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アラン・ドロン LE REGARD D'ALAIN DELON

アラン・ドロンさんの魅力を多方面から考察し、またファンの方々との交流に重きを置いております。

『1 CHANCE SUR 2』

2006-02-19 | THE SOUNDTRACKS
『ハーフ・ア・チャンス』サントラ盤です。
(下の写真はジャケット写真ではありません。)

『ボルサリーノ』以来28年ぶりにアラン・ドロンとジャンポール・ベルモンドが共演する、
というニュースを聞いて以来、その作品の中身は当然のことながら
それと共に期待をしていたのがそのサウンドトラックでした。
いったい誰が音楽を担当するのだろうか?と。
サルドか、モリコーネか、ボランか?
まさかフランシス・レイではあるまい。ドロンが彼を許すはずはない。
などなど想像力を描きたてられる日々でしたが、
完成したサントラ盤でのアレクサンドル・デスプラ、
という聞きなれない名前を見ていやな予感がしました。

実際聴いてみるとその予感は的中しました。
そこにはドロンの作品に漂う気配に欠けていました。
まるでジェームズ・ボンドのテーマが聞こえてこない
『ゴールデン・アイ』のエリック・セラの音楽、
『ネバー・セイ・ネバー・アゲイン』のルグランの音楽
を聴いたような違和感に近いものがそこにはありました。

大掛かりなスペクタクルサウンドは時にルグラン風、コスマ風、
あるいはジョン・ウィリアムス風でもあり、
内容としては立派な音楽であることは理解しつつも、
やはりこれはドロン映画の音楽ではない、と感じてしまいます。
むしろこれはベルモンド映画の音楽の系統(正統派、イージー・リスニング系)
を忠実に継承したものであると考えれば納得して聴くことができるアルバムです。

いろいろと不満を書いてしまいましたが、
ドロンの父親の情愛を描いて新鮮な響きをもたらしてくれるピアノ・ソロの小品“Alice s'endort”
事件解決後パリの空港からニュー・ヨークに移るまでの牧歌的な曲“Carella est là (New York Trio)”
エンド・タイトルのバックに流れ、『ボルサリーノ』の曲調を真似たようにも聴こえる“Runaway love”
などの曲は大変私のお気に入りです。
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DELON ET BELMONDO

2006-02-18 | THE SOUNDTRACKS
アラン・ドロン映画のサウンドトラックを集めたベスト盤と言われるLPは日本でも数多く発売されていましたが、
その中でも決定盤と言えるのが写真下の3枚組みのフランス輸入盤のBOXセットです。
これは写真上のベルモンド盤と同時発売されたもので、
中身は全ての曲がオリジナル・サウンドトラックという大変貴重なアルバムでした。
大学生時代に神戸の輸入レコード店で見つけたときは天にも昇る喜びであったのですが、
そのとき財布の中身に持ち合わせがなく、泣く泣くその場を去り
次の日バイトの給料の前借ということで親からお金を借りて意気揚々とお店に行くと・・・

もう売り切れてました。

それでも気を取り直して上のベルモンド盤のみを買い、
その後毎週のようにお店に通い詰めて入荷を待ちましたが
とうとうお目にかかることはありませんでした。
(下の写真はebayからの転載です。)

以来そのことがトラウマのようになっていた自分にとって
近年のドロン作品サントラのCD化ラッシュは大変心穏やかにさせてくれたものでした。
この3枚組みのBOXセットの中に収録されていた曲の中で
未だCD化されていないのは『未知の戦場』のみになったと思います。
(その日にしか曲をチェックしていませんので、うろ覚えですが。)

というわけで、ベルモンドのサントラの数々にも愛着のある自分としては
一度この二人の映画音楽について整理したいと常々思っており、
今回それに携わった作曲家たちと主要な作品とのリストを作成してみました。

これでわかることは、二人の作品の作曲家は重複することが少ないことです。
傾向としてベルモンドは意外と正統派、イージー・リスニング系であり、
ドロンは冒険派、ジャズ系であることです。
皆さんはどう思われるでしょうか?

