陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

ロシア対米欧の対立は益々先鋭化:南オセチアとアブハジアの独立承認

2008-08-28 11:44:28 | Weblog
 ロシア軍は、依然としてグルジア国内の要所から軍を引かず、ポチ港への防備を固めつつある。一方、NATO諸国は、続々とフリゲート艦(3000-4000トン)を黒海へ派遣、既に10隻以上が黒海へ入った。NATOの一員で黒海沿岸の大国トルコも艦船を出している。

 南オセチア自治州とアブハジア共和国(何れも国際法的にはグルジア領土)の独立をロシアが勝手に認めた事は、米国+EUの反感を強めている。小ブッシュ大統領とEU議長国のフランスはこれを強く非難し、日本を含むG7外相会議も遺憾声明を出した。国連事務総長声明も出ている。

ロシアの南オセチアとアブハジア独立承認は遺憾=G7外相声明
8月28日8時53分配信 ロイター

 [ワシントン 27日 ロイター] 主要7カ国(G7)の外相は27日、ロシアがグルジアの南オセチア自治州とアブハジア共和国の独立を承認したことについて声明を発表し、遺憾の意を表明した。

 声明は米国務省が公表し「カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、米国および英国の外相は(ロシアの)行動を非難する」としている。さらに「ロシアによる過度の武力行使や、グルジアの一部地域の継続的な占領を遺憾に思う」とした。
 その上で、ロシア政府に対して和平6原則を全面的に履行するよう求めた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080828-00000769-reu-int


 これに対し、ロシアはびくともせず、「上海機構首脳会議」を招集して同機構参加国の了解を取り付けようとしている。ここで、中共がどの様な判断をするか、大いに注目される。


【グルジア紛争】南オセチア独立承認 露が支持取り付けへ 上海協力機構首脳会議2008.8.27 20:38

 【モスクワ=佐藤貴生】中露など6カ国で構成する「上海協力機構」(SCO)の首脳会議が27、28日の日程で、タジキスタンの首都ドゥシャンベで開催される。ロシアは参加国にグルジアへの侵攻の正当性を訴え、南オセチア自治州などの独立を承認したことへの支持を取り付けたい考えだ。ただ、国内に民族問題を抱える中国は、ロシアの立場への積極的な賛同は避けるものとみられる。

 イタル・タス通信によると、首脳会議では安全保障や経済発展、人権などの国際規模での協力に関する「ドゥシャンベ宣言」や、反テロ演習や麻薬密輸阻止に向けた協力などを盛り込んだ協定の採択が予定されている。

 ただ、各国がグルジア領南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を承認したロシアの立場を明確に支持するかは不透明だ。27日付の露独立新聞によると、ロシア側は「ジェノサイド(大量虐殺)」と「グルジアからの侵略」という文言を採択される文書に盛り込もうとしたが、チベットや新疆ウイグルなどの民族問題を国内に抱える中国が難色を示したという。

 これまでにロシアのグルジア侵攻を支持する立場を明かしたのはベラルーシのルカシェンコ大統領とシリアのアサド大統領に止まっている。ロシアはSCO首脳会議の参加に南オセチア、アブハジア両地域の独立承認も働きかけるとみられるが、どの程度の国が同意するかは不明だ。

 一方、メドべージェフ大統領が南オセチアとアブハジアの独立承認を表明した26日午後、株価がこぞって急落した。ロシアの主要株価指数RTSは25日の取引終了時に比べて6・1%、MICEXは5・8%下がった。

 27日付の露紙ブレーミャ・ノボステイは株価下落による損失で見れば、1998年8月のルーブル暴落危機に匹敵すると指摘した。同日付の英字紙モスクワタイムズは「ロシアは最も急成長を遂げている新興市場から、最も不安定な市場になった」とする市場アナリストの分析を掲載した。

 今後、米欧との関係悪化が長期化すれば、資産の国外逃避(キャピタルフライト)が一層進む可能性もある。主要輸出品の石油価格高騰で強気の姿勢を示しているロシアだが、経済的には不安材料もあり、SCOメンバーの中央アジア諸国などへの働きかけを強めることで孤立化を回避したい考えとみられる。
http://sankei.jp.msn.com/world/china/080827/chn0808272037003-n1.htm


 このドウシャンベ会議で、胡錦濤総書記は2014年に「ソチ」で開催される冬季オリンピックを強く支持するとメドヴェージェフ露大統領へ伝えている。6年後の国際情勢はどうなっているかは分からぬが、ロシアへの側面支援と言える。

 これから冬を迎えて、ロシアからの天然ガス供給に頼るドイツは、何処まで強硬に出るのだろうか。今年4月、NATOにグルジアが参加するのを強く反対したのはドイツのメルケル首相であった。それは、ロシアへの配慮が大きな理由であった。

 確かに、プーチン首相がガス栓を閉めると、ウクライナ及び同国を経由してガス供給を受ける欧州各国は大いに困惑する。だが、反対にロシアはガス代金が入らなくなるし、全面的経済報復を受けると、今までのように外貨を溜め込む事は出来なくなる。事実、グルジア戦争開始以来、外資はロシアから大量に引き上げられ、ルーブルの対ドルレートは下がった。経済戦争では、未だロシアは危弱な面が大きい。

 ロシア軍にかなり国土インフラを損壊され、国民の財産を略奪されたグルジアだが、ロシアに対する民族的怨念は益々深まり、サーカシビリ大統領への国民的支持は増加している。救援物資も黒海沿岸から続々と供給されるであろうし、更に対立感が著しくなればトルコから陸路物資の供給が行われるだろう。

 総合的に考えると、黒海の海上支配権確保はロシアに不利、また道義面でロシアの振る舞いは国際的に許されず、長期的な経済戦争も米国+EUが有利と見る。プーチン首相がどの辺で妥協して兵を引くか、暫くは眼が離せない。
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