陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

円高による外為差損の巨額化

2010-08-18 00:32:49 | 財政・経済問題
 安全保障(国防体制)、毅然とした外交教育体制の充実の三点に関して、心ある人々の不満を集めている菅<カラ>政権であるが、財政に関しても何をどうやったら良いか分からない状態が続いている。こんな風に国家運営について無能・無策な内閣を支持する有権者が半数近くいると言うのだから、ただ愕然とするのみ。

 来年度予算で、1兆円特別枠の財政出動を内閣は考えているとのこと、それでGDP増にどれ位寄与すると言うのだろうか?日本のGDPは約500兆円、これに真水で1兆円程度の国家投資を行っても、3倍程度の波及効果しか得られない。経済成長率は多くて0.5%程度増えるだけである。

 麻生前政権は、リーマン・ショック後の第2次補正予算で16兆円の財政出動を行うはずであった。これだと、経済成長率は4%程度に伸びて、景気回復への足掛かりが出来たはずだが、鳩山前政権はそれを中止、たちまち「鳩山不況」を招いた。これは、当時国家戦略室長、また財務相であった菅直人首相にも大きな責任がある。

 今回の円高状況については、政権に財政に対する基本的考えが無いから、有効な対策を打ち出せない。海外からの円高攻勢に対し、単独でドル買い/円売りをやっても、ドル売りを浴びるだけであろう。

円高対策で問われる手腕=「通貨安競争」回避がカギ―政府・日銀
8月17日23時0分配信 時事通信

 菅直人政権が円高対策で日銀と連携を強化するのは、輸出主導の回復を図る日本経済が急激な円高で腰折れするのを防ぐ狙いからだ。1990年代のバブル崩壊後に日本経済だけが落ち込んでいた中では、為替介入などの円高対策は欧米から容認された。だが、金融危機後の後遺症に苦しむ米欧が自国通貨安による景気回復を志向する中、円安誘導は容易ではない。政府・日銀がどのような対策を打ち出すかに注目が集まる。

 2004年3月以降となる円売り介入の再開は、米欧の支持を得る上で難航が必至。09年4月の20カ国・地域(G20)首脳会議は共同声明に「通貨の競争的な切り下げを回避」すると盛り込んでおり、為替介入は人為的な通貨切り下げとの批判も国際的に浴びかねない。

 金融政策でも、すでに長期金利が1%を割っている日本に比べ、米国は2.5%程度となお低下余地がある。日本が追加緩和を行っても、米国が今後一段の緩和に踏み切れば日米金利差は再び縮小し、円高対策の効果には限界がある。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100817-00000157-jij-bus_all


 これ以上、惰性でドルを溜め込んでも、外為差損が大きくなるばかりである。既に外為特別会計は30兆円に近い為替差損を生じている。

円高直撃、外為特会の評価損30兆円に膨らむ
8月17日22時12分配信 産経新聞

 急激な円高の進行を受け、財務省が為替介入を行うために管理している「外国為替資金特別会計(外為特会)」で、評価損が過去最大の約30兆円に膨らんでいる。米国債を中心としたドル建ての資産が円換算ベースで目減りしたためだ。損失処理に備えて運用益をため込んできた約20兆6千億円(平成21年度末)の積立金を約10兆円も上回っており、実質的な“赤字”状態にある。

 特別会計の積立金は、いわゆる「霞が関埋蔵金」と呼ばれ、10月に行われる政府の事業仕分け第3弾の対象となる。多額の資金が眠る外為特会は最大のターゲットだが、評価損の拡大を理由に財務省が、取り崩しに抵抗するのは確実。円高は、政府の財源捻出(ねんしゅつ)にも影を落としている。

 政府は過去に行った円売り・ドル買い介入に伴い約100兆円の外貨を取得。外為特会では、これを米国債などで運用している。介入時よりも円高が進むと、円換算で評価損が生じる。

 19年度末は為替レートが1ドル=117円で評価損は3兆3千億円だったが、21年度末は91円に上昇し、26兆3千億円に拡大した。1円の円高で評価損が7千億~8千億円増えると推計されており、足元の85円では、さらにふくらみ、30兆円に迫った。

 外為特会では、米国債の利払いなどの運用益で毎年2兆~4兆円の剰余金が発生しており、これをためたのが積立金。評価損との差額は21年度末で5兆7千億円のマイナス。足元では赤字も5兆円程度増えた。

 財務省は、積立金の適正水準を外為特会の資産規模の3割(30兆円程度)としており、「現状は10兆円の積み立て不足」(担当者)と強調している。

 政府は事業仕分け第3弾で、過剰にため込まれた積立金を取り崩して財源を捻出したい考え。ただ、埋蔵金は、自民党政権時代からの発掘ですでに枯渇している。外為特会の評価損は、あくまで見かけ上のものですぐに処理する必要はなく、毎年、剰余金も出ている。22年度予算では、21年度分の余剰金2兆5千億円を税外収入として流用しており、有力財源としての期待は高い。

 ただ、前財務相の菅直人首相は、外為特会の活用について、「国の財政全体でみるとプラスにならない」と財務省寄りの消極姿勢を示しており、事業仕分けは難航しそうだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100817-00000596-san-bus_all



 外国債の利払いから得られた2兆円~4兆円に関し、これを溜め込まないで、内需拡大に動く必要がある。即ち、小中学校校舎の改築推進、通学路の確保と拡充、地方公共団体の電線地中化支援、仕掛かり高速道路の建設加速化、海自艦船の増強などに用いると、カネが国内に回るようになり、円高対策にも繋がると思うのだが、菅<カラ>政権では恐らく出来ないであろう。
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