-------------------------------------------------------------------

                ベルモンド            ドロン

エンニオ・モリコーネ   華麗なる大泥棒        シシリアン
               恐怖に襲われた街
               パリ警視J
               プロフェッショナル

フランソワ・ド・ルーベ  ラ・スクムーン           冒険者たち
               OH!              悪魔のようなあなた
                                 さらば友よ
                                 サムライ
                                 ジェフ

フランシス・レイ     あの愛をふたたび        栗色のマッドレー
              追悼のメロディ
              ライオンと呼ばれた男
              レ・ミゼラブル
              L'INCONNU DANS LA MAISON

フィリップ・サルド    警部                帰らざる夜明け
             道化師                暗黒街のふたり
             恋にくちづけ            個人生活
                                  愛人関係
                                  チェイサー
                                 未知の戦場
                                 最後の標的

クロード・ボラン    ボルサリーノ            ボルサリーノ
           おかしなおかしな大冒険       もういちど愛して
                                ボルサリーノ2
                                フリック・ストーリー
                                ポーカー・フェイス
                                 ル・ジタン

ジョルジュ・ドルリュー LES MORFALOUS       さすらいの狼
              怪盗20面相           ブーメランのように
              リオの男
              カトマンズの男
              大頭脳
              太陽の下の10万ドル
              フェルショー家の長男
              大盗賊
              墓場なき野郎ども

カルロ・ルスティッケリ  波止場             友よ静かに死ね
                                プレステージ

ミシェル・ルグラン    コニャックの男         太陽が知っている
              タヒチの男
              女は女である

ミシェル・コロンビエ   相続人             リスボン特急
              危険を買う男          鷹

モーリス・ジャール    ダンケルク           レッド・サン
             パリは燃えているか?      パリは燃えているか?
             素晴らしき恋人たち       素晴らしき恋人たち
                                昼と夜(未)

ミシェル・マーニュ    冬の猿               地下室のメロディ
              ある晴れた朝突然に

エリック・ドマルサン                     仁義 
                                 ナイトヒート

ラロ・シフリン                         危険がいっぱい
                                 泥棒を消せ
                                エアポート’80

ジェリー・フィールディング                  スコルピオ

ニーノ・ロータ                         太陽がいっぱい
                                 若者のすべて
                                 山猫

ジャンニ・フェリオ                      ビッグ・ガン

マリオ・ナッシンベーネ                   高校教師

アストラ・ピアソラ                      アルマゲドン

ジョバニ・フスコ                       太陽はひとりぼっち

エジスト・マッキ                       暗殺者のメロディ
                                パリの灯は遠く

ポール・ミスラキ     いぬ               学生たちの道
               二重の鍵            お嬢さん、お手やわらかに!
               奇妙な日曜日         女が事件にからむ時

アントワーヌ・ドゥアメル  気狂いピエロ
               暗くなるまでこの恋を

ウラジミール・コスマ   エースの中のエース
               ムッシュとマドモワゼル

アレクサンドル・デスプラ  ハーフ・ア・チャンス     ハーフ・ア・チャンス
                アマゾン(未)
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『BIG GUNS』

2006-01-17 | THE SOUNDTRACKS
『ビッグ・ガン』のサントラ盤です。
(下のドロンの写真はジャケット写真ではありません。)

1999年にリリースされたこのCDはメイン・タイトルである主題歌
“L' Appuntamento”(“約束”)から始まります。
この曲を唄っているイタリアの歌手オルネラ・ヴァノーニは
『高校教師』の挿入歌“明日は別の日”も唄っており
プロデューサーのドロンの強い要請を受けて再度登板となったとのことです。
(Kenji Arai氏によるCDのライナー・ノーツより)

この曲は作曲者が音楽担当のジャンニ・フェリオではない為
映画の中ではこのメイン・タイトルでしか聴くことができない旋律ですが、
この平和で家庭的な曲が冒頭にあるのと無いのとでは、
映画の印象がかなり変わったものになったはずです。
(このCDではなぜかモノラルで収録されているのが残念です。)

音楽担当のジャンニ・フェリオはイタリアで長いキャリアを持つ作曲家で
監督のドッチオ・テッサリとも何本か組んでいました。
そしてアラン・ドロンがこのイタリアの作曲家を初めて自分の作品に抜擢したことも
映画の成功に大きく寄与することになった要因の一つであったと思います。

