今月に入って、ユーロの下落が止まらない。現在 1ユーロ =105円台の水準。煽りを受けてドルが僅かに上昇、1$=77円台で推移している。ユーロの下落は、今月末に起ると想定されるギリシャのデフォルト、そして、スイス銀行の形振り構わぬ為替レート上限設定にある。
欧州経済の頼みは、ドイツ政府の各国ソブリン債購入である。しかし、ドイツも国民が「何故、キリギリスの国、ギリシャを助けなければならないのか」との厳しい批判が強い。ドイツ議会は、憲法裁判所にこの問題を提訴し、辛うじて提訴却下となったが、ドイツ政府は安易にPIIGS支援が出来なくなった。
メルケル独首相は、ギリシャのデフォルトに際し、ドイツ各銀行の受ける膨大なソブリン債損失に備えて救済措置を行う検討に入った。
このような背景にあって、欧州中央銀行(ECB)を牛耳るトルシェエ総裁の方針に反旗を翻し、ユルゲン・シュタルク専務理事(ドイツ出身)が先週末突然に辞任、EU各国は益々為替不安をつのらせる。
ウォール街もこの情報を受けて、ダウ平均300ドル以上の下落、週明けの日経平均も200円落ちとさえない展開だ。
先週末から、マルセイユで開催された先進国・財務相会議(G7)では、日本の安住財務相の円高是正への協力要請など殆ど無視されて、ユーロ危機への対応に話題が集中した。でも、G7が具体的な行動指針を出せるはずも無く、欧州における金融及び為替管理は成り行きに任せる雰囲気だ。
焦点:ECB専務理事辞任は最悪のタイミング、危機対応に暗雲
2011年 09月 12日 09:32 JST
[パリ 11日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)のシュタルク専務理事が「個人的な事情」を理由に辞意を表明した。ドイツ出身の専務理事は、国債買い入れに反対して辞任を決めたとみられる。ユーロ圏が発足後最も深刻な危機に見舞われる中、タイミングとしては最悪だ。
欧州連合(EU)は連邦政府を持たず、財政を管轄する共通の機関もない。加盟国の意思統一が困難ななか、ソブリン危機への対応ではECBがこれまで中心的な役割を担ってきた。専務理事の辞意表明により、ECB内部で出身国による亀裂、イデオロギー上の相違があることが鮮明になった。危機管理が今後、一段と難しくなることは避けられない。
金融危機への対応に関わっているEUの高官は「要になっているのはECBだ。ECBの弱体化につながることは悪いニュース」と述べた。
国債買い入れをめぐっては、財政が比較的健全な北部諸国と、財政悪化に苦しむ南部諸国との間で対立が深まっている。特にドイツでは財政悪化国救済への有権者の反発が強く、ユーロ圏の財政統合は政治的に厳しい状況となっている。最悪のケースでは、債務危機が今後一段と悪化した際に、ECBは断固とした対応をとれなくなるかもしれない。
<ギリシャのデフォルトは「時間の問題」>
シンクタンク、ブリューゲルのジャン・ピサーニ・フェリー所長は「非常に都合の悪いタイミングだ」と指摘した。「ギリシャ国債の本格的な再編が必要な今、ECBによるイタリア・スペイン国債の買い入れが制約されれば、危機が波及するリスクが高まる。ECBがコンセンサスを形成できなければ、それはリスクだ」との見方を示している。
政策当局者やエコノミストの間では、ギリシャが債務不履行(デフォルト)となるのは、もはや単に時間の問題との見方が広がっている。
EU・ECB・国際通貨基金(IMF)のギリシャ調査団は先週、ギリシャ政府との協議を中断した。財政健全化が遅れている理由や、その遅れの程度をめぐって、双方の見解が対立しているためとされている。
ただし、週末の日米欧7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の関係筋によると、EU・ECB・IMFはギリシャ向けの次回融資80億ユーロを実行できるよう、調査報告書を工夫する方針。そうなれば、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)が流通市場での債券買い入れなど新たな権限を得るまで、ギリシャは持ちこたえられるかもしれない。
同筋は、ドイツ財務省はギリシャがそう遠くない将来にデフォルトに陥ると考えている、と指摘。つまり、ギリシャの債務問題をできるだけ国内にとどめ、影響が波及しないようにすることが非常に重要になる。
