米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が資本不足に陥ったことは、サブプライム問題の深刻さを反映するものであった。両社は、銀行から住宅ローンを買い取り、これを証券化して販売する民間企業であるが、政府債務保証のある特殊会社だ。
ニューズウィーク(日本版)7月30日号によると、米国の住宅ローン残高は12兆ドル=1300兆円、凡そ米国GDPに匹敵する巨額である。上記両社は、その約半分、650兆円を保有すると言われる。当然その中にサブプライム・モーゲージも含まれるだろう。
両社の発効した証券110兆円分は、海外金融機関が保有している。米国債と同じように安全であると見做されたからだ。
米国財務省は、この両社に対する緊急救済法案を取りまとめ、それは7月30日に発効した。日経新聞によると、
(7/30)米住宅公社支援法が成立 公的資金の注入可能に
【ワシントン=藤井一明】ブッシュ米大統領は30日、米住宅公社の支援策と住宅ローンの借り手の救済策を柱とする関連法案に署名し、法律が成立した。経営を不安視する声が広がった米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)、米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)に対し、財務長官の権限で緊急融資や公的資金による資本注入を実施できる体制が整った。
大統領は同日早朝、ホワイトハウスでポールソン財務長官らと署名に臨んだ。国民生活や金融市場に影響が大きい大型の法案については大統領自ら趣旨などを記者団に説明するのが通例。今回はなく、法案の一部に反対してきた大統領の複雑な心境をにじませた。
新法は借り手の救済策としては総額3000億ドル(約32兆円)の債務保証枠を設定。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)を中心に高利の返済に苦しむ借り手を低利のローンに借り換えさせ、できるだけ差し押さえを防ぐ。初めての住宅購入への優遇税制や住宅公社の監視を強化するため監督機関の新設も盛り込んだ。
http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt238/20080730ASZFF2N0130072008.html
所謂サブプライム・モーゲージは総額300兆円と言われ、信用収縮で仮にその半分が不良債権化すれば約150兆円の損失となる。既に世界各国で金融機関が処理した不良資産は80兆円強、これからまだまだサブプライム問題に関する不良資産処理は続くものと見てよいであろう。果たして、32兆円の国家債務保証枠でこの事態を乗り切れるのかどうか。
一方で、信用収縮による資金流通の悪化は、FRBが政策金利を下げたりドルの増刷をしても収まらず、銀行の貸し渋りや貸し剥がし(何と懐かしい言葉であろうか!)が起き始めたと言う。
とうとうはじまった米国金融機関の貸し剥がし 企業の倒産が相次ぐ可能性も
7月31日9時0分配信 MONEYzine
米国では信用悪化が進み、とうとう貸し剥がしという段階にさしかかってきた。「貸し剥がし」または「貸し渋り」という日本で90年代によく聞いた言葉だ。
貸し剥がしが起こりつつある一番大きな原因は資金調達コストの上昇だ。金融機関は安い金利で調達した資金をそれより高い金利で貸し出すことにより利益を得ている。
資金を調達する金利は金融機関の経営状況に敏感に反応するため、経営状況の悪化した金融機関は、資金を調達するために高い金利を提示する必要がある。高い金利で調達した資金を貸し出して利益を得るわけだから、貸し出し金利もそれより高い水準に引き上げる必要があるのだ。
つまり、貸出先がその高金利に対応できない場合、「貸出を停止して資金を回収する」という動きになる。貸し出し金利を低いままに保ちながら無理に貸し出しを継続する場合もあるが、それは調達金利より貸し出し金利が低い、いわゆる「逆ざや」になってしまう。逆ざやでの貸し出しを無理に停止し、その結果会社の倒産が相次いで発生した事例が「貸し剥がし」と呼ばれた。
また利益を確保する以外にも、銀行が貸し出し総額を減少させる理由がある。それが「自己資本比率の維持」だ。健全な金融機関として経営を行うための1つの基準として、「自己資本比率の制約」という国際的なルールがある。これは金融機関として経営の大きさに対して、どれだけの自己資本つまり自分のお金を、クッションとして持っているかを示す金融機関の安全性を示す指標だ。
