陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

狭量な京都市・大文字保存会

2011-08-10 02:02:21 | Weblog
 京都五山の送り火は、旧盆の8月16日に行われる。現在では、全国版のTVニュースで「大文字」焼が紹介されるなど、盛夏の風物詩として定着、多くの日本人に親しまれている。京都市民も、この古来伝統行事に誇りを持っていることであろう。

 今年は、大文字に陸前高田市の名勝であった「高田松原」の倒木が使われるというので、宗教行事としても大変意義のあることと思っていた。ところが大文字保存会は、放射能汚染を考慮して、これを中止する決定。京都市文化財保護課と同保存会自体が採取検査し、問題無しと判断したのにも係わらずである。

 何と心の狭い、臆病な人達であろうか!京都は日本の心の故郷として、老いも若きもノスタルジーと憧れを持つ街である。私自身も数多くの寺社を訪れ、程好い歓迎を受けたし、この街に住む知人達も心豊かな印象に溢れている。

 僅かだとは思うが、事実を確認もしないで風評に流され、偏狭な考えに拘(こだわ)る京都人がいることを寂しく思う。被災者の哀しい気持ちを理解出来ないのだろうか。


被災マツ、大文字使わず 「放射能不安」で一転

 東日本大震災の津波で倒れた岩手県陸前高田市の景勝地「高田松原」のマツを京都に運び、五山送り火の「大文字」に使う計画が中止になったことが5日、分かった。マツの放射能汚染を懸念する声が京都市などに寄せられたためで、8日に陸前高田市で燃やす方針という。

 高田松原のマツを薪にして販売し、復興支援に充てる活動を知った大分市の美術家が6月、大文字保存会(京都市左京区)に打診し、7月中にも受け入れる準備を進めていた。マツは当初約200本用意され、現地の人たちが犠牲になった家族や友人の名前、復興への祈りを記していた。

 ところが、7月に入り、京都市文化財保護課や保存会にマツの放射能汚染を不安視する声が寄せられ、インターネットの掲示板などにも反対意見の書き込みが続いた。

 飼料の稲わらへの汚染拡大もあり、同課と保存会は同月下旬、全点のかけらを採取して検査した。放射性セシウムは検出されなかったが、保存会全体では受け入れで一致できず、断念を決めた。8日は保存会役員が陸前高田市に赴き、亡くなった人の精霊をお盆に迎える火として燃やすという。

 陸前高田市で記入呼び掛けに協力した男性は「避難所でお願いすると進んで書いてくれ、マツは400本近くになった。(中止の件は)正式には聞いておらず、今は話すことはない」という。

 保存会の松原公太郎理事長は「書いた方の思いにできるだけ協力したかったが、残念です」としている。
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20110806000029


 五山送り火連合会へは、多数の批判の声が届けられた。

五山送り火被災松使用中止 抗議・非難の電話殺到
2011.8.9 01:23

 京都市内で16日に行われる「京都五山送り火」の一つ「大文字」で、東日本大震災の津波で流された岩手県陸前高田市の名勝「高田松原」の松で作った護摩木を燃やす計画が放射能汚染を不安視する声を受けて中止となったことに対し、京都五山送り火連合会の事務局がある京都市文化財保護課に非難が殺到している。

 計画の中止が報じられ、休日が明けた8日朝から同課では電話が相次ぎ、約100件に上った。その大半が「被災者の気持ちを無駄にするのか」「京都のイメージダウンにつながる」などと計画中止を抗議、非難する内容だった。

 さらに市政情報総合案内コールセンターにも7日に45件、8日に166件(午後5時まで)の電話とメールが寄せられ、9割以上が中止反対の意見だった。

 今回の中止について、福島県飯舘村職員の杉岡誠順さんは「放射能汚染を恐れる気持ちをもつ人がいるのは致し方ない。ただ、今回のことで東北の人々は大変ショックを受けた。中止反対の声もあると聞くと励みになったが…」と話した。

 被災者に犠牲者の名前や祈りを書き込んでもらった護摩木は約400本集まった。京都市などの検査で放射性物質は検出されなかったが、汚染を心配する声を受けて大文字保存会が中止を決定。護摩木は8日夜、陸前高田市内で迎え火として燃やされた。

 保存会のメンバーは現地で護摩木を写真撮影しており、京都市で別の護摩木に書き写したりして16日の送り火で燃やすという。

 被曝医療に詳しい鈴木元・国際医療福祉大教授(放射線疫学)は「放射能を怖がるレベルが極端になりすぎている。護摩木から放射性物質が検出されていないのに、中止を求めたりしたことは過剰反応に間違いない」と話している。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110809/trd11080901240001-n1.htm