<ECBへの海外からの信頼感に打撃>
ドイツは10日、シュタルクECB専務理事の後任として、アスムセン財務次官を提案した。アスムセン氏は実利的な人物とされ、危機管理の経験も豊富であることから、ECB内の対立が収まる可能性がある。
ただ逆に、ドラギ・イタリア中銀総裁が11月にECB総裁に就任する際には、債券買い入れの終了を急ぎ、インフレ抑制というECBの中核的責務を重視する姿勢を打ち出さざるを得なくなるかもしれない。ドラギ氏はすでに、債券買い入れを当然視しないよう、くぎを刺している。
欧州政策センターのリサーチディレクター、ジョセフ・ヤニング氏は「シュタルク氏の後任にはがちがちの保守派ではなく、淡々と危機対応に取り組むような人物が就任することになるだろう。ただ、辞任するシュタルク氏は、ますます自由に発言するようになるかもしれない。メルケル独首相やドラギ次期ECB総裁はやりにくくなるだろう」と述べた。
さらにシュタルク専務理事の辞任により、ECBおよびユーロ圏全体に対する海外の信頼感が大きく損なわれる可能性が指摘されている。
ブリューゲルのピサーニ・フェリー所長は「ECBが政治から自由になったことはないが、今は政治色が一段と強まっている。ECBが依然として、各国の寄せ集めである印象を与えた」と指摘。「ニューヨークからこれがどのように見えるのか、考えなければならない。同じテーブルにつくこともできないように思われるのではないか」としている。
(Paul Taylor記者;翻訳 吉川彩;編集 山川薫)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23131920110912?sp=true
ブルームバーグの記事によると、ユーロ/円は更に加速しそうである。この雰囲気では、1ユーロ =100円になっても不思議ではない。政府・日銀は、今までのこだわりを棄てて、直ちに円発行額の量的緩和に踏み切らないと、輸出関連産業は瀕死の状態に陥るだろう。
ユーロ一段安、対円で10年ぶり安値更新、ギリシャの債務不履行懸念で
9月12日(ブルームバーグ):午後の東京外国為替市場ではユーロが一段安となり、対円ではこの日の日本時間早朝に付けた約10年ぶりの安値を更新した。ギリシャがデフォルト(債務不履行)に陥るとの懸念の高まりを背景に、ユーロへの売り圧力が強まっている。
ユーロ・円相場は午後に入り、一時1ユーロ=104円10銭と2001年6月以来のユーロ安値を付けた。この日の日本時間早朝に01年7月以来の水準となる104円92銭までユーロ安が進行した後、105円台半ばまでユーロが値を戻す場面も見られていた。
ユーロは対ドルでも午後に入り一時1ユーロ=1.3495ドルと2月16日以来の安値まで売られた。一方、ドル・円相場は一時1ドル=76円93銭と4営業日ぶりの水準まで円が値を切り上げている。
外為オンライン情報サービス室の佐藤正和顧問は、ギリシャのデフォルト(債務不履行)を「かなり織り込んでいる」状況下で、その後の世界経済への影響懸念が強まっていると指摘。ユーロ・円は朝方に104円台に突入したあと、下落スピードの調整に伴ってやや値を戻す場面も見られたが、再び105円を割り込んだあたりから、ストップロス(損失を限定するためのユーロ売り)を誘発した感があると説明している。
ドイツのメルケル首相は、ギリシャは救済パッケージの条件を満たさなければ資金を受け取ることはできないと言明した。独紙ターゲスシュピーゲル日曜版とのインタビューで語った。
ドイツ連立政権の当局者3人が9月9日に明らかにしたところによると、メルケル政権はギリシャが金融支援の財政緊縮条件を満たせず、救済融資を受けられない場合に備えて、ドイツの銀行をどう支援するかを議論している。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=auWdLYfz4RYI
参考:
ユーロの不安定な状態が続く
http://blog.goo.ne.jp/charotm/e/e6827ea6489692f64d819985d7f861e4
ユーロ危機とドイツの苦悩
http://blog.goo.ne.jp/charotm/e/82dac43088e0b6a735b3cfab5c36f52a
スイス銀行が1ユーロ=1.20スイス・フランを上限に決定