単純に言えば、自己資本と貸し出し総額の比率のような計算になるため、何らかの理由で損失が発生し自己資本が減少してしまった場合、自己資本比率を維持するためには、「自己資本を増強する」「貸し出し総額を減少させる」という2つの選択肢をとることになるが、金融機関はまず自己資本の増強に努め、それが不可能になった時、貸し出し総額を減少させるという行動をとることが多い。
米国で大きな変調が見られ出したのがこの3月あたりから。まず商工業向けの貸し出しの伸びが止まった。そして6月からは商業用不動産向けの融資が減少に転じてきている。まだメディアではあまり伝えられていないが、もしこれら融資残高の減少が継続すると、信用のさらなる収縮、そして景気の悪化につながることになる。
米国では住宅系金融機関の救済が議論されているが、次は公的資金により金融機関の自己資本を拡充する必要が議論の中心になると一部金融機関は推測している。状況はさながら不況に陥っていた10年前の日本と非常に近い構図になっている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080731-00000000-sh_mon-bus_all
7月中旬にシティバンクが5兆円の欠損を出して話題になったが、米財務省は体力の無い銀行を整理しなければならなくなるだろう。丁度、我が国で拓銀、長銀や日債銀を整理したように。同時に、ファニーメイやフレディマックへも米政府は形(なり)振り構わぬ資本増強を迫られる。そうなれば、今でも膨大な米国の負債は益々増えて、ドル価格は低下する。
恐らくこれから半年の間に、米国のインフレはかなり酷くなる。FRBは、政策金利を上げざるを得ず、米国の経済成長は鈍化するだろう。それは、米国民の購買意欲減退に繋がり、各国は米国へ輸出出来なくなる結果、世界的な不況へ突入する。
<北京五輪>後のシナ経済も不透明である。米国で不況が始まれば、それをもろに受けてシナ経済も停滞するであろう。今年1月にシナの労働法が改正され、企業は簡単に社員を整理出来なくなった。そして8月1日からは、シナの独禁法が発効する。これで外資系企業は相当に被害を受けると予想されている。シナへ進出した日本企業の多くは、資産を全て取られて撤退せざるを得なくなるはずだ。
米国とシナで不況が同時に起こった場合、先延ばしの得意な福田政権は一体どの様に日本経済をリードしようとするのだろう。福田氏は早々に内閣総辞職して、人心一新、外交と経済閣僚に重点を置いた新内閣が登場することを強く望む。
(参考)
サブプライム・モーゲージ問題に対する資金注入と公定歩合設定
サブプライム問題が我が国へ与える影響
身勝手な米国、金融危機では自己責任を放棄するのか
ニューズウィーク(日本版)7月30日号によると、米国の住宅ローン残高は12兆ドル=1300兆円、凡そ米国GDPに匹敵する巨額である。上記両社は、その約半分、650兆円を保有すると言われる。当然その中にサブプライム・モーゲージも含まれるだろう。
両社の発効した証券110兆円分は、海外金融機関が保有している。米国債と同じように安全であると見做されたからだ。
米国財務省は、この両社に対する緊急救済法案を取りまとめ、それは7月30日に発効した。日経新聞によると、
(7/30)米住宅公社支援法が成立 公的資金の注入可能に
【ワシントン=藤井一明】ブッシュ米大統領は30日、米住宅公社の支援策と住宅ローンの借り手の救済策を柱とする関連法案に署名し、法律が成立した。経営を不安視する声が広がった米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)、米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)に対し、財務長官の権限で緊急融資や公的資金による資本注入を実施できる体制が整った。
大統領は同日早朝、ホワイトハウスでポールソン財務長官らと署名に臨んだ。国民生活や金融市場に影響が大きい大型の法案については大統領自ら趣旨などを記者団に説明するのが通例。今回はなく、法案の一部に反対してきた大統領の複雑な心境をにじませた。
新法は借り手の救済策としては総額3000億ドル(約32兆円)の債務保証枠を設定。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)を中心に高利の返済に苦しむ借り手を低利のローンに借り換えさせ、できるだけ差し押さえを防ぐ。初めての住宅購入への優遇税制や住宅公社の監視を強化するため監督機関の新設も盛り込んだ。
http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt238/20080730ASZFF2N0130072008.html
所謂サブプライム・モーゲージは総額300兆円と言われ、信用収縮で仮にその半分が不良債権化すれば約150兆円の損失となる。既に世界各国で金融機関が処理した不良資産は80兆円強、これからまだまだサブプライム問題に関する不良資産処理は続くものと見てよいであろう。果たして、32兆円の国家債務保証枠でこの事態を乗り切れるのかどうか。
