陸奥月旦抄

茶絽主が気の付いた事、世情変化への感想、自省などを述べます。
登場人物の敬称を省略させて頂きます。

10.22「ユーロ・ショック」とその日経225への影響

2008-10-23 05:38:09 | 財政・経済問題
 ユーロが、ドルや円に対し価格を突然に下げた。これを「ユーロ・ショック」と呼ぶが、NY市場の株価も最初から下落で始まり、一気に-381ドルにまで達した。暫くの間、戻し買い等で抵抗はあったが、力尽きて只今はー514ドル程度である。10月23日の英、仏、独、伊、西、蘭の欧州株式市場はそれを受け、何れも揃って3-5%の下落状態となった。

 更に円高が進み、1ドル=97.68円、並びに1ユーロ=125.33円。これは、本日の東証株価に間違い無くマイナスの影響を与えるだろう。

 ロイターは、早速「ユーロ・ショック」が東証株価へ与える効果を予測している。

ユーロ・ショックで株安加速、企業業績見通しに暗雲
2008年 10月 22日 19:26 JST

 [東京 22日 ロイター] ユーロ・ショックが株式市場を直撃した。22日の外為市場でユーロが下落基調を鮮明にしたことを受け、日経平均は後場から下げが加速、終値は631円安と4日ぶりの大幅反落で引けた。

 4―9月期決算発表の本格化を控え、市場では会社側から収益計画の下方修正が相次ぐのではないかとの懸念が高まっている。

<欧州向け売上比率の高い銘柄が狙い撃ちに>

 欧州経済に対する先行き不安や根強い金融危機への懸念を背景に、ユーロが対主要通貨で急落している。とりわけ対円での下げがきつく、ユーロ/円は一時127.00円まで下落し4年4カ月ぶり安値を更新した。英ポンドも下げ止まらず、英ポンド/円は161円半ばと8年ぶり安値圏へ下落している。ユーロ安はドル売りにも波及、ドル/円は100円割れとなり、結果的に円高が際立つ形となった。

 株式市場では欧州向けの売上比率が高い銘柄が狙い撃ちされた。コニカミノルタHD(4902.T: 株価, ニュース, レポート)、ブラザー(6448.T: 株価, ニュース, レポート)がいずれもストップ安まで売られたほか、マツダ(7261.T: 株価, ニュース, レポート)が年初来安値を更新、キヤノン(7751.T: 株価, ニュース, レポート)、任天堂(7974.OS: 株価, ニュース, レポート)、日立工機(6581.T: 株価, ニュース, レポート)も急落するなどハイテク、精密、自動車などの輸出関連株が大きく値を崩した。

 朝方から欧州勢、アジア勢などの売りが先行したが、後場に入って下げが加速した背景には海外短期筋の動きがある。「米株先物安やユーロ安を手掛かりに買い戻しが一巡した短期筋が売り直している。海外機関投資家は円高で日本株の資産が計算上増えており、ロングをいったん手じまう動きにもなっている」(大手証券トレーダー)という。

 証券ジャパン調査情報部長の小林治重氏は「ユーロ急落を材料に、ヘッジファンド勢が日本株の現物、先物に売りを仕掛けた。マーケットのゆがみをついた投資行動であり、一般投資家はなすすべなく、投げ売りせざるを得なくなっている」とみている。「市場を落ち着かせるには財政出動しかないが、米国は大統領選が終わるまで動けない。その間隙をヘッジファンド勢に狙われた」と小林氏は話している。

<日米欧とも景気対策の実行まで時間>

 来週から4―9月期の決算発表が本格化するが、円高の進展で企業業績の先行きに暗雲が立ち込めてきた。「国内企業はユーロ/円の想定レートを157─160円程度のレンジで設定している。足元の130円を割れるような水準では、2009年3月期通期の業績予想に一段の下方修正圧力が生じる」(立花証券執行役員の平野憲一氏)という。

 原油や非鉄金属など原材料価格のピークアウトが利益を押し上げる効果もあるとみられるが、投資家のマインドは冷え込み、好材料に目が向かいにくくなっている。

 いちよし証券投資情報部チーフストラテジストの高橋正信氏は「輸出企業は追い込まれつつある。2009年3月期業績は、全体で前年比2割減益は覚悟しなければならないだろう。ユーロ安を考えると、下期だけでみて欧州向け輸出比率の大きいところなどは前年同期比半減という企業もでてきそうだ」と危惧する。「選挙をはさんで日米には政治空白が生じる。欧州各国が景気対策でまとまりにくいことも容易に想像がつく。景気対策の催促相場になれば、日経平均は10日の安値(8115円)を割り込む可能性もある」と高橋氏は話している。

 各国の政府と中央銀行が公的資金投入や協調利下げなどで一斉に金融危機の封じ込めに動いたため、金融不安は多少後退したものの、投資家の不安心理は根強い。「恐怖指数」とも呼ばれるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー(VIX)指数は、21日現在で53.11と高水準を維持している。

 野村証券エクイティ・マーケットアナリストの佐藤雅彦氏は「日経平均は目先、年初来安値を更新する可能性は低いものの、年末、年始にかけて安値更新の可能性が50%程度に高まりそうだ。景気悪化が進むなかクリスマス商戦は厳しいとみられる。金融問題もすべてが解決したわけではなく10─12月決算などでサプライズが出れば再び下値を模索する可能性は大きいだろう」と話している。
(ロイター日本語ニュース 金融マーケットチーム)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-34458220081022


 ある誘導期間の後、何かの切掛けで急に、しかも短期間に信用収縮が起きると

 金融機関の破綻と政府援助及び市場介入
     ↓
 為替への反映(「ローカル・カレンシー」国家の破綻とIMFの管理)
     ↓
 株式市場、商品市場の暴落
     ↓     
 実体経済への影響(不況の深化)

と言う形で<経済カタストロフィー>がスパイラル状に進んで行く。だが、「ハード・カレンシー」(国際的に信用のある貨幣)であるユーロは、もう少し緩やかに為替変動しながらバブル価値を下げると想像していた。「ユーロ・ショック」に見舞われた現在、ユーロは対円で120円を突き抜ける可能性が出て来た。

 日本の外貨準備高100兆円の内訳は、米国国債で60兆円、その他ユーロ債などで40兆円と言われていたが、ユーロ価格が25%低下すれば単純に考えて40兆円の内10兆円が失われた事になる。実際は、それ程にならないと思うけれども、植草一秀氏が繰り返し指摘しているように外貨準備高の実態を詳しく公表し、財務省だけの判断によらずに利用方法を国会審議に委ねるべきと思う。
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-7819.html

 総額が国家予算を超える巨額の外貨準備高は、変動する自国通貨の防衛に用いるのが本筋で、他国の破綻を救済するためのものではない。IMFを介して開発途上国へ援助するのは、返済が確実であるとは言え、集中的に国会審議を行ってからにして欲しい。

 英国は、外貨準備高が993億ドル=9兆9300億円(2008年1月)で、独、仏、伊よりも少ない。英国は、景気後退宣言を出したが、自国外準でポンド価値を支えるのは大変であろう。ECBは外貨準備高として5570億ドル(2008年1月)を持つと言われるが、ユーロ買い支えをしていないようだ。まさかとは思うけれども、ドルの基軸通貨追い落とし、つまり「ブレトン・ウッズ体制」破壊を狙ってEU主要国が「ユーロ・ショック」を仕掛けたなら、欧州各国も過酷な事態に見舞われるだろう。

(参考)

 何故政府は円安にしたがるのか


 ドル以外の外貨が急に安くなった
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