http://blog.goo.ne.jp/charotm/e/9e86f7a9fa773c43c06babe30ca9254a
欧州経済の頼みは、ドイツ政府の各国ソブリン債購入である。しかし、ドイツも国民が「何故、キリギリスの国、ギリシャを助けなければならないのか」との厳しい批判が強い。ドイツ議会は、憲法裁判所にこの問題を提訴し、辛うじて提訴却下となったが、ドイツ政府は安易にPIIGS支援が出来なくなった。
メルケル独首相は、ギリシャのデフォルトに際し、ドイツ各銀行の受ける膨大なソブリン債損失に備えて救済措置を行う検討に入った。
このような背景にあって、欧州中央銀行(ECB)を牛耳るトルシェエ総裁の方針に反旗を翻し、ユルゲン・シュタルク専務理事(ドイツ出身)が先週末突然に辞任、EU各国は益々為替不安をつのらせる。
ウォール街もこの情報を受けて、ダウ平均300ドル以上の下落、週明けの日経平均も200円落ちとさえない展開だ。
先週末から、マルセイユで開催された先進国・財務相会議(G7)では、日本の安住財務相の円高是正への協力要請など殆ど無視されて、ユーロ危機への対応に話題が集中した。でも、G7が具体的な行動指針を出せるはずも無く、欧州における金融及び為替管理は成り行きに任せる雰囲気だ。
焦点:ECB専務理事辞任は最悪のタイミング、危機対応に暗雲
2011年 09月 12日 09:32 JST
[パリ 11日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)のシュタルク専務理事が「個人的な事情」を理由に辞意を表明した。ドイツ出身の専務理事は、国債買い入れに反対して辞任を決めたとみられる。ユーロ圏が発足後最も深刻な危機に見舞われる中、タイミングとしては最悪だ。
欧州連合(EU)は連邦政府を持たず、財政を管轄する共通の機関もない。加盟国の意思統一が困難ななか、ソブリン危機への対応ではECBがこれまで中心的な役割を担ってきた。専務理事の辞意表明により、ECB内部で出身国による亀裂、イデオロギー上の相違があることが鮮明になった。危機管理が今後、一段と難しくなることは避けられない。
金融危機への対応に関わっているEUの高官は「要になっているのはECBだ。ECBの弱体化につながることは悪いニュース」と述べた。
国債買い入れをめぐっては、財政が比較的健全な北部諸国と、財政悪化に苦しむ南部諸国との間で対立が深まっている。特にドイツでは財政悪化国救済への有権者の反発が強く、ユーロ圏の財政統合は政治的に厳しい状況となっている。最悪のケースでは、債務危機が今後一段と悪化した際に、ECBは断固とした対応をとれなくなるかもしれない。
<ギリシャのデフォルトは「時間の問題」>
シンクタンク、ブリューゲルのジャン・ピサーニ・フェリー所長は「非常に都合の悪いタイミングだ」と指摘した。「ギリシャ国債の本格的な再編が必要な今、ECBによるイタリア・スペイン国債の買い入れが制約されれば、危機が波及するリスクが高まる。ECBがコンセンサスを形成できなければ、それはリスクだ」との見方を示している。
政策当局者やエコノミストの間では、ギリシャが債務不履行(デフォルト)となるのは、もはや単に時間の問題との見方が広がっている。
EU・ECB・国際通貨基金(IMF)のギリシャ調査団は先週、ギリシャ政府との協議を中断した。財政健全化が遅れている理由や、その遅れの程度をめぐって、双方の見解が対立しているためとされている。
ただし、週末の日米欧7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の関係筋によると、EU・ECB・IMFはギリシャ向けの次回融資80億ユーロを実行できるよう、調査報告書を工夫する方針。そうなれば、欧州金融安定ファシリティー(EFSF)が流通市場での債券買い入れなど新たな権限を得るまで、ギリシャは持ちこたえられるかもしれない。
同筋は、ドイツ財務省はギリシャがそう遠くない将来にデフォルトに陥ると考えている、と指摘。つまり、ギリシャの債務問題をできるだけ国内にとどめ、影響が波及しないようにすることが非常に重要になる。
<ECBへの海外からの信頼感に打撃>
ドイツは10日、シュタルクECB専務理事の後任として、アスムセン財務次官を提案した。アスムセン氏は実利的な人物とされ、危機管理の経験も豊富であることから、ECB内の対立が収まる可能性がある。