映画のテーマ曲である“Un Giorno in Piu”は、
大変メランコリックで、歌詞を付けて唄えるくらいメロディーが印象的ですが、
映画の中では楽器やテンポを変えて数通りのヴァリエーションが聴けます。
特に妻子を殺された主人公が一人残された自宅で哀しみの想いに包まれながら
窓の外を眺める場面で流れるヴァージョンはこのサントラのハイライトです。

その他にもアクション場面で流れるアップテンポなフュージョン曲や
クラブのシーンで流れるラウンジ・ミュージック、
そして教会のシーンで流れるパイプ・オルガンの曲など
様々なタイプの曲が聴ける大変お薦めのサントラ盤です。
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『ADIEU L'AMI』 ET 『DIABOLIQUEMENT VOTRE』

2005-12-26 | THE SOUNDTRACKS
François de Roubaix

『さらば友よ』と『悪魔のようなあなた』、
これらの映画も正式なサントラ・アルバムは発売されていませんが、
写真の3枚のCDに映画からの数曲を聴くことができます。

CDのタイトルは、写真の上から順番に

【A】MUSIQUE DE FRANCOIS DE ROUBAIX
【B】FRANCOIS DE ROUBAIX 10 ANS DE MUSIQUE DE FILM
【C】フィルム・ノワール・アンソロジーVOL2

です。

特に【A】はそれぞれの作品からメイン・タイトルを含めて
3曲ずつが収録されており、音質も良く満足のいくアルバムです。
『悪魔の~』は映画のタイトルバックにアレンジがエリック・ドマルサン
であることがはっきりと出てくるのでわかりますが、
『さらば~』の方も曲の調子からドマルサンの編曲なのではないかと思います。
ドルーベは自分では編曲をしないフランシス・レイ・タイプの作曲者だったようです。

ドルーベとドロンとのコラボレートは『冒険者たち』に始まり、
『サムライ』『悪魔のようなあなた』『さらば友よ』『ジェフ』
と続いていきますが、音楽として全てが名作であり
60年代後半のドロンのキャリアに欠くべからざる人物と言えます。

その後70年代のドロンの映画音楽への関心はクロード・ボラン、
フィリップ・サルドへと移って行くことになりますが、
その間ドルーベがベルモンドと『ラ・スクムーン』を、ロミーと『追想』を
と素晴らしい作品を残していた事を考えると
もっと一緒に仕事をしてもらいたかったです。

どうでもいいことですけど、
『さらば~』の主題曲は昔どこかで聴いたことがある曲だなあと永年思っていたのですが、
子供のときにテレビで観ていた『仮面の忍者 赤影』の『白影のテーマ』
によく似ていることが最近わかりました。
機会あれば一度聴いてみてください。
http://www.youtube.com/watch?v=6ECRy_rTGbk

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『LE SAMOURAI』

2005-12-18 | THE SOUNDTRACKS
昨日ご紹介のアルバムの後半には
『サムライ』のオリジナル・サウンドトラックから10曲収められています。

この作品のサントラは写真下のジャケットの
“フランソワ・ド・ルーベ・エディションⅠ”の中に
組曲風に6曲を聴くことができました。

それらの曲は

12.LE SAMOURAI・・・映画のメインタイトル。
13.VALERIE・・・ラストのクラブでバレリーが弾くハモンドオルガン曲。
14.MARTEY'S・・・映画での使用箇所は不明ですが明るいコンボ演奏の小品。
16.HOTEL SANDWICH・・・アリバイ造りにジェフが立ち寄るホテルの現実音楽。
18.JEFF ET VALERIE・・・釈放されたジェフが再びクラブを訪れた際にバレリーが弾く曲 
20.JEFF ET JEANNE・・・メイン・タイトルのジャズ・バージョン

でした。(曲番号は今回のCDのものです。)

今回新たに聴けるのは

15.LA BLESSURE・・・腕を撃たれたジェフが自宅で治療を行う場面に流れる。
17.COSTELLO DANS LA VILLE・・・冒頭の外出の準備。盗難車を運転中遭遇した女性に向けた視線。
19.FATALITE・・・部屋に仕掛けられた盗聴器を発見した後外出するジェフ。
21.LE DESTIN DE COETELLO・・・映画のエンド・クレジットに流れる曲。

いずれの曲も残念ながらモノラル録音ですが、
音質は以前に発売された物よりクリアになっており、かなり満足の行く仕上がりです。

ライナーノーツを読んでいると、
この作品のアレンジャーはエリック・ドマルサンが担当していると書かれています。
『仁義』の音楽に『サムライ』の音楽と似たテイストを今まで感じていたのですが
編曲者が同じドマルサンであったことが今回判明し、
なるほどそうだったのかと思いました。
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『LES AVENTURIERS』(2)

2005-12-17 | THE SOUNDTRACKS
『LES AVENTURIERS』
          ↑
以前こちらでご紹介した『冒険者たち』のサントラですが、
今月『サムライ』とのカップリングによるCDが発売されました。

これまでCD化されていた以下の曲

①Laetitia(Chante Par Alain Delon) 愛しのレティシア
②Journal De Bord 航海日誌
③Enterrement Sous-Marin 水葬
⑦Les aventuriers 
⑩Generique fin (=Enterrement Sous-Marin(version inedite))  

に新たに5曲(プラス ボーナス・トラック1曲)
が加えられ、完全な形でのアルバム化といえます。

今回追加された曲は

④Acrobaties aeriennes
⑤Casino latino
⑥Manu et Roland
⑧Enterrement Sous-Marin
⑨Pilleurs d'epave

です。
特に⑧は私が永年アルバム化を熱望していた曲で、大変嬉しく思います。
ひとつだけ不満なのはこれら楽曲がなぜか全て(①を除く)モノラルであることです。
以前はステレオでCD化されていただけに大変残念です。
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『PLEIN SOLEIL』

2005-12-13 | THE SOUNDTRACKS
2005年12月、クリスマスを控えたこの時期に
世界のアラン・ドロン・ファンのみならず世界の映画ファンに
とてつもないプレゼントが届きました。

『太陽がいっぱい』のオリジナル・サウンドトラック盤です。

これまでこの作品のサントラはLPでも全く発売されておらず、
ここにこうやって完全な形で、なおかつ極めてクリアな音質で聴くことができるとは
本当に今まで生きててよかったと思わせてくれます。

くわしい曲の解説はもう少し聞き込んでから改めて記述いたします。

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『SCORPIO』

2005-12-02 | THE SOUNDTRACKS
Scorpio (1973)

『スコルピオ』サントラ盤です。
(ドロンの写真はジャケット写真ではありません。)

このCDは映画の音楽を担当したジェリー・フィールディング
Jerry Fielding
の作品集の第2集となっており、
本作の他に『ジョニーは戦場へ行った』『A WAR OF CHILDREN』
の2作品の音楽が1曲ずつ収録されています。

ランカスターが歩くパリの街角をバックに流れるメインタイトルは
物悲しいヨーロッパ的なメロディに続いて突然大編成のオーケストラの音が現れ
これから始まる物語の悲劇性を十分に予感させてくれます。

全体的にはサスペンス場面のバックに流れる緊張感溢れるスコアが中心ですが、
その間に旧ソ連やウィーンの町の雰囲気が感じられるクラシック曲や
アメリカのホテルの中で聞こえるラウンジ調のイージー・リスニング曲など
かなりバラエティーに富んだ曲構成となっています。

中でもひときわ聴き応えがあるのが13曲目の“HIDE AND SEEK”。
これはドロンとランカスターがウィーンの街中の工事現場で
繰り広げるアクション・シーンのバックに使われた曲で、
『ダーティー・ハリー3』や『ガントレット』などでも聴けた
フィールディングお得意のシンフォニック・ジャズ・スコアです。
こういう曲はやはりアメリカ人の得意分野で、
ヨーロッパの作曲家ではまず書けないのではないかと感じました。

というわけでアメリカ的な音とヨーロッパ的な音がほどよくブレンドされた
大変ゴージャスな音楽をこのアルバムでは聴くことができます。
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『PAROLE DE FLIC』

2005-11-23 | THE SOUNDTRACKS
『PAROLE DE FLIC』のエンド・タイトルに流れる主題歌
“I DON’T KNOW”の12インチシングル・レコードです。

1985年の発売当初、たまたま輸入レコード店でこのレコードを発見したときは
このやけに明るいドロンの表情のジャケットに違和感を覚えましたが、
家に帰ってレコード針を落とした瞬間に出てきた音を聴いて
さらに失望を感じてしまいました。
あの70年代のドロンはどこへ行ってしまったんだろうかと・・・・