一方で、信用収縮による資金流通の悪化は、FRBが政策金利を下げたりドルの増刷をしても収まらず、銀行の貸し渋りや貸し剥がし(何と懐かしい言葉であろうか!)が起き始めたと言う。
とうとうはじまった米国金融機関の貸し剥がし 企業の倒産が相次ぐ可能性も
7月31日9時0分配信 MONEYzine
米国では信用悪化が進み、とうとう貸し剥がしという段階にさしかかってきた。「貸し剥がし」または「貸し渋り」という日本で90年代によく聞いた言葉だ。
貸し剥がしが起こりつつある一番大きな原因は資金調達コストの上昇だ。金融機関は安い金利で調達した資金をそれより高い金利で貸し出すことにより利益を得ている。
資金を調達する金利は金融機関の経営状況に敏感に反応するため、経営状況の悪化した金融機関は、資金を調達するために高い金利を提示する必要がある。高い金利で調達した資金を貸し出して利益を得るわけだから、貸し出し金利もそれより高い水準に引き上げる必要があるのだ。
つまり、貸出先がその高金利に対応できない場合、「貸出を停止して資金を回収する」という動きになる。貸し出し金利を低いままに保ちながら無理に貸し出しを継続する場合もあるが、それは調達金利より貸し出し金利が低い、いわゆる「逆ざや」になってしまう。逆ざやでの貸し出しを無理に停止し、その結果会社の倒産が相次いで発生した事例が「貸し剥がし」と呼ばれた。
また利益を確保する以外にも、銀行が貸し出し総額を減少させる理由がある。それが「自己資本比率の維持」だ。健全な金融機関として経営を行うための1つの基準として、「自己資本比率の制約」という国際的なルールがある。これは金融機関として経営の大きさに対して、どれだけの自己資本つまり自分のお金を、クッションとして持っているかを示す金融機関の安全性を示す指標だ。
単純に言えば、自己資本と貸し出し総額の比率のような計算になるため、何らかの理由で損失が発生し自己資本が減少してしまった場合、自己資本比率を維持するためには、「自己資本を増強する」「貸し出し総額を減少させる」という2つの選択肢をとることになるが、金融機関はまず自己資本の増強に努め、それが不可能になった時、貸し出し総額を減少させるという行動をとることが多い。
米国で大きな変調が見られ出したのがこの3月あたりから。まず商工業向けの貸し出しの伸びが止まった。そして6月からは商業用不動産向けの融資が減少に転じてきている。まだメディアではあまり伝えられていないが、もしこれら融資残高の減少が継続すると、信用のさらなる収縮、そして景気の悪化につながることになる。
米国では住宅系金融機関の救済が議論されているが、次は公的資金により金融機関の自己資本を拡充する必要が議論の中心になると一部金融機関は推測している。状況はさながら不況に陥っていた10年前の日本と非常に近い構図になっている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080731-00000000-sh_mon-bus_all
7月中旬にシティバンクが5兆円の欠損を出して話題になったが、米財務省は体力の無い銀行を整理しなければならなくなるだろう。丁度、我が国で拓銀、長銀や日債銀を整理したように。同時に、ファニーメイやフレディマックへも米政府は形(なり)振り構わぬ資本増強を迫られる。そうなれば、今でも膨大な米国の負債は益々増えて、ドル価格は低下する。
恐らくこれから半年の間に、米国のインフレはかなり酷くなる。FRBは、政策金利を上げざるを得ず、米国の経済成長は鈍化するだろう。それは、米国民の購買意欲減退に繋がり、各国は米国へ輸出出来なくなる結果、世界的な不況へ突入する。
<北京五輪>後のシナ経済も不透明である。米国で不況が始まれば、それをもろに受けてシナ経済も停滞するであろう。今年1月にシナの労働法が改正され、企業は簡単に社員を整理出来なくなった。そして8月1日からは、シナの独禁法が発効する。これで外資系企業は相当に被害を受けると予想されている。シナへ進出した日本企業の多くは、資産を全て取られて撤退せざるを得なくなるはずだ。
米国とシナで不況が同時に起こった場合、先延ばしの得意な福田政権は一体どの様に日本経済をリードしようとするのだろう。福田氏は早々に内閣総辞職して、人心一新、外交と経済閣僚に重点を置いた新内閣が登場することを強く望む。
(参考)
サブプライム・モーゲージ問題に対する資金注入と公定歩合設定
サブプライム問題が我が国へ与える影響
身勝手な米国、金融危機では自己責任を放棄するのか
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