここのところが物語上やや説得力に欠ける部分です。

マンダは恋人カロリーヌへの婚約のプレゼントを買いに街中に一人出かけます。
マンダが一人で歩くのを望遠でじっくり捉えたシーンは、
ドロンの「ただ歩くだけの演技」をたっぷりと見せてくれます。
(これはまるでダーバンのCMのような映像です。)
その後ぶらりと立ち寄った店で店員からいきなりサインを求めらてもにこやかに対応する姿は
マンダではなく、まるで素顔のドロンがそこにいるかのような錯覚を覚えます。

新『ベルリンのピアノ』のシナリオ執筆をフランスの映画人ではなく
イタリア人の大物脚本家ボルザノにわざわざ依頼に行くくだりは、
ドロンのキャリアにイタリアという国の存在が欠かせなかった事を
暗に示しているように感じます。

中盤、アメリカのプロデューサーたちに新作の資金援助を依頼する大事な商談にも、
自分の条件を曲げることなく強気に交渉し、
あげくのはては喧嘩同然の物別れになるハチャメチャ振りは
アメリカ映画に対するドロンの姿勢を伺わせるものであり、
フランスの視聴者はここで拍手喝さいしたことでしょう。

この作品のスタッフは
撮影のジャン・ジャック・タルベ、
装置のクロード・ルノワール
衣装のMarie-Françoise Perochon
など、ドロン作品ゆかりのスタッフたちが再結集されている反面、
監督、音楽、音響、など他の部門は新しい世代の人たちによって構成されており、
現場は大変活気に満ちていたのではないかと推察でき、
それが画面からも十分に伝わってきます。
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