 地元・京都新聞社の記事には、京都市役所の対応が述べられている。

陸前高田市のマツ、「大文字」使用中止に批判集中

 五山送り火の大文字保存会(京都市左京区)が、東日本大震災の津波で倒れた岩手県陸前高田市のマツを使う計画を中止したことに対し、「被災地の思いが無駄にする」「京都に裏切られた」などと批判する意見が、8日までの3日間で京都市に約310件寄せられた。

 市への意見はメール約180件、電話約130件などで、所管する文化財保護課は一時電話がつながりにくくなった。京都市民を中心に他府県からも多く、「放射性物質が検出されてないのに中止は疑問だ」「京都のイメージダウンにつながる」などと中止の撤回を求めていた。京都新聞社には福島県内の男性から「仕事で京都の物産を勧めていたが、もうやめます」との電話もあった。

 市役所内では8日、取材に対し門川大作市長が「今回の決定は残念で寂しい。市として別の形で実現できるよう協力したい」とコメント。陸前高田市長らにマツの一部を残すよう要望したが、現地から「予定通り燃やす」と返事があった。市議会経済総務委員会でも、市議から「風評被害を広げ、京都の信用失墜にもつながる。観光にもマイナス」との指摘が出た。

 一方、陸前高田市では、大文字保存会の松原公太郎理事長が、マツに犠牲者の氏名や復興の祈りを書く作業に協力した地元住民に中止を報告、謝罪した。「迎え火をすることで理解していただいた。地元の人が火をともすのを見守りたい」として、8日はマツを組み上げる作業を手伝った。

 燃やす前に、書き込みがあった約300本のマツをすべて写真撮影しており、16日の送り火までに、火床で使うマツの割り木に書き写すという。
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20110808000131


 この問題、門川大作市長が決断して実施の方向へ変えることが出来ないのであろうか。日本中から白眼視されるよりも、実施するように保存会を説得することが長い眼で見て得策と思うのだが・・・。
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27 コメント

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中止すべきは大文字焼きそのもの。 (楓289)
2011-08-10 11:17:13
今回放射能が怖くて、陸前高田市の薪を断った。保存会の方々の放射能にたいしての認識不足に驚いています。
福島での水素爆発での放射能飛散は日本だけではありません。京都市そして大文字焼きをする一帯にも。。かなりの放射能が降り注いでいます。もし放射能の飛散が心配ならば。、大文字焼きそのものを中止したほうがいいのではありませんでしょうか?
再度保存会の皆さんで検討してください・。
放射能の認識を再度勉強されますよう進言します。
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大文字送り火の心が消えた (ひろしⅢ)
2011-08-10 23:05:26
今回の対応につくずく思うのは 京都人の東北偏見 京都が一番の心である こんな京都が日本を代表する古都かと思うと情けない
今回の対応に反省を求め 京都不買を提案したい 心ある京都の対応が見られる迄 私は京都には行かない 製品を買わない 徹底して反省を求めます サントリーの蝦夷発言がやはり本心かと思います
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京都市の汚染レベル (茶絽主)
2011-08-11 03:08:58
楓289様

京都市の空間放射線量は、それ程高いのですか。京都市のHPには、市内中心部の測定値が明示されていませんが、伏見区で 0.03マイクロシーベルト/hrと報告されています。
また、個人の測定値では烏丸四条付近で 0.1マイクロシーベルト/hr程度(GMカウンター)。
参考までに、米沢市は0.09マイクロシーベルト/hr、福島市はホットスポットがありますが、1~2マイクロシーベルト/hr。
私は、京都市のデータを見る限り、送り火を中止する必要は無いと考えます。
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なぜ、断わったらだめなのかな。 (蜜柑)
2011-08-11 08:22:54
送り火に使うまきをお金を払って買うのはなぜだろう。本来なら、法要をしてもらうほうが、おかねを払うべきではないだろうか。震災被害者の冥福をいのってもやすなら、当然ではないでしょうか。寄付金集めなら、別の方法があるのでは、ないでしょうか。ちなみに、京都市は、いくら払ったのでしょうか。
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責任とれますか? (ななこ)
2011-08-11 11:11:36
岩手県は10日、東日本大震災で生じた陸前高田市のがれきから、1キログラム
当たり1480ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。
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人生の長さを超える放射線との戦い。 (楓289)
2011-08-11 15:22:06
茶絽主 様