ただ逆に、ドラギ・イタリア中銀総裁が11月にECB総裁に就任する際には、債券買い入れの終了を急ぎ、インフレ抑制というECBの中核的責務を重視する姿勢を打ち出さざるを得なくなるかもしれない。ドラギ氏はすでに、債券買い入れを当然視しないよう、くぎを刺している。
欧州政策センターのリサーチディレクター、ジョセフ・ヤニング氏は「シュタルク氏の後任にはがちがちの保守派ではなく、淡々と危機対応に取り組むような人物が就任することになるだろう。ただ、辞任するシュタルク氏は、ますます自由に発言するようになるかもしれない。メルケル独首相やドラギ次期ECB総裁はやりにくくなるだろう」と述べた。
さらにシュタルク専務理事の辞任により、ECBおよびユーロ圏全体に対する海外の信頼感が大きく損なわれる可能性が指摘されている。
ブリューゲルのピサーニ・フェリー所長は「ECBが政治から自由になったことはないが、今は政治色が一段と強まっている。ECBが依然として、各国の寄せ集めである印象を与えた」と指摘。「ニューヨークからこれがどのように見えるのか、考えなければならない。同じテーブルにつくこともできないように思われるのではないか」としている。
(Paul Taylor記者;翻訳 吉川彩;編集 山川薫)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-23131920110912?sp=true
ブルームバーグの記事によると、ユーロ/円は更に加速しそうである。この雰囲気では、1ユーロ =100円になっても不思議ではない。政府・日銀は、今までのこだわりを棄てて、直ちに円発行額の量的緩和に踏み切らないと、輸出関連産業は瀕死の状態に陥るだろう。
ユーロ一段安、対円で10年ぶり安値更新、ギリシャの債務不履行懸念で
9月12日(ブルームバーグ):午後の東京外国為替市場ではユーロが一段安となり、対円ではこの日の日本時間早朝に付けた約10年ぶりの安値を更新した。ギリシャがデフォルト(債務不履行)に陥るとの懸念の高まりを背景に、ユーロへの売り圧力が強まっている。
ユーロ・円相場は午後に入り、一時1ユーロ=104円10銭と2001年6月以来のユーロ安値を付けた。この日の日本時間早朝に01年7月以来の水準となる104円92銭までユーロ安が進行した後、105円台半ばまでユーロが値を戻す場面も見られていた。
ユーロは対ドルでも午後に入り一時1ユーロ=1.3495ドルと2月16日以来の安値まで売られた。一方、ドル・円相場は一時1ドル=76円93銭と4営業日ぶりの水準まで円が値を切り上げている。
外為オンライン情報サービス室の佐藤正和顧問は、ギリシャのデフォルト(債務不履行)を「かなり織り込んでいる」状況下で、その後の世界経済への影響懸念が強まっていると指摘。ユーロ・円は朝方に104円台に突入したあと、下落スピードの調整に伴ってやや値を戻す場面も見られたが、再び105円を割り込んだあたりから、ストップロス(損失を限定するためのユーロ売り)を誘発した感があると説明している。
ドイツのメルケル首相は、ギリシャは救済パッケージの条件を満たさなければ資金を受け取ることはできないと言明した。独紙ターゲスシュピーゲル日曜版とのインタビューで語った。
ドイツ連立政権の当局者3人が9月9日に明らかにしたところによると、メルケル政権はギリシャが金融支援の財政緊縮条件を満たせず、救済融資を受けられない場合に備えて、ドイツの銀行をどう支援するかを議論している。
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=auWdLYfz4RYI
参考:
ユーロの不安定な状態が続く
http://blog.goo.ne.jp/charotm/e/e6827ea6489692f64d819985d7f861e4
ユーロ危機とドイツの苦悩
http://blog.goo.ne.jp/charotm/e/82dac43088e0b6a735b3cfab5c36f52a
スイス銀行が1ユーロ=1.20スイス・フランを上限に決定
http://blog.goo.ne.jp/charotm/e/9e86f7a9fa773c43c06babe30ca9254a
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