しかしながら20年経った今これを聴くと
楽曲としてメロディが心地よい曲だなと改めて感じるようになりました。
歌詞は比較的分かりやすい英語ですので覚えやすく
バックの演奏も80年代の音楽にありがちなシンセの打ち込みが少ないので
今聴いても不自然さがありません。

なおシングルのB面にはA面と同じ曲が繰り返し収録されています。
これはちょっと手を抜いているのではないかと文句のひとつも言いたくなります。
フランス語バージョンなどあれば最高だったのですが。
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『Les Seins de Glace』

2005-11-22 | THE SOUNDTRACKS
Seins de glace, Les (1974)

『愛人関係』サントラ盤です。
このCDはクロード・ソーテ監督、イヴ・モンタン、ミシェル・ピッコリ、
ジェラール・ドパルデュー共演『友情』のサントラとのカップリングで、
いずれもフィリップ・サルドが担当した作品です。

『愛人関係』からは21分にも及ぶロング・バージョンの1曲のみ収録されています。

『チェイサー』のサウンドトラック盤CDのライナー・ノーツの中で
ジョルジュ・ロートネル監督が『愛人関係』について書いた部分をご紹介します。

“私とドロンとのコラボレーションは3作品あります。
1回目は1971年に友情出演してもらった『かつて一人のデカがいた』で、
2回目は1974年、ドロンがミレーユ・ダルクの為にプレゼントした作品『愛人関係』で、
私がその監督に指名されました。
私は最初この原作小説にそれほど心動かされませんでした。
ドロンは主演男優をクロード・ブラッスールに譲り、自分は象徴的な役で出演したいと希望しました。
ブラッスールとダルクの関係を物語の中心に据え、
実は影で糸を引いている、
という役柄をあえて演じたドロンの判断はとても賢明なものであったと思います。
ドロンは『ボルサリーノ2』を撮り終えたばかりの友人のジャック・ドレー
との新作(『フリック・ストーリー』)の準備に取り掛からねばならず、
この作品にはわずか2週間しか参加することができませんでした。
それゆえ私とドロンの交流は濃密ではありましたが
いささか欲求不満の残るものでした。
私はもっとドロンの出演場面を増やし、彼の魅力を引き出したかったのです。

またこの作品はフィリップ・サルドが私の作品の音楽を担当してくれた2作目にあたります。
真冬のニースをイメージさせるエレクトリック・バイオリンが奏でる悲しいバラードを彼は作曲してくれました。”
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『Monsieur Klein』

2005-11-11 | THE SOUNDTRACKS
Monsieur Klein (1976)

『パリの灯は遠く』のサントラ盤です。

音楽担当は昨日の『暗殺者のメロディ』と同じくエジスト・マッキですが、
この作品にはどういうわけかピエール・ポルトが前半7曲にオリジナルを提供しています。

ピエール・ポルトは映画音楽よりもイージー・リスニングのアーティストとしての方が恐らく有名で、
日本では金曜ロードショーのテーマ音楽や、Gメン75の音楽担当として知られています。
それ以外にもフィリップ・サルドの『テス』の日本でのイメージ曲を作曲したり、
今ひとつメジャーの活動からは外れたところに自分の地位を築いている珍しいアーティストです。

この作品でのポルトの楽曲はそれらのイージー・リスニングのイメージよりも
ドロンの過去の作品のイメージに忠実な
JAZZYで粋なクロード・ボラン風の音楽を聴かせてくれます。

が、しかし、映画本編にこれら彼の楽曲が使用された形跡が全く見られず、
一体何のために7曲も収められているのか謎です。

映画では例によってエジスト・マッキの不気味な音楽の旋律が鳴り響き、
明確なメロディ・ラインがないにも関わらず、
聴いていると映画の場面が頭に浮かんでくる不思議な音楽です。
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『The Assassination of Trotsky』

2005-11-10 | THE SOUNDTRACKS
The Assassination of Trotsky (1972)

『暗殺者のメロディ』サントラ盤です。
音楽はジョゼフ・ロージー監督とのコンビが多いエジスト・マッキ。

二人はドロンの『パリの灯は遠く』でも再びコンビを組んでいますが、
あの作品と同じように
女性コーラスの不気味な響き、
不協和音を多用したオーケストレーション、
一瞬出てくる不釣合いな明るいメキシコ音楽、
人々のささやき声をまるで虫の声のように聞かせるテクニック
などなど、いわゆる現代音楽というのでしょうか、
はっきり言ってこの音楽はあまりよく分かりません。

ドロン作品のサントラの中でも最も難解なアルバムです。
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『UN FLIC』

2005-10-29 | THE SOUNDTRACKS
Un flic (1972)

『リスボン特急』の主題歌(上)と劇判(下)が1曲づつ聴けるCDです。
上が“ミシェル・コロンビエ ドリームス~作品集”
下が“フィルム・ノワール・アンソロジーVOL2”です。

音楽を担当しているのは昨年惜しくも亡くなったミシェル・コロンビエMichel Colombierで、
アラン・ドロンの作品では本作と82年の『LE BATTENT』(『鷹』)
の音楽監督として関わっています。

『リスボン特急』の音楽はメルヴィルの指示からか、
コロンビエの作品としては暗く地味なものですが、
時折聴けるアコースティック・ベースの響きが印象的で、
また不気味なオーケストラの演奏は何を考えているの不可解なところがある
ドロン刑事の言動にうまくフィットしたものとなりました。

メルヴィル監督からどのような経緯でこの作品に抜擢されたのは定かではありませんが、
メルヴィルの弟子といった立場のフィリップ・ラブロ監督が、
本作を最後に他界したメルヴィル監督の後を引き継いで
ミシェル・コロンビエとのコンビがその後続くことになります。
なかでもジャンポール・ベルモンド主演『相続人』はメルヴィル・タッチの映像美が素晴らしく、
そこに流れるコロンビエの音楽もこの上なくクールで私の大のお気に入りです。
(『相続人』のサントラは『危険を買う男』『潮騒』とのカップリングで
最近CDが発売されています。Universal music

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USUAL APPEARANCES いつも出てくる人(2)
画像リニューアルしました。
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『La Race des 'seigneurs'』 ET 『La Veuve Couderc』

2005-10-10 | THE SOUNDTRACKS
『個人生活』のサントラ・アルバムは単体では発売されておらず、
写真のアルバムに3曲収められています。

音楽自体はカトリーヌ・ドヌーヴ、マルチェロ・マストロヤンニ主演の『ひきしお』からの流用ですが、
本作はアレンジをステファン・グラッペリのヴァイオリンをメインに据えた
ゴージャスなビッグバンド・ジャズに変え、
パリの政界に渦巻く人間模様を表層的に捉える効果をもたらしています。

(1)にも記載しましたが、アラン・ドロンの映画でフィリップ・サルドが音楽を担当したのは
『帰らざる夜明け』『暗黒街のふたり』『個人生活』『愛人関係』『チェイサー』『未知の戦場』『最後の標的』
と実に7作品もあります。
フランソワ・ドルーベ5作品、クロード・ボラン6作品を上回るドロンのお気に入りの作曲家ナンバー1と言えます。

70年代後半から80年代初めのサルドの映画音楽は、わざわざイギリスに出向き、
ロンドン交響楽団の演奏をバックにアメリカのジャズ・ミュージシャンを起用して
彼らにメインのソロを演奏させるパターンが頻繁に見られました。
フランスのプロデューサーたちはコストがかかると初め懸念しましたが、
演奏に緊張感があり短期間でレコーディングが終了するので、
結局フランス国内で録音するより安く仕上がったそうです。
(このCDのライナー・ノーツでピエール・グラニエ・ドフェール監督のコメントに書かれていました。)

『チェイサー』のスタン・ゲッツ(テナーサックス)がそのイギリス録音の代表格ですが、
それ以外にも、ベルモンド主演作『警部』のチェット・ベイカー(トランペット)、ヒューバート・ローズ(フルート)、や、
同じくベルモンド主演『道化師』でのトゥーツ・シールマンス(ハーモニカ)、
モンタン、ドパルデュー、ドヌーヴ共演作品『武器の選択』(未公開)でのロン・カーター(ウッド・ベース)など、
いずれも素晴らしい演奏を聴く事ができます。

なおこのアルバムには『帰らざる夜明け』のメインタイトルも収録されています。
ここではLPバージョンとは異なるロング・バージョンとなっています。
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『MORT D'UN POURRI』(4)

2005-08-29 | THE SOUNDTRACKS
右下の写真はフランス盤LPジャケットです。
日本盤LPのデザインと見比べて下さい。

CDの曲について補足説明します。                    

① Dans le Regard d'Alain Delon

⑧と全く同じドラムとベースのリズムにゲッツのテナーとピアノのアドリブが自由に展開し、
さらにロンドン交響楽団のエモーショナルなバックの音がかぶさります。
映画のムードに合わずゴージャスな印象を持つ曲の為、
映画では未使用となったものと思われますが大変素晴らしい曲です。

② Paris, Cinq Heures du Matin

LPとはゲッツのソロ演奏が異なる映画での未使用バージョン。
LP&映画バージョンはクールなソロから徐々に情熱的なソロへと移行しますが、
この未使用バージョンはいきなりホットなゲッツのブロウから始まり徐々にクールダウンして行きます。
  
④ Getz O Mania 

関氏ご指摘通り映画での未使用曲で、ボサノバ時代のゲッツを彷彿とさせる曲です。
ラストのピアノのソロが始まった途端にゲッツのソロもなく
終わってしまうのがちょっとあっけない気もします。

⑥ Un Homme dans la Ville 

曲名は『暗黒街のふたり』の原題からの引用と思われます。
この曲にはゲッツは登場せず、代わりにアコーデオンの物悲しいソロが主題を演奏し、
これまたロンドン交響楽団のエモーショナルな演奏がバックを彩ります。 
  
⑩ Elysee-Matignon 

⑧と同じくクラブでのシーンのバックで流れ、
華やいだ店内のムードを表すゲッツお得意のボサノバ曲。
このアルバムの中では唯一エレクトリック・ピアノとゲッツの共演が聴ける曲。

⑪ Solitude 

この曲もゲッツの演奏は無く、代わりにアコーディオンが主題を奏でます。
⑩と同じリズム隊がバックを固めているフュージョン・ミュージックの小品。 
 
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もともとスタン・ゲッツはミシェル・ルグランやクラウス・オガーマンと組んで
ウィズ・ストリングス物のアルバムが多いジャズ・ミュージシャンなので、
この『チェイサー』のサントラでのロンドン交響楽団との共演は
ゲッツにとっては得意分野であり、十分その実力を発揮してくれました。

ここでのゲッツの演奏はよく言われる“クール”というよりも
逆に“ホット”で腹の底からしぼり出すような情熱的なプレイを聴かせてくれます。
映画でのアラン・ドロンが感情を表に出さず常に冷静な役柄であることから
ドロンの内面の心理をゲッツのサックスが代弁する役割を見事に果たしています。

最後にロートネル監督の書いたライナーノーツの続きを。
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ある意味において、このスコアは新たな歴史を切り開いた。
映画史の中で最もお金のかかったレコーディングだからだ!(笑)
だが何と素晴らしい結果だろうか!

我々はゲッツと彼のリズム・セクション、そしてロンドン交響楽団とロンドンで数日間共に過ごした。
映画の35ミリフィルムを上映する20メートルのスクリーンに向かいながら
そこは信じられないような雰囲気だった。
スタジオの中の影、プロジェクターから発せられる光、机の上の電灯、そして生まれてくる音楽・・・

フィリップは神経質なほどの完璧主義者で、
ミュージシャンがへとへとになるまでテイクを繰り返した。
私は後ろで観客としてそのレコーディング風景を観ていた。
ゲッツはその伝説的な存在で私と私の撮ったフィルムの為にプレイし、別世界へといざなってくれた。
交響楽団を前にしてのその音色、そのユニークなフレーズ、・・・・

私は脊髄の奥まで身震いした。
そしてその音楽が映画にかぶさった瞬間の何と官能的であったことか。

フィリップの選択は全く正しかった。
ドロンの眼差しとゲッツの音色の間で真のマジックが生まれた。
サキソフォンはドロンの険しい顔を和らげ、そこに何か違ったものをもたらした。
やさしさや悲しみ、あるいはノスタルジーといったものを。
主人公がこの事件にあえて飛び込むのは
それは彼が過去に忠実であり、亡くなった友人との友情に忠実であったからだ、
と音楽で思わせてくれたのだ。
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