返答のコメントいただきおそれいります。
詳細に放射線数値ご提示いただき参考にさせていただきました。
今回の原発事故で日本は放射線という重く苦しい。負担を背負いながら
歩んでいかなくなりましたね。放射能に怯えながら、これから長い々。。
何十年という時間を。。。京都でも放射線機器で測れるほどの放射線量があるんですね。
今問題は未知の世界になるようですが、機器で計測できない低放射線による発がんの
可能性ですね。海外文献ではかなりの影響があるようですが未知の世界ですから怖いです。
まして日本の放射能の専門家では判断できない世界ですから。
よく政府から発表される食品の放射線量について『ただちに健康に影響する数値ではない、』
との専門家の助言を受けたとはおもえない責任のがれのコメントに嫌悪感をかんじます。
あまりに政治的なあいまいな責任放棄の言葉に!!
今現在発がん物質として一番恐れられている自然界にない核放射性物質に
全国が大かれ少なから汚染されている日本で、お互いに核汚染を共有しながら
戦わなければならないのに、今回の大文字焼きのような差別を助長するような
事柄がこれからも繰り返されると思うと悲しくなります。
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一部の京都市民の偏見 (茶絽主)
2011-08-11 22:50:19
ひろし様:

この問題に関しては、一部京都市民の偏見と過剰反応が生み出したものと思います。市の関係者も戸惑っているようだし、観光協会は遺憾の意を表している。
貴台のお気持は良く分かりますが、京都産品のボイコット運動は正直賛成出来ません。一定期間、京都と距離を置く人達も出るのは仕方ありますまい。
大文字保存会理事長と、京都市長のリーダーシップ欠如は大いに非難されるべきと思います。
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大文字について (やそきち)
2011-08-11 23:00:35
この場を借りて失礼いたします。幾分か訂正しなければいけないので、コメントを投稿させていただきます。
自分は、地元の行事が批難を浴びているので心苦しく思っている一人です。
と言いますのも、自分の職場に大文字保存会の会員の方がおりその方から直接、騒動の発端となった会議の全貌を本日お聞きいたしました。
今回の騒動の発端となった8/1の連合会の定例会議で二名の方から質問として①「昨今、セシウム(放射能)が問題視されているが、燃やすことにより拡散しないのか?」②「うちの山を燃やさないとするとどうするのか?」と言う質問を保存会会長へ投げかけたとのことです。
時間も遅く、その日は会議が終わり保存会会長が京都市にその質問を報告したとのこと。
ここで、皆さんに知っておいていただきたいのが、定例会の内容は京都市に逐一報告をしているということです。京都市の見解「聞いていない、伝統行事には口出しできない」と言い放った京都市の対応に憤りを感じます。
大文字保存会の質問を決定とはき違え、立場が悪くなれば、「関係ない」と言い放ち責任逃れをし、全てを保存会に押し付ける京都市に謝罪を求めたいです。
正しい情報を流す事がマスメディアの仕事なら、事実を歪曲せずに真実を報道していただきたいです。
毎年、恒例行事となっている送り火にケチをつけられ悲しいです。
観光として京都市も潤っているというのに。
保存会の方は毎年暑い中、山の整備等を無償でやられています。
そんな方々を悪者にしていいのでしょうか?
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京都に思う (ひろしⅢ)
2011-08-11 23:02:47
茶絽主さん へ
返事有難うございます
う~~ん 余りに短絡な結論を出して
反響の大きさに戸惑う保存会
もう少し大人の考えが 被災者の気持ちを踏みにじる 現在まさしく放射能で苦しんでる人達が沢山いらっしゃる中で もっと思慮深い歴史ある京都人で欲しかったですね 今後の対応を見守ります
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詳しい情報提供へのお礼 (茶絽主)
2011-08-12 06:28:40
やそきち様

色々なお話を教えて頂き、お礼を申します。
最初にボタンの掛け違いがあったわけですね。
私も、五山の送り火の準備は大変だろうなと想像します。火路を整備し、薪を丁寧に積み上げ、火が走るように工夫しなければならない。どの保存会にも、それを行う伝統技があるのでしょうし、作業も体力が必要ですね。
私達、送り火観覧者は保存会の努力を思い起こしたいです。
色々なこともありましたけれども、大文字保存会は方針転換し、「高田の松」を送り火へ加えることに決定したようですね。その英断を高く評価したいところ。
ご指摘のように、マスメディアは正確な情報伝達を心掛けるべきなのですが、中々改まらない面が多い。ネットでそれを大いに指摘して行きたいと考えます。
多くの京都市民もこの問題で心を痛めたと思いますが、五山揃って「高田の松」を薪に加えるようになり、ホッとされておられましょう。
8/16の夜は、大震災被災者の慰霊も含めて頂きつつ、五山の送り火が空を焦がす様子を拝見しようと